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NPO CANBE NPOつなっぐ 日本動物病院協会理事 子どもの動物福祉教育、小児病棟犬セラピー、被虐待児童へ付添犬の派遣などに注力。保護犬猫問題にも取り組む
子犬の社会化の練習やしつけ方、健康管理の方法などを子犬と飼い主で一緒に学ぶ、パピークラス。子犬が生後5か月くらいまでの時期までにさまざまな人間や犬と触れ合い、社会化を行うことで問題行動の予防もなります。今回の記事では、子犬とパピークラスに通うメリットやパピークラスの良い選び方などを家庭動物診療施設・獣徳会で獣医師を務める吉田尚子先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- 犬の社会化トレーニングはなぜ必要?
- 子犬の社会性と基本のしつけを身につけるのがパピークラス
- 子犬をパピークラスに参加させるメリットは?
- パピークラスではどんなことを学べるの?
- 子犬との接し方で注意したいことは?
- パピークラスはどんな人におすすめ?
- パピークラスの選び方のポイントは?
犬の社会化トレーニングはなぜ必要?
犬が育つにあたり、しつけと同じくらい大切なこととして、「社会化」が挙げられます。犬は人間社会で生きるにあたって、飼い主以外の人とも関係性を築いていきます。そうすることで、日々の刺激に対するストレスが薄れ、騒音や知らない人、他の犬猫に対しても過剰に反応しなくなり、新しいしつけもスムーズに受け入れやすくなります。
逆に「社会化」ができていないと、何かに過剰に反応して吠えるなどコミュニケーションが取りづらい犬になってしまいます。そういった社会化の手助けをしているのが、パピークラスです。
子犬の社会性と基本のしつけを身につけるのがパピークラス
人間の子どもが保育園や幼稚園で社会性を身につけるように、子犬もパピークラスで社会性を学びます。人間との違いは、保護者である飼い主も一緒に学ぶところです。
「子犬だけが行けばいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、子犬にとっては何もかもが初めての環境です。そこに飼い主がいたほうが安心しますし、飼い主自身も飼育に関する最新の情報を得ることができます。また、他の飼い主と交流することもできます。
子犬を飼い始めた飼い主と子犬が一緒に学び、社会性を育みながら、人と楽しく暮らすノウハウを身につけるきっかけをつかむものだと思っておくとよいでしょう。
パピークラスに参加する時期はいつ?
パピークラスに参加する適切な時期は、混合ワクチンが終わっている生後2~6か月くらいが適当だと言われています。社会化期が終わるのがおおよそ生後5か月だと言われているので、それまでに参加するほうがいいでしょう。子犬も人間と同じで、若ければ若いほど、刺激を受け入れやすく場慣れしやすい傾向にあります。
ただし、犬には個体差や個性もあります。愛犬の様子を見て参加できるか不安を感じるようであれば、事前に教室に相談してみましょう。
子犬をパピークラスに参加させるメリットは?
子犬をパピークラスに参加させるメリットはさまざまです。どういったメリットがあるのか見ていきましょう。
社会性を身につけられる
社会性があることで、飼い主も犬もストレスなく過ごせるようになります。社会性がないとみられた場合はペットホテルの宿泊を断られたり、犬が日々の生活でストレスを多く感じたりと飼い主自身の生活にも支障が出てきてしまいます。
動物病院が楽しいところに感じられる
パピークラスは動物病院が開催していることが多く、子犬のうちから動物病院へ通うことになります。子犬の頃から動物病院に通うことで、動物病院が怖いところではなく、楽しい、仲間に会える場所というイメージを愛犬に与えることができ、病院通いが非常に楽になります。
犬の分離不安を防ぐ
犬の分離不安とは、飼い主から離れて不安になる心理のことを指します。この状態になると、一匹だけでの留守番やペットホテルや動物病院での宿泊が難しくなります。大きくなれば家庭環境も変わり、どうしても犬が一匹で過ごさねばならない時が出てきます。その時にいきなり他人に預けたりすると、慣れていない犬にとっては大きなストレスでしかありません。若いうちから飼い主と離れることで、他者との関わりを学べるようになるでしょう。
正しいしつけの方法が学べる
パピークラスでは子犬のしつけも行っています。飼い主が自己流でしつけを行ってしまうと、一度刷りこまれたものを正すのに時間がかかってしまいます。パピークラスでは、正しい手順で効率よくしつけを行ってくれるため、飼い主も子犬もストレスなく学ぶことができます。
飼い主同士で悩みを共有できる
パピークラスでは、同じような月齢の子犬を持つ飼い主と触れ合うことができます。飼い主が一人で解決するのは難しい悩みを抱えていても、同じような月齢の子犬を持つ飼い主と話すことで解決することがあります。また、しつけに限らずオススメのドッグランやドッグカフェの情報を交換できたりするなど、飼い主同士のコミュニティが広がります。
パピークラスではどんなことを学べるの?
パピークラスでは具体的にどんなことが学べるのかを見ていきましょう。
社会化トレーニング
子犬のうちは恐怖心や警戒心が弱く、逆に好奇心が旺盛です。この時期にさまざまな刺激に触れたり、トレーニングしたりすることによって社会性を身に付けることができるようになります。パピークラスの主旨を理解しているご家庭の子犬と遊ばせることや他の飼い主との触れ合いで人や他の動物と交流することができるので、愛犬の社会性を育むことができるようになります。
正しいしつけの方法
パピークラスでは飼い主への指導とあわせて、実際のしつけを実践し、他の家族の様子も見学することで、正しいしつけの方法をより深く学べるようになっています。しつけには、犬のしつけの基本はもちろん、叱ることの難しさと褒めることの意味、しつけによる根本的なメリットなど、最新の犬のしつけについての基礎知識を学ぶことができます。
トイレトレーニング
犬を初めて飼うご家庭では難しいトイレトレーニングもパピークラスの先生がサポートしてくれます。子犬がそわそわと床の匂いを嗅ぐようなら、すかさず先生が声をかけてくれるので、素早くトイレサークルに移動することができます。「トイレのサインが分からない」「なかなかトイレを覚えてくれない」と悩んでいる飼い主はもちろん、「トイレをしたい時どうしていいのかわからない」という子犬も成功体験を重ねることで正しいトイレ習慣が身につきます。
健康管理のポイント
フィラリア予防、ワクチン、食事管理など健康管理の基本的なことを学び、実践できるようになります。
子犬との上手な遊び方
パピークラスでは、子犬との遊び方も学ぶことができます。遊び中に噛まれない工夫や、他の犬などを噛んでしまった時の対処法、留守番の時に最適なおもちゃなど、さまざまなシーンにあわせて遊び方を学ぶことができます。
動物病院の診察台に慣れる練習
前述しましたが、パピークラスは動物病院で行われていることが多く、そのためほとんどの子犬は動物病院に対する警戒心を持たなくなります。また、動物病院によっては、診察台に乗せてからおやつを与え、獣医師に触れさせてからパピークラスに連れていくことも。こうすることで「診察台は楽しい」という認識を持つことができれば、犬にとってもストレスを感じずに診察台に登れるようになります。
子犬同士で遊ぶコミュニケーション方法
他の子犬と触れ合うことで楽しく遊び、刺激を受けるため、子犬にストレスがたまらず、破壊行動・無駄吠えなどの問題行動や、ストレスに関連する病気などを発症しづらく、しつけも入りやすい環境が整っています。
子犬との接し方で注意したいことは?
パピークラスで他の子犬と接触する際に気をつけたいことをご紹介します。
いきなり子犬同士を挨拶させない
子犬は警戒心がありませんが、同時にマナーも知りません。いきなり子犬同士であいさつさせるのはやめておきましょう。またリードの管理もしっかりと行いましょう。
いきなり頭を触らない
子犬はまだ社会性が未熟な段階です。頭にいきなり触れようとするとおびえる可能性もあるため、やめておきましょう。あまりにびっくりさせて人を怪我させてしまうことなどは、絶対に経験させないことが大切です。
パピークラスはどんな人におすすめ?
「犬を飼ったことがある」という人も「初めて犬を飼う」というひともいるでしょう。パピークラスを利用したほうがいい飼い主の特徴をご紹介します。
初めて犬を飼う人
初めて犬を飼う人は、ぜひパピークラスを受講することをおすすめします。犬を飼うことに関する疑問をトレーナー目線ではもちろん、同じ受講者である飼い主同士で共有できるからです。また、パピークラスは動物病院で催されていることが多いため、犬を飼ってからの相談相手ができることも強みになります。
初めての犬種を飼う人
一口に「犬を飼ったことがある」と言っても、以前の犬とは違う犬種を飼う場合、まったく新しい経験に戸惑うことがあります。それは当然のことで恥ずかしいことではありません。
パピークラスのプロのトレーナーは犬種による特性や性格を理解しているため、その犬種にあわせたしつけ方法や必要なことを教えてもらうことができます。もし、以前犬を飼ったことがあっても、新しい犬種を飼う場合には、パピークラスに行ったほうがいいでしょう。
久しぶりに犬を飼う人
「以前犬を飼っていたが、久々に飼うことになった」という場合にも、パピークラスに行ったほうがいいでしょう。犬の生態も日々研究され、新しい発見やしつけの方法が見つかっているからです。「昔はこうだったからこの方法でいい」と思うかもしれませんが、愛犬のためにも最新の情報を手に入れるようにしましょう。新しい知識や情報を増やすことで、愛犬との生活も非常に充実したものとなります。
パピークラスの選び方のポイントは?
パピークラスを選ぶ時にどのようなポイントに気をつければいいのかをご紹介します。
信頼できる先生がいるところを選ぶ
犬や飼い主の個性や悩み、家庭環境・家族構成を考慮しつつ、丁寧に向き合ったアドバイスができる先生を選びましょう。まずはその場所にいることで犬が喜んでいるか、トレーナーとしての基本、専門知識があるかどうかは良い先生を判断するためには不可欠な要素です。プロフィールを見て経験や実績をしっかり確認することはもちろん、実際の犬への接し方や声のトーン、飼い主との相性、考え方が一致しているかなども考慮することをおすすめします
飼い主への指導の有無
犬の成長に沿ったケアを先に学ぶ機会として飼い主だけのオリエンテーションがあるかどうかを確認するといいでしょう。犬だけではなく、飼い主自身がしつけを学べる内容なのかどうかは教室選びにおいて非常に重要です。子犬がいくら正しい知識を学んでも、飼い主がそれを実行できなければ意味がないからです。
料金設定が明確
後々のトラブルや不当な金額を請求されないためにも、料金設定は細かく確認しましょう。パピーコースはいくら、コースごとの料金はいくらなど一目で見て明確にわかるところを選びます。
通いやすい場所にある
定期的に通うパピークラスにおいて、通いやすいかどうかという立地条件は大切です。通い始めの頃のいろいろなことを吸収できる社会化期は、かなり早くに過ぎてしまうため、活用できる時間との戦いでもあります。また、その動物病院がかかりつけになる可能性も高いです。そのため、無理なく通える場所にある教室を選ぶようにしましょう。
認定アドバイザーのいる動物病院のリストを確認する
公益社団法人 日本動物病院協会では、子犬・子猫教育アドバイザーの養成講座の開設と認定を行っています。パピークラス・子猫クラスを始め、初期教育の重要性や実施に必要なテクニックを習得できる場です。全国の認定アドバイザーのいる動物病院のリストも公開しています。これを確認ことで、初期教育の重要性を熟知した獣医師をはじめとする動物病院スタッフにトレーニングをしてもらうことができます。