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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
これからミニチュア・ピンシャーを飼おうとしている方、すでに飼っている方にとっては平均寿命がどのくらいなのか、気になるところでしょう。ミニチュア・ピンシャーの健康を守り、長生きさせるためには犬種の特徴に合わせたお世話が必要です。今回の記事では、健康に長生きさせる秘訣や、注意すべき病気などをバーニー動物病院千林分院の堂山有里先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- ミニチュア・ピンシャーの平均・最高寿命は?
- 人間でいうと何歳?ミニチュア・ピンシャーの年齢換算表
- ミニチュア・ピンシャーがかかりやすい病気やその予防法は?
- ミニチュア・ピンシャーを長生きさせる秘訣は?
- ミニチュア・ピンシャーの食事で気を付けたいポイントは?
- ミニチュア・ピンシャーの老化のサインは?
- ミニチュア・ピンシャーがシニア期に入ったときのケアは?
ミニチュア・ピンシャーの平均・最高寿命は?
ミニチュア・ピンシャーの平均寿命は13.6歳です。小型犬の平均寿命は一般的に12〜15歳で、平均的な長さといえそうです。性差による寿命の違いは確認されていません。最高寿命は18歳といわれています。
人間でいうと何歳?ミニチュア・ピンシャーの年齢換算表
小型犬の年齢を人間の年齢に換算する場合、諸説ありますが「1歳で人間の成人(20歳)となり、その後4年ずつ歳をとる」といわれています。こちらの表を参考に愛犬が人間でいうと何歳くらいなのか確認しておくと良いでしょう。
ミニチュア・ピンシャーの年齢 |
人間の年齢 |
1か月(子犬期) |
赤ちゃん |
3か月 |
4歳 |
1歳(成犬) |
20歳 |
2歳 |
24歳 |
3歳 |
28歳 |
4歳 |
32歳 |
5歳 |
36歳 |
6歳 |
40歳 |
7歳(シニア期) |
44歳 |
8歳 |
48歳 |
9歳 |
52歳 |
10歳 |
56歳 |
11歳 |
60歳 |
12歳(高齢期) |
64歳 |
13歳 |
68歳 |
14歳 |
72歳 |
18歳 |
88歳 |
近年、新たに提唱された計算式も
犬の年齢を人間の年齢に換算する際は先ほど紹介したような方法が一般的ですが、2019年に米国のカリフォルニア大学で新たな計算式が提唱されました。計算式や計算方法は以下の通りです。実際に数字を当てはめて計算すると、先ほど紹介した年齢換算表の年齢よりも高く換算されると思います。
計算式
「人間に換算した年齢=16ln(犬の年齢)+31」
計算方法
電卓で計算してみましょう(iPhoneの場合は横向きに置きます)。
(1)年齢を入れてlnを押します。
(2)その数字に16をかけます。
(3)その数字に31を足すと、換算年齢となります。
※参考
Tina Wang,Jianzhu Ma, Andrew N. Hogan,Samson Fong, Katherine Licon,Brian Tsui,Jason F.Kreisberg, Peter D. Adams,Anne-Ruxandra Carvunis, Danika L. Bannasch, Elaine A.Ostrander,Trey Ideker,Quantitative translation of dog-to-human aging by conserved remodeling of epigenetic networks,November 04, 2019.
ミニチュア・ピンシャーがかかりやすい病気やその予防法は?
ミニチュア・ピンシャーは固有の遺伝性疾患は少ない犬種だとされていますが、かかりやすい病気はあります。健康診断で早期発見に努めるなど、気をつけてあげましょう。
レッグペテルス病
股関節を形成している大腿骨頭が壊死を起こし関節炎や骨折を起こす病気です。初期は歩き方の変化や何となく痛がるというような症状が見られ、進行すると足を上げたまま3本足で歩いたり痛みが強くなったりすることもあります。痛み止めやレーザー治療のような保存療法、手術による外科療法など症状や進行度合いにより治療法を選択します。原因は明らかでないため予防が難しい病気です。
膝蓋骨脱臼
「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう状態のことです。脱臼の程度や骨の変形の度合いによりますが、無症状から歩くことが困難な状態まで幅広い症状が見られます。治療法は痛み止めやレーザー治療のような保存療法、手術による外科療法など、ステージに応じて選択されます。
皮膚疾患
ミニチュア・ピンシャーは他の犬種と比較して皮膚疾患が多く、アレルギーやアトピー、湿疹、外耳炎などを発症しやすい傾向があります。日頃からシャンプーやブラッシングなどを行うようにし、皮膚と被毛に異常が見られた場合は、動物病院で早めに診てもらいましょう。
ミニチュア・ピンシャーを長生きさせる秘訣は?
ミニチュア・ピンシャーを長生きさせる秘訣はいくつかあります。一つ一つ確認し、できることからやっていきましょう。
日常的にお手入れをする
日頃からスキンシップを取り、体の様子をチェックすることで病気やケガなどの異常に早めに気づくことができます。ただ、ミニチュア・ピンシャーは体を触られすぎるとストレスを感じることもあるので、お手入れの際は嫌がる部分は短時間で終わらせるなど配慮してあげるとよいでしょう。
口内環境のケア
高齢になると免疫力の低下や歯石の蓄積から歯周病になることが多く、独特の口臭がする、よだれが増える、食事を食べにくそうするなどの症状が出てきます。歯周病は万病の元となるため口腔環境のケアはとても大切です。若い頃から歯磨きの習慣をつけておき、定期的に歯を磨くと病気の予防になります。動物病院のパピークラスに参加したりドッグトレーナーに指導を受けたりして、なるべく1歳未満のうちに歯磨きを受け入れてくれるように練習しましょう。
中型犬並みの運動量が必要なので十分な運動(散歩)を行う
ミニチュア・ピンシャーは小柄ですが運動量は中型犬並みに必要な犬種です。運動が足りないとストレスを感じ不調の原因となります。毎日の散歩では十分な時間をとり単調に歩くだけでなく、ときには走らせたりボール遊びをしたりと変化をつけながら楽しめるようにしてあげましょう。
ストレスの少ない飼育環境にする
家族には深い愛着を持つ一方で、他人には警戒心が強く、大型犬にも向かっていく気の強さと神経質な面を併せ持っています。ほかの犬や人と仲良くすることは比較的苦手であるため、犬のペースを大切にしてストレスがたまらないようにしてあげましょう。
誤飲・誤食をさせない環境づくり
身体能力が高いため、脅威のジャンプ力で台所やテーブルの上まで届いてしまうことがあります。「高いところに置いてあるから大丈夫」と過信せず、犬が口にしてはいけないものは扉付きの戸棚にしまったり開封できないようにしたりするなどして、誤飲・誤食をさせない環境にしましょう。
熱中症対策
ミニチュア・ピンシャーのように毛色が濃い犬種は体温が高くなりやすいです。外気温がさほど高くなくても熱中症になることがあるので気をつけましょう。息が荒い、舌の色が悪い、ぐったりしているなどの様子があれば、熱中症の可能性が高いです。夏の散歩は気温の涼しい時間帯を選んで、犬の様子をよく観察しながら行ってください。
子犬の頃から定期的に健康診断を行う
元気なうちから健康診断を受けておくと、些細な変化に気づくことができるだけなく、病気の早期発見にもつながるので定期的に受けるようにしましょう。シニア期までは年に1回、シニア期以降は半年に1回の健康診断がおすすめです。
ミニチュア・ピンシャーの食事で気を付けたいポイントは?
個体差はありますが、ミニチュア・ピンシャーは比較的よく食べる子が多いです。太らせないよう体重管理することも大切です。食事を与える際に気をつけたいポイントを紹介します。
食事の与え方
ライフステージによって食事内容を見直す必要があります。高たんぱくで低炭水化物の食事、また、保存料や添加物の少ないフードやおやつを選ぶようにしましょう。
適切な食事量
動物病院で愛犬にあった1日の摂取カロリーを教えてもらい、そのカロリーに応じた食事量を与えます。体格や運動量などにも左右されますが、ドッグフードを与える場合は袋に記載された量を目安にしましょう。週1回は犬の体重をはかり、太るようであれば食事量を減らし、痩せてくるようであれば増やします。現在の体重が適正かどうかはBCS(ボディ・コンディション・スコア)で判断しますが、わかりにくい場合は獣医師に相談しましょう。
ミニチュア・ピンシャーの老化のサインは?
犬が歳をとるとどのような変化が起こるのかを把握しておけば、飼い主も焦らず対処することができます。ミニチュア・ピンシャーの老化のサインについて詳しく見ていきましょう。
今までのように元気に走り回らなくなる
外出から帰っても玄関まで迎えに来なくなった、散歩に行きたがらない、前ほど遊びたがらないなど、率先して動く様子が見られなくなります。また、動きが緩慢(かんまん)になる様子も見られるでしょう。関節の痛みがあったり、体調の不調により動きにくかったりする場合があるので、何となく元気がなくなってきたと思ったら、動物病院で悪いところがないのか診てもらいましょう。
散歩に行ってもあまり歩こうとしないで止まってしまう
足腰が弱ってきたり、体力が低下したりして長い距離を歩くことができなくなってきます。家の周りだけ散歩させる、カートに乗って公園まで連れて行くなど、そのときの状態に合わせて、散歩を楽しめるように工夫してみましょう。
睡眠時間が増える
朝起きずにいつまでも寝ていたり、昼間もずっと寝ていたりするなど、1日のほとんどの時間を寝て過ごすようになります。体調の不調により元気に動き回れなくなっていることもありますので、睡眠時間が増えたと思ったら動物病院で診てもらいましょう。
目が濁る
黒目がキラキラと輝いて見えるのは若くて健康な証拠です。一方で、老化してくると黒目は白く濁ってみえ、輝きがなくなってきます。ドライアイや白内障などの疾患により目が濁って見える場合もありますので、病院を受診しましょう。
耳が遠くなる
耳の聞こえが悪くなってくると呼んでも振り向かない、急に触るとびっくりする、雷を怖がらなくなるなどの様子が現れます。現状では、耳の聞こえに関しての特効薬はありませんが、脳の疾患により聴覚を失っていたり、体調に不調があったりということも考えられますので、悪いところがないか一度、診てもらうことをおすすめします。
白髪が目立つようになる
特に顔まわりや頭部に白い毛が見られるようになります。白い毛は老化現象の一種ですが、治療方法は未だ見つかっていません。白い毛が増えてきたなと思ったら今まで以上に栄養をとり、ストレスのない生活を送れるよう配慮しましょう。またしっかり眠れるよう日常生活を見直すとよいでしょう。
口臭がある
高齢になると免疫力の低下や歯石の蓄積から歯周病になることが多く、独特の口臭がする、よだれが増える、食事を食べにくそうするなどの症状が出てきます。歯周病の予防は歯磨きで行いますが、歯周病の治療は動物病院で行います。愛犬を連れて治療を受けましょう。
排泄の失敗をするようになる
室内で排泄をさせている場合、若い頃は失敗することがなかった犬がトイレの場所でないところで排泄するようになることがあります。この場合、認知機能の低下により排泄場所を忘れてしまっている、足腰の筋力の低下により排泄場所までたどり着けないなど複数の原因が考えられます。愛犬が排泄を失敗するようになったら、なぜ失敗するのかを見極め、適切に対処しましょう。
ミニチュア・ピンシャーがシニア期に入ったときのケアは?
ミニチュア・ピンシャーは、7歳からがシニア期、12歳頃から高齢期とされることが多いです。犬の生活スタイルも今までと同じではなく、年齢に応じて見直す必要があります。具体的には、以下の通りです。
散歩で歩く距離を調整する
歩く速度や距離を年齢に合わせて調整しましょう。本来、ミニチュア・ピンシャーは運動が大好きな犬種ですので、運動はストレス発散や健康維持に役立ちます。シニア期になっても散歩は継続したほうがよいですが、体調や体力に合わせてあまり長い距離を歩けなくなったり、早いスピードで歩けなくなったりします。速度を加減し、無理のない範囲で散歩に出てあげましょう。
寒さ対策を行う
もともとミニチュア・ピンシャーは短毛なため寒さに弱い犬種です。シニア期になると代謝が落ち体を温める力が弱ってくるので、特に冬の寒さは体力を消耗する原因となります。洋服を着せる、部屋の温度を調節するなど、しっかり寒さ対策を行ってください。足湯や温灸もおすすめです。
肥満防止のために食事内容を低カロリーで高タンパクにする
比較的、食欲旺盛な子が多い犬種ですので、欲しがるだけ食事を与えると太ってしまうことがあります。太ると関節に負担がかかるだけでなく、体に様々な悪影響があります。1日に与えて良い量を決めて、その範囲で与えるようにしてください。また、通常量で足りない場合は低カロリーの食材を加えるなどして満腹感が出るようにすると良いでしょう。