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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
鮮やかなオレンジ色で、栄養が豊富な鮭(サーモン)。ドッグフードの原材料として使用される商品もあるなど犬の健康に良いイメージがありますが、与える際の注意点はあるのでしょうか。今回の記事では、鮭(サーモン)に含まれている栄養素や犬に食べさせる際の注意点などをchicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫?
- 鮭(サーモン)に含まれている栄養素は?
- 犬に鮭(サーモン)を与えるメリットは?
- 鮭(サーモン)を食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬に鮭(サーモン)を与える際の一日あたりの適量は?
- 犬に鮭(サーモン)を与える際のおすすめの調理法は?
- 犬に鮭(サーモン)を与える際の注意点は?
犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫!
まずは、鮭とサーモンがどのように違うのか、食べても大丈夫なのかを確認しておきましょう。
鮭とサーモンの違いは?
鮭はサケ科サケ属の魚で、正式名称は「サケ」、もしくは「シロザケ」です。サーモン、トラウトサーモンと呼ばれているものは、サケ科タイヘイヨウサケ属の「ニジマス」を指します。鮭とサーモンは厳密には違う魚ですが、今回の記事では同じサケ科の魚として紹介します。
犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫
鮭(サーモン)は動物性たんぱく質やアスタキサンチンなどの栄養素も含むため、犬に与えたい食材の一つです。火を通したものはもちろん、人間も生食できる新鮮なものであれば、生のまま犬が食べることも可能です。しかし、生の鮭(サーモン)を初めて与える際は、まずは軽く火を通したものを与え、少しずつ生の割合を増やしていきましょう。
一方で、生の鮭(サーモン)を大量摂取するとチアミナーゼによるビタミンB1欠乏症を招き、ふらつきなどの歩行障害を引き起こす可能性があります。また、アニサキスなどの寄生虫が潜んでいるリスクも考えられるでしょう。加熱することでアニサキスは死滅しますので、アニサキスによる食中毒が心配な場合には加熱調理をおすすめします。
犬に鮭(サーモン)の皮や白子を与えても大丈夫?
鮭(サーモン)の皮にはコラーゲンが豊富に含まれています。精巣である白子にはDNAや細胞の原材料になる核酸が豊富に含まれていて、アンチエイジングにも役立ちます。どちらも犬が食べても問題ありません。「生食用」「刺身用」など生で食べられる表示があるものであれば生で与えることもできますが、加熱調理したものを与えたほうが安心です。
子犬やシニア犬に鮭(サーモン)を与えても大丈夫?
子犬やシニア犬に鮭(サーモン)を与えても問題はありませんが、子犬は消化器官が未発達であること、シニア犬は消化器の働きが衰えていることから、加熱してから与えた方が安心です。
鮭(サーモン)に含まれている栄養素は?
栄養豊富なイメージのある鮭(サーモン)ですが、どのような栄養素が含まれているのでしょうか。以下、含まれている栄養素とその栄養素がどのような働きを担うのかについて具体的に見ていきましょう。
DHA
血液をサラサラにし、中性脂肪やコレステロール値を下げる効果があります。脳血液関門を通り抜けますので、脳内のケアにも役立ちます。
EPA
DHA同様に血液をサラサラにし、中性脂肪やコレステロール値を下げる効果があります。脳血液関門を通り抜けることはできませんが、血小板凝集抑制効果がDHAより高いため、血栓予防に効果的です。
ビタミンD
魚類の中でも鮭(サーモン)にはビタミンDの含有量が多いのが特徴です。体内のカルシウム吸収率をUPし、骨の強化に役立ちます。
ビタミンE
ビタミンEは抗酸化作用を持つビタミンです。活性酸素除去によるアンチエイジングが期待できます。
アスタキサンチン
鮭(サーモン)の赤い色素がアスタキサンチンです。ビタミンE同様、抗酸化作用を持つため、活性酸素の除去によるアンチエイジングが期待できます。
タンパク質
犬に必要な動物性タンパク質を多く含みますので、体の形成に役立ちます。
犬に鮭(サーモン)を与えるメリットは?
犬に鮭(サーモン)を与える健康面でのメリットは次の通りです。
タンパク質やDHAなどを含む栄養豊富な食材
上記にあるように、鮭(サーモン)は犬に必要な栄養素を豊富に含んでいます。たんぱく源として取り入れていきたい食材です。
アンチエイジングにつながる
抗酸化作用のあるアスタキサンチンやビタミンEを含むため、活性酸素を除去し、体をさびつかせないことでアンチエイジングにつながります。
鮭(サーモン)を食べてアレルギーを起こす犬はいる?
中には鮭(サーモン)に対してアレルギーを起こす犬もいるので、その子には与えないようにしてください。アレルギーを発症する犬の特徴には犬種差やオス・メス差などはありません。初めて食べさせる場合は、アレルギー症状が起こらないかどうか様子を見ながらごく少量から与えるようにしましょう。
【アレルギーを起こした場合の症状】
アレルギーを発症すると以下のような症状がおこります。このようなアレルギー症状が出た場合には、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
下痢
アレルゲンよって腸の炎症が起こると、軟便や下痢などになります。
嘔吐
即時型のアレルギーの場合には、摂取後30~1時間程度で嘔吐する場合があります。
痒そうにしている
アレルゲンによって免疫反応がおこり、ヒスタミンが分泌することから、皮膚に掻痒感が見られることがあります。
元気がない
嘔吐や下痢によって脱水症状が起きると、元気がなくなります。
犬に鮭(サーモン)を与える際の一日あたりの適量は?
どの犬種でも、鮭(サーモン)はおやつとして与えると考え、1日の食事量の10%程度が適量と言われています。小型犬なら30g程度、中型犬で50g程度、大型犬で100g程度が目安です。
犬に鮭(サーモン)を与える際のおすすめの調理法は?
生でも加熱しても食べさせることができる鮭(サーモン)。調理する際には以下のようなことに注意しましょう。
加熱する(茹でる、蒸す)
生食用や刺身用であれば加熱は必須ではありませんが、初めて生ものを食べる犬や子犬、シニア犬に与える際は火を通したものを与えたほうが安全です。また、アニサキスによる食中毒を懸念される場合には加熱しましょう。
生の鮭(サーモン)を与えたい場合は一度冷凍する
アニサキスはマイナス20度以下で24時間以上冷凍すると死滅します。生の状態で与えたい場合には、一度冷凍してから与えるとリスク軽減になります。
味付けはしない
調味料などで味付けをすると塩分過多になる可能性があります。鮭(サーモン)自体にうまみがありますので、味付けは必要ありません。
骨を取り除く
大きな骨がある場合はのどに刺さる恐れがあるので、あらかじめ取り除いてから与えましょう。
犬に鮭(サーモン)を与える際の注意点は?
最後に、鮭(サーモン)を与える際の注意点を確認しておきましょう。
ビタミンB1欠乏症のリスクがあるので適量を守る
生のサーモンを大量に摂取するとチアミナーゼによるビタミンB1欠乏症になることもあります。適量を守っていればこのような問題はありませんので、1日の食事量の10%程度にとどめましょう。
犬に生物を与えるときは少量から与える
初めて犬に生の鮭(サーモン)を食べさせる場合はアレルギーの可否がわからないので、少しずつ与えて反応を見ましょう。大丈夫かどうかを確認しながら量を調節するのがおすすめです。
人間用の加工品は与えない
人間が食べる鮭フレークやスモークサーモンなどの加工品は塩分過多になりますので、犬に与えることは控えましょう。
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