リンクをコピーしました

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • もっと見る

段ボールで始めるコンポスト! 楽しく続けるコツを愛好家が教えます【入門編】

ユーザー

山内彩子

山内彩子

夫とこどもと三人暮らし。インスタグラムとブログで暮らしについての投稿をしています。著書に『暮らしが整う家づくり』(大和書房)。暮らしのなかで考えて手を動かし、ものを作ったり試してみたりすることが好きです。消耗品とゴミを減らすために、日用品を手作りしたりコンポストをしたりするのが日々の楽しみです。

コンポストが気になる

「コンポスト」とは、家庭から出る生ゴミをはじめとする有機物を発酵・分解させて堆肥に変えること。生ゴミを減らせることから、サステナブルな取り組みとして注目を集めています。

地球のためだけでなく、ゴミ処理をラクにするといった実用的な面や、暮らしを心地よく整えるための知恵がたくさんつまっているのも、コンポストの大きな魅力。

なかでも「段ボールコンポスト」は、大がかりな装置は必要なく、段ボール箱と手軽な材料ですぐに始められるので、都会のひとり暮らしやアパート・マンション住まいの人にも向いています

そこで今回は、段ボールコンポストをおしゃれかつ、カジュアルに生活へと取り入れている山内彩子さんに、コンポストの始め方とその魅力について伺いました。

コンポストを始めたきっかけは?

「堆肥」を意味する「コンポスト」は、生ゴミや落ち葉などの有機物を、微生物の働きによって発酵・分解させて堆肥にすること。できあがった堆肥は、土壌改良材として家庭菜園などに使え、野菜や植物を育てて循環させていくことができます。

8年前、庭のある家に引っ越したのを機にコンポストを始めたという山内さん。最初は庭に野菜くずを埋めて土に還していたといいます。

「土に埋めるだけの方法は手軽で気に入っていたものの、動物を呼び寄せてしまいそうな生ゴミを庭に埋めるのには抵抗があって、処理できるものは野菜くずに限られていました。そんなときに影響を受けたのが、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ)と『プラスチック・フリー生活』(NHK出版)という2冊の本。本の内容から、家庭から出る焼却ゴミをゼロに近づけること、コンポストで分解できるプラスチックフリーの日用品を使うことにも関心が広がっていきました」

コンポスト 資料

左:ベア・ジョンソン(著),服部雄一郎(訳)『ゼロ・ウェイスト・ホーム』(アノニマ・スタジオ) 右:シャンタル・プラモンドン,ジェイ・シンハ(著),服部雄一郎(訳)『プラスチック・フリー生活』(NHK出版)

コンポストは、「コンポスター」と呼ばれる専用の道具を使って行うのが一般的。地面に埋め込む設置型のタイプや電動式のもの、バッグを容れ物にした小型のものなど、さまざまなタイプがあります。そのなかで、山内さんが興味を惹かれたのが「段ボールコンポスト」でした。

コンポスター

山内さんが実際に使っているコンポスター。2021年の1月から始めました

「家にあるもので、費用をかけずに始められる段ボールコンポストは、魅力的でした。箱という閉じた空間で、生ごみや『土に還る』とうたった日用品が、実際に分解されていく過程を見てみたいという好奇心もありました」

コンポストで暮らしがこんなに変わる!

コンポストには、“地球のために手間ひまをかけて頑張る”みたいなイメージがあるかもしれません。しかし山内さんは、実際にやってみると暮らしがラクになったり、気持ちがいいと感じたりすることのほうが圧倒的に多かったそう。コンポストを始めてよかったことを挙げてもらいました。

1. 排水口のゴミ受けをきれいに保てる

排水口のゴミ受けに溜まった生ゴミもコンポスターに直接入れられるので、こまめに処理することでゴミ受けをきれいに維持できます。

シンク ゴミ受け

キレイなゴミ受けは、素手でも抵抗なく洗える

「以前は、『汚いもの』というイメージがあったゴミ受けにたまる生ゴミも、もとをたどれば調理器具や器についていた食べもののかけら。ためずに処理すれば汚いものではなく、コンポスターに入れればあっという間に分解されます」

2. 揚げ油の処理に困らない

後始末に困る揚げ物の残り油も、そのままコンポスターに流し入れて処理できます。

「コンポスターに入れてしまえば、油が漏れないようにパックに入れたり、キッチンペーパーに染み込ませたりという、ゴミに出すための手間が減らせます。また、揚げ油はコンポストの発酵も促してくれるので一石二鳥なんです!」

3. 生ゴミの量が減る

コンポストで分解が早く進むように野菜くずを細かく刻んでいると「これも捨てずに食べられる」という部分が増え、結果的に野菜を無駄なく食べられるように!

野菜 まな板

「今まで捨ててしまった部位も、どうやったら食べられるだろうと考えるのは楽しいです。結果的に生ゴミの減量にもつながりますよ」

4. ビニール袋などの消耗品を使わなくてすむ

生ゴミを入れるビニール袋や排水口ネットなどの消耗品が不要になり、出費も抑えられます。

消耗品 フィルターなど

「消耗品は、コンポストで分解可能なものをできるだけ使うようになりました。例えば、食器洗いのスポンジにはヘチマスポンジや麻の古布を、コーヒーフィルターには布で手作りしたものを利用しています。

以前は、買ってきて使い捨てることが当たり前だった消耗品ですが、今は、自分で作ったり分解するところまで見届けたりするのがとても楽しみになっています。こういったコンポスタブルな代替品は、見た目や使い心地が好みのものが多いのも嬉しいです」

5. ゴミ出しがラクになる

生ゴミや消耗品など、廃棄するものが減ることで、ゴミ出しの頻度も減らせます。

「生ゴミをコンポストで処理してしまえば、腐敗や臭いが気になるようなゴミがなくなります。『ゴミ出しの日に絶対に捨てなければ』というプレッシャーからも解放されました」

コンポストは毎日の経過観察も楽しい

生活がラクになるだけでなく、日々のコンポストの変化を観察することも楽しみになっているという山内さん。特に面白いのが温度変化だといいます。

「夫が自作した、30分おきに自動でコンポストの内部温度を測定できる装置をコンポスターに設置し、その装置で得たデータをグラフ化しています。かき混ぜ方や水分量、入れたものによって温度がどう変化するかを予測したり、結果を見たりするのが面白いんです。発酵が始まると、コンポスターの中は最高で60℃ほどに発熱し、ほくほくと温かくなってくるんですよ!」

温度変化 グラフ

日々の温度変化の記録。ゴミを入れたり、かき混ぜたりすることで温度が上がり、発酵していることがわかる

温度を厳密に管理する必要があるというわけではなく、山内さんは好奇心から日々の変化を記録しているそうです。

「温度のほかにも、コンポスターの重さの変化も興味深いんです。生ゴミを入れた分だけ、日ごとに重量が増えていくような気がしますよね。ですが実際は、水分が飛び、ゴミがしっかりと分解されていると、それほど増えていかないんです。重さの変化を調べていると、どれくらい生ゴミが分解されて減ったかが実感できます。微生物は目に見えませんが、数値化することで、コンポスターの中で一生懸命に活動していることが分かるんです。小さな生き物を育てているような楽しさも味わえますね。

もちろん、温度や重さを測らなくても、触れると基材が温かいし、生ゴミが分解されて数日後にはなくなっていく様子は目で見えるので、観察するだけでもいろいろな発見があると思います!」

段ボールコンポストの始め方

段ボールコンポストは、家庭にあるものを中心に必要な道具を揃えやすいので、市販のコンポスターに比べて初期費用を安く抑えられるのも魅力です。

自治体のホームページなどで紹介されている作り方を参考にしながら、自分なりに使いやすく改良したという山内さん。さっそく、材料や作り方を教えてもらいました。

■段ボールコンポストのDIYで準備するもの

山内さん コンポスト用道具

山内さんは通気性がよい麻の布袋と、サビにくいステンレスのかごを使用

段ボールコンポストの容器や道具

  • 段ボール箱
  • 布袋
  • かご
  • スコップ

「容器は、段ボール箱があれば大丈夫ですが、虫が中に入らないように自作の布袋に段ボールを丸ごと入れて、布袋の口を閉じています。それから、かごに入れると段ボール箱が型崩れしにくく、移動させたり底上げしたりする際に扱いやすくなります。基材をかき混ぜるためのスコップもあると便利です」

段ボールコンポストの中身(基材)

  • ピートモス(堆積した苔などの植物が腐食化した泥炭を乾燥させた園芸用資材)
  • もみ殻くん炭(もみ殻を燻して炭化させたもの)
  • 米ぬか

「基材にはいくつか選択肢がありますが、ピートモスやもみ殻くん炭はホームセンターで少量から安価に購入でき、初心者でも扱いやすいように感じます」

「私は、段ボール箱(23×35×17cm)に、『ピートモス:もみ殻くん炭=3:2』の比率で合わせて700gほどでスタートしました。3人家族で、1日およそ160g程度の生ゴミをコンポスターに投入。生ゴミが少ないので基材も少なめですが、3ヵ月分の生ゴミをこのサイズで処理しています」

箱の大きさや基材の量は、確保できるスペースやゴミの量など、それぞれの暮らしにあわせて調節しましょう。

※オンラインショップの掲載商品は、山内さんが実際に使用しているものではありません。

■段ボールコンポストの作り方

《STEP.1》段ボール箱の5分目くらいまでに、基材(ピートモスともみ殻くん炭を3:2の割合、米ぬかをひとつかみほど)を入れて混ぜる

ダンボール 基材

「基材が箱いっぱいに入っていると、生ゴミが入る余地がなかったり、かき混ぜるときにこぼれてしまったりします。必要な基材の量は、箱の大きさや入れるゴミの量にもよりますが、箱の半分程度から始め、足りなければ途中で足すといいかと思います」

《STEP.2》水を加えて基材をしめらせる

湿らせた 基材

「水の量は、基材を強く握ってみて、かたまってからほろりと崩れるくらいが目安。多少多くても、蒸発してちょうどよくなります。段ボール箱が濡れると傷むので、基材をすくったスコップで水を受けてから混ぜ込み、段ボール箱に直接水がかからないように気をつけています」

《STEP.3》生ゴミがあれば投入して混ぜる

油 野菜くず

油も少し入れると微生物が活発になる

「始めてからすぐは生ゴミが分解されないので、野菜くずやお茶殻、コーヒーかすなど、臭いの気にならないものから入れましょう。野菜くずは細かく刻むことで分解が進みやすくなります」

《STEP.4》段ボール箱を布袋でくるみ、かごに入れる

麻布 かご

麻布やかご、クリップは好みのものを選んで、自分好みに楽しめる

「布袋でくるむのは、虫の侵入を防ぐ目的と、段ボール箱がむき出しの状態より美観が保てるため。かごで補強することで、段ボール箱の型崩れや底が抜けてしまうのを防げます」

《STEP.5》風通しのよい場所に置く

コンポスター 置く場所

コンポスターを置くときは、なるべく底上げして風通しのよい状態を作ってあげる

1日で100~200ccほどの水分が蒸発する日もあるので、底上げをして、かごの下にも空気の通り道を確保した状態で置いておきます。直置きすると、コンポストから出た水分で床を傷めると思うので、家の中に置く場合は、特に気をつけてください」

■コンポストの毎日のお世話

コンポスターを用意した翌日からは、基材をかき混ぜて酸素を供給します。その日の生ゴミを投入し、水分が足りていないようであれば足します。

「発酵を促したいときには、米ぬかや残り油(基材に染み込んで漏れない程度)を加えています。魚やイカのワタ、海老の殻など臭いそうな生ゴミは、表面に出ないように埋めます。発酵が始まると菌の呼吸熱によって発熱し、コンポスター内は60℃以上になることも! 

毎日、決まったお世話をしないといけないということはないので、できるときにできる範囲で。分解はゆっくりになりますが、数日くらい放っておいても大丈夫です」

こうして3ヵ月ほどコンポストで生ゴミを処理したあとは、しばらく寝かせて堆肥化させます。寝かせている最中も、数日に一度かき混ぜ、水分が足りなければ足す、というのを繰り返していると、ごろごろしていたものが少しずつ分解されてかさが減り、堆肥ができあがります。

挫折しないために、初心者が知っておきたいコンポスト対処法

コンポストを始めたいけれど、「お手入れができるか不安」「お世話の仕方がわからず挫折しそう…」と思う人も多いはず。そんなコンポストの難点に対して、山内さんはこれまでどのように対処してきたのでしょうか? 以下、Q&A方式で山内さんに伺っていきます。

Q.1 腐臭は気にならないですか?

「『生ゴミを常温で置くのだから生ゴミの臭いがするに決まっている!』と私も思っていました。ですが、生ゴミを放置したときのような腐敗臭はしません。イカのワタを入れても、基材と混ぜて埋めてしまえば、ほとんど臭いを感じられませんでした。

段ボールコンポストは、余計な水分を逃がして調整してくれるので、多少水分が多くても腐敗せず、うまく発酵してくれるようです。

ただし、コンポスター内が高温になると、かき混ぜるときなどに蒸気が『もわぁー』っと上がり、コンポスト特有の発酵している臭いがします。真夏は少し気になったので、不足しない程度に水分量を減らしてみました」

Q.2 虫がたかる、虫が湧いてしまうなどの虫対策はどうしていますか?

「コンポストに発生する虫は、ハエの幼虫である『うじ』が多いかと思います。うじが湧くのを防ぐには、虫に産卵させないこと。コンポスターを布袋に入れて口を閉じてしまえば、侵入して産卵されるのを防ぐことができます。生ゴミを入れようと布袋を開いた隙に、虫に入られてしまったことがあるので、特に夏は目を離さず、速やかに作業し、口を閉じてください。コンポスターに入れる前の生ゴミにも、産卵されないよう注意が必要ですね。

うじが湧いたときには生ゴミを入れるのをやめ、揚げ油と米ぬかと水を入れてよくかき混ぜ、コンポスト内を高温で維持したところ全滅しました。その後も、コンポストを継続できています。初めてうじを見たときは驚きましたが、 今では、うじを見ても『土に虫がいるのは自然なこと。ミミズコンポストのミミズのように、分解を早めてくれそう』と、さほど抵抗がなくなっていました。

虫はなるべく発生させたくないですが、虫が発生したときに、どう対処するのかをあらかじめ考えておくと、もしものときに慌てず対応できると思います」

Q.3 生ゴミが腐りそうで心配です。うまく分解を進ませるコツはありますか?

「初めは生ゴミを入れても分解しなそうで心配だったので、コーヒーかすや茶殻、野菜くずなど、心理的に抵抗の少ないものから入れました。基材の微生物が生ゴミを分解してくれるようになり、軌道に乗ってから、排水口のゴミ受けにたまった生ゴミや臭そうなエビの殻、イカのワタなどを徐々に試しました。

『軌道に乗っているかどうか』の判断基準のひとつは『温度が上がるかどうか』です。もし、なかなか温度変化が見られなかったら、水分量が足りていないのかもしれません。私も、初めは温度が上がらなかったのですが、うっかり箱を雨で濡らしてしまった日の翌日に、初めて温かくなりました。腐るのが怖いと水分を少なめにしがちですが、微生物の働きを促すには、ある程度の水分が必要なようです。それから、冬は外気温が低いので、暖かい季節のほうが立ち上がりが早いかもしれません」

迷っているならまずは始めてみよう

最後に、「いろいろと心配するよりは、やってみたいと思ったら迷わず始めてみてほしい」とアドバイスをくれた山内さん。

「まずは、できるだけ家にあるものでコンパクトに始めて、『合わなければやめる』くらいの心づもりで。小さな段ボール箱に、少量の基材で始めるのもいいと思います。小さいダンボール箱なら、布袋は家で余っているエコバッグなどが使えてより手軽です」

エコバッグ コンポスト

エコバッグに入るサイズの段ボールコンポスト

「最初から全部の生ゴミを処理しようと頑張ると、途中でくじけてしまうかもしれません。例えば、揚げ油の始末に困っていれば、揚げ油を中心にほかの生ゴミを少し入れてみたり。やっているうちにちょうどいい加減や方法がわかってくると思います」

コンポストは何よりも楽しく続けていくことが大切。あれこれと難しく考えなくても、コンポスターが1台あるだけで、日々の暮らし方やゴミ、消耗品に対する意識が自然と変化していくのも面白いところです。自分の生活や目的に合ったサイズや方法で無理なくコンポストを取り入れて、暮らしを便利に心地よく変えてみませんか?

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。

loading

関連するキーワード

となりのカインズさんをフォローして最新情報をチェック!

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Instagram
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

RELATED関連する記事

POPULAR人気の記事

  • Daily
  • Weekly

広告掲載について

NEWS LETTER ニュースレター

Webライター・イラストレーター募集

取材のご依頼や情報提供はこちらから