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音楽で焼酎の味が変わる!? 田苑酒造を訪れ「音楽仕込み」の現場に潜入してみた

メーカー

松下英俊

松下英俊

製造課課長。田苑入社前はクラシックにまったく縁がなかったが、今では車で時々聞くように。新製品「田苑 ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)」の開発を主導。

焼酎にクラシックを聞かせる「音楽仕込み」

音楽仕込み

(画像提供:田苑酒造)

「植物に音楽を聞かせるとよく育つ」「食べ物に音楽を聞かせると味がよくなる」など、音楽が生育や味に影響を及ぼす話ってよく耳にします。

鹿児島県の田苑酒造は、焼酎にクラシックを聞かせる「音楽仕込み」をしています。

でも音楽が食べ物に影響するって不思議です。

人間とは違い、耳で音楽を聴くわけではない焼酎。どのように音を感じて、どのように味がよくなっているのでしょうか? しかも、なぜクラシック? ロックや演歌、民謡と他の音楽だと味はどうなるのでしょうか? そして、その味の違いは一般人にもわかるくらいの顕著なのでしょうか?

そもそも本当に音楽を聴かせるだけで、焼酎は美味しくなるんでしょうか???

気になったら確かめずにはいられない。早速、田苑酒造を訪問することに。

「音楽仕込み」が始まった経緯や、音楽仕込みが焼酎の味わいにどう影響するのかを教えてもらいます。

音楽仕込みの効果は、発酵と熟成にあり!

田苑酒造

早速、田苑酒造に到着。鹿児島県薩摩川内市樋脇町の緑と水が豊かな土地にあります。

敷地内では麦の栽培も

敷地内では麦の栽培も。「材料となる麦をより深く知るためにやっています」とのこと!

焼酎資料館

焼酎資料館(画像提供:田苑酒造)

醸造所に併設されている焼酎資料館で、製造課課長の松下英俊さん、工場長の中永田浩一さんにお話を伺いました。

松下英俊さんと中永田浩一さん

左から製造課課長の松下英俊さん、工場長の中永田浩一さん

ちなみにこちらの焼酎資料館は、どなたでも無料で見学可能(※感染拡大対策のため、休止していることもあります)。江戸時代の酒蔵を移築しており、木桶や古式蒸留機(チンタラ)などの古い道具類や古文書が展示されています。

歴史の香りが漂う

1890年の創業当時からの和甕など、当時の焼酎造りの空気感まで伝わってくるよう

──全部の焼酎に音楽を聴かせているんでしょうか?

中永田さんアイコン

中永田さん

はい、聴かせていますよ! 1990年からやっておりまして、私はその時から現場におりました!

松下さんアイコン

松下さん

まずは、音楽を聞かせている現場をご案内しますね。

大きなタンクが並んだ空間

工場へ案内してもらい、最初に見えたのが大きなタンクが並んだ空間。静かな中で優雅にクラシックが流れているイメージがありましたが、結構工場の機械音なども響いていました。

「音楽仕込み」の製造現場は、いろんな音が響く中にクラシックもある様子でした。

──選曲はどうしているのですか?

松下さんアイコン

松下さん

自分たちでクラシックの名曲を集めたCD作りました。これをずっとリピートしています。

流れている名曲の数々

流れているのはベートーベン、モーツァルト、ビバルディ、バッハ、シューベルト、ワーグナー、アルカンジェロ・コレルリ、ベートーベンなど。クラシック初心者でも比較的知っている名曲で仕込まれていまいた。

──この音楽はどのように焼酎に伝わっているのでしょうか?

松下さんアイコン

松下さん

焼酎の発酵タンクにトランスデューサーを取り付けて、音楽の信号を振動に変えて伝えています。

音楽の信号を振動に変えて伝える

──触れるとほのかに振動を感じますね!

松下さんアイコン

松下さん

このタンクでは、焼酎の一次仕込みをしています。麹、水、酵母を入れてクラシックを聞かせながら発酵させているところで、クラシックを聞かせることによって発酵スピードが早くなります。タンクの横から見ても分かりづらいので、上の階へ行きましょう。

発酵タンク

階段を上ったエリアからは、発酵タンク中の様子を確認できます

ブクブクと発酵中

ブクブクと発酵中

──クラシックが発酵を早める効果があったとは……! ちなみに、音楽を流しているのはここだけですか?

松下さんアイコン

松下さん

「音楽仕込み」では、2つの工程でクラシックを聞かせています。一つが今ご紹介した一次仕込みで、もう一つは最後に蒸留して出来上がった焼酎を貯蔵するときに最終仕上げとしてクラッシックを聞かせています。今度はそちらへご案内しましょう。

貯蔵庫

貯蔵庫へ移動。焼酎の原酒を水で割り、アルコール濃度を調整して保管しています

──最終工程でも発酵を促しているんですか?

松下さんアイコン

松下さん

もう発酵は終わっていて、ここでは、できあがった焼酎の原酒に水を加えてアルコール度数を調整して貯蔵しています。その熟成を促す役割でクラシックを流しています。

──熟成というと?

松下さんアイコン

松下さん

原酒に水を加えたとき、アルコールと水の分子はバラバラなんです。そこに音楽を聞かせると、それぞれの分子集団が壊れて小さくなり、アルコール分子の周りに水分子がくっついて覆うような感じになります。

──水と原酒がなじむ感じでしょうか?

松下さんアイコン

松下さん

そうですね。アルコールの刺激を感じない味わいになるんです。いわゆる「まろやか」とか「飲みやすい」って表現されるような。

──なるほど。案内ありがとうございました! 

なぜ「音楽仕込み」をするのか?

  • 一時仕込みでの発酵促進
  • 熟成を促してまろやかな味わいにする

社員は困惑。始まりは社長の趣味!? 

──そもそも、音楽仕込みはいつから始まったのですか?

中永田さんアイコン

中永田さん

1990年からです。社長(田苑酒造の前身となる塚田醸造場4代目社長の塚田定清さん)が蔵にオーディオセットを持ち込んでクラシックを流し始めました。

──いきなり!? 現場の皆さんは驚かれたのでは?

中永田さんアイコン

中永田さん

現場は面食らってました (笑) 当時は私も20代の若い社員だったものですから、歌謡曲とかは馴染みがあるんだけどクラシックは少し抵抗がありましたね。

──なぜクラシックだったのでしょうか? ロックや演歌じゃダメなんでしょうか?

中永田さんアイコン

中永田さん

おそらく、社長は自分が好きなクラシック音楽を流したい、聞きながら仕事をしたいっていう気持ちが最初にあったんだと思います(笑)。

4代目塚田定清さん

4代目塚田定清さん(画像提供:田苑酒造)

──社長の趣味でしたか!

中永田さんアイコン

中永田さん

中学の頃からピアノを弾いたりされていて、すごくクラシック好きな方ですね。

──なるほど……!

中永田さんアイコン

中永田さん

当時は「牛に音楽を聞かせたら乳の出がよくなった」「パンに音楽を聞かせたらふっくら仕上がった」といった話がマスコミを賑わしていたんですよ。

──音楽のそういった話って時々話に聞きますが、1990年頃からも話題に出ていたのですね。

中永田さんアイコン

中永田さん

それを耳にした社長が、自分の蔵でもどうなるか試してみようという思いもあったかと思います。

──その思いつきが今まで脈々と続いている…! 実際の現場はクラシックをどう思っていたんですか?

中永田さんアイコン

中永田さん

最初はみんな困惑していましたが、毎日だまーって作業を進めるよりも、音楽が流れている方が心地よくなってきて(笑)。いい具合でしたよ。

──反対意見などはありましたか?

中永田さんアイコン

中永田さん

まあでも、反発するとか、反対するとか、そういうのはなかったです。毎日工場内に流れているので自然と慣れていったなーという感じですね。

──工場の雰囲気が良くなってきたんですね。

中永田さんアイコン

中永田さん

そうなんです。すると、音楽が自然と頭に流れてくる、覚えているというか。仕事のリズム的なのが出てくるようになりました。

本当のところ、皆さんどう思っているのでしょうか? 音楽仕込みについて現場の方々にも聞いてみました!

現場で働く人は何を思う?

野中さん:元々日本酒の蔵で働いていて、その後ここに勤めるようになったので最初はびっくりしましたね。音楽仕込みってなんだろうと。でも、その振動で発酵が早くなって熟成が進むってすごいなと思いました。

現場は肯定的な印象

堂前さん:いつの間にか流れているのが普通になっていました。逆に、作業中に流れていないことがあると違和感を覚えます。もしかしたら自然とリラックスしているのかも!?

現場の皆さんは結構肯定的でした。

──現場で働く人たちにはいい影響があったみたいですね。では、焼酎にはどのような変化があったのですか?

松下さんアイコン

松下さん

ベートーヴェンの田園交響曲を流していると、スピーカーに近いタンクだけもろみの発酵が早くなったらしいです。通常は6日かかるのが、5日で完了したそうで。

──そんなに顕著な変化があったんですね。

松下さんアイコン

松下さん

現場の人が気づいて塚田さんに報告したら「そんなバカな!?」って。そこで試しにスピーカーの位置を変えてみたら、今度もスピーカーに近いタンクの発酵が早い。

──距離が関係あったとは!

松下さんアイコン

松下さん

それならタンクに直接スピーカーを取り付けたら全部発酵が早まるんじゃないかと、自動車用スピーカーを取り付けたり、有線放送のスピーカーを取り付けたり、試行錯誤をして、最終的に、音楽の信号をそのまま、振動として伝えられるトランスデューサにたどり着きました。

トランスデューサ

現在、田苑酒造の蔵では数千個のトランスデューサが稼働中

クラシックの力で「まろやか」な味わいに

──次に、最終工程の貯蔵段階での音楽仕込みについて教えてください。何日音楽を聞かせているのですか?

松下さんアイコン

松下さん

最終的に何日貯蔵するかは、焼酎それぞれ違いがあるので、製品ごとに何日音楽を聞かせるのか、期間を設定して聞かせています。

貯蔵した焼酎を瓶詰する様子

貯蔵した焼酎を瓶詰する様子(画像提供:田苑酒造)

──こういう味の変化って、数字や成分などで表現できるんですか?

松下さんアイコン

松下さん

味覚センサーなどを使った試みはしているんですけど、なかなか表現しづらいですね。実際に飲んでもらうのが一番です。音楽仕込みとそうでないものを飲んで頂いて、どっちか当てるクイズを出すと、9割方正解します。なので、それなりに人が感じる味覚のところでの差は出ているんだなと実感しています。

──働いている方々も違いを実感されていますか?

中永田さんアイコン

中永田さん

分かりますね。我々は「まろやかになる」と表現しています。荒々しいのが落ち着いたように感じます。

松下さんアイコン

松下さん

アルコールのピリッとした刺激がなくなって、スーッと入っていくような感じです。そこをもう少し違った形で、お客さんとか多くの方に伝えていかないといけない。専門部署で研究していますので、今後はもうちょっといい表現、伝え方ができてくるのかなと思っています。

好きな音楽を聴きながら飲むのが一番

──家で保管するときも、音楽を流した方がいいでしょうか?

松下さんアイコン

松下さん

私の個人的な意見としては、もうこれ以上音楽を聞かせない方がいいと思っています。なぜかというと、焼酎ごとに音楽を聞かせる期間を実験&検証して、一番おいしくなる日数を見極めて設定しているからです。

──なるほど、聞かせすぎもよくないのですね!

松下さんアイコン

松下さん

7日と設定しているものを、8日目になると苦み、辛味が出ることがありました。だから推奨は出来ないかも。

──田苑金ラベルはどのように飲むのがおすすめですか?

松下さんアイコン

松下さん

飲む人の好みですが、暑い夏には炭酸割り(ハイボール)がおすすめです。我々は「金ハイ」って呼んでいます。

炭酸割り(ハイボール)がおすすめ

(画像提供:田苑酒造)

金ハイ

(画像提供:田苑酒造)

中永田さんアイコン

中永田さん

お客さんから教えてもらっておいしかったのが、金ラベルを紅茶で割る方法です。私もやってみて、飲み方次第ではすごく合うなーと思いました。あんまり紅茶を多くすると渋みがでるんですけど、量さえまちがえなければすごくおいしい。

──今イチオシの銘柄は何ですか?

松下さんアイコン

松下さん

田苑 ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)です。クラシックを聞かせて、ホワイトオークの樽とタンクでじっくりと3年貯蔵した樽貯蔵芋焼酎です。オーク樽由来の甘さや柑橘系の華やかな香り、3年熟成のまろやかさが絶妙にマッチして、フルーティで上品な味わいを醸し出しています。

田苑 ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)

田苑 ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)

──最後に、飲むときにおすすめの音楽は? やはりベートーヴェン田園を聞きながら飲むのがいいのでしょうか?

中永田さんアイコン

中永田さん

無理に馴染みのない音楽を聞くよりは、自分の好きな音楽が一番だと思います。気分がのればおいしく飲めるので(笑)。

松下さんアイコン

松下さん

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