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兵庫ペット医療センター東灘、獣医皮膚科学会、VET DERM TOKYO 皮膚科第1期研修医
黒犬とは、真っ黒な被毛を持つ犬の総称です。黒い犬の写真が「#黒犬」を使って共有されたことから、SNSを中心に黒犬と呼ばれるようになりました。艶のある黒い毛が凛々しい印象で、明るい色の被毛を持つ犬にはない魅力があります。今回の記事では、黒い被毛を持つ犬を7種類紹介します。また、被毛が黒いからこその注意点も解説しますので、「犬を飼うなら黒い子がいい!」という方は参考にしてください。
目次
- 海外と日本で違う黒犬のイメージ
- 真っ黒な被毛を持つ犬の種類
- 黒犬を飼う上での注意点
- まとめ
海外と日本で違う黒犬のイメージ
黒猫が日本では幸運の象徴で、海外では不吉なイメージを持たれているように、黒犬のイメージも文化によって異なります。
静岡県藤枝市にある「黒犬神社」では、その名の通り黒犬に関する伝承が伝わっています。生前も死後もその強さを轟かせていたとされるクロを神犬として祀っていて、現在も武運長久や必勝祈願の神として信仰を集めています。このように、日本において黒犬は強くてたくましいイメージを持たれるようです。
海外の黒犬に関する伝承で有名なのは、イギリスの妖精・ブラックドッグです。赤い目と黒い体を持ち、不吉の象徴とされています。地獄や死を司る神の使いだとされることもあり、死神に近いイメージを持たれています。
黒犬のイメージはそれぞれですが、このことから日本でもヨーロッパでも古来より真っ黒な被毛を持つ犬が飼われていたことが分かるでしょう。
真っ黒な被毛を持つ犬の種類
黒い被毛が魅力の犬種を、体の大きい順に紹介します。「黒犬を飼いたい!」という方は、それぞれの特徴を知って、自分と相性がいい犬選びの参考にしてください。
ニュー・ファンドランド
カナダのニューファンドランド島の土着犬をルーツに持つ犬です。様々な犬種がミックスされて現在の姿になりました。かつては猟犬や水中作業犬として人間とともに働いていて、現在は水難救助犬としても活躍しています。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:オス約68kg、メス約54kg
平均体高:オス約71cm、メス約66cm
平均寿命:7〜10歳
◆ 外見の特徴
クマのように分厚い被毛とがっしりとしたボディが特徴で、超大型犬に分類されます。被毛はダブルコートで、ブラック以外にも、ホワイトとブラックの斑模様、チョコレート、ブロンズの犬がいます。
◆ 性格
穏やかで優しい性格で、人に対しても友好的です。忠誠心が強く、知らない人に対しても警戒しない傾向にあります。学習能力が高いため、トレーニングにはあまり苦労しません。
◆ 飼い方のコツ
アンダーコートは油分を含んでいて毛玉になりやすいため、こまめなブラッシングが必要です。換毛期は抜け毛の量が多いので、とくに注意深くブラッシングしてください。運動や泳ぐことが好きなので、散歩は1日60分を2回行うのが理想的で、泳ぐ機会も作るといいでしょう。
ジャイアント・シュナウザー
ドイツ南部で飼育されていた犬種です。番犬や害虫駆除をおこなっていたスタンダード・シュナウザーを、牧羊犬にするために大型化されました。現在は警察犬にも選ばれています。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:約35〜47kg
平均体高:約60〜70cm
平均寿命:12歳~15歳
◆ 外見の特徴
シュナウザーは「口髭」という意味で、その名の通り口髭のようなに豊かな口周りの毛が特徴です。被毛はダブルコートで、がっしりと力強い体つきをしています。毛色はアンダーコートもブラックのピュアブラックとブラック・アンド・シルバー、グレーとシルバーの毛が混ざったソルト・アンド・ペッパーなどの種類があります。
◆ 性格
穏やかで忍耐強い性格です。警察犬に選ばれるほど学習能力と忠誠心が高く、初対面の人にはなつきにくい一面もあります。
◆ 飼い方のコツ
運動が好きなので、散歩は1日2回1時間ずつを目安に行ってください。口周りの特徴的な被毛は食べ物や水などで汚れやすく、皮膚病を起こす可能性も高いため、こまめなお手入れが必要です。
フラットコーテッド・レトリーバー
ミックスされたレトリーバー種の一種で、ルーツとなる犬種には諸説あります。原産国はイギリスで、猟において獲物をハンターに射撃させる手伝いをする銃猟犬(ガン・ドッグ)として名を馳せていました。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:オス約27~36kg、メス約25~32kg
平均体高:オス約59~61.5cm、メス約56.5~59cm
平均寿命:10〜12歳
◆ 外見の特徴
細身の中型犬で、まっすぐで滑らかな被毛が特徴です。他のレトリーバー種と同様にアーモンド型の瞳と垂れた耳を持っています。ラブラドール・レトリーバーよりも胸や腰の幅が小さめで、ゴールデン・レトリーバーと比べるとマズルが長い傾向にあります。毛色はブラックとレバー(こげ茶色)の2種類です。
◆ 性格
銃猟犬としてのルーツを持つことから、好奇心旺盛で陽気な性格です。レトリーバー種の中でもフレンドリーな傾向にあり、尻尾を振って全身で喜びを表現する様子が愛嬌に溢れています。
◆ 飼い方のコツ
体力がある犬種のため、1日2回60分ずつの散歩で十分な運動量を確保してください。被毛が長めなので、ブラッシングをこまめに行うことも大切です。好奇心が強い性格のため、散歩中にリードを引っ張らないようトレーニングをしておくといいでしょう。
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ラブラドール・レトリーバー
カナダ東岸のニューファンドランド発祥で、漁を手伝うウォーター・ドッグだったとされています。現在でも盲導犬や警察犬、麻薬犬治験、災害救助犬などさまざまな場面で活躍しています。
◆ 体重、体高、平均寿命
平均体重:オス27〜34kg、メス25〜30kg
平均体高:オス約57cm、メス約55cm
平均寿命:12歳
◆ 外見の特徴
大きくて三角形の垂れ耳と、筋肉質のがっしりした体型が特徴で、被毛はダブルコートです。カナダの海の冷たさにも耐えるようアンダーコートは密生していて、カワウソに似たしっぽを持っています。被毛は黒以外にはイエロー(クリーム色)とチョコレート(赤みがかった茶色)があります。
◆ 性格
性格は優しく穏やかで、人懐っこい傾向にあります。ウォーター・ドッグとしてのルーツを持つことから警戒心が強い側面もあり、機敏に動くことができます。盲導犬として有名なことからも分かるように、訓練性の高さも特徴です。
◆ 飼い方のコツ
遊びの一環として噛む子が多いため、誤飲を防ぐためにも部屋の片付けをしっかり行うよう心掛けてください。噛み癖はストレスにより悪化しますので、遊びや散歩などで体を動かして発散させることが大切です。散歩は1日2回60分ほどを目安に行ってください。泳ぐことが好きなので、水場がある公園に行くときはタオルなどを多めに持っておくといいでしょう。
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柴犬
猟犬として猟師とともにウサギやタヌキを狩っていたとされる、日本原産の犬です。1936年には天然記念物に指定されました。国内で飼育されている日本犬種の8割を柴犬が占めているとされているほど、現在も広く愛されている犬種です。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:約9~12kg
平均体高:オス約39.5cm、メス約36.5cm
平均寿命:12~15歳
◆ 外見の特徴
耳がピンと立った中型犬で、しっかりとした骨格と巻いたしっぽが特徴です。被毛はダブルコートで、真っ黒の柴犬もいれば、黒胡麻(黒毛に赤毛が混ざっている)の柴犬もいます。他にも赤、赤胡麻、白などの被毛を持つ柴犬がいます。
◆ 性格
飼い主への忠誠心が強く、頑固な性格をしています。感覚が鋭く警戒心も強いので、飼い主以外には懐きにくい犬種です。学習能力が高く、オスよりもメスのほうがおとなしい傾向にあります。
◆ 飼い方のコツ
もともとは猟犬として飼われており、警戒心が強く、神経質な一面もあるため、噛み癖や吠え癖等が付かないようトレーニングを通じてしっかり社会化を行う必要があります。また、体を触られることを嫌う子もいるため、普段からトレーニングの一環として、体のどの部位も触れるようにしておきましょう。春の換毛期にはとくに抜け毛が多く、毛玉を防ぐためにも念入りなブラッシングが大切です。散歩は1日2回、30分を目安に行うといいとされています。
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プードル
ヨーロッパ原産の犬種です。ルーツは諸説ありますが、鳥猟犬や水猟犬などとして飼われていたと言われています。体のサイズによって、スタンダード・プードル、ミディアム・プードル、ミニチュア・プードル、トイ・プードルと呼び分けがされています。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:約3〜6kg
平均体高:約24~28cm
平均寿命:15歳前後
※トイ・プードルの場合
◆ 外見の特徴
アフロヘアーのようなもこもことした縮れた毛が特徴で、被毛はシングルコートです。四肢が細長く、トリミングによって様々なスタイルを楽しむことができます。毛色はブラックの他にはホワイト、ブラウン、グレー、フォーンなどがあり、いずれも単色です。
◆ 性格
中世フランスでも貴族にコンパニオンドッグとして飼われていたほど、社交的な性格で、忠誠心と学習能力が高い傾向にあります。日本でも人気のトイ・プードルは、群れで行動していたルーツを持つことから、飼い主と離れるのを極度に嫌がる子が多いとされています。
◆ 飼い方のコツ
シングルコートのため抜け毛は少ないですが、毛が伸びるのが早いため、定期的なトリミングが必要です。散歩は1日2回30分程度が適切とされています。足が細いため、子犬のうちは激しい運動を避けるようにしましょう。
ポメラニアン
ドイツとポーランドの国境近辺にあるポメラニア地方が原産のスピッツ種で、番犬や愛玩犬として飼育されてきました。ビクトリア女王に飼われた犬としても知られています。
◆ 体高、体重、平均寿命
平均体重:約1.8〜2.4kg
平均体高:約18〜23cm
平均寿命:12〜16歳
◆ 外見の特徴
綿毛のようなふわふわの被毛と小さな顔が特徴の小型犬です。ダブルコートで長い上毛を持っています。毛色はブラック以外にも、ホワイト、ブラウン、オレンジ、グレーなどさまざまです。
◆ 性格
活発で社交的な性格をしていて、学習能力や飼い主への忠誠心も高い傾向にあります。一方で、警戒心が強い側面もあり、知らない犬や人、インターホンなどに対して吠えることが多いようです。
◆ 飼い方のコツ
吠えを防ぐトレーニングとして、子犬のころから音や他の犬などいろんな刺激になれさせておくといいでしょう。換毛期は抜け毛が増えて毛玉になりやすいため、ブラッシングは欠かせません。運動量は30分程度の散歩を1日2回行うのが目安だとされています。
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黒犬を飼う上での注意点
真っ黒な被毛は魅力的ですが、黒いことが原因でかかりやすい病気もあります。黒犬を飼う際は、他の色の犬よりも病気のリスクを避けられるよう、日頃から気をつけることが大切です。
直射日光や暑さに注意
黒い被毛は熱を吸収しやすいため、熱中症になりやすいとされています。体高が低い犬種は日差しだけでなく地面からの熱にもさらされるため、夏の散歩は日陰がある時間帯を選ぶといいでしょう。
皮膚の異変に気づきにくい
他の色の被毛と比べると、汚れが目立ちづらく、ノミやダニなどの寄生虫も見分けづらい傾向にあります。汚れや寄生虫をそのままにしていると皮膚病につながるため、日常的に注意深く観察する習慣をつけてください。
まとめ
黒い被毛を持つ犬種は、超大型犬から小型犬まで幅広くいます。個性はそれぞれ異なりますので、必要な運動量やご自宅の環境との相性を見ながら、お気に入りの犬種をお迎えしてください。また、被毛が黒いからこそ熱中症や皮膚炎のリスクが高いので、明るい被毛を持つ犬よりも注意深く観察するようにしましょう。