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犬も高齢化が進んでいる昨今、「老犬ホーム」に注目が集まっています。老犬ホームとは実際にどんな場所? 預けられる犬の条件、預け先の老犬ホーム選びのポイントは? 今回は、動物行動学の専門家である獣医師の茂木千恵先生監修のもと、老犬の終生飼養について政府の方針が決まる以前の2007年から「ペットケアサービスLet’s」を開業し、老犬ケアにおける先駆者とも言えるLet‘s代表・三浦裕子さんに教えていただいた内容を解説します。
目次
- そもそも老犬ホームとはどんなところ?
- 老犬ホームに預けられる犬の条件とは?
- 老犬ホームに犬を預ける主な事情とは?
- 老犬ホームに犬を預けるメリットとは?
- 老犬ホームに犬を預けるのにかかる費用とは?
- 老犬ホームの主な利用プランとは?
- 老犬ホームに預けた犬の生活とは?
- 老犬ホームに預けた愛犬と会える頻度とは?
- シニア犬でなくても老犬ホームに預けられる?
- 老犬ホームに愛犬を預ける際の注意点とは?
- 愛犬を預ける老犬ホームを選ぶポイントとは?
そもそも老犬ホームとはどんなところ?
「老犬ホーム」は愛犬の世話をすることができなくなった飼い主から犬を受け入れている施設です。動物愛護法では、飼い主が飼い犬の面倒を終生見ることが義務付けられていますが、飼い犬の高齢化や飼い主がやむを得ずお世話できなくなるなど、さまざまな事情で犬を受け入れています。
老犬のお預かりを業務とする施設は、第一種動物取扱業のうち「保管」業務に携わることを自治体に届けて登録を受けなければなりません。また、動物の管理方法や飼養施設の規模や構造、獣医師との連携などの基準を満たすことが義務づけられているのです。
スタッフは主に、「老犬介護士」「愛犬飼育管理士」「小動物介護士」「ペットケアマネージャー」や「シニアドッグケアアドバイザー」などの資格を持っています。
また、終生に渡って引き受けてくれる場合もありますが、必要なボディケアだけを受けに通所して日帰りするデイケア、数日だけのお泊りのショートステイや、「愛犬を自分で看取りたいけれどどうやって世話をすればいいのか分からない」という飼い主のために自宅でできる老犬ケアの仕方のレクチャーもしています。
老犬ホームに預けられる犬の条件とは?
動物病院が「預けても大丈夫」と言ってくれれば、何歳の犬でも預かってもらえます。ですが、入院が必要な犬は預かってもらえません。あとは飼い主の意向次第です。当然ながら、老犬ホームで愛犬が亡くなってしまうこともあります。愛犬を自宅で看取れなくてもいいのかよく考え、納得できるようであれば検討してみましょう。
老犬ホームに犬を預ける主な事情とは?
老犬ケアにおける大きな悩みと言われている「排泄」、「食事」、「ボディケア」、「寝たきり」、「痴呆」のお世話をするには時間がかかります。特に、ボディケアはトリミングサロンで「高齢だから……」とトリミングを断られると飼い主の手でせざるを得ません。また、痴呆になった愛犬に合わせて昼夜逆転の生活スタイルになってしまったり、夜に眠ってくれずに鳴き続けたりすると飼い主の体力も続きません。愛犬の介護をしていて追い込まれたときに、老犬ホームの利用を考える方も少なくありません。
それだけでなく、飼い主のご家族が老犬の状態について負担を感じていることもあります。同居する家族が「夜は介護から離れてちゃんと寝たい」とこぼした、受験生がいて勉強に支障が出る、ご近所トラブルに発展したなども、老犬ホームに犬を預ける決意をする背景となっています。
老犬ホームに犬を預けるメリットとは?
老犬ホームに犬を預けるメリットとして、飼い主の負担を軽減できる点があげられます。老犬のケアの方法も教えてくれるうえ、精神的なサポートを得られることも飼い主にとって大きなメリットです。
犬にとっても、複数のスタッフが交代で見てくれるため、健康状態が維持できるようになります。飼い主だけでは手が回らなかった部分にも、専門的なケアを受けることができるようになるのもメリットです。
老犬ホームに犬を預けるのにかかる費用とは?
「老犬ケア」が2016年に発表した調査結果によると、全国の老犬ホーム年間利用料金の平均は、566,407円、最高額は1,620,000円、最低額は230,000円でした。これは小型犬の場合の金額で、中型犬、大型犬になると料金が加算されます。
また、施設によっては入所に際して入所金が必要だったり、医療費は飼育費に含まれなかったりという違いもあります。
老犬ホームの主な利用プランとは?
老犬ホームはただ預けるだけではなく、さまざまな利用プランがあります。どういったものがあるのか、見ていきましょう。
デイケアサービス
宿泊はせず、朝から夕方まで預けるプランです。
短期(ショートステイ)
1泊から使えるサービス。体内時計がずれてしまった犬や飼い主が疲れてしまった時に利用できます。ショートステイの利用はデイケアサービスをしてから、という施設もあります。これは、いきなり知らない場所へ連れてこられると犬も驚いてしまうため、慣れてから預かるということです。
長期(終身預かり)
生涯に渡って老犬を預かるプランです。といっても、預けた後に一時帰宅することもできます。営業時間内は面会もできるため、愛犬の様子を好きな時に見に来ることができます。
老犬ホームに預けた犬の生活とは?
老犬ホームではどんな生活をしているのか、気になりますよね。施設によって違いますが、スケジュールの一例をご紹介します。
8:30 運動、トイレ
10:00 朝食
11:00 朝寝とケア
13:00 犬同士で過ごす
15:00 散歩、運動
16:00 夕食
17:30 就寝
21:00 夜のトイレ、ケア
0:00 見回り
出典:西日本新聞
犬の状態によって異なりますが、リハビリやケアも行われます。運動も身体を動かすだけではなく、脳のトレーニングを行う施設もあります。施設によって、リハビリがメインだったりケアメインだったりと特徴があるので、どんな老犬ホームなら愛犬に合いそうか見学して確かめたいですね。
老犬ホームに預けた愛犬と会える頻度とは?
老犬ホームの営業時間帯であれば、いつでも愛犬に会える施設がほとんどです。面会の方法が限られている老犬ホームもあるかもしれないので、事前に確認しておきましょう。
シニア犬でなくても老犬ホームに預けられる?
施設によります。例えば「Let‘s」では、犬の幼稚園も併設し、赤ちゃんから老犬まで年齢に関わらず預かっています。飼い主が預かりを希望すれば預かってもらえるところがほとんどです。
老犬ホームに愛犬を預ける際の注意点とは?
急変に対応してくれる体制が整っているかの確認は重要です。夜間常駐のスタッフがいるのに越したことがありませんが、その場合1カ月の利用料金が40万以上になることもあります。予算は将来的な試算をもとにしっかり決めておきましょう。
また別途発生する治療やケアなどに対し、追加で料金が発生するのか否かについても事前に確認が必要です。預けている間に、愛犬の体調が悪化したときに、どう対応してくれるのかについても、事前に老犬ホームと話し合っておく必要があります。
愛犬を預ける老犬ホームを選ぶポイントとは?
老犬ホームを選ぶ際、立地と金額以外にも気をつけておきたい点があります。大事なのは「犬が幸せに暮らせる施設かどうか」。そのために、下記のポイントを押さえておきましょう。
動物取扱業の登録がされているか
老犬ホームを運営するには、自治体に届出を出す必要があります。大前提として、この登録がされているか確認しましょう。
サービス内容
どういったケアがあるのか、どんな施設か、夜中に人は常駐しているのかなど、老犬ホームが提供している基本サービスが、愛犬にとって不足ないかを確認しましょう。
施設やスタッフの雰囲気
飼い主と愛犬の心身に余裕があるうちに、実際に老犬ホームに足を運んで見学してみましょう。そこで施設の雰囲気や清潔さ、スタッフの態度などが分かります。
動物病院との連携
獣医師が常駐している施設ならベストですが、そうではない場合に動物病院とちゃんと連携がとれているのかを確認しましょう。また、愛犬の急変に対応できるかもあらかじめ聞いておきましょう。
予防接種や定期検診の有無
プランや利用料金の中に、予防接種や定期検診が含まれているのか確認しましょう。入っていない場合は、都度、追加料金がかかるようになります。
立地
自宅からあまりに遠すぎると、面会に行けなかったり、危篤の際に立ち会えなかったりします。なるべく通いやすい場所にある老犬ホームを選ぶようにしましょう。
契約料金に含まれているもの
緊急時の動物病院代や葬儀費用がプランに入っておらず、後から高額な請求が来てトラブルになることもあります。契約料金にはどんなことが含まれているのかきちんと確認しましょう。
上記の他にも、毎日のブラッシングや声掛け、今食べさせているドッグフードを引き続き使ってもらえるのかなど、気になることは聞いておきましょう。
逆に、入所前に見学をさせてくれない、―切の面会拒絶、途中で解約ができないといった老犬ホームは要注意です。施設の衛生状態や入所後の愛犬の健康状態が分からないのでは心配ですよね。契約書を作成する時点で、改めて必ずこういった点を確認しましょう。
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