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転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

大型犬が転勤族の家の前に捨てられていた……!
捨て犬を家族に迎え、少しずつ形を変えていく家族の日々。
森田めぐみさんと、愛犬・レイルくんとの10年を振り返っていきます。毎月第2・第4水曜日更新
目次
- 「余命2カ月」を乗り越えたレイル
- 膀胱炎を発症
- 余命宣告を受けたはずだけど…
「余命2カ月」を乗り越えたレイル
宣告された余命の2カ月を過ぎ、レイルはますます元気!
理由はよくわからないが、少なくとも2カ月前の100倍は元気そうに見える。
思えば、家に迎えた直後に与えたフィラリアの薬も、当時のかかりつけ医が面食らうレベルで、てきめんに効いていた。もしかして、薬が効きやすい体質なのだろうか。
いくら理由は考えたところでわからないけれど、レイルの病状はとても落ち着いた。
心臓への負担を考え、長い散歩は出来なくなったけれど、日に何度も外に出て気分転換しているし、なかなか良い生活ではないの。
……と思っていたのだが。
レイルは急に何度も粗相をするようになってしまった。
マメにトイレに連れ出していたのだが、足りなかったのだろうか。
利尿剤を服用しているとはいえ、この回数はちょっと異常では?
答えは様子をちょっと観察してみたら、わかった。
これは……膀胱炎だわ。
膀胱炎を発症
膀胱炎、実は私も何度かやっていまして……。
トイレの融通がききにくい仕事の人に多いと聞きますが、どうでしょうか皆さん。
何回経験しても、膀胱炎って、めっちゃ辛くないですか⁉︎
レイルについては、免疫力が下がっているところに、利尿剤で頻繁なトイレだもの。
もう、これは絶対膀胱炎。だとすると、レイル、今めちゃくちゃ辛いよね……?
すぐに病院の予約を入れた。抗生物質を飲むと、すぐ良くなるはずよ!
最短でお願いした予約は、明日の夕方。
それまで、レイルに付き合ってトイレに行って行って、行きまくるしかない!!
そう決意をかためた私だったが、1時間くらいでぐったりしてしまうことに……。
さっきのトイレから5分も経たないうちに、レイルがまた玄関に向かって行くからだ。
膀胱炎は、常に残尿感を伴うのだ。
「今出したばかりけど、もうしたい!」というのがレイルの気持ちだと思う。しかし一瞬の隙も許されない。排泄にずっと付き合い続けるなか、自分のトイレに行こうと一瞬席を外しただけで、そのわずかな時間に粗相をされてしまう状況。
もう、今すぐに治してあげたい!
レイルのためにも、そして私のためにも……!
夜中まで何十回と家と外を往復し、少しレイルは落ち着いてきた。排尿によって、少し細菌が外に出たのかもしれない。
「明日、病院で薬をもらおうね……」
うっかり少しうとうとしてしまったら、レイルはまた粗相していた。
もう、私のバカバカ!! ちゃんと見てないとダメじゃないの!!
あらためて自分自身に喝を入れ、クールタイプの目薬を差して、眠気を覚ます。
明日、念のためにオムツも買っておこう……。

余命宣告を受けたはずだけど…
ほぼ一睡も出来ないまま、朝を迎え、仮眠を取るため息子と交代。数時間の仮眠ののち、犬用オムツを買いに走り、夕方、装着したレイルを車に乗せ、病院へ向かう。
抗生物質を服用すると、たちまちレイルのトイレは正常に戻った。ありがとう、フレミング(抗生物質を発見した人)よ!
実は、レイルの闘病生活は、排泄問題との戦いと言っても過言ではなかった。
発病と同時期に、前立腺が肥大してきていたのも原因のひとつだと思う。
以前の話で書いたことだが、レイルは重度のフィラリアに罹患していた。
去勢手術には麻酔を使うため、まずはフィラリアの完治を待っていた。しかし、完治後に検査したところ、フィラリアの影響で心臓が変形していることが分かり、手術を断念したのだ。
避妊や去勢の手術にはさまざまな考え方があると思うけど、私はできる状況であればした方が安心だと感じている。前立腺肥大や前立腺癌、子宮の病気などのリスクを減らせることは、ペットと長く暮らしていくうえで大切なポイントではないだろうか。
とにかく、当時の私には知る由もないことだが、レイルと1日で何十回もトイレに行く日々が、あの日、幕を開けたのである……。
