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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
日本では土用の丑の日に食べる習慣のあるうなぎは、滋養強壮に良い食べ物として昔から食卓に並んできました。愛犬にも元気になって欲しくて、お裾分けしてあげたいと思う方もいるかもしれませんが、犬にうなぎを与えても大丈夫なのでしょうか? 今回の記事では、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生監修のうえ、うなぎに含まれている栄養素、犬に与えるメリットや食べさせる際の注意点などについて解説していきます。
目次
- 犬にうなぎを与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬にうなぎを与えても大丈夫?
- 持病のある犬にうなぎを与えても大丈夫?
- うなぎに含まれている栄養素は?
- 犬にうなぎを与えるメリットは?
- うなぎを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬にうなぎを与える際の一日あたりの適量は?
- 犬にうなぎを与える際の注意点は?
- 犬にうなぎを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫?
犬にうなぎを与えても大丈夫!
結論から言うと、犬にうなぎを与えても問題ありません。うなぎは動物性たんぱく質が取れるだけでなく、カルシウムやビタミン、オメガ3脂肪酸などが含まれることから栄養価が高く、人と同じく犬の滋養強壮にも役立ちます。ただし、いくつか気をつけなければいけない点があります。
必ず加熱し、タレ付きのものは与えない
犬にうなぎを与える際は、白焼きのように熱が加わっていて味の付いていないものが好ましいでしょう。生のままのうなぎは血液に毒を持っており、与えると危険です。タレのついた蒲焼きは、犬からすると過剰な塩分や糖分が含まれるためおすすめできません。
土用の丑の日っていつのこと?
うなぎと言えば「土用の丑の日」に食べる習慣が有名ですが、いつのことかご存じでしょうか? 土用とは、立春、立夏、立秋、立冬の直前の約18日間のことで、ちょうど季節の変わり目の期間です。その約18日間のうち、十二支が丑にあたる日が「土用の丑の日」。夏の土用(夏土用)は年によって多少前後しますが、毎年およそ7月19日~8月6日頃。2022年夏の土用の丑の日は7月23日(土)、8月4日(木)です。
この土用の丑の日にうなぎを食べるようになった由来は諸説あります。栄養豊富で夏バテにも効果のあるうなぎは、古来より夏によく食べられていたそう。丑の日には「う」の付く食べ物を食べると縁起が良いとされたことから、蘭学者の平賀源内が土用の丑の日にうなぎ屋に貼り紙をして宣伝したところ大盛況。そこから、「夏の土用の丑の日にはうなぎを食べる」という習慣が根付いていったとも言われています。
犬好きで有名な西郷隆盛は、愛犬にうなぎを与えていた!
犬好きで知られる幕末の志士・西郷隆盛も、愛犬にうなぎを与えていたそうです。茶亭に愛犬を連れてやって来て一緒にうなぎだけ食べて帰ったという話や、城下町のとあるうなぎ屋で店主が驚くほどの大金をはたいて愛犬にうなぎを与えた、といったエピソードも残されています。
子犬やシニア犬にうなぎを与えても大丈夫?
子犬やシニア犬にうなぎを与えても問題はありません。ただ、初めて与える時は少量にして、異常がないか様子を見るようにしてください。消化の負担を減らし、小骨がつかえるのを防ぐためにも、細かく刻んで与えましょう。
持病のある犬にうなぎを与えても大丈夫?
うなぎに対してアレルギーを持つ犬には与えてはいけません。アレルギーの症状としては、嘔吐や下痢、発熱、体のかゆみなどが挙げられます。うなぎを食べた犬にこのような症状が見られたら、すぐに与えるのをやめましょう。
うなぎに含まれている栄養素は?
栄養豊富で滋養強壮に良いとされるうなぎですが、どのような栄養素が含まれているのでしょうか?
ビタミン(特にビタミンA)
うなぎにはビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEと、様々なビタミンが含まれています。中でも、目の健康維持に役立つビタミンAが豊富。白内障など目の疾患のケアに有効なだけでなく、皮膚や被毛のサポートにも役立ちます。
カルシウム
カルシウムは骨や歯の構成成分であるため、補うことで骨密度の強化につながります。うなぎにはカルシウムの吸収アップに役立つビタミンDも含まれているので、その相乗効果も期待できます。
DHA・EPA
うなぎには、DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)などオメガ3脂肪酸も豊富に含まれます。これらの栄養素は、血液をサラサラにしたり、悪玉コレステロールを減らしたりする働きに加え、抗炎症作用、視力の維持など様々なケアに役立ちます。加齢に伴い発症しやすい疾患のケアでは積極的にとりたい栄養素です。
犬にうなぎを与えるメリットは?
犬にうなぎを与える健康面でのメリットとして、次のような効果が期待できます。
ビタミンAで白内障・緑内障の予防、皮膚や粘膜を強化
うなぎに豊富に含まれるビタミンAは、視力の維持や白内障・緑内障の予防など、目のケアに対して効果を発揮します。また、皮膚や被毛、粘膜の健康維持の効果も期待できます。
夏バテなどの疲労回復
人と同じように、うなぎは犬にとっても滋養強壮に役立つ食材です。疲労回復を早めるビタミンBが豊富に含まれるため、夏バテにも効果的であると考えられます。
DHA・EPAで老化防止
DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸は、脳神経系の働きを整えたり、血液をサラサラにしたりすることで心臓や腎臓に対する負担軽減や抗炎症作用などの効果があります。摂取することで加齢に伴う諸症状のケアに役立ちます。
老化防止
うなぎにはビタミンEも豊富に含まれており、活性酸素の除去によるアンチエイジングが期待できます。
うなぎを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
うなぎに対してアレルギーを持つ犬もいます。白身魚にアレルギーがある犬は、特に注意が必要かもしれません。また、生のうなぎの血液には「イクチオヘモトキシン」という中毒成分が含まれているため、生で与えないことも重要です。
アレルギーの症状
うなぎのアレルギーの症状としては、下痢や嘔吐、発熱、元気がない、皮膚のかゆみなどが挙げられます。
アレルギーを起こした場合の対処法
うなぎを食べた後、激しい下痢や嘔吐がある場合はすぐに動物病院を受診してください。その際、数日以内に食べたものが分かるようなメモを持参すると診断に役立ちます。軽い症状でも何日も続く場合は、動物病院を受診しましょう。
犬にうなぎを与える際の一日あたりの適量は?
うなぎを犬に与える場合、メインの食事というより、おやつとしてお裾分けする程度が一般的でしょう。間食の目安は、1日の摂取カロリーの10%程度、上限20%程度と言われています。うなぎはカロリーが高いため、与えすぎには注意が必要です。
白焼きの場合は次の量を目安としてください。
小型犬:約15~20g
中型犬:約20~50g
大型犬:約50~85g
犬にうなぎを与える際の注意点は?
犬にうなぎを与える際は、次の点に注意しましょう。
タレ付きなど加工されたものはNG
ごく少量を与えるのであれば、蒲焼きのようにタレがついていても問題はありません。ただ、塩分摂取に制限がある犬や、間食としてある程度の量を与える場合には、必ず水やお湯でタレを洗い流してから与えるようにしてください。
血液には毒が含まれるため必ず加熱して与える
生のうなぎの血液にはイクチオヘモトキシンという毒素が含まれています。60℃で5分間加熱することで毒性が失われます。必ず加熱してから与えましょう。
細かくほぐしてから与える
うなぎには小骨が多いため、喉につかえたりしないよう、細かくほぐしてから与えたほうが安心です。
大きな骨は取り除く
小骨だけでなく、大きな骨は特に喉につかえてしまう危険性が高いです。大きな骨はあらかじめ取り除いておきましょう。
加熱したら冷ましてから与える
加熱直後、熱い状態で与えると火傷の恐れがあります。人肌程度に冷ましてから与えましょう。
与え過ぎに注意(あくまでトッピングとして与える)
カロリーの高いうなぎは、与えすぎると肥満のもとになります。食事の栄養バランスが崩れてしまう恐れもあるため、トッピング程度にとどめておくと良いでしょう。手作り食として与える場合には、その他の食材とのバランスを見ながら与えることが大切です。獣医師やトレーナーといった専門家に相談して、適切な量を教えてもらうと良いでしょう。
犬にうなぎを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫?
うなぎが使用されている人間用の加工食品は、犬に与えても問題ないのでしょうか? 代表的な加工食品について見ていきましょう。
うなぎパイ
うなぎ粉が入っているお菓子ですが、小麦粉や砂糖などがたくさん使われていますので、犬に与えるのは控えましょう。
うなぎ粉
うなぎのみの粉末であれば、トッピングとして使っても問題ありません。
うなぎエキス
原材料すべて犬が摂取しても問題のないものであれば、少量添加する程度は問題ないと考えられます。一概に言えないため、それぞれの商品の成分をしっかりと確認しましょう。