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獣医師資格取得後、小動物臨床経験6年。主に犬猫の臨床に携わる。現在は子育てをしながら、愛猫と暮らしている。
犬の高齢化に伴い、心臓病などを患う犬が増加しています。そこで今回は、飼い主さんに知っておいてほしい「犬の心臓病」について解説。早期発見のコツなどについてもご紹介するので、参考にしてみてくださいね。
目次
- 犬の心臓病【1】「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」
- 犬の「僧帽弁閉鎖不全症」を早期発見するコツ
- 犬の「僧帽弁閉鎖不全症」の治療法
- 犬の心臓病【2】「肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)」による右心房不全
- 犬の心臓病の早期発見のために飼い主さんができること
犬の心臓病【1】「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」
「僧帽弁閉鎖不全症」とは、左心室と左心房の間にある僧帽弁がうまく閉じず、血液が逆流してしまう病気です。小型犬の老犬に多く見られ、初期の段階では、症状があらわれにくいのも特徴といえるでしょう。
治療法は病状によって異なりますが、最近では病気の進行を遅らせる薬もあり、限られた動物病院にはなりますが、手術で治療できる例も。とはいえ、咳が出たり、散歩を嫌がったりするなどの症状があらわれ、病状が悪化すると治療は難しくなるので、早期発見に努めることが大切です。
僧帽弁閉鎖不全症は、定期健診や別のことで動物病院を受診した際に聴診によって逆流音が聴取されることで見つかる場合が多いです。初期は逆流音があっても元気に過ごしている犬が多いのですが、発見できたらその後の方針について獣医師と相談しておくといいでしょう。
犬の「僧帽弁閉鎖不全症」を早期発見するコツ
最初にもお話ししたとおり、僧帽弁閉鎖不全症は初期症状が出にくい病気のため、気づいたときには病状がかなり進行していたというケースも少なくありません。
そのため、定期的に聴診やエコー検査を受けて、なるべくはやくこの病気に気づいてあげることが大切です。なお、この病気はすべての犬種で見られますが、とくにトイ・プードルやマルチーズ、ポメラニアン、シー・ズーといった小型犬の老犬に多く見られるため、元気そうに見えてもシニア期になったら定期的に心臓の検査を受けるようにしましょう。
犬の「僧帽弁閉鎖不全症」の治療法
僧帽弁閉鎖不全症は、基本的に完治できる病気ではありません。そのため、病気が進行した状態で発見された場合は、投薬によって今出ている症状を抑える治療を行うことがほとんどです。
また、まだまだ犬の臨床の現場では一般的ではありませんが、最近では外科治療で完治を目指すケースも。どの場合も早期発見が治療のカギを握るので、若い頃からしっかりと検査を受けることをおすすめします。
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犬の心臓病【2】「肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)」による右心房不全
肺の病気やクッシング症候群、フィラリア症などにかかると、右心室から肺へ流れる肺動脈の血圧が上昇して「肺高血圧症」になり、心臓に負担がかかります。さらに病状が進行すると心臓の動きが低下し、今度は「右心不全」を起こすことがあります。
この病気にかかると心肺機能が低下するため、失神したり、散歩や運動を嫌がったりするなどの症状が出ることがあります。”年のせい”と見逃しがちな症状ですが、これらの症状が見られるときは、肺に負担のかかる基礎疾患もあるのでそれらも併せて、なるべくはやく動物病院で検査を受けましょう。
犬の心臓病の早期発見のために飼い主さんができること
犬が何らかの心臓病にかかると、寝ているときでも息苦しくなるため、睡眠時の呼吸数が増えます。そこで、異変にすぐに気づけるよう、ふだんから愛犬が熟睡しているときの呼吸数を数えておくのがおすすめです。
また、病気にかかると食欲に変化がなくても痩せる場合があるので、少なくとも季節ごとに体重を量って記録しておくようにしましょう。
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