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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
ゴールデン・レトリーバーはスコットランドで生まれ、その後アメリカ、カナダへと広がりました。その黄金に輝く毛並みと穏やかで飼いやすい性格から、現在では世界中で愛されている人気の犬種です。そんなゴールデン・レトリーバーの平均寿命はどのくらいなのか、また長生きさせるための秘訣などについて、chicoどうぶつ診療所の所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきます。
目次
- ゴールデン・レトリーバーの平均寿命、最高寿命はどれくらい?
- 人間でいうと何歳?ゴールデン・レトリーバーの年齢換算表
- シニア期のゴールデン・レトリーバーと生活する際に気をつけることは?
- シニア期に入ったと判断できるサインは?
- ゴールデン・レトリーバーの寿命を縮めてしまう主な要因は?
- ゴールデン・レトリーバーがかかりやすい病気とは?
- ゴールデン・レトリーバーを長生きさせる秘訣は?
- 避妊手術や去勢手術を行うと寿命が伸びる?
ゴールデン・レトリーバーの平均寿命、最高寿命はどれくらい?
ゴールデン・レトリーバーは、5歳ごろからシニア期に入り、平均寿命は11歳といわれています。最高齢として20歳を超えた犬もいるという報告があります。
小型犬と比較して大型犬は寿命が短いと言われる理由は?
ゴールデン・レトリーバーは平均的な体高55㎝、体重30kgほどで大型犬に分類されます。一般的に小型犬に比べて大型犬は短命と言われているのですが、それにはいくつかの理由があります。
理由1:体に対して臓器が小さい
体に比べて臓器が小さいことによって、日常的に負担が大きくなってしまい、細胞の老化が早まると考えられています。
理由2:細胞分裂の回数が小型犬よりも多い
生き物はその細胞分裂の回数に比例して寿命も短くなります。大型犬は体が大きくなるために細胞分裂の回数が多く、結果的に寿命が短くなると考えられます。また、細胞分裂の回数が多いと、ガン細胞が発生する確率も増すので、これも理由として挙げられるでしょう。
理由3:IGF-1因子の分泌が多い
動物の成長や発達のためには、さまざまなホルモンが必須であることが明らかにされていますが、そのひとつに「インスリン様成長因子(IGF)」があります。大型犬は小型犬と比較して成長スピードが速いために、IGF-1因子の分泌も多いです。ただし、IGF-1因子の分泌が過剰になってしまうと、ガンの発症や悪性細胞の発生の可能性が高まり、短命になる傾向があると考えられています。
人間でいうと何歳?ゴールデン・レトリーバーの年齢換算表
犬の年齢が人間と比べて何歳に相当するのかというのは気になるかもしれません。以下の年齢換算表を参考に、犬の年齢が人間でいうと何歳にあたるのか確認をしてみましょう。
ゴールデン・レトリバー | 人間 |
生後3か月 | 4歳 |
生後6か月 | 7歳半 |
生後9か月 | 11歳 |
1歳 | 15歳 |
2歳 | 23歳 |
3歳 | 28歳 |
4歳 | 33歳 |
5歳 | 40歳 |
6歳 | 47歳 |
7歳 | 54歳 |
8歳 | 61歳 |
9歳 | 68歳 |
10歳 | 75歳 |
11歳 | 82歳 |
12歳 | 89歳 |
13歳 | 96歳 |
14歳 | 113歳 |
シニア期のゴールデン・レトリーバーと生活する際に気をつけることは?
上記の年齢換算表から見て、人間の40歳に相当する5歳ごろから、シニア期に入ったとみることができます。体調変化の大きいシニア期に入ったら、以下のようなことに特に気をつけてあげるといいでしょう。
食事の内容に気をつける
運動量が落ちて太りやすくなりますので、摂取カロリーのコントロールが必要となります。ドッグフードもパッケージに「高齢犬用」「シニア犬用」と記載されてあるようなシニア犬用のドッグフードを選んであげることをオススメします。また、栄養バランスのよい「総合栄養食」を選んでみるのも良いでしょう。
生活環境の見直しを行う
視力が低下するためにものや壁にぶつかりやすくなります。また、聴力も低下するため、周囲の音をきちんと聞き取ることができずに怖がりになる子もいます。物にぶつからないように生活空間の見直しを行い、犬に触れる前にはびっくりさせないよう、鼻の近くに手を持って行って匂いをかがせてから触るなど、シニア犬でも生活しやすいように工夫が必要です。
怪我しないように気をつける
足腰の衰えから、段差の昇り降りが苦手になったり、散歩を嫌がったりするようになることがあります。また、骨が弱くなるために思わぬシーンで骨折するリスクなども出てきます。散歩コースでの段差には注意をし、家の中でも極力段差がない空間を作ってあげるのがいいでしょう。
散歩のペースや時間、頻度に気をつける
シニア期に入ると少しずつではありますが、体力が落ちて、歩くスピードもゆっくりになります。そのため、散歩をさせる際には愛犬の状態を見ながら、無理のないスピードや散歩時間、頻度などを決めていくと良いと思います。なかなか散歩に行くことができず、ストレス発散が難しい場合には、知育トイなどを使って頭を使わせてあげるのがおすすめです。
シニア期に入ったと判断できるサインは?
年齢はひとつの目安になりますが、個体差があります。以下のようなサインが確認できるか愛犬の様子をよく観察しつつ、もし以前と様子が違うようであれば、飼い主がきちんとケアしてあげることが望ましいです。
身体機能の衰え
シニア期に入ると全身の体力が落ち込みます。目や耳などの感覚器の衰え、寝ている時間が長い、段差を嫌がる、足腰が弱って立っているのも辛そう、食欲がなくなる、毛質が悪くなるなどの特徴が挙げられます。
歯周病による口臭
加齢とともに歯周病になる犬がいます。愛犬に口臭があるかどうかも、シニア期に入ったかどうかのひとつの目安にしていいでしょう。
ゴールデン・レトリーバーの寿命を縮めてしまう主な要因は?
シニア期に適切なケアができるかどうかが愛犬の寿命に関係します。以下のような愛犬の寿命を縮める要因はできるだけ取り除いてあげたいものですね。
ストレス
ストレスによって免疫バランスが崩れてしまうと、さまざまな疾患を引き起こします。長時間ひとりぼっちにさせる留守番、家の中で騒音を立てる、必要以上に触り過ぎることなどは避け、愛犬が気持ちよく過ごせる環境を整えてあげたいですね。
肥満
肥満は疾患ととらえましょう。肥満によって関節、循環器、呼吸器へ負担がかかり、体に炎症が起きてしまうことによって、寿命が短くなると考えられます。食事の内容に気をつけ、無理のない範囲で適切な運動をさせるなどして、体重のコントロールを心がけましょう。
運動不足や過度な運動
運動不足によってストレスを感じたり、肥満になったりする可能性があります。また、過度な運動も身体に負担をかけてしまいます。適度に運動をしてストレス発散しつつ、肥満を予防することが長生きに繋がるでしょう。
ゴールデン・レトリーバーがかかりやすい病気とは?
飼い主が愛犬の体調を整えるうえで、かかりやすい病気を知っておくことは大切です。ゴールデン・レトリーバーがかかりやすい病気とそれぞれの症状、治療法を解説します。
悪性腫瘍(がん・悪性リンパ腫)
前述のように、大型犬は小型犬と比べて細胞分裂の回数が多く、その回数に比例して腫瘍化もしやすい傾向にあります。特に、リンパ腫や肥満細胞腫、骨肉腫、組織球肉腫などを患いやすいと言われています。腫瘍によって症状はさまざまで、消化器症状、疼痛、リンパ節の腫れ、腫瘍が気管を圧迫する呼吸器症状などが見られます。外科手術や抗がん剤、放射線治療などを用いて治療をしていくことがほとんどです。有効な予防法はありませんが、免疫バランスが崩れないように、適切な食事と運動、生活環境の見直しなどをして、ストレスがかかりにくい生活を送らせてあげると良いでしょう。
胃捻転
胃拡張胃捻転症候群と言われるもので、嘔吐したくても吐けない、落ち着きがなくなる、多量のよだれが出るなどの症状が見られます。大型犬で起こりやすい疾患で、胃が拡張し、胸部や腹部が大きく膨らむことでショックを起こし、処置が遅れると命を落としてしまうこともあります。治療法としては、胃の空気を抜く減圧処置を行なったり、開腹手術を行って胃を整復させたりする方法があります。予防法としては、早食いをしないことや、食後や水を大量に飲んだ後に激しい運動をしないこと、胃が捻転しないよう胃固定術を事前に行っておくなど方法があります。
股関節形成不全
大腿骨の先端の変形、骨盤のくぼみが浅いことによって起こる股関節の症状で、遺伝的素因、成長期の栄養不足や偏った栄養摂取、過度な運動が原因と言われています。モンローウォークという腰を振って歩く症状が特徴で、その他にもお姉さん座り(横座り)をする、立ち上がる際に時間がかかる、うさぎ跳びのような走り方、後ろ足の左右の間隔が狭いなどの症状が見られます。治療法としては鎮痛剤やレーザー治療や運動制限といった内科的治療、手術によって骨盤や股関節の異常を修復する外科的治療があります。遺伝的素因の場合には予防が難しいですが、日常生活において体重管理と足が滑りにくい材質の床に変更したり、足裏の毛の手入れを施しておいたりするとよいでしょう。
ゴールデン・レトリーバーを長生きさせる秘訣は?
飼い主としては、愛犬の寿命を縮めるようなことは避けるのはもちろん、できるだけ長生きしてもらうためにはどうすればいいかが気になるところですよね。以下にゴールデン・レトリーバーを長生きさせるために心がけておきたいことをまとめました。ゴールデン・レトリーバーに限らず犬全般にも言える基本的なことですが、犬の健康を保つうえでは大切なことばかりです。
健康的な食事を心がける
適切な食事をとり肥満にさせないようにしましょう。ついついおやつを与えすぎてしまうなどもありますので、体重の増加が見られてきたときには食事やおやつを与える頻度や食事の内容を見直すところから始めるといいでしょう。
適度な運動を欠かさない
運動することで肥満予防になるだけでなく、筋力がつくことで足腰のケアにもつながると考えられます。ストレスの解消と同時に代謝も上がりますので、免疫も整いやすくなると思います。
定期的な健康診断を受けさせる
ゴールデン・レトリーバーは成長スピードが速いので、シニア期に入ったら半年に1回、高齢期には3か月に1回程度の間隔で受診することをオススメします。病気の早期発見はその後の治療と回復に大きくかかわってきます。