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どうやって作る? なぜブルー? どのぐらい長く使えるの? 同じに見えても全然違う! ブルーシートのひみつ

メーカー

藤田学

藤田学

萩原工業株式会社 執行役員 合成樹脂事業部門 副部門長 兼 製品開発部長。ブルーシートの専門家。

ブルーシートのひみつを聞きに行く

こんにちは、工業製造業系ライターの馬場です。

ブルーシートは元々ブルーではなかった。ブルーシートがブルーであることにこだわるのは日本ぐらい。ご存じでしたか?

レジャーや作業時にブルーシートを使用したことがある人は多くいます。しかし、工業的にどのような特徴があるのか、いつ生まれ、どのように普及していったかなどを知っている人は多くありません。何気なく購入して使用しているブルーシートには、知らないひみつが多くあります。そのひみつを、メーカーに行って聞いてきました。

建築現場で多く使われるブルーシート 画像提供萩原工業株式会社

建築現場で多く使われるブルーシート 画像提供萩原工業株式会社

今回訪問したのは、岡山県倉敷市の萩原工業株式会社。1962年(昭和37年)に設立された歴史ある会社です。海外12ヵ国(世界13ヵ国、日本含む)に生産・販売拠点を持ち、グローバルに事業を展開している、ブルーシート製造で国内トップシェアを持つ企業です。

萩原工業株式会社本社

萩原工業株式会社本社

萩原工業株式会社は、明治時代から続く、花ござ・い草製品を扱う会社(現:萩原株式会社)から分離独立した企業です。明治、大正、昭和と続けていた花ござ製造ですが、徐々に国内でのい草の生産が減り、原料の確保が難しくなりました。そこで、花ござ用経糸にプラスチック製(ポリエチレン)の糸を使うことを考えます。その際、糸の製造を行う会社として設立されたのが萩原工業株式会社です。

設立2年後の1964年(昭和39年)には、今もブルーシートや土のう袋、各種シート製品の製造に使われる、丈夫で平らな糸「フラットヤーン」の開発に成功します。それから更に2年ほど経ち、現在のブルーシートの原型と呼べるものができるのですが、そのあたりの歴史については後ほど。

写真は代表してeビジネスチームの黒田さん。

写真は代表してeビジネスチームの黒田さん。

今回お話を伺うのは、萩原工業株式会社執行役員の藤田さん、産業資材営業部eビジネスチームの黒田さんの2名。ブルーシートの製造方法や、歴史、特徴などについての説明いただいた他、実際の生産ラインの見学なども対応いただきました。

ブルーシートの製造方法

それでは、最初にブルーシートの製造工程を見ていきます。

製造工程は大きく分けて以下のような流れです。

製造工程

ブルーシートを紙やフィルムのような1枚のものと思っている方もいるかもしれません。ブルーシートは近づいてみると分かりますが、平らな糸で細かく織られています。

ブルーシートの表面の拡大。 画像提供萩原工業株式会社

ブルーシートの表面の拡大。 画像提供萩原工業株式会社

ブルーシートを作る糸の原料は、主にポリエチレンです(ポリプロピレンを使っているものもあります)。ポリエチレンは、安価で加工がしやすく、水や薬品、油などに強い性質を持っています。高温で溶かして再利用することもできます。保存容器やラップ、畑に敷くシートの他、ちょっと前までのレジ袋など、身近なところで多く使われてきたプラスチックの一種です。

原料のポリエチレンペレット。

原料のポリエチレンペレット。

製造工程の最初は、ポリエチレンの細かい粒に熱を加えて溶かし、筒状に薄く伸ばしてフィルムにしていきます。

筒状に延ばされたポリエチレン。

筒状に延ばされたポリエチレン。

続いて、フィルムを専用の切断機(スリッター)で短冊状に切り分けます。

スリッターで切られたポリエチレン。ブルーシートになるのはまだ先。

スリッターで切られたポリエチレン。ブルーシートになるのはまだ先。

切り分けられたポリエチレンは、熱板とロールを使って伸ばしていきます。引き伸ばした糸は、そのままの糸よりも各種の強度が増し、簡単には引き裂けない、ブルーシートに最適な糸となります。

伸ばされて出てきた糸。

伸ばされて出てきた糸。

機械で巻き取れば糸は完成です。ここまでの「切る」「伸ばす」「巻く」の3つの技術は、萩原工業が創業以来守り続けている中核技術であり、丈夫で耐久性のある良質なブルーシートを作るためには欠かすことができません。

伸ばされて出てきた糸。

伸ばされて出てきた糸。

続いて織りの工程です。巨大な織機(しょっき)を使い、高速で織られていきます。

別工場に設置されているブルーシートを織る織機。 画像提供萩原工業株式会社

別工場に設置されているブルーシートを織る織機。 画像提供萩原工業株式会社

織られたシートはロールに巻かれて次工程へ。この時点ではまだ青くありません。次のコーティングの工程で色がつけられます。

ロールシートの最大の幅は3.7mほどになります。最終的に加工されたブルーシートの最大幅は3.6mほどです。多くのメーカーでは1.8m幅のものを融着(溶かして貼り合わせる)して幅広のものを作りますが、融着した部分はどうしても弱くなる。1枚で作れれば、より丈夫な幅広のブルーシートとなります。

ちなみに、日本では今でも建築関係などでは1間(いっけん:6尺=約1.8m)を基本とするサイズが使われることが多くあります。1.8、3.6、5.4mのような、ちょっと中途半端なサイズになっているのはそのためです。

巻き取られたコーティング前のシート。

巻き取られたコーティング前のシート。

コーティングの工程では、色の他、防水性を高めたり、紫外線に対して強くするコート剤を添加したりするなど、機能に合わせて各種の処理が行われます。

コーティングを行う機械。2階建てのビルぐらいの高さがあります。 画像提供萩原工業株式会社

コーティングを行う機械。2階建てのビルぐらいの高さがあります。 画像提供萩原工業株式会社

コーティングして再び巻き取られたシートは、既定のサイズに切断された後、端を織っての補強、穴を開けてハトメを取り付けるなどの加工が施されます。更に、検査、梱包などを経て、ブルーシートの完成です。最終的な加工がされず、このままロール状で出荷されるものもあります。

ブルーシートのロールは、1本で最大3000kgぐらいになるそうです。 画像提供萩原工業株式会社

ブルーシートのロールは、1本で最大3000kgぐらいになるそうです。 画像提供萩原工業株式会社

これらの製造工程は、萩原工業のYouTubeチャンネルでもVR動画で見られますので、そちらもご覧ください。

萩原工業では、月間で距離にして2000kmほどの織物を生産しています。ただ、その中でブルーになるのは3割程度ぐらいだそうで、ブルーにこだわるのは日本ぐらい。多くはブルーではないそうです。

そもそも、ブルーじゃないのにブルーシートとはどういうこと?と、なりますが、続いては、ブルーシートの歴史や違い、各種豆知識について紹介していきます。

最初はブルーではなかったブルーシート

そもそもブルーシートが作られるようになったのはいつからか?ブルーシートの原形ができたのは1960年代です。

萩原工業創業当時の設備。 画像提供萩原工業株式会社

萩原工業創業当時の設備。 画像提供萩原工業株式会社

萩原工業が1964年にフラットヤーンの製造に成功したと最初に書きました。執行役員の藤田さんの話によれば、当時の社員の方々が、これを使った製品を製造しようと最初に目をつけたのがトラックの幌だったそうです。

当時の幌は塩化ビニール製で、耐水性が高く丈夫ではあるものの、高価であり、大変重く扱うのが大変でした。そこで、軽くて丈夫、しかも安いポリエチレン製のシートを作れば売れると試作します。

ところが、軽くて薄いという点がマイナスに働きます。こんな薄くて軽いものでは頼りなくて使えないと言われ、全く売れませんでした。実際、当時の製品では風圧などの影響に耐えきれず、トラックの幌としての販売を断念します。

販売された「万能シート」。 画像提供萩原工業株式会社

販売された「万能シート」。 画像提供萩原工業株式会社

次に目をつけたのが農業用資材です。農作業では様々な用途でゴザやムシロを使います。その代わりに使えるものとして、幌として作ったシートを「万能シート」として1966年に売り出します。

写真を見ての通り、このシートはオレンジ色でした。これは幌として作ったとき、大手運送会社のイメージカラーがオレンジ色だったためです。また、プラスチックは総じて紫外線に弱く、長時間太陽の下で使うには何らかの処理が必要になります。使用したオレンジ色の顔料は紫外線にも強く、シートの寿命を延ばすことができました。

ブルーが普及したのは70年代から

ブルーが普及したのは70年代から

こうして、軽くて丈夫な万能シートは徐々に認知されて普及していきます。

しかし、ここでまた問題が起こります。1960年代頃から70年代あたりは、高度成長期の工業の発展により、公害問題が深刻になっていました。そんな中、万能シートに使われていたオレンジ色の顔料から有害物質が発生するとの噂がたちます。

藤田さんによれば、人体に影響するレベルではない微量の黄鉛が検出されたものの、風評被害を避けるため業界として対策が必要となり、色の変更を検討します。そこで選ばれたのが青色の顔料です。バケツやホースなど、当時の工業製品に多く使われていて価格が安く、紫外線などに対しても強かったというのが主な理由です。

今は色も柄も多彩なブルーシート。 画像提供萩原工業株式会社

今は色も柄も多彩なブルーシート。 画像提供萩原工業株式会社

こうして1974年(昭和49年)に青いポリエチレンシートが発売されます。しかし、まだ終わりません。オレンジシートが既に普及していたため、ブルーシートは当初売れませんでした。結局認知を得るまでに3年の月日を要します。海や空をイメージさせる爽やかな青色が好まれ、徐々に広がっていきました。そして今ではすっかりブルーが一般的な色になっています。

そもそも、ブルーシートは、ポリエチレン製防水ラミネートシートなどの各種呼び名があります。年配の方だと、ビニールシートと呼ぶことがあるかもしれません。あまりに一般的になり過ぎ、ブルーでなくても、俗称として業界的にはブルーシートで統一しているそうです。

オレンジ色のブルーシートは今もあります。

オレンジ色のブルーシートは今もあります。

ちなみに、ブルーシートを最初に作った会社はどこなのかですが、詳しいことは分からないそうです。萩原工業も糸は作っていましたが、今のように一貫生産はしておらず、織機やコーティング機は持っていなかったので外に出していました。同じような時期に似たものが出ていて、どこが最初なのか正確には言えません。

とはいえ、60年代中頃から70年代中頃にかけて、ポリエチレン製シートの登場、色の変更、ブルーシートの普及があったことは間違いないこと。今では、生活を支える重要な製品の一つとなっています。

見た目が同じでも、機能、使える年数など全く違う

番手ではなく、年数で書かれたものもあります。これは2年使えるブルーシート。 画像提供萩原工業株式会社

番手ではなく、年数で書かれたものもあります。これは2年使えるブルーシート。 画像提供萩原工業株式会社

次はブルーシートの機能の違いです。ブルーシートは色やサイズ以外にも、製品によって全く異なる性能を持っています。紫外線に強く、長期間外で使用しても劣化しないもの。防水性が高く、簡単には水を通さないもの。火に対して強いものもあります。

ブルーシートの違いで出てくるのが番手です。

ブルーシートの番手とは、シートを3.6m×5.4mのサイズにしたときの重さを表したもので、3000gならば#3000と表記されます。市場では、輸入品のシートを含む他の製品においても、#3000、あるいは#3000相当と表記され、販売されています。しかし、統一された業界の基準は存在しません。同じ#3000でも、使う糸や織り方、コーティング用の素材で、重さや品質が異なる場合があるので、購入時には注意が必要です。ただ、大雑把に言って番手が上がると厚みが増し、それだけ耐久性が増します。

防炎、難燃タイプのブルーシート。これぐらい燃え方が違う。 画像提供萩原工業株式会社

防炎、難燃タイプのブルーシート。これぐらい燃え方が違う。 画像提供萩原工業株式会社

例えば、番手2000から3000番程度の一般的なブルーシートは、屋外で連続使用するような場合の耐えられる年数は半年から1年程度です。風雨や紫外線で表面がボロボロになり、ひび割れ(クラック)が発生してきます。

これが長寿命加工をしたものになると10年の使用に耐えられます。ただ、価格は通常のものの10倍ぐらいしますので、超高級ブルーシートと言えるでしょう。工事現場などで使用されるもので、一般で使われることはまずありません。

ホームセンターでブルーシートを買うときは、番手や使用可能な年数などの数値もちょっと気にしてみると、より良いブルーシートを入手できるようになります。

こんなブルーシートもある!

ブルーシート製バックパック

ブルーシート製バックパック

萩原工業では、ブルーシートの定義として、「防ぐ」「守る」「提供する」の3つを挙げています。建築、農業、各種工場などで様々な用途に使用されるブルーシートは、敷く、覆うことにより、水の侵入を防いだり、製品を守ったりします。また、敷物としてレジャーで使うことで、その場の雰囲気を提供しています。

実際、ブルーシートは、災害備蓄品の入れ替え時期であり、行楽シーズンでもある3月に売り上げが伸びるそうです。また、台風などの災害時にも一時的に出荷量が増えます。萩原工業では、運送会社と連携することで、災害地に速やかにブルーシートを届けられる体制も整えているとのことでした。

ブルーシート製サコッシュ

ブルーシート製サコッシュ

そんな災害でも活躍するブルーシートですが、素材としての新たな使い方も模索されています。防水性が高く、丈夫な素材であるブルーシートをバッグなどの日常品にしたものが、萩原工業の自社ECサイトで販売されています。

これらの新たな製品は、若手がアイデアを出して製品化したものです。予想外の売れ行きで、役員も驚いているのだとか。

少巻きのブルーシート原反: 画像提供萩原工業株式会社

少巻きのブルーシート原反: 画像提供萩原工業株式会社

また、若手の発想で、20mの小巻きにしたブルーシートをECサイトで発売したところ、よく売れているそうです。食品用ラップのように好きな量を出して使える。ブルーシートなので、使い終わったら再度巻き取り使うこともできます。今のところ特に用途はないがちょっと欲しい。

他にも、オリジナルのサイズのブルーシートを1枚から作れるサービスもありました。アウトドア向けの用途で注文されることがよくあるそうです。最近はBtoBに特化していく企業も多いですが、元々企業向けのものを一般の人にも使いやすい形で提供してもらえるのは、面白く、ありがたいことです。

ブルーシートも水平リサイクルの時代

手軽に扱え、丈夫で便利なブルーシートですが、1つ厄介なことがあります。廃棄の問題です。

河原や空き地の隅で、ボロボロになったブルーシートの残骸を見かけることがあります。また、ちゃんと廃棄されたブルーシートでも、最終的には焼却処分されます。

ブルーシートのリサイクル図: 画像提供萩原工業株式会社

ブルーシートのリサイクル図: 画像提供萩原工業株式会社

萩原工業では、廃ブルーシートの水平リサイクルプロジェクト『ReVALUE+(リバリュープラス)』をすすめていました。

ポリエチレンは回収すれば再び原料として使用することが可能であり、資源になります。ブルーシートも、技術的には従来と同等品質のブルーシートに再生することが可能になったそうです。金属のハトメの部分をポリエチレン製にしたり、ハトメを使わない製品を作るなど、分別の手間を減らす取り組みもなされています。

問題は、回収をどのように行うか。現状では自治体のイベントなどで集められる程度で、それほど多くは集まらないそうです。

捨てれば厄介者のブルーシートも、集めれば資源。廃ブルーシートを上手く集めるシステムが構築されることを願います。

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