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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
おうちに子犬を迎えたら、飼い主も愛犬も、生活の変化に順応することに忙しい日々が続きますね。なるべく早くしつけもスタートしなければなりませんし、なかなかシャンプーにまで気が回らないかもしれません。では、子犬のシャンプーはいつ始めればよいのでしょうか。今回の記事では、子犬のシャンプーのタイミングや正しいやり方について、ふくふく動物病院 院長の平松育子先生に解説していただきます。
目次
- 子犬にシャンプーは必要?
- 子犬のシャンプーはいつ頃から始めるべき?
- 子犬はどこで洗うべき?
- 子犬のシャンプーの適切な頻度は?
- 子犬のシャンプーの正しいやり方
- 犬種や被毛の種類別、シャンプーの注意点は?
- 子犬にシャンプーする際の注意点
- 慣れないうちはペットサロンに子犬のシャンプーをお願いするのもおすすめ
子犬にシャンプーは必要?
清潔そうに見える子犬であっても、シャンプーをしないと体臭や汚れなどが目立つようになり、皮膚炎やフケの原因になります。皮膚や被毛を清潔に保つために、子犬にもシャンプーが必要です。
子犬のころからシャンプーに慣れさせる
成犬になって初めてシャンプーを体験すると、怖がる犬もいます。子犬のころはさまざまな出来事に慣れさせることができる時期なので、早いうちからシャンプーに慣れさせましょう。シャンプーが怖いという印象を持たせないために、無理せず少しずつ、褒めながら行うことが大切です。
子犬のシャンプーはいつ頃から始めるべき?
子犬のシャンプーは、念のために混合ワクチンを1回接種した後に行うことをおすすめします。自宅でシャンプーする代わりにトリミングサロンにお願いする場合は、混合ワクチンを3回接種し、最後の接種日から2週間以上経過してからが望ましいでしょう。サロンには不特定多数の犬が集まるので、十分な免疫力がついていない状態で連れていくのは控えた方が良いです。
体調を見ながらシャンプーさせる
子犬はシャンプー後に下痢などの体調不良を起こすことがあります。シャンプーの間も身体が冷えないように注意し、できるだけ短時間で終わらせるようにしましょう。
子犬はどこで洗うべき?
子犬のシャンプーは、基本的にお風呂場で行いましょう。洗面台やシンクなどの利用は、後ろ足で立ち上がった時に滑って落ちてしまう恐れがあり、おすすめできません。お風呂場でも、床に直接立たせてシャンプーすると、滑ってけがをしたり、シャンプーが混ざった水をなめてしまう可能性があります。犬のシャンプー用のバスタブを利用し、浅めにお湯を張ってその中で洗うと安心です。その際にも、バスタブの中に溜まっているお湯を飲まないように注意してください。
子犬のシャンプーの適切な頻度は?
シャンプーをしすぎると皮膚の表面を覆っている必要な皮脂が取れて乾燥し、フケがたくさん出たり、乾燥が原因となって痒みが出たりすることがあります。子犬のシャンプーは成犬と同様に、1か月に1回程度を目安にしてください。
子犬のシャンプーの正しいやり方
それでは、子犬のシャンプーの正しいやり方について、順番に見ていきましょう。
シャンプー前に用意するもの
シャンプーを始めてから慌てないように、犬用シャンプー、スリッカーブラシ、コーム、タオル、バスタオル、犬のシャンプー用のバスタブ、ドライヤーなどを準備しておきましょう。
汚れた部分だけ洗う場合
部分洗いを行う際には、洗面器にぬるま湯を張り片手で子犬をしっかり支え、反対の手でぬるま湯をすくうようにして汚れている部分を洗っていきます。目の周りや口の周りが汚れていたら、タオルや柔らかいスポンジにぬるま湯を含ませ軽く絞ったもので、優しく洗いましょう。その際、シャンプー液が目に入ると炎症を起こしてしまいますので、注意が必要です。部分洗いでも、汚れが落ちた後はしっかり乾かしましょう。
全身を洗う場合
1.シャンプー前の準備を整える
シャンプーグッズを揃えたら、まずはブラッシングをしっかり行いムダ毛や絡んだ毛を取り除いておきましょう。シャンプー後の準備も大切です。エアコンをあらかじめつけておき、21~25度程の快適な室温にしておきましょう。ドライヤーもコンセントにさした状態で準備しておきます。また、シャンプーを行い爪が少し柔らかくなった状態での爪切りはおすすめです。余裕がある場合、爪切りの準備もしておくといいでしょう。
2.子犬の体を濡らす
・最適な温度
季節にもよりますが、お湯の温度は38度程度が最適です。
・体を濡らしていく順番
お尻→尻尾→背中→体→胸→四肢→顔の順で少しずつ濡らしていきましょう。顔にかかることを怖がる子が多いので、顔はスポンジや小さめのタオルで拭いてもよいでしょう。
3.シャンプーで洗う
シャンプーは指の腹でマッサージするように洗い、爪を立てないように注意しましょう。汚れが気になる部位は爪でゴシゴシと力を入れたくなりますが、皮膚が炎症を起こしたり、皮膚病の原因になる可能性も。また、原液を直接皮膚につけるのではなく、スポンジにシャンプー液をつけて良くもんで泡を作り、被毛に乗せてマッサージするように優しく洗うと良いでしょう。
4.シャンプーを洗い流す
顔→耳→胸→背中→体→四肢→尻尾の順で洗い流します。犬の顔を上に向けて、鼻にお湯が入らないようにしましょう。シャワーの勢いを強くしてしまうと、音や刺激で怖がる場合があります。しっかりすすいだら、シャンプー液が残りやすく、もともと皮膚が弱い部位である脇や内股などの、くぼんでいる部位をチェックしましょう。
5.水分をよく切り、タオルで拭き取る
犬は人と異なり全身に被毛が生えているため、乾かすのに時間がかかります。被毛が長い犬の場合は毛を軽く握るようにして、よく水分を絞りましょう。
・短毛種の場合
タオルで体を包むようにして水分をとっていきます。指の間、鼻回りなどをしっかり拭いておくと、乾かす時間が短縮されます。
・長毛種の場合
長毛種やプードルの場合は、水分の拭き取りすぎは良くありません。拭き取り過ぎると、毛が絡まるなどしてきれいに乾かなくなってしまいます。特にプードルの場合は、足先以外は拭かない方が良いです。
6.体を乾かす
・ブローの順番
お腹→背中→体→四肢→顔→耳→尻尾の順番で乾かしていきます。ドライヤーを温風にして体から20㎝以上離し、熱くないか必ず確認してください。ブラシやスリッカーで根元からしっかり毛をとかしながら乾かしましょう。脇の下、内股、指の間、あごの下などは乾き残しが出やすい場所なので、最終チェックを忘れずに。
犬種や被毛の種類別、シャンプーの注意点は?
ダブルコート犬種、短毛種それぞれのシャンプーのポイントを見ていきましょう。
ダブルコートの犬種
春から夏、秋から冬に換毛し、換毛期には抜け毛が多くなり毛玉もできやすくなります。しっかりブラッシングを行い、できるだけ抜け毛を取り除いてからシャンプーしましょう。ダブルコート犬種は被毛を乾かすのに時間がかかりますので、タオルドライをしっかり行い、完全に乾かすようにしてください。生乾きのまま放置してしまうと、細菌などが繁殖しやすくなり皮膚病や体臭の原因になってしまいます。
短毛種
短頭種は気管をはじめとする呼吸器系が弱い犬が多く、シャンプーやドライヤーの後に体調不良を起こすことがあります。また、シャンプーのお湯やドライヤーによって体温が上がり、熱中症を引き起こしてしまうこともあります。「ガーガー」と呼吸音が荒く、開口呼吸やチアノーゼが起こっている場合は要注意です。特に夏場はエアコンを低めに設定し、様子を確認しながら手早く行いましょう。
子犬にシャンプーする際の注意点
子犬のシャンプーで一番注意したいのは、お風呂嫌いにさせないことです。それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
いきなりシャンプーしないこと
急にお湯をかけられても子犬は何をされているのか理解できませんし、逆にシャンプーすることに苦手意識を持ってしまう可能性もあります。いきなりシャンプーせずに、まずは身体に触られることに慣らしていきましょう。嫌がらないで触らせてくれるようになったら、ブラッシングをして徐々に慣らしていきましょう。嫌な印象を持ってしまうと後々大変になります。まずは、焦らずに身体を触ることから始めましょう。
ワクチン接種前後1週間は控える
ワクチン接種後は発熱、嘔吐下痢、接種部位の痛みなどの副反応が起こる場合があります。元気そうに見えても体力が衰えている可能性があるので、この時期のシャンプーは控えましょう。
シャンプー剤は必ず犬専用のものを使う
人間の皮膚のpHは弱酸性ですが、犬の皮膚のpHは弱アルカリ性ですので、シャンプー剤も必ず犬専用のものを使用しましょう。シャンプーの後痒がる、フケが多いなどの症状があればシャンプーが合っていない可能性があります。
皮膚が弱い体質や皮膚疾患がある場合は獣医師に相談する
皮膚を痒がる、湿疹ができているなどの皮膚の症状があれば、獣医師に相談しましょう。愛犬に合ったシャンプー剤を使うことが大事です。
目のまわりはよく流す
目の中にシャンプー液が入ってしまうと結膜炎などの原因になることもあります。目の違和感を気にして自分でこすってしまい角膜炎を起こす可能性もあります。目のまわりは丁寧に流すようにしましょう。
体温が低下しないように注意
プードルなど特別な犬種以外は、シャンプーを行った後はしっかり乾かしましょう。生乾きのままにすると、皮膚炎の原因になるだけでなく気化熱で体温を奪われ、体温が低下する可能性があります。濡れた体が冷えないように、特に冬場は部屋の温度を高めに設定しましょう。
なにかあった時のため動物病院の診療時間内に行う
シャンプー中に暴れてケガをしてしまったり、シャンプーの後に体調不良になる可能性もあります。すぐに対応できるよう、動物病院の診療時間内にシャンプーすることがおすすめです。