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オールペットクリニック院長。動物福祉社団法人の運営や東日本大震災時の「石巻動物救護センター」設立・運営など、家庭動物に関わる社会活動を数多く行う。
飼い主の気付いていないところで犬に寄生しているノミ。刺されると痒みが現れるだけでなく、皮膚炎などの原因にもなることをご存じでしょうか。今回は、オールペットクリニック院長の獣医師・平林雅和先生に犬についたノミの対処法や、マダニとの違いについて解説していただきます。
目次
- 犬につくノミの特徴とは?
- ノミとマダニの違いとは?
- 室内犬にノミが寄生する原因は?
- 犬にノミがつくとどうなる?
- 犬のノミは病気の原因になる?
- 犬のノミは人にも悪影響はある?
- 犬にノミがついているときの対処法は?
- 犬についたノミを駆除する方法は?
- 犬にノミがつかないために予防できることは?
- 犬のノミの注意点は?
犬につくノミの特徴とは?
世界中に2,000以上種類があるノミは、国内には76種が存在すると報告されています。国内で確認されているノミは、主にヒトノミ、ネコノミ、イヌノミであり、現在の日本では、犬につくノミのほとんどはネコノミです。ノミの体長は雄が1.2~1.8mm、雌は1.6~2.0㎜です。
ノミは暖かい温度や高い湿度を好み、7~9月は特に活動が活発になります。ノミは13℃以上で活動を始めることから、冬場でも暖房で室温が調節される日本の住環境では、夏場だけでなく冬場もノミ対策が非常に重要になります。
ノミとマダニの違いとは?
ノミとマダニはいずれも吸血するという点で似ていますが、最もわかりやすい違いは大きさです。犬に寄生するマダニは屋外に生息しており、体長はノミよりも少し大きい3~8mm程度あります。マダニは犬に寄生して吸血すると1~2cm程度に膨らむ特徴があり、肉眼での確認も可能です。
室内犬にノミが寄生する原因は?
室内犬にノミがつくのはなぜでしょうか。さまざまな原因が考えられます。
予防薬を定期的に使用していない
予防薬を使用していないと犬にノミが寄生する可能性が高くなります。動物病院で予防薬を処方してもらい、定期的な予防を心がけましょう。垂らすだけのスポットタイプの予防薬もあり、手軽にできるのでおすすめです。
散歩中に寄生された
室内犬でも散歩で外を歩きまわるとノミをもらってくることがあります。主にやぶや草むらに入ったり、他の犬と接触したりすることも寄生する原因の1つです。なるべく家の中にノミ(卵、幼虫、サナギ、成体)を持ち込まないように注意することが重要です。
他の犬、外を出入りしている猫、人間などから寄生した
ノミは室内で飼っている他の犬や猫、人間からも寄生します。特に、外を出入りする猫を一緒に飼っている場合は注意が必要です。ノミの大量発生を防ぐためには、飼っている犬や猫を全頭予防することが重要になります。
犬のブラッシングやシャンプーを怠っている
日々のブラッシングやシャンプーを怠ると、ノミが寄生するきっかけを作りやすくなります。定期的に行うことで犬の毛や皮膚を清潔に保ち、ノミが寄生した場合でも早く発見できます。
家の中にもともとあった卵が孵化した
家の中でノミの卵が孵化することは珍しくありません。カーペットやソファーなど、暗くて湿気のある場所にノミは住み着いているからです。犬の体に寄生しているノミは全体の5%ほどで、残りの95%は卵や幼虫、サナギとして環境の中で生息しています。卵が孵化して犬に寄生することも多いので、家の中も常に清潔に保つことが大切です。
ノミが発生しやすい悪条件が整っている
家の中でノミが発生しやすい条件を作らないようにすることも大切です。ノミはホコリの多い場所や湿気などを好み生息します。目の届きにくい場所も定期的に掃除することで、ノミの発生を抑えることが可能です。
犬にノミがつくとどうなる?
ノミは小さく、肉眼で見つけることが困難です。そのため、飼い主が普段からよく観察し気付いてあげることが大切です。ノミがついた犬には、次のような様子が見られます。
ノミがついた犬によく見られる様子
- 痒がる仕草を見せる
- 皮膚に脱毛している部分がある
- 被毛に黒い粒(ノミの糞)のようなものがある
犬のノミは病気の原因になる?
犬のノミは以下のような病気の原因になり得ます。
ノミ症/ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの寄生により、皮膚炎やアレルギー性皮膚炎を発症することがあります。
瓜実条虫症
瓜実条虫(サナダムシ)が寄生しているノミを飲み込んでしまうと、瓜実条虫症を発症することがあります。
貧血
ノミの吸血速度は非常に速いため、子犬など小さな犬に大量のノミが寄生すると、貧血を起こすことがあります。
犬のノミは人にも悪影響はある?
犬にノミがつくと飼い主にも影響が現れることがあります。飼い主がノミに刺されるとノミ刺咬症になり、強い痒みや水疱が生じることがあります。
また、ノミを介してバルトネラ菌が潜伏した犬に噛まれたりひっかかれたりすることで、飼い主がバルトネラ症(猫ひっかき病)を発症することもあります。
犬にノミがついているときの対処法は?
犬にノミがついたときは、シャンプーで犬の体についた卵を洗い流し、動物病院でノミの駆除薬・予防薬を処方してもらいます。
重要なのは、ノミがついた対象の犬だけではなく、室内で飼っている全てのペットに対してノミ駆除薬・予防薬を投与することです。同時に室内を徹底的に掃除することも大切です。
犬についたノミを駆除する方法は?
犬にノミがついているのを発見した場合、どう駆除すればよいでしょうか。
つぶすのはNG
犬にノミがついているのを発見したからと言って、手でつぶしてしまうのは危険です。雌のノミをつぶすと体内にある卵を散乱させてしまう可能性があるからです。
また、ノミをつぶしたことで、瓜実条虫が飼い主の手につき、誤って飲み込んでしまうと、飼い主が感染してしまうこともあります。
正しいノミの駆除方法
犬にノミがついたときの対処法と同様です。犬についたノミをシャンプーで洗い流した後、動物病院を受診して駆除薬・予防薬を処方してもらいましょう。薬にはさまざまなタイプがあります。
犬にノミがつかないために予防できることは?
犬にノミがつくことを予防するために、普段から飼い主ができることがあります。
予防薬を定期的に投与する
定期的な予防薬の投与がノミ対策にはもっとも効果的です。犬の体にノミを寄生させないだけでなく、飼い主が感染しないためにも重要なことだと言えます。より高い効果を得るために、予防薬は動物病院で処方してもらいましょう。
定期的にブラッシングやシャンプーなどのお手入れをする
ブラッシングやシャンプーなど定期的にお手入れすることで、ノミが寄生していた場合に早めに発見することが可能です。脱毛している部分やノミの糞がついていないか確認しながら、犬の体を清潔に保つように心がけるとよいでしょう。
ノミのいない清潔な環境作り
ノミが住み着きにくい清潔な環境を作ることは大切です。フケやほこり、食べ物のカスなどはノミの幼虫のエサとなります。掃除機をかけて換気をこまめにするなど、ノミが生息しづらい環境造りを心がけるとよいでしょう。
散歩コースを変える
犬の散歩コースを見直すこともノミ予防には重要です。草むらや自然の多い場所にはノミが住みついていることが多く、犬に寄生する可能性が高くなります。散歩コースを変えて、ノミが活発になる暖かい時期だけでも自然の多い場所は避けるのがよいでしょう。
人工芝や室内ドッグランを活用する
自然の草がない人口芝や室内のドッグランを利用するのもおすすめです。ドッグランで遊ばせることは犬にとってストレス発散や運動不足の解消になります。必ずノミの予防はした上で、ドッグランに連れていきましょう。
犬のノミの注意点は?
動物病院で処方される予防薬を定期的に投与しましょう。被毛のお手入れやシャンプーなどをすることで、ノミの早期発見に繋がります。痒がる反応や部分的に脱毛していないか、ノミの糞がないかも丁寧に確認してください。また、ノミが生息しにくい清潔な住環境を保つことを心がけましょう。