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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
目の病気である緑内障は人間だけでなく、犬もかかることもあることをご存知ですか。犬が緑内障にかかった場合、人間よりも激しい痛みを伴うことが多いため、早期に発見して病院に連れて行く必要があります。緑内障の症状や原因、治療法などについて、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬の緑内障とは?
- 犬の緑内症の症状とは?
- 犬の緑内障の原因は?
- 犬の緑内障の治療法とは?
- 犬の緑内障の治療にかかる費用の目安は?
- 犬の緑内障の予防法は?
犬の緑内障とは?
緑内障は、眼圧が上昇することで網膜や視神経に障害が起こり、ひどい痛みや視覚障害が生じます。一度発症してしまうと完治は難しく、症状が進行すると失明してしまう疾患です。早期発見・早期治療を心がければ、視覚障害を抑えることができますし、ある程度は症状をコントロールできるようになります。
緑内障と言う病名を聞いたことがある人は多いかと思いますが、緑内障がなぜ引き起こされるのかについては知らない方も多いでしょう。眼球は柔らかいボールのような構造で、その内部は眼房水(がんぼうすい)という液体で満たされています。眼房水は、水晶体を取り囲む毛様体(もうようたい)で生産され、隅角(ぐうかく)という部分から排出されます。
通常は、このサイクルが正しく機能することで、眼房水が増えすぎないようバランスが保たれているのですが、何らかの原因で循環サイクルが崩れてしまうと、眼球内の房水が多くなると眼球がパンパンに張って固くなり、眼圧が上昇します。その結果、網膜や視神経が傷つけられてしまうのです。
犬の緑内症の症状とは?
痛みを伴わないことが多い人間の緑内障とは異なり、犬の場合は強い痛みを感じる場合が多いです。そのため、緑内障になった犬は、涙が多くなり、目をショボショボさせていたり、目を開けられないでいたりします。また、眼球の肥大、白目の充血、瞳孔の大きさの左右差、瞳孔の色が緑色やオレンジ色に見えるなどの外見的な変化が見られることもあります。行動面でも、目を開けていられなくなり室内で柱や壁などにぶつかることが多くなるので、おかしいなと少しでも感じたら、緑内障を疑ってみましょう。
このほかに、急性緑内障の場合は愛犬の元気がなくなり、食欲が落ちてしまうことがあります。これは、痛みが原因なので、できるだけ早めに病院を受診させてください。
【緑内障が疑われる症状】
・涙の量が多い
・目をショボショボさせている
・目を開けられない
・眼球の肥大
・白目の充血
・瞳孔の大きさが左右で違う
・瞳孔の色が緑色やオレンジ色に見える
・室内で柱や壁によくぶつかる
・元気がない
・食欲不振
犬の緑内障が疑わしい場合はすぐに病院に行くべき?
緑内障は早期発見・早期治療が必要な病気です。上記のような症状が出ていたら、念のため動物病院を受診して獣医師に相談してみてください。
犬の緑内障の原因は?
緑内障の原因は眼圧の上昇ですが、上昇を引き起こす眼房水の循環サイクルの乱れには、以下のように代表的な3つの原因があります。
原発性
犬の緑内障として一番多いのが、このタイプです。ほかの目の病気がない緑内障を指します。排出路の一部が狭かったり、代謝の異常によって排出路に目詰まりを起こしてしまうことで、眼圧が上がりやすくなってしまうタイプの犬は、原発性の緑内障を患うことが多いです。
続発性
ほかの目の病気が緑内障の原因を引き起こしてしまうものを指します。ブドウ膜炎などの炎症、白内障や水晶体の脱臼、眼の中の腫瘍やカメラのフィルムにあたる網膜がはがれてしまう網膜剥離などから、緑内障になるパターンです。
先天性
眼房水の循環サイクルの中に遺伝的欠陥がある場合に引き起こされる緑内障のことです。たとえば、生まれつき眼房の水を排出する部分に異常がみられる場合などがあります。
緑内障にかかりやすい犬種や年齢とは?
すべての犬種に発症の可能性がありますが、全般的にはコッカーや柴犬、秋田犬、チワワ、ハスキーなどでよく見られる傾向があります。特に続発性では、統計的に見るとビーグル、プードル、柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバーなどが多いとされ、年齢的には4~9歳といったシニア期にかかりやすいと言われています。ちなみに、雌雄差は特にないと考えられています。
犬の緑内障の治療法とは?
緑内障の初期症状はほとんどないため、飼い主が気付いて病院を受診させた頃には、かなり進行していることもあります。病院で施される代表的な治療法は、以下の2つがあります。
投薬治療
高くなった眼圧を正常値まで下げるため、主に点眼薬を使用します。 点眼薬を差すのが難しい場合は、内服薬での治療もありますので、適した治療法を獣医師に相談するようにしましょう。
外科治療
眼房水の量を減らすためにレーザー治療で毛様体光凝固術を行います。ほかに、隅角インプラント、前房シャント挿入術、ダイオードレーザー、強膜内義眼挿入、眼球摘出、硝子体内薬剤注射などの方法があり、症状などによって獣医師が判断します。
犬の緑内障の治療にかかる費用の目安は?
外科的治療にかかる費用は、治療内容によって異なりますが、手術費に加え検査費や入院費を含めてトータルで20~30万円程度のことが多いでしょう。外科的手術のあとに内科的治療を続けることが多いのですが、こちらは、検査代と処置代、処方代を含めて約1.5万~2万円程度です。
犬の緑内障の予防法は?
犬の緑内障には、明確な予防方法はありません。先天性、原発性の緑内障を予防することは特に難しいです。続発性の場合であれば、根本原因となる目の異変に早く気づき治療を行うことが予防に繋がります。定期的な眼科検診を行うことで、リスクを減らすことができるでしょう。
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