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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
価格も安く気軽に入手しやすい鶏肉のささみ。ヘルシーで高たんぱくなので、愛犬のごはんに活用したいと考える飼い主も多いでしょう。しかし、そもそもささみは犬に気軽に与えても大丈夫なのでしょうか。今回は、バーニー動物病院 千林分院の獣医師・堂山有里先生に教えていただいた、犬にささみを食べさせても大丈夫なのか、与える際の注意点や適量などについて解説していきます。
目次
- 犬にささみを食べさせても大丈夫!
- 子犬や老犬(シニア犬)にささみを食べさせても大丈夫?
- 持病のある犬にささみを食べさせても大丈夫?
- ささみに含まれている栄養素は?
- 犬にささみを食べさせるメリットは?
- 犬にささみ食べさせる際の1日の適量は?
- 犬にささみを食べさせる際のおすすめの方法は?
- 犬にささみを与える際の注意点は?
- ささみを食べてアレルギーや中毒症状になる犬はいる?
- ささみを食べた犬にアレルギーの症状が出た場合、動物病院へ連れていくタイミングは?
- 犬にもも肉や胸肉などの鶏肉の他の部位を与えても問題ない?
- 犬にささみを使用した加工食品を与えても大丈夫?
犬にささみを食べさせても大丈夫!
ささみとは鶏の胸肉の一部分で、両方の胸骨に沿って1本ずつ存在し、笹の葉のような形をしています。たんぱく質が豊富なうえに、脂肪がほとんどない低カロリー食材でダイエットなどにも最適です。
結論から言うと、ささみは犬に与えても問題ありません。ささみのメリットは、消化しやすく高たんぱくな点です。身体を動かすためのエネルギーを補い、お腹を温めてくれる作用が期待できるので、体力が低下していたり、食欲が落ちていたりする犬に与えるのがおすすめですよ。ただし、鶏肉に対してアレルギーを持っていたり、腎不全を患っている犬は注意が必要です。
子犬や老犬(シニア犬)にささみを食べさせても大丈夫?
子犬やシニア犬の食事にもささみは適しています。ささみには消化吸収しやすいたんぱく質が多く含まれており、食欲を増進する効果も期待できます。食が細くなってきたシニア犬には特におすすめの食材です。
持病のある犬にささみを食べさせても大丈夫?
腎不全を患っている犬にささみを与える際は注意が必要です。腎機能が低下するとリンの排泄が上手にできなくなり、血中にリンが溜まります。体はリンとのバランスを取るために骨からカルシウムを取り出すため、骨が脆くなってしまいます。
ささみにはこのリンが多く含まれており、腎臓へさらなる負担をかけてしまいます。愛犬が腎不全を患っている場合は、ささみを食べさせる前に獣医師へ相談するようにしましょう。
ささみに含まれている栄養素は?
ささみに含まれている栄養素について、それぞれ解説していきます。
たんぱく質
たんぱく質は丈夫な筋肉を作り、皮膚の健康や美しい毛並みを維持するためにも欠かせない栄養素です。たんぱく質が不足すると、体力や免疫力の低下につながるため、生命活動を維持するために必須の栄養素と言えるでしょう。特にささみのたんぱく質には、犬の健康的な体作りに役立つアミノ酸もバランスよく含まれています。
脂質
脂質は身体を動かす際のエネルギー源になります。ささみには犬の身体作りに役立つ必須脂肪酸が多く含まれており、犬の健康維持に役立ちます。
リン
リンはミネラルの一種で犬の歯や骨の形成や、神経や筋肉を正常に保つ働きがあります。
カリウム
犬の筋肉の収縮や血圧を調整し保ってくれる作用があります。
ビタミンB群
ささみには、脂質や糖質、たんぱく質を分解しエネルギーに変える効果があるナイアシンなどのビタミンB群が豊富に含まれ、疲労回復や肥満防止に効果が期待できます。
ビタミンA
脂溶性ビタミンの一種であるビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を保つのに役立ちます。
犬にささみを食べさせるメリットは?
続いて、犬にささみを与えるメリットを4つご紹介します。
たんぱく質で健康維持
前述の通り、ささみには犬の筋肉作りや皮膚の健康に役立つ栄養素のたんぱく質が豊富に含まれています。たんぱく質が不足すると、免疫力の低下により皮膚疾患や下痢などの症状につながる可能性があるので、不足しないようにしっかりたんぱく質を摂取させましょう。
低カロリーで肥満防止に
ささみ100gあたりのカロリーはおおよそ114kcalです。ほかの肉類と比べて、脂質の含有量も少なく低カロリーなので肥満防止に役立ちます。さらに、ビタミンの一種であるナイアシンが脂質や糖質の代謝を促してくれるので、ダイエット効果も期待できます。
疲労回復
ささみのたんぱく質に含まれるアミノ酸や、代謝を助けてくれるビタミンB群により疲労回復効果が期待できます。
抗酸化作用でがん予防も
ささみには抗酸化作用を持つセレンと呼ばれるミネラルが含まれています。抗酸化作用とは過剰に発生した活性酸素を取り除くことで、がんの発症率の低下や、アンチエイジングも期待できます。
犬にささみ食べさせる際の1日の適量は?
犬にささみを与える際の1日の適量はどのくらいなのでしょうか。犬のサイズごとの目安量をご紹介します。
・超小型犬(体重5kg未満)…体重2kgあたり80gまで
・小型犬(体重5〜10kg)…体重5kgで200gまで
・中型犬(体重10〜25kg)…体重10kgで1日400gまで
・大型犬(体重25kg以上)…体重25kgで1日1kgまで
また、子犬やシニア犬は消化能力が弱いため、少量ずつ食べさせましょう。ささみを多量に食べさせると下痢や軟便などにつながる可能性があります。
犬にささみを食べさせる際のおすすめの方法は?
犬にささみを与える際のおすすめの方法をご紹介します。愛犬に合わせて与え方を工夫してみましょう。
手作りささみジャーキー
ささみを薄くスライスしてからオーブンで焼くと、無添加で安全なおやつが手作りできます。ご褒美で与えるおやつとして活用してみましょう。加熱する目安は180℃のオーブンで15〜20分程度です。
ゆで汁だけ与えてもOK
犬にささみをそのまま与えるとカロリーオーバーになることもあります。その場合はゆで汁だけ与えましょう。食欲が落ちていたり、胃腸が弱っていたりする場合も、ゆで汁をドッグフードにかければふやけて食べやすくなります。茹で汁は製氷皿に入れて冷凍すると、ストックができて便利です。与えるときは解凍してから使いましょう。
ペースト状にする
噛む力が衰えたシニア犬には、ペースト状にしたささみを与えるのがおすすめ。茹でたささみを茹で汁ごとミキサーにかけるだけなので簡単です。
健康的な犬でも、ささみはそのままでは大きい場合があります。茹でたり蒸したりしたものを愛犬が食べやすいサイズに割いて与えてあげるなど、喉に引っかからないようにしてあげましょう。
犬にささみを与える際の注意点は?
愛犬の食事やおやつとして優秀な食材であるささみですが、与える際にはいくつかの注意点があります。
絶対に生で与えない
鶏の消化管にはカンピロバクター菌が生息しているため、生のまま与えると下痢や嘔吐、腹痛などの症状が起きる場合があります。食中毒のリスクもあるため、必ずよく火を通してから与えましょう。
カンピロバクター菌は65℃の温度で数分加熱すると、ほぼ死滅します。肉の中心部が白く変わるまでしっかり加熱してください。また、少しの菌でも食中毒が起きるため、生の鶏肉を扱った箸でほかの食品を触らないよう注意しましょう。
ささみばかり与えすぎない
いくら犬の健康によいからと言って、ささみばかり与えてしまうと栄養バランスがくずれてしまいます。ささみだけでなく、ほかの食品も使って栄養が偏らないよう注意しましょう。
また、リンが多く含まれているささみを過剰摂取すると、犬の腎臓に負担がかかるため注意が必要です。リンを摂り過ぎるとカルシウムの吸収が阻害され、健康的な骨が維持できなくなってしまいます。1日の摂取量を目安に、犬にささみを与えるようにしましょう。
調味料や香辛料に注意
ささみを調理する際は、調味料と香辛料の使用はNGです。調味料を加えると塩分過多になり、病気のリスクが高まります。さらに調味料と香辛料には、犬が食べてはいけないたまねぎやナツメグなどの成分が含まれている製品があります。中毒症状を避けるためにも気を付けましょう。
ささみを食べてアレルギーや中毒症状になる犬はいる?
鶏肉に対してアレルギーを持っている犬や、ささみの加熱が不十分な場合、アレルギー症状や中毒症状が出ることもあります。主な症状を解説していきます。
下痢
ささみを食べた直後から3日ほど下痢が続く場合があります。重い症状では、水下痢や血便になるケースもあるため注意が必要です。
嘔吐
アレルギー症状として、ささみを食べた直後から半日の間に嘔吐が起きるケースが多いです。基本的には原因となる食べ物を吐き戻してしまえば体調は回復しますが、カンピロバクターが原因の場合は嘔吐が何回も続く傾向があります。
皮膚のかゆみ
アレルギー症状として、口の周りや肛門周囲の皮膚に赤みが出る場合があります。あるいは背中など特定の部位に発疹ができ、かゆがる様子が見られます。
慢性的な外耳炎
犬によってはアレルギー症状のひとつとして、外耳炎を繰り返すケースもあります。耳が赤く腫れたり、しきりにかゆがる様子が見られたりしたらアレルギーの可能性も疑いましょう。
ささみを食べた犬にアレルギーの症状が出た場合、動物病院へ連れていくタイミングは?
ささみを食べた後に下痢や嘔吐、皮膚をかゆがるなど普段と違う様子が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。
動物病院を受診する際は、犬が食べたものを写真に残す、製品のパッケージを持参すると診察がスムーズです。食べたものの内容や時間帯、量、具体的な症状を伝えられると診察に役立つので、余裕があればメモしておきましょう。犬の吐瀉物や下痢を撮影しておくのも手段のひとつです。突然の事態に慌てないようにシミュレーションしておくのもいいでしょう。
犬にもも肉や胸肉などの鶏肉の他の部位を与えても問題ない?
鶏アレルギーを持っていなければ、もも肉や胸肉など鶏のほかの部位を与えても問題ありません。ただし、鶏の皮には脂肪分が多く含まれており、カロリーが高いです。ダイエット中の犬は避けたほうがよいでしょう。また、鶏の皮は消化しづらいため、消化能力の弱い子犬やシニア犬には食べさせないようにしましょう。
犬にささみを使用した加工食品を与えても大丈夫?
犬用のささみの食品であれば問題ありません。しかし、犬用のささみの中にはしっとりした食感を保つために添加物を使用している製品もあります。なるべく添加物の入っていないものを選ぶようにしましょう。 サラダチキンなど人間用に作られた加工食品は、犬の身体に悪影響を与える調味料や添加物が含まれているため、与えるのは避けましょう。
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