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大豪邸に8万円で住める衝撃。「空き家問題」をDIYで解決できるか?

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和田貴充

和田貴充

空き家活用株式会社代表取締役CEO。空き家問題を解消するための様々な事業を展開し、自治体の空き家対策をサポートする「アキカツ調査クラウド」や、空き家所有者のための相談窓口「アキカツカウンター」を運営。YouTube「ええやん!空き家やんちゃんねる」では買える&借りられる空き家を紹介しており、チャンネル登録者数3.7万人を突破。大阪出身、サウナが大好き!

大豪邸の空き家が土地付きで家賃8万円。信じられないかもしれませんが、立地や築年数等の条件によっては、物件が信じられない価格で手に入る時代になりました。

秋田県にある空き家の玄関

秋田県にある空き家。32畳の大広間や洋室、掘りごたつもあり、まるで旅館のような物件ですが、なんと家賃は8万円(「ええやん!空き家やんちゃんねる」より)

「住宅・土地統計調査」(2018年、総務省)によると、日本全国に存在する空き家は約849万戸。さらに、高齢化や少子化、地方の過疎化などの要因で、引き継ぎ手のいない空き家は今後も増え続けると予測されています。

厳しい状況の中、空き家をDIYで再生しようと情熱を注ぐ人たちがいます。

「そもそも日本には、空き家をリユースする仕組みや文化がない」と話すのは、空き家に特化したビジネスを展開する「空き家活用株式会社」の和田貴充さん。

空き家活用株式会社代表の和田貴充さん(右)と漫画家の橋本笑さん(左)

空き家活用株式会社代表の和田貴充さん(右)と漫画家の橋本笑さん(左)

そして、「DIY好きが高じて気がついたら不動産のオーナーになっちゃいました」と語るのは、漫画家の橋本笑さん。

今回は、空き家の現状や課題、DIYによる可能性についてお話を聞きました。

なぜ空き家が問題なのか? 10年後には2000万戸超えの危機

──初めに、空き家の実情について教えてください。

和田社長:現在、日本全国にある空き家は、およそ849万戸あると言われています。このうち、約500万戸については、所有者が「貸したい」「売りたい」と意思表示をしている物件。賃貸として募集をかけている空室も含まれています。

和田社長

一方、残りの349万戸は、ほったらかしにしている物件です。ほったらかしと聞くと、みなさんボロボロの空き家を想像するかもしれません。しかし、実際に人が住めない物件はそのうち6%くらい。残りの94%は、人が住める物件なんですね。

──349万戸のうち、実際に住めない物件がおよそ10万戸となると、残り300万戸近くの物件が、流通していないことになります。どうして、そんな事態が起きてしまうのでしょうか。

和田社長:結論から言うと「面倒くさいから」という理由がいちばん大きいです。具体的には、片付けが必要なのに、遠方に住んでいるからできないケースや、登記の問題がうまくいっていないケース、相続がうまくできていないといったケースがあります。

実際の空き家

実際の空き家(画像提供:空き家活用株式会社)

実家の場合だと、思い入れもあります。若いときなら、「実家に帰ってまで住みたなくない」と思うかもしれません。ただ、僕らみたいに40代、50代になってくると、両親が亡くなって誰も住まない家でも、「自分の代で手放すのは薄情かもしれない」「思い出を捨てていいのかな」と迷ってくるわけです。

そういう心持ちになってくると、どんどん手をつけなくなるんですね。それで、10年、20年経ってしまうから、結局空き家のまま放置してしまう現状があります。

──空き家が増えて懸念される一番の問題点は何でしょうか?

和田社長:町が廃れていくことですね。空き家が増え続けるとその町の価値が下がります。

例えば、長崎県の軍艦島は、石炭産業で人が集まり、大正8年には鉄筋コンクリート造の町ができました。

軍艦島

人口密度も高くて、電気使用料もNO.1。いわゆる摩天楼ですよね。東京の都心部並に栄えていたのですが、昭和45年に閉山してから、島から誰もいなくなった。それが廃墟として今残っている状態です。

日本の建築業界は、スクラップ&ビルドで利益を生み、大きく発展してきましたが、新しく家を建て続ける方針に限界がきています。

加えて、これから人口がますます減っていくため、空き家は今後も増え続けると予測されています。2033年には約2000万戸を超えると言われているんですよ。

「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」

「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf)

まだ住める空き家を、誰かにつなぐことが必要なのに、不動産業界も200万円の空き家を販売して仲介手数料をもらうより、新築物件を流通させて販売していった方が利益が大きい。

こうした背景もあって、なかなか手が出せない構造になってしまっているんですね。これでは、日本全体が軍艦島のようになってしまいます。

それを防ぐためには、“家を建て続ける”のではなく、“建てた家を次世代にどう住みつないでいくか”を考えていかないと。

僕らが空き家に特化した不動産業をしているのは、ビジネスによって空き家が流通する仕組みを作っていきたいから。今までの大量消費・大量生産の構造を誰かが変えていかないと、空き家問題は解決しません。

2023年6月の「空家特措法」の改定で、何が変わる?

──平成27年(2015年)に施行された「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」について教えてください。

和田社長:簡単に言うと、ボロボロの管理不全の危険な空き家を「特定空き家」に認定して、それを何とかしてくださいねと指導するための基準を定めているのが「空家特措法」です。

「空き家特措法」について

ところが、管理不全の空き家がすべて特定空き家ではなく、実際には2万戸しかありません。

特定空き家の予備軍になり得る物件はたくさんありますが、特定空き家として認定するきっかけになる基準は、周りからのクレームなんです。

町が進んで認定できない実態があるため、誰が見ても危険なボロボロな山奥の空き家が、実際には特定空き家に認定されていなかったりするんですよ。

それに、特定空き家になると、固定資産税が6倍になってしまうんです。逆に言うと、空き家として家屋が残っていれば、1/6の負担で空き家を維持できてしまいます。

──だからこそ、空き家がそのままになってしまっていると。

和田社長:その通りです。「空家特措法」は、空き家対策をまずスタートさせた点で評価されるべきですけれど、まだまだ不完全です。5年に1回改定されていて、今年の6月がまさにそのタイミング。

今まで空家特措法は、危険な空き家をつぶしなさいと指導する法律でした。市町村に対して、空き家を調査して、除却をしていきなさい。そのために予算を出しますよ、というのがこの15年間ほどのこと。

ところが、今回の改訂では、空き家をつぶすだけではなく「活用しよう」の流れになってきた。具体的には、「活用推進区域」というものを市町村が指定できるようになり、空き家を利活用するために予算を出す内容が入ります。

閣議決定が2023年の3月、6月に国会を通過予定で、順調にいけば12月に施行。空き家を使って、町を発展させましょうの施策には、期待しかないですね。会社を立ち上げたときから毎回言っていますが、やっとスタートラインに立てた(笑)。

誰に対しても隣人として寄り添うという意味を込めた「アキカツロゴ」のオリジナルTシャツには、和田社長の会社愛が溢れている

誰に対しても隣人として寄り添うという意味を込めた「アキカツロゴ」のオリジナルTシャツには、和田社長の会社愛が溢れている

さらに、今回の改訂では、「活用等支援法人」も市町村が指定できるようになりました。一般社団法人やNPOをはじめ、僕らみたいな株式会社や法人が、自治体が取り組む空き家対策に、ビジネスとしてお手伝いがしやすくなるのも空き家の問題解決への影響が大きいはずです。

新規参入する会社も増えますし、社会の流れ的にも空き家に対する注目度は、今後ますます高まっていく。マーケットとしてのニーズは高まるので、追い風になるのも大きなポイントです。

とはいえ、法律が改訂されても、それが定着するまで5年かかると言われているくらいですから(笑)。課題は多いですし、実際にどのように制度が浸透していくかは、未知数。

まだまだ試行錯誤が必要ですから、僕らはリーディングカンパニーとして、業界を牽引していくようなお手伝いをしていきたいと思っています。

空き家の持ち主と自治体、買い手をつなぐビジネスとは

──実際に、和田社長が自治体と取り組まれている空き家対策について教えてください。

和田社長:僕らは、地元や近隣の人以外に知られていない、全国的には無名の町や地方自治体のお手伝いもしています。たとえば、長野県の根羽村。人口700人くらいの小さな村です。でも行ってみたら、めちゃくちゃきれいな川があって、そのそばに空き家があって、サウナ付き貸別荘したら最高やん、みたいな。

山に囲まれ自然豊かな長野県の根羽村

山に囲まれ自然豊かな長野県の根羽村(画像提供:空き家活用株式会社)

根羽村内を流れる川

根羽村内を流れる川(画像提供:空き家活用株式会社)

そういった空き家が数10万円から100万円くらいで買える時代になっているんですよ。

和田社長

しかし、コロナ禍でリモートワークが普及するなど働き方の選択肢が増え、パソコン1台あればどこでも仕事ができるし、学校の授業や教育も受けられるようになりました。

移動の制約が減った分、趣味やDIYに充てる時間が増え、暮らし方の価値観が刷新され多様になることで、可能性が広がっているのだと思います。

とくに小さな自治体の場合は、買い手や住み手の需要はあるのに、そもそも空き家が流通していないんですね。

だからこそ、調査をしたり、相談窓口をつくったりすることが第一段階として必要なのですが、専門知識がないと仕組みをつくるのにすごく時間がかかってしまう。そのあたりを重点的にお手伝いしています。

──地方と都内では、空き家対策の方法は変わってくるのでしょうか。

和田社長:空き家の所有者が抱えている悩みや課題は、まったく変わりません。例えば、世田谷区の空き家って高値ですぐ売れそうなイメージがありますよね。実際に僕らが、業者を紹介して売主と飼い主がマッチングした物件は、8000万円とか1億円で売れているんですよ。

世田谷区の住宅地

でも、最初にお話したように、空き家の所有者は、片づけができなかったり、思い出があって手放せなかったり、誰に相談していいのかわからなかったりしている状況です。

不動産会社に相談しても、実際に空き家を販売するまでに、片付けが必要であれば片付けの業者、庭木剪定には造園屋さん、不動産登記の問題は司法書士さん、それぞれ自分で相談していかなければなりません。

和田社長

しかも、空き家の近くに住んでいない場合は、立ち会いも大きなハードルになっています。例えば仕事をしながら土日に遠方の空き家に行って立ち会いをするのは相当労力がかかりませんか? ところが、そのケアをできる場所も人もいないわけです。

ケアをするという意味では、利益を追及する不動産会社より、公共性のある自治体の相談窓口の方が、心理的な相談のハードルも下がります。実際に僕らがお手伝いした自治体では、不動産業者がない地域もありますから、ベンチマークされるような成功例をどんどん増やしていきたいですね。

空き家に新たな価値を生み出す「DIYの可能性」

続いて、購入した空き家を不動産投資として活用している漫画家の橋本笑さんに話を聞きました。

築40年の元店舗物件

築40年の元店舗物件

──なぜ空き家をDIYして不動産投資を始めようと考えたのでしょうか。

橋本さん:もともとDIYが好きで、ちょっとした棚を作るなど自宅の改造を行っていたのですが、賃貸物件だと壁に穴を開けられない原状回復の課題がありました。

それならお買い得な中古物件を購入して、思う存分DIYでリフォームしたいと考えたんです。

漫画家の橋本笑さん

DIYに関してプロ並みの知識があるわけではないので、趣味が高じて……というのが正しいかも。基本的にはYoutubeでDIYテクニックを学びましたし、失敗もとても多いんですよ。漫画のネタにもなるのでおいしいんですが(笑)。

──お話を聞くと、DIYは手芸や料理が趣味だったり、創作が得意だったりする方も意外と向いているのかもしれませんね。成功するための秘訣はあるのでしょうか?

橋本さん:DIYのよさは、何といっても失敗しても何度でもやり直せるというところ。あんまり根をつめても精神衛生上よくないので、マイペースに向き合うことをモットーにしています。自分の得意分野ではない部分は、業者に発注しますしね(笑)

この物件には、1階にガレージがあるのですが、男性が趣味部屋として活用できるというコンセプトでDIYをしています。

今回取材を行った元店舗部分の1階ガレージは、THE男の隠れ家をコンセプトに、天井や壁面にはOSB合板を使用。壁面部分は厚みがある12㎜を採用し、釘打ち可能に。

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水回りのDIYは難易度が高いため、コストのかかる改修工事が必要ない物件を選ぶのがコツ。壁はペンキ仕上げ

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アイアンプレートで、トイレのドアをクールな仕様に。右側部分の引き戸枠はそのまま利用してガラス部分だけ交換。

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天井はウッド調にして落ち着く雰囲気に。照明などのインテリアにもこだわっている

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私の中では、趣味の範囲で空き家をDIYするというよりも、その先にある借主に気に入ってもらって住んでもらうのがゴール。いちばんの喜びを感じるポイントです。

今回は独身男性の1人暮らしでバイクや自転車趣味の方がターゲットなのですが、誰が住むのかを明確にすると、どんどんDIYのアイデアが湧き出てくる。実際に借り手がついて、イメージしてたターゲット像(年齢や性別、生活習慣)にハマったときは最高ですね!

漫画家の橋本笑さん

──漫画家さんというクリエイティブなお仕事をされているからこその視点ですね……!

和田社長:実は、空き家を不動産投資として購入したい人の中には、どういう風にリフォームしたらいいのかわからない人も多いです。

現状流通している賃貸物件の多くは、白い壁紙にシンプルな内装といったマス層向けが多いので、橋本さんのように、ターゲットをしぼってDIYした個性的な住居はとても需要があるんですよ。

いくつか成功体験が積み上がったら、DIYリフォームのコンサルとして起業するのもいいかもしれません。

和田社長

橋本さん:私の場合は、どんどんDIYした賃貸物件を増やすよりも、自分で管理できる範囲で、と考えているので夢が広がります(笑)。

でも、子育てをしながらチャレンジするとなると、自宅から通える範囲の物件にしか手が出せなかったり、資金の問題があったり、課題は多いのですが……。

──実際にチャレンジしてみたいけれど、手が出せていない人は多いかもしれませんね。

和田社長:地方で行けば行くほど、50万円で購入した空き家で、月6万円の収益を得られる物件がたくさんあるので、通える場合は狙い目かもしれません(笑)

橋本さん:それは、かなりおいしい物件ですね。

和田社長と橋本さん

和田社長:まさに、橋本さんのような方がどんどん増えていってもらえたらすごくうれしいな、と。空き家対策の救世主になると思っているんです。

空き家のいちばんの魅力は、手直しして住めるところですよね。昔だったら、「効率が悪い」「面倒くさい」と思われるポイントかもしれませんが、じっくり向き合うことだったり、創造性だったり、いろんな価値がある。

和田社長

空き家対策とDIYは相性がいいですし、とても可能性があると思っています。趣味の域を超えて、空き家DIYによって新しい価値を生み出せれば、不動産オーナーになって家賃収入を得ることも不可能ではない。

この先、橋本さんのようなDIYerの方が増えていけば、空き家問題の解決に一歩近づけるかもしれません。

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