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近年、獣医療の発展や良質なフード、室内飼育の増加などによって、人と同じように、ペットも長寿化が進んでいます。大切な家族である愛犬と、多くの時間を過ごせるようになるのは喜ばしいことです。一方で、高齢の飼い主さんに高齢のペットという飼育困難な状況や、想像以上に老犬介護の負担が大きく、飼い主さんが介護うつの状態になってしまうなど、そこには様々な社会課題があります。老犬ホームはそういった問題に、どのように取り組んでいるのでしょうか。今回は、埼玉県加須市にある老犬・老猫ホーム・ペットホテルの「あにまるケアハウス」さんを訪ねました。
目次
- そもそも老犬ホームとは
- 老犬・老猫ホーム「あにまるケアハウス」ってどんなところ?
- 老犬ホームの1日
- 施設環境と、ここに暮らす犬たちの様子
- 老犬ホームに愛犬を預けるということ -インタビューを終えて-
そもそも老犬ホームとは
一般的な老犬ホームは、介護が必要なシニア犬を短期〜長期で預かり、身の回りのお世話をしてくれる場所です。人間の介護老人福祉施設(老人ホーム)と同じような役割を果たしています。サービス内容は各施設により若干異なりますが、基本的に医療が入ることはなく、日常生活のお世話をしてくれるのに加えて、健康に不安があるときや体調の異変に気づいた場合など、必要に応じて職員が近隣の病院へ連れて行ってくれます。
老犬・老猫ホーム「あにまるケアハウス」ってどんなところ?
「あにまるケアハウス」は老犬・老猫ホームといった役割のほかにも、短期・長期でのペットホテルの役割を目的として、飼い主さん方のサポートと、わんちゃん猫ちゃんたちが十分なケアを受けられる環境づくりに取り組んでいます。
早速、スタッフの斉藤さんにお話を伺いました。斉藤さんはかつてペットショップの店長をしていたご経験もあるそうで、実家では3頭の犬を飼育していたそうです。ペットショップ時代に、ご高齢のお客さんが自身の年齢から犬を飼うことに躊躇する様子もたくさん見てきたという斉藤さん。今回、ご自身の所属するジャペル株式会社でペットを取り巻く社会課題の解決・社会貢献を目的として「あにまるケアハウス」を開業する話が持ち上がり、我こそはと当館スタッフに立候補したと言います。開業にあたっては、大手の老犬ホームに勉強をしに行ったことも。そこで得た知識を生かしながら、環境づくりを行っているということです。
老犬ホームの1日
今現在「あにまるケアハウス」には、11頭の高齢犬と5匹の高齢猫が暮らしています。特に、ペットの介護にお困りのご家庭や、他の施設で愛犬の年齢を理由に預かりを断られてしまったご家庭からのお問い合わせが多いと言います。
「あにまるケアハウス」でのお預かりは1泊〜可能で、その他に1週間・30日・90日・180日・365日・終身預かりのプランがあります。今現在いるペットたちのほとんどは、長期(30日以上)のお預かりで、毎日「あにまるケアハウス」のスタッフさんたちが身の回りのお世話をしています。飼い主さんもまずは1日、次は数日、一週間・・といったように、徐々に預かり日数を伸ばしてトライアルをされてから、長期預かりをお願いされる方が多いとのこと。大切な愛犬にできるだけ負担をかけない形で、試泊も可能なのが嬉しいですね。
「あにまるケアハウス」での主な一日の過ごし方は次の通り。
9:00 起床、1頭ずつの健康チェック、掃除、排泄
9:30 朝ごはん
10:00 午前の運動(ドッグランやテラスで自由に遊びます)
12:00 お部屋でのんびりお昼寝タイム
14:00 シャンプーや爪切りなどのお手入れ
16:00 午後の運動(お友達やケアスタッフと遊びます)
18:00 就寝
お預かりしているペットの体調や状況によって、就寝後の見回りも行っています。
施設環境と、ここに暮らす犬たちの様子
さっそく、各お部屋とドッグルーム(犬舎スペース)を見学させてもらいました。ドッグルームとキャットルームは、おおよそ30坪のお部屋が合計4つ。1部屋の中でも、ペット1頭あたりに、かなり広々としたスペースが確保されています。中に入ると、とても清潔感があって、開放的。
さっそく数頭のわんちゃんたちがお出迎えに来てくれました。寝たきりの子、休んでいる子、かまって欲しい子、マイペースに歩く子。犬たちの表情からも、みんなそれぞれが思いのままにリラックスして過ごしている様子が伺えました。
こちらは、認知症で徘徊してしまうというシニア犬のために、斉藤さんたちスタッフが試行錯誤して作ったというサークル。通常の長方形のサークルでは、徘徊時に怪我をしてしまうのではとの思いから、みんなで作ったそうです。円を描くように徘徊するので、大きな八角形の形をつくり、床には滑り防止のマット、体をぶつけて怪我をしないよう壁も緩衝材でカバーするなど、至れり尽くせり。これには利用者さんも大変喜んでくれたそうです。
ほかにも、寝たきりのわんちゃんのために車椅子を購入し、少し歩かせる練習をしてみたところ、数日後にその子が自ら立ち上がるようになったというエピソードも。お話される斉藤さんもとても嬉しそうで、犬たちへ愛情を持って向き合っていることが伝わってきます。
ここにいる犬たちはみんな、なんらかの疾患や認知症など、シニア犬特有の症状を持っています。慢性的な疾患と付き合っていくのは、体の不調はもちろん毎日の投薬など、犬にとっても大きなストレスがかかりますが、昼間はフリーで自由に過ごすことができたり、晴れた日には約340坪もの広いドッグランでのびのび運動ができたりと、日々楽しく穏やかに過ごせるよう犬のQOLに配慮した環境が整っていました。
ほかにも、定期的にトリミングルームで爪切り・耳掃除・シャンプー・カットなどを行ってくれるほか、職員が24時間確認できるカメラでわんちゃんたちの様子を見守っていてくれます。夜間でも体調が心配な場合には、宿泊棟に寝泊まりして夜間の見守りを行い、2軒となりの動物病院さんとも協力体制を組み、緊急時にも迅速に対応してもらえる環境を整備しています。また、1日その子がどんな様子だったかを、飼い主さんに写真とともに報告をしてくれるそうです。
老犬ホームに愛犬を預けるということ -インタビューを終えて-
インタビュー当日も、サポートの一つとしてスタッフに食事を口に運んでもらっているわんちゃんの姿がありました。体の使い方も人間とは違い、犬はどこが痛い、どうすると痛いと言葉にできないからこそ、老犬介護は想像以上に過酷な時間があるのだろうと感じます。
また、愛情深く、責任感が強く、愛犬を大切に思うが故に、私が頑張らなければと、一人で抱え込んでしまう飼い主さんが多いのではないでしょうか。ですが、飼い主さんが倒れてしまっては、本末転倒です。
もちろん、犬を飼うということには、命に対する責任が伴います。簡単に放棄することは決して許されないことです。それでも、犬にとっての一番の幸せを考えたとき、穏やかな心地の良い環境で、きちんと日々の適切なケアを受けられることもまた、とても重要なことではないでしょうか。老犬ホームのようなサービスを上手に利用して、愛犬の老後を見守るというのも、一つの方法だと感じました。
「あにまるケアハウス」の斉藤さんは、“まずはご自身の目で確かめて欲しい、ぜひ気軽に足を運んでみてください”とおっしゃっていました。愛犬の介護でお悩みの飼い主さんは、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
あにまるケアハウス