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目次/ INDEX
扉や蓋を開け閉めするための金具「蝶番」。玄関・冷蔵庫・ピアノ・ノートPCなど、あらゆる“開閉する部分”に潜んでいます。
もちろんDIYをしていくなかでも、蝶番は避けて通れないアイテム。しかし同時に、DIY初心者にとっては、この蝶番こそが最初の挫折ポイントなのです。作った棚に扉を付けようとしたけど、蝶番がうまく付けられなかったという失敗は、DIY初心者あるある……。
今ではDIYマスターの私も、蝶番にはかなり苦しんだ記憶があります。高校生の時に演劇部で舞台美術担当になり、初めて蝶番を取り付けるも、ギイギイと大きな音が鳴ったり、扉が閉まらなかったり、照明が漏れて役者のシルエットが丸見えになってしまったり……。とにかく悪戦苦闘しました。
今考えると、失敗の原因は選んだ蝶番と、その取り付け方にありました。この時使用したのは、もっともベーシックな「平蝶番(ひらちょうばん)」。蝶番にはさまざまな種類がありますが、実はこの平蝶番がクセ者なのです。
でも、コツさえ押さえれば大丈夫! 当時の私に教えてあげたい、DIY初心者におすすめな「基本の蝶番4種類の特徴」と「正しい取り付け方」を伝授します。
もっとも多く使われているベーシックな蝶番。
平蝶番と形が似ているため仕組みが分かりやすく、より取り付けがラク。小さい扉や蓋など、初心者が挑戦するDIYのサイズにも合っている。
平蝶番と形が似ているため仕組みが分かりやすく、より取り付けがラク。蝶番をおしゃれに見せたい人におすすめ。
平蝶番の派生形。複雑な蝶番を取り付ける際に必要な「完成形をイメージする」練習になる。
中でも平蝶番は、幅広い用途で使われる蝶番の代表格。蝶番の基本といえる形状なので、まずは平蝶番で取り付け方を学びましょう!
平蝶番は、1本の軸と2枚の羽で構成されています。管の中に1本の軸が通っていて、両脇に付いた羽は、軸を支点に回転することで開閉します。この動き方は、すべての蝶番に共通します。
2枚の羽を、それぞれ木材にネジで取り付けるだけだから簡単! そう思ったあなたは、かつての私のように、もう落とし穴にはまっているかもしれません……。
平蝶番を横から見ると、羽に厚みがあるのが分かります。
失敗の原因は、この厚み。木材にそのまま取り付けると厚みの分の隙間が開き、扉がきれいに閉まらなくなってしまいます。これを避けるために必要な作業が、蝶番の羽の厚み・大きさの分だけ木材を削る「彫り込み」。DIY初心者は「彫り込み」を知らないために失敗してしまうのです。
彫り込みの作り方を、順を追って説明していきます。
扉側の蝶番を取り付ける位置を決めたら、蝶番を当てて外側を鉛筆で縁取っていきます。取り付ける木材の端と、平蝶番の軸の中心線をぴったりと合わせましょう。これがずれてしまうと、開け閉めのたびに音が鳴ったり、正しく開閉してくれなかったりというトラブルにつながります。
線をなぞるようにノミの刃を当て、お尻側をハンマーで叩いて、垂直に彫ります。難しければ、線に定規を当て、カッターで切り込みを入れても大丈夫です。この作業を行うことで、ノミで木材を広く彫りすぎてしまうことを防ぎます。
ここで大事なのは“どのくらいの深さまで彫るか”。実物の寸法を測り、羽の厚み+羽を平行に合わせた時の羽の隙間分÷2を彫りましょう。
例えば、羽の厚みが1枚2mmで、羽を平行にした時に隙間が3mm空いている蝶番なら、彫り込みの深さは2mm+1.5mm(3mm÷2)で3.5mm。隙間がない蝶番なら2mmです。
ノミの平らな面を上に向けて、縁取った箇所の内側を慎重に彫っていきます。
深く彫りすぎないように、また削った部分が凸凹しないように、刃を寝かせて断面をならすように彫ります。蝶番を当てながら進めると、彫りすぎも防げます。
彫り込みがうまくできれば、もう大丈夫! ……というわけではありません。簡単に見えるネジの止め方にも、実はちょっとしたポイントが。続いて、正しいネジの止め方をご紹介します。
扉を開け閉めする時に変な音が鳴ったり、木がまっすぐ動かなくなったりするのは、蝶番が中心からずれているから。蝶番を正しい位置に当ててから、垂直にキリを入れてネジの下穴を開けましょう。
4で開けた下穴に、ネジを垂直に入れていきます。電動ドライバーだとネジ穴が潰れてしまう可能性があるので、DIY初心者が蝶番を付ける際は、手動のドライバーを使用しましょう。
最初からネジを一気に締めると、細かい調整ができません。中心がずれていないか、しつこいくらいに確認しながら少しずつ締めましょう。
もう片方の羽も同様に取り付けます。
これで蝶番の基本の付け方はバッチリです!
こちらが平蝶番の取り付け完了後。彫り込みもきれいに仕上がりました!
もし彫り込みがうまくできなくても、諦めてはいけません。冒頭でおすすめした平蝶番以外の3つ、フラッシュ蝶番・ウエスタン蝶番・自由蝶番には彫り込みが不要なんです! それぞれの特徴と、取り付け時の注意点を挙げていきます。
平蝶番と同じく、1本の軸と2枚の羽という構成。しかし、羽が薄く、閉じた時に重ならない仕様なので、木材にそのまま取り付けても隙間が羽1枚分しか空かず、彫り込みは不要です。
さらに軸を抜くことができ、取り付け後でも扉を付け外しできるという特長も。
「それなら平蝶番ではなくフラッシュ蝶番を使えばいいのでは?」と思った方もいるでしょう。しかし、フラッシュ蝶番は羽の面積が狭くシンメトリーではないため、ぴったりと2枚の羽が合わさってバランスを保っている平蝶番と比べると耐久性に不安が生じます。したがって、比較的小さな(=軽い)扉や、取り外し扉には向いていますが、大きな扉には不向きです。
取り付け方はカンタン。木材に軸1本分の隙間を空けてネジを締めるだけです。羽が左右対称ではないため、歪んだ状態になりがちなので、羽がぴったり木に沿っている状態で取り付けましょう。
ウエスタン蝶番も1本の軸と2枚の羽で構成されています。多くの蝶番は、扉を取り外せないようにするため扉の内側に付いており、隠して使われることが多いもの。しかし、ウエスタン蝶番は外側に付けて“あえて見せる”ことを想定しており、DIYを楽しむために作られたパーツだという点が大きく異なります。手作り感を出しつつ、おしゃれなDIYを楽しみたい人向けです。
外側に付ける蝶番なので彫り込みが不要。平蝶番の取り付け方でお伝えした「ネジ止めの基本」をしっかり押さえましょう。
自由蝶番(両開き)はその名の通り、内側と外側、両方に扉を開けられるようにするための蝶番です。これまでの3つの蝶番と違い、軸が2本あり、2枚の羽以外に軸をつなぐ板があります。飲食店のカウンターや厨房の扉、西部劇のバーの扉のように、扉が手前にも奥にも開けられるようになります。
軸が2本あるため、ほかの3つとは取り付け方が少し異なります。まずは片側の羽を取り付けます。
上から見た時にZの形になるように取り付けます。もう片方の羽を付ける時、蝶番が取り付け後にどう動くのか、実際に当ててしっかり想定することがポイント。自由蝶番だけでなく、複雑な動きをする蝶番を取り付ける際には必ず行いましょう。
扉が常に閉じている状態に戻るように、自由蝶番にはバネが内蔵されています。2枚の羽を取り付け終えたら、このバネの強さを調整しましょう。
調節方法は簡単。管の上部に空いている「調整穴(トルク穴)」に、付属の「(トルク)調整棒」を差し入れ、軸のバネが引き伸びる方向に棒を回して中のバネを回転させます。
その後、ストッパーを穴に差し込みます。2つの管の両方でトルクの調整をし、このストッパーを取り付けると……
バネの力で、蝶番の羽がぴったりと重なります。
このストッパーは、差し込むトルク穴の場所を何度でも調節できるので、扉が閉まる勢いが強すぎる場合に弱められるのはもちろん、バネの力が衰えた時に強くすることもできます。
平蝶番で彫り込みを覚えれば、蝶番の取り付け方はすべてマスターしたも同然。より複雑な蝶番でも失敗せずに取り付けられます。例えば、キャビネットや食器棚の扉を大きく開くことができる「アングル蝶番」や「スライド蝶番」も、取り付け方は変わりません。基本を押さえれば、DIYでできることの幅がぐんと広がりますよ!
また、彫り込みが不要な蝶番があることも知っていれば、ガラスやプラスチックなど、彫り込みが困難な素材も扉の材料に選べます。
高校生の頃の私が、平蝶番の取り付けには彫り込みが必要なことを知っていたら、もしくは彫り込みが必要ない蝶番の存在を知っていたら、もう少し舞台作りに得意意識が持てたかな……。
でも、この記事を読んだあなたはもう大丈夫。素敵なDIYライフを楽しみましょう!