更新 ( 公開)
日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
栄養価の高い緑黄色野菜として知られる、ほうれん草。「犬の健康にいいものを食べさせたい」「長生きしてほしい」という気持ちから、愛犬にもほうれん草を与えたくなってしまいますが、そもそも犬はほうれん草を口にしてもよいのでしょうか。今回は、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に教えていただいた、犬にほうれん草を与えることのメリットや注意点などについて解説していきます。
目次
- 犬にほうれん草を与えても大丈夫?
- 子犬やシニア犬にほうれん草を食べさせても大丈夫?
- ほうれん草に含まれる栄養素と、犬の健康に与える影響は?
- ほうれん草の摂取を避けた方がいい犬種や持病は?
- 犬がほうれん草を摂取することで、アレルギーや中毒症状が起こることはある?
- 犬がほうれん草を摂取する際の適量は?
- 犬にほうれん草をあたえる際のおすすめの方法は?
- 犬に人間用のほうれん草を使った加工食品を与えても大丈夫?
犬にほうれん草を与えても大丈夫?
犬にほうれん草を与えることは問題ありません。ただし、生ではなく必ず茹でてからあげてください。
尿路結石の原因になるシュウ酸に注意!
生のままほうれん草をあげてしまうと、「シュウ酸」という栄養素が尿路結石などの病気を引き起こす可能性があります。シュウ酸は茹でる(アク抜きする)ことで溶け出すため、面倒でもこのひと手間を必ず加えましょう。人間がほうれん草を茹でる際は塩を入れるのが一般的ですが、犬にほうれん草をあげる場合は、塩を入れずにそのまま茹でてください。
基本的には、茹でたほうれん草が犬に悪影響を与えることはありません。しかし、大量に食べた場合やお腹の弱い犬の場合は、うまく消化できず下痢や嘔吐の原因となる可能性もありますので注意しましょう。
また、ほうれん草アレルギーを引き起こす可能性も否定できません。アレルギーでなくても、慣れないものを食べると下痢、嘔吐、痒みなど体調不良を引き起こす犬もいますので気をつけてください。
子犬やシニア犬にほうれん草を食べさせても大丈夫?
茹でたほうれん草であれば、中毒を引き起こす成分は含まれないので基本的には問題ありません。ただし、子犬やシニア犬は、ほうれん草に限らず食べたものを消化する力が低下している可能性があります。犬にほうれん草アレルギーがないかどうかを確認するためにも、初めて与える場合は「少量ずつ」を意識しましょう。
ほうれん草に含まれる栄養素と、犬の健康に与える影響は?
ほうれん草に含まれていて、犬の健康に良い効果が期待できる栄養価は以下の通りです。
βカロテン
抗酸化作用を、有害な活性酸素から守る働きがあります。βカロテンは、これ以外にも皮膚や粘膜の免疫力を維持する働きもあります。
鉄分
貧血の予防に役立つことがあります。
ビタミンK(脂溶性ビタミン)
血液凝固に関わります。ケガをしたときや手術などの際に、出血を抑制することが期待できます。
ほうれん草の摂取を避けた方がいい犬種や持病は?
尿路結石を患っている、過去にかかったことがある犬はほうれん草を食べないほうがよいでしょう。ほうれん草に含まれるシュウ酸が尿路結石の原因となります。茹でることでシュウ酸は少なくなりますが、与えないほうが無難です。
ほかにも、ビタミンKは血液凝固に関わることから、血液凝固抑制剤(ワルファリン)を飲んでいる犬には与えてはいけません。
また、お腹を壊しやすい子や、消化機能が弱まっている可能性がある子には、与えない、または少量から与えるようにしてください。
犬がほうれん草を摂取することで、アレルギーや中毒症状が起こることはある?
茹でたあとであれば、ほうれん草に含まれる成分で犬に中毒を起こすものはありません。ただし、愛犬の体質によっては、ほうれん草にアレルギーを起こす場合もあります。アレルギーや中毒症状を引き起こしてしまった場合は、すぐにかかりつけの動物病院で相談するようにしましょう。
犬がほうれん草を摂取する際の適量は?
ほうれん草に限らず、普段与えているドッグフードにトッピングやおやつを加える際は、一日の必要カロリーの10%を越えない量が目安と言われています。
また、その際も体重に対して上限ギリギリまでいきなり与えるのではなく、少しずつ食べさせるようにしてくださいね。最初は、ドライフードやふだん食べているフードの上にほうれん草をトッピングして食べさせるのもよいでしょう。
犬にほうれん草をあたえる際のおすすめの方法は?
ほうれん草を茹でたあとに水を切り、細かく刻んでからあげましょう。目安は1cmほどです。刻まずにあげてしまうと、非常に食べづらくなってしまいます。
犬に人間用のほうれん草を使った加工食品を与えても大丈夫?
ほうれん草の加工食品といえば、市販の冷凍カットほうれん草やおひたしなどが挙げられます。基本的に加工食品は塩茹でされていたり、味付けされていたりと犬にとっては塩分過多になってしまいがちです。原材料をしっかりと確認して、大丈夫そうであれば与えてもよいですが、基本的には避けたほうが無難でしょう。
第2稿:2021年10月18日更新
初稿:2021年3月17日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。