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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
スレンダーな体型と凛々しい外見が特徴のミニチュア・ピンシャー(ミニピン)。ドイツ原産の犬種で、遊びが大好きな活発な性格をしています。飼い主に甘える一面を持っていることから、非常に人気のある犬種として知られています。そんなミニチュア・ピンシャーの性格からしつけのコツまで、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきました。
目次
- ミニチュア・ピンシャーのルーツや歴史とは?
- ミニチュア・ピンシャーの平均的な体高と体重
- ミニチュア・ピンシャーの平均寿命はどれくらい?
- ミニチュア・ピンシャーの毛色の種類やその特徴は?
- ミニチュア・ピンシャーはどんな性格?
- ミニチュア・ピンシャーを飼うのに向いている人は?
- ミニチュア・ピンシャーの外見や吠え声の特徴
- ミニチュア・ピンシャーがかかりやすい病気とその予防法とは?
- ミニチュア・ピンシャーの食事で気をつけることとは?
- ミニチュア・ピンシャーの日常のお手入れで気をつけることとは?
- ミニチュア・ピンシャーのしつけの仕方と注意点は?
- ミニチュア・ピンシャーを散歩させる際に気をつけることは?
- ミニチュア・ピンシャーにおすすめの遊び方やトレーニング方法
- ミニチュア・ピンシャーを飼う際の注意点は?
ミニチュア・ピンシャーのルーツや歴史とは?
ミニチュア・ピンシャーは農家でねずみをはじめとする小動物駆除のために飼育されていた、ドイツ生まれの犬種です。その起源は定かになっていませんが、中型犬のヘル・ピンシェルが祖先であると考えられています。ヘル・ピンシェルにダックスフンドやイタリアングレーハウンド、テリア系の犬種を交配させて、現在とほぼ同じ形になったという説が濃厚です。
原産国であるドイツでは、小鹿に似た見た目から「レイピンシャー」とも呼ばれています。ドイツ語で「レイ」は「小鹿」、「ピンシャー」には「テリア」の意味があります。日本には1960年代頃から多く輸入されるようになりました。
断耳と断尾について
ミニチュア・ピンシャーには古くから断耳と断尾の習慣があります。断尾を行われていた理由は次の3つです。
1.外敵との戦いの際に噛まれたり、傷つけられたりすることを防ぐため
2.闘犬の際、受ける傷を最小限に抑えるため
3.狩猟の最中に尾が草木に接触して音が発せられることを防止するため
一方、断耳の理由としては次の3つが挙げられます。
1.一般社団法人 ジャパンケネルクラブが犬種を断定する規格に合わせるため
2.耳の病気を予防するため
3.見た目を良くするため
しかし、現在では動物愛護の観点から断耳と断尾を禁止している国もあるようです。
ミニチュア・ピンシャーの平均的な体高と体重
まずは、ミニチュア・ピンシャーの平均的な体の大きさと体重を確認しておきましょう。
体高
平均的な体高は25~30cm程度です。
体重
平均的な体重は4~6kg程度です。
ミニチュア・ピンシャーの平均寿命はどれくらい?
ミニチュア・ピンシャーの平均寿命は12~15歳と考えられています。家庭犬の平均寿命が約14歳なので、平均的な寿命と言えるでしょう。
ミニチュア・ピンシャーの毛色の種類やその特徴は?
ミニチュア・ピンシャーの毛色は大きく3つに分けられます。
単色(レッド系)
赤みが強く濃い茶色のディアー・レッド、赤みがかった茶色のレディッシュ・ブラウン、黒い赤茶色のダーク・レッド・ブラウンがあります。いずれも赤系統の毛色です。
ブラック&タン
ブラックの毛色に赤褐色または茶色の斑がある、もっとも主流のカラーです。この斑は、目の上、喉の下側、胸あたり、足などに入ります。一般社団法人 ジャパンケネルクラブによると濃くはっきりとした斑のほうが良いとされています。
チョコレート&タン
チョコレートのような濃いブラウンに、赤褐色または茶色の斑があるタイプです。斑の入り方はブラック&タンと同じです。
いずれのカラーでも毛質は硬く、艶感があるという特徴があります。
被毛の特徴
ミニチュア・ピンシャーは下毛のないシングルコートで、ダブルコートに比べると抜け毛が少なめです。ただし、短くまっすぐな毛のスムースコートなので、短いサイクルで毛が生え変わりやすい性質があります。そのため、シングルコートの犬種のなかでは抜け毛の多い犬種とされています。
ミニチュア・ピンシャーはどんな性格?
続いてミニチュア・ピンシャーの一般的な性格を見ていきましょう。
明るく活発
ミニチュア・ピンシャーはとても活動的で、遊ぶのが大好きです。いろんな人や犬と交流させて、遊び相手を増やしていくことをおすすめします。
繊細で神経質
ちょっとした物音や動きに対して敏感に反応する性質があります。反応の速さから攻撃行動に出てしまう場合もあるので、子犬のときからしっかりしつけるのが大切です。
好奇心旺盛
好奇心が強く、さまざまなものに興味を持つ性格です。それゆえにトレーニングやしつけが難しい犬種と言われています。
高い忠誠心を持つ
使役犬としての歴史から、とても忠誠心が高いのが特徴です。しつけをきちんと行えば飼い主にとても従順なるので、しっかり主従関係を築き上げるようにしましょう。
オスとメスによる性格の違い
メスの方が活発でプライドが高いと言われています。オスはメスと比較してのんびりした子が多いようですが、他犬種と比べれば活発です。
ミニチュア・ピンシャーを飼うのに向いている人は?
ミニチュア・ピンシャーはトレーニングやしつけをきちんと行える人に向いている犬種です。また、体力があり運動欲求が高いため、散歩時間をしっかり確保できる方のほうが好ましいでしょう。
ミニチュア・ピンシャーは初心者向きの犬?
トレーニングやしつけが難しいので、どちらかというと上級者向けの犬種といえるでしょう。ミニチュア・ピンシャーの性格をよく理解し、主従関係をしっかり築ける人におすすめです。
ミニチュア・ピンシャーの外見や吠え声の特徴
ミニチュア・ピンシャーの外見や吠え声にはどのような特徴があるのでしょうか?
外見
ミニチュア・ピンシャーは筋肉質で、そのスタイルの良さが特徴です。すらりとした長い脚を高く上げながらゆっくり歩く「ハックニー歩様」という特徴的な歩き方をします。また、見た目がドーベルマンに似ていると言われますが、血縁関係はありません。しかし、ドーベルマンを思わせる精悍さも備えていて、動きも俊敏です。
吠え声
勇敢な性格の犬種ですが、一方で警戒心の高さからよく吠える性質があります。無駄吠えしないように子犬の頃からしつけをしてあげてくださいね。
ミニチュア・ピンシャーがかかりやすい病気とその予防法とは?
かかりやすい病気とその予防法についてひとつずつ解説していきます。
アレルギー性皮膚炎
シングルコートのミニチュア・ピンシャーは外部の刺激に弱く、皮膚疾患になりやすいと言われています。遺伝的な要因に限らず、発症前後は環境を整えてストレスを与えない習慣が大切です。散歩後には体を拭いて、汚れやアレルゲンを取り除いてあげてください。
進行性網膜萎縮
PRAと呼ばれ、網膜異常により光を感知できなくなってしまう疾患です。遺伝的な眼病のため、予防は難しいと言われています。この疾患の遺伝子を持つ犬と、繁殖させないことが重要です。
膝蓋骨脱臼
膝のお皿にあたる膝蓋骨が脱臼してしまう疾患で、先天性と後天性のものがあります。一般的には膝蓋骨がはまる滑車溝が生まれつき浅いことによって、内側に脱臼してしまうケースが多いです。軽度であれば、自力で直せますが、慢性化または重症化すると腫れや骨変形に発展してしまいます。この場合、外科手術が必要となります。
後天性のものはできるだけ膝に負担がかからないよう体重管理や生活環境を整えることで予防が可能です。
レッグ・ペルテス
大腿骨頭壊死症と呼ばれる疾患です。大腿骨頭への血流が滞ることで壊死し、痛みが生じます。発症する原因が解明されていないため予防が困難な病気です。
色素欠落
メラニン細胞にかかわる遺伝子の異変が原因で、爪や鼻、胸などに大きな斑点が現れる疾患です。異なる毛色を持つ犬同士のかけあわせによって発症すると言われています。特に色素異常が起こりやすいマール遺伝子を持つもの同士の交配は避けるべきでしょう。
そけいヘルニア
腹膜や腸管の一部が、鼠径部と呼ばれる足の付け根の隙間から飛び出してしまう病気です。先天性のものだけでなく、後天的に発症する場合もあります。先天性のそけいヘルニアは、要因や詳しいメカニズムがまだ解明されておらず、予防が難しい状況です。
腸管が飛び出している場合には消化器官の不調が見られるだけでなく、腸閉塞や腸ねん転など命にかかわるケースがあります。そのため早い段階で手術を行うのが大切です。
ミニチュア・ピンシャーの食事で気をつけることとは?
ミニチュア・ピンシャーの食事に関しては、以下のようなことに気をつけましょう。
フードの選び方
ミニチュア・ピンシャーは運動量が多いため、しっかりと動物性たんぱく質が含まれているフードを選ぶのがおすすめです。ただし、添加物が多いものや、脂質と炭水化物の含有量が高いフードは体の負担になります。原材料や保証成分値をしっかり確認してから購入することが重要です。また、粒が大きいと丸飲みした際に窒息する危険性があるため、できるだけ小粒のものを選びましょう。
フードの食べさせ方
ゆっくり食べられるよう、早食い防止の食器を使う方法もおすすめです。早食いは消化器の負担が大きくなります。水分摂取も大切なので、愛犬が水を積極的に飲まない場合にはウェットフードを利用しましょう。ドライフードを利用している場合は、しっかり水を飲めるよう工夫してあげてくださいね。
ミニチュア・ピンシャーの日常のお手入れで気をつけることとは?
ミニチュア・ピンシャーのお手入れについてポイントを解説していきます。
週に1〜2回のブラッシングを行う
ダブルコートではないので、ブラッシングは週1~2回程度で十分です。皮膚に傷がつきにくい獣毛ブラシやシリコン製のブラシなどを使うとなお良いでしょう。
抜け毛対策を行う
シングルコートのミニチュア・ピンシャーですが、スムースコートのため抜け毛が発生しやすいです。生活環境を衛生的に保つためにも、こまめに部屋に掃除機をかけてあげましょう。
涙やけ対策を行う
涙やけは涙が過剰に分泌されることで、目周りの毛が変色する症状です。鼻涙管の異常や体に熱がこもりやすいなど、さまざまな要因で起こります。ミニチュア・ピンシャーに限らず小型犬に多く見られる疾患です。ひどくなると皮膚炎に発展しますので、涙が出ていたらこまめにふき取るようにしましょう。
月1回を目安に爪切りを行う
ミニチュア・ピンシャーに限りませんが、爪が伸びてくると歩き方が変わり、関節に負担がかかってしまいます。愛犬が正しい歩き方をするためにも、月1回の爪切りが重要です。
毎日歯磨きを行う
犬の口腔内では、3~5日程度で歯垢が石灰化すると言われています。歯石が増えると歯周病の発症リスクが高まるので、歯磨きは毎日行いましょう。
耳掃除を行う
耳掃除は雑菌の繁殖を防ぎ、疾患を予防するために必要です。汚れが見られたら、優しく拭ってあげましょう。ただし、あまり強くこすってしまうと、外耳炎を引き起こす場合があります。基本的にはトリミングサロンや病院でケアしてもらい、自宅では表面を拭き取る程度にとどめておくと安心です。
ミニチュア・ピンシャーのしつけの仕方と注意点は?
ミニチュア・ピンシャーのしつけについて、時期や性別に合わせて注意するべき点を押さえておきましょう。
しつけを始める時期
ミニチュア・ピンシャーのしつけを始める時期は、生後3~12週齢頃がおすすめです。この時期は社会化期と呼ばれ、さまざまなことを吸収して順応しやすいタイミングと言われています。家族として迎え入れて1週間ほど経つと愛犬も家に慣れてきますので、その頃からトレーニングを始めましょう。
社会化期のしつけの仕方
ワクチン接種をしっかり終えたら、いろいろな場所に連れて行ってたくさんの経験を積ませてあげましょう。飼い主以外の人やほかの犬と交友させてあげるのも大切です。
子犬期のしつけの仕方
叱るしつけではなく、ほめて伸ばすのが大切です。よくできたら褒めて良い行動を増やす、ダメなときは無視するというトレーニングを取り入れてみましょう。おやつを使うのもおすすめです。
ミニチュア・ピンシャーが起こしやすい問題行動
神経質で警戒心が強い性格ゆえに、無駄吠えをはじめとした問題行動が起こりやすい傾向にあります。利口で賢いミニチュア・ピンシャーはトレーニングやしつけが難しい犬種ですが、根気よく続けて主従関係をしっかり築きましょう。
オス・メスによるしつけの違い
オスとメスによる大きな違いはないですが、オスの場合マーキング行動が頻繁に見られるケースがあります。マーキングを減らしたい場合は、去勢手術を検討しましょう。
ミニチュア・ピンシャーを散歩させる際に気をつけることは?
ミニチュア・ピンシャーの散歩の際には、以下のような点を押さえておきましょう。
散歩の頻度
ミニチュア・ピンシャーは小型犬の中でも運動量が多い犬種のため、最低でも1回30分~1時間程度の運動を1日2回行うようにしましょう。ドッグランに連れていって、思い切り走り回らせるのもおすすめです。その場合は上記の時間ほど散歩しなくても、十分な運動量を確保できるでしょう。
ほかの犬との距離感に注意
散歩時に気をつけたいのが、性格から来る問題行動です。神経質な性格なので、ほかの犬に過剰に反応してしまう場合は適切な距離を保ってあげるようにしましょう。
熱中症対策をする
ブラック&タンのように毛色が濃いと熱がこもりやすく、日中の散歩で熱中症のリスクが高まります。夏場をはじめとした気温の高い時期には、散歩時間を見直しましょう。
散歩後のお手入れ
散歩後は濡れたタオルで体を拭いてあげてください。ミニチュア・ピンシャーは皮膚炎を起こしやすい犬種です。汚れやアレルゲンを取り除くことで、皮膚疾患を予防できます。
ミニチュア・ピンシャーにおすすめの遊び方やトレーニング方法
ミニチュア・ピンシャーは体力があり、運動量が必要な犬種です。ドッグランに連れて行ったり、賢い頭脳を活かした知育玩具で遊んであげたりすることで、欲求を満たしてあげられます。
ミニチュア・ピンシャーを飼う際の注意点は?
最後にミニチュア・ピンシャーを飼育する際に気をつけるべき点をまとめました。
滑りにくい床材を選ぶ
ミニチュア・ピンシャーは四肢が細く、骨折のリスクが高い犬種です。フローリングの場合、滑りやすく関節の負担にもなります。なるべく滑りにくい床に変えることで、骨や関節のトラブルを未然に防げます。
寒さに弱いので、寒さ対策を行う
シングルコートで毛が短めのスムースコートのミニチュア・ピンシャーは、寒さに弱い性質があります。体表に空気の層を作り、体温を維持するのが難しいためです。寒さが厳しくなってきたら、洋服を着せたり、暖房器具を使ったりなどの寒さ対策を行いましょう。
脱走に気を付ける
好奇心旺盛な性格なので、「外に出たい」という欲求から脱走を図るケースもあるようです。脱走した際に予期せぬ事故に巻き込まれてしまう場合もあり得ますので、玄関に脱走防止のフェンスや柵などを用意しておくと安心ですね。
第2稿:2021年11月8日更新
初稿:2020年2月28日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。