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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬に耳をかゆがる様子が見られたら、その原因は耳ダニかもしれません。耳の中に強いかゆみを引き起こし、愛犬の生活の質を下げるだけでなく、耳の炎症などを引き起こします。犬にとっては大きなストレスとなる耳ダニの症状と対処法について、獣医師でchicoどうぶつ診療所所長 林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬に寄生する耳ダニ(耳ヒゼンダニ)とは?
- 犬に耳ダニが寄生する原因や寄生する経路は?
- 犬が耳ダニに感染した場合の症状は?
- 犬が耳ダニに感染してるかどうかを調べる検査とは?
- 犬の耳ダニの治療法は?
- 犬の耳ダニの予防、または悪化させないためにすべきこととは?
犬に寄生する耳ダニ(耳ヒゼンダニ)とは?
耳ダニは白色で胴体が丸く足が6本あり、耳の中に寄生します。耳疥癬(かいせん)とも呼ばれ、0.3~0.5mm程度の大きさです。このダニが犬の外耳道に入り込み、耳垢や耳の分泌液などを食物とし、寄生することによって犬にさまざまな症状を引き起こします。耳ダニは犬の皮膚表面から血液を吸い取ることもあり、アレルギー反応が引き起こされます。犬の外耳道内で卵を産むことがあるので、早期発見が大切です。
犬に耳ダニが寄生する原因や寄生する経路は?
一般的な家庭の屋内飼いで感染することはほとんどありませんが、屋外での遊びなどで外から持ち帰る場合があります。また、集団で飼育された子犬には耳ダニがついていることもあるかもしれません。迎え入れたばかりの犬が耳をしきりに気にしているようなら、耳ダニを疑ってみましょう。
耳ダニに感染した他の犬から感染する
生活範囲に耳ダニの幼虫や卵が落ちているような環境で飼育されている場合は、他の犬に感染する可能性があります。同じ家庭内にいる犬が感染してしまったのがわかったら、一時的に引き離して予防するようにしましょう。
ベッドや敷物を経由して感染
耳ダニの卵や成虫に汚染されたブラシ・ベッド・敷物から感染してしまうことがあります。
野生動物から感染する
上記の他にも野生動物から感染する場合があります。人間が耳ダニに感染することはありませんが、飼い主が耳ダニに感染している野生動物を触った手で愛犬を触ることで感染してしまうこともあります。散歩中に他の動物に触れる場合にはそういったリスクも考慮することが重要です。
犬が耳ダニに感染した場合の症状は?
耳ダニに感染すると強いかゆみが引き起こされるために、頻繁に耳を気にする仕草が見られるのは、ここまでに説明した通りです。かゆみ以外のほかの症状についてもチェックしておきましょう。
頻繁に頭を振る
耳ダニの寄生により強いかゆみを伴うため、頭を振ってそのかゆみを回避しようとします。
耳垢が黒くなる
吸血した耳ダニの糞が混じって、コーヒーカスのような黒い耳垢が見られるようになります。
耳の辺りに触れるのを嫌がる
炎症が進むとかゆみに加えて痛みを感じるようになります。そのため、普段は平気な耳の周りに触れられることを非常に嫌がるようになります。
耳が臭うようになる
炎症反応がひどくなり細菌やマラセチアが増殖します。マラセチアは犬の皮膚の表面に生存する真菌(カビの一種)なのですが、増殖することにより耳が臭うようになります。
耳介が腫れる
耳介(じかい)とは、動物の耳のうち、外に張り出て飛び出している部分のことですが、炎症反応によって腫れてしまうことがあります。
平衡障害が起きる
耳道の炎症などによって三半規管に影響を及ぼし、平衡障害を引き起こします。その結果、旋回運動をしたり、ふらついてしまったりすることがあります。
犬が耳ダニに感染してるかどうかを調べる検査とは?
愛犬に耳ダニに関する症状が見られても、病院に行かずに症状の原因を確定することは難しいです。疑われる症状や気になることがあれば、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
耳垢検査
精密検査の場合には、病院で耳垢検査を行い、顕微鏡下で耳ダニが観察されるかを検査します。検査費用としては、概ね1,000〜1,500円くらいが相場となります。
耳鏡検査、ビデオオトスコープ検査
1ミリ以下という小さな耳ダニは肉眼で断定することは難しいので、耳の中を顕微鏡で検査する耳鏡検査や、耳の内視鏡を使ったビデオオトスコープ検査で診断します。費用は病院により変わってきますが、耳垢検査と比較して高額になります。また全身麻酔が必要な場合もあるので、さらに検査費用が高額になることがあります。
犬の耳ダニの治療法は?
犬の耳ダニを放置すると、外耳炎、中耳炎、内耳炎、耳血腫などという流れで症状が進行する可能性もあります。愛犬に耳ダニの寄生が疑われた場合にはすぐに病院を受診し、完全に耳ダニが確認されなくなるまで、根気よく治療する必要があります。耳ダニが卵から孵化し、成虫になるまでの3週間は最低でも治療を続けましょう。代表的な治療法は以下のようなものになります。
駆虫剤の投与
背中に駆虫剤を垂らすスポットタイプが主流です。よく使われるセラメクチンという薬の場合には、神経および筋繊維に対して塩素イオンの透過性を増加させることでダニやノミを死滅させることができると言われています。
イベルメクチンの注射
前述のセラメクチンと同様に作用します。ただし、コリー系犬種には体内の遺伝子構造の関係でイベルメクチン投与をしてはいけません。イベルメクチンの投与を希望する場合は、獣医師の処方に従うようにしましょう。
耳洗浄
耳の入り口から鼓膜までを洗浄することで、耳道自体の環境を整えていきます。
犬の耳ダニの予防、または悪化させないためにすべきこととは?
清潔に整えられた屋内で耳ダニがつくことは少ないのですが、可能性が全くないわけではありません。環境や身体の状態を整えて、耳ダニを予防することも大切です。
耳掃除のやりすぎに注意する
過度な耳掃除によって耳道からの分泌物が多く出てしまったり、耳道を傷つけて炎症を起こしてしまったりすることがあるので気をつけましょう。
犬の耳の毛をトリミングする
犬の耳の中の毛を無理に抜くと余計に炎症を広げてしまうこともありますが、密に発毛している場合には、耳道の通気が悪くなることで耳疾患につながる可能性があります。自己判断で無理に抜いたりすることはNGですが、トリミングサロンや病院などで、必要な場合に限り抜毛してもらうことをオススメします。
犬の耳の中を清潔な状態に保つ
垂れ耳を持つ犬の場合には他の犬よりも耳の通気が悪い状態になりやすいため、定期的に耳介をめくって耳の換気をするといいでしょう。また、定期的に掃除をすることも大事です。耳の中を傷つけてしまうのが心配であれば、トリミングサロンや病院で処置をしてもらうといいでしょう。
家の中を掃除する
予期せぬところから耳ダニの幼虫や卵を家の中に持ち込んでしまっている可能性もあります。外から持ちこんだ耳ダニが愛犬に寄生してしまう前に、こまめに部屋の掃除をして原因を除去することも重要です。
犬が使うものはきちんと消毒する
愛犬用のマットやタオルなどはこまめに消毒することをオススメします。消毒の仕方としては、80℃のお湯で10分間程度漬けて洗濯すると効果があると言われています。
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