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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬も人と同じように皮膚が傷つき、再生する過程でかさぶたができることがあります。もし、愛犬にかさぶたができていたら、どんなことに注意すればいいのでしょうか。かさぶたの原因や動物病院を受診すべきタイミングなどについて、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬の皮膚の構成とは?
- そもそもかさぶたとは?
- 犬にかさぶたができる原因は?
- 心配すべき犬のかさぶたの特徴とは?
- 犬のかさぶたの対処法とは?
- 犬のかさぶたを予防するには?
犬の皮膚の構成とは?
犬の体を覆う皮膚は、人間と同じように外側から表皮、真皮、皮下組織の3つの層から構成されています。皮膚は知覚や代謝など、生きる上で欠かせない大切な機能を担っています。
表皮
表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4つの層にわかれています。犬の表皮の角質層は、人間の3分の1程度の厚さだといわれており、傷つきやすくデリケートな状態です。
真皮
表皮と皮下組織の間にある真皮は、コラーゲンや弾性線維からできています。体を守る役割もあり、血管やリンパ管、神経の末梢などが含まれています。
皮下組織
主に脂肪細胞から作られる皮下組織にも血管や神経などが通っています。また、皮膚の下の筋肉組織と真皮を繋ぐ役割も担っています。
そもそもかさぶたとは?
かさぶたは、正式には痂皮(かひ)と呼ばれます。皮膚から出血してしまったときに、血を止めるばんそうこうのような役割を担っています。出血すると、血液中の血小板から分泌されるフィブリン(硬タンパク質)が、赤血球や血小板にからみついて固まりをつくります。その固まりが乾燥したものがかさぶたです。その他にも、膿や壊死組織が皮膚表面で固まったものも、かさぶたに分類されることがあります。
犬にかさぶたができる原因は?
犬の皮膚にかさぶたができる原因は、ちょっとしたケガから重大な病気までさまざまです。愛犬の状態をよく観察して、かさぶたの原因を見分けましょう。
外傷
犬同士のケンカでできてしまった傷や、散歩時の切り傷や擦り傷など、皮膚に傷がついて出血すると、止血のためにかさぶたが形成されます。
アレルギー
食べ物や花粉、ハウスダスト、ノミなどのアレルギーによって皮膚がかゆくなり、自分の爪でひっかいてしまった傷が原因になってかさぶたができます。
皮膚のガン、腫瘍
扁平上皮癌やリンパ腫など、皮膚にできる腫瘍の表面が壊れて出血し、かさぶたになることがあります。
感染症
疥癬(小さなダニが寄生して起こるかゆみを伴う感染症)や皮膚糸状菌、ニキビダニ、膿皮症(ブドウ球菌による感染症)などの感染症もかさぶたの原因です。感染症によって体がかゆくなると、犬は自分の爪で引っかいてしまいます。皮膚が傷ついたり、膿疱が破れたりすると、血や滲出液がにじみ出てかさぶたが形成されます。
その他の皮膚の疾患
犬に多い膿皮症や脂漏症など、さまざまな皮膚疾患がかさぶたの原因となります。また、シャンプーをしすぎで皮膚炎を引き起こし、かさぶたができることもあります。
心配すべき犬のかさぶたの特徴とは?
一口にかさぶたといっても、自宅で様子を見ても問題無いケースと、いち早く受診した方がいいケースに分けられます。ガンなどの大きな病気が潜んでいることもあるため、心配な時は迷わずに動物病院の診察を受けましょう。
心配が要らないかさぶたの特徴
傷が浅く、皮膚の表面にできた小さなかさぶたや、かさぶたが自然と剥がれ落ちる場合、出血や膿が止まっていたり、新しい皮膚ができていたりする場合などは、おおむね心配いりません。病院を受診せずに自宅で様子をみても大丈夫でしょう。
心配すべき犬のかさぶたの特徴とは?
膿が大量に出たり、出血を繰り返したり、何度もかさぶたができる場合には、早めに病院を受診しましょう。皮膚腫瘍やアレルギー、重度の皮膚病、感染症などの恐れがあるため、適切な治療が必要です。
犬のかさぶたの対処法とは?
犬のかさぶたも人間のかさぶたと基本的には同じです。傷を早く治すためにも無理にはがさないことが大切です。
とにかく無理矢理はがさない
小さなケガなどが原因となったかさぶたで、自宅で様子を見る場合は、とにかく放っておくのが1番の治療法です。気になっても無理にはがさず、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。しかし、犬が自分でかさぶたを舐めたり引っかいたりして、かさぶたが治らなかったり、逆に悪化することもあります。必要に応じて、エリザベスカラーや防護服、包帯などを使用して対策しましょう。ただ、エリザベスカラーがストレスになったり、服や包帯が蒸れて悪化してしまったりすることもあります。犬がかさぶたを気にしている場合は、動物病院で相談するのもおすすめです。
人間用の薬を塗るのはNG
傷がかさぶたができても、人間用の軟膏や消毒薬を使うのは厳禁です。犬の皮膚に合わずに悪化したり、塗った薬をなめたりして体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
犬のかさぶたを予防するには?
まずは、環境を見直してみましょう。鋭い枝やゴツゴツした石がある場所をさけて散歩をしたり、室内をチェックして、犬がケガをしないようにしたり気を配ることが大切です。また、なるべくアレルギーが起きないように、室内を清潔に保ち、与えているフードの素材を確認し、必要に応じて見直しましょう。感染症などにかからないためには、予防する意識が重要です。ノミ、ダニ対策もあわせて行うといいでしょう。
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