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Animal Life Partner代表。ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、製品開発など幅広く活動。
子犬の甘噛みは甘えの表現として捉えてしまって、ついそのままにしてしまいがちです。けれども、飼い主の反応が嬉しくなって愛犬の癖になってしまうと、成長して体力がついた時に強く噛まれて痛い思いをすることがあります。愛犬が甘噛みをする理由や、対処法について、Animal Life Partnerの代表であり獣医師の丸田香緒里先生に解説いただきました。
目次
- そもそも「犬の甘噛み」とは?本気噛みとの違いは?
- 子犬が甘噛みをしてしまう理由とは?
- 子犬の甘噛みは放っておくと自然に直る?
- 子犬の甘噛みをやめさせるしつけとは?
- 子犬の甘噛みを悪化させてしまうNG行動
- 子犬の頃に甘噛みの習慣化を阻止しよう
そもそも「犬の甘噛み」とは?本気噛みとの違いは?
甘噛みは、犬にとってはコミュニケーションの1つで、じゃれあったりする際にするものです。幼少期に兄弟間でしっかりと遊んでいる子は、このコミュニケーションの取り方が上手なので甘噛みの力加減を学習しているのですが、この時期にあまり遊んでいない子は甘噛みの力加減がわからず強く噛んでしまう(本気噛み)ということがあります。
この際に、飼い主がしっかりといけない事だ、力が強いと言うことを伝えられれば徐々になくなりますが、うまく伝わらなかった時、本人も何がいけないのか分からずに本気噛みが続いてしまいます。これを成犬になってから修正していくのは時間と根気が必要です。間違った対応をすると悪化する可能性もあるので、ドックトレーナーの指示のもと対処していくことが必要になります。
子犬が甘噛みをしてしまう理由とは?
子犬の甘噛みにはいろいろな理由が考えられますが、対策をしないと問題行動に発展してしまうこともあるので要注意です。子犬がなぜ甘噛みをするのか、観察して理由を考えることで、うまく対処することができるかもしれません。以下に主な理由について紹介します。
犬のかじりたい欲求
好奇心旺盛な子犬の場合、噛めそうなものであれば、噛んで確かめる傾向があります。人間の赤ちゃんが何でも口に入れてしゃぶるのと同様、犬も子どもの習性として甘噛みをします。また、本能的に何かにかじりつきたいという欲求と、噛むことによる顎関節周囲の強化という意味もあるといわれています。
乳歯のむずがゆさを感じている
乳歯が生え変わる4か月くらいの子犬は、歯がムズムズしてかゆくなります。この時期はどうしても何かを噛まずにはいられなくなります。家具などの噛み応えのあるものが対象になることが多いです。
嬉しい、楽しいという思いを発散している
子犬は嬉しくて興奮したときに、その喜びを表現したくて甘噛みをします。飼い主が遊んでくれる様子を見せたり、散歩の用意をしていたりしているときに噛んでくる場合があります。
他の犬や飼い主の注意をひくため
子犬同士で遊ぶときにお互いの体を軽く噛むことでちょっかいを出すことがあります。同じように、かまってほしいときに人間に対しても甘噛みをします。
暇や退屈を感じている
力を持て余していたり、することがなくて退屈していたりするときに、暇つぶしの意味で近くにあるものを噛むことがあります。子犬のころから頻繁にお留守番をさせられた犬は家具などを噛むようになることが多いようです。
不安や恐怖を感じている
慣れない来客があったときや散歩などで怖い思いをしたときに、気持ちを落ち着かせるためにものを噛むことがあります。不安や恐怖を紛らわすためにしているようです。
ストレスを感じている
運動量が多い犬種や元気いっぱいな子犬は、散歩や運動の時間が足りないとストレスを感じてしまいます。また、住んでいる環境への不安や、飼い主とのコミュニケーション不足など、何らかのストレスを抱えていると甘噛みをしやすくなります。
子犬の甘噛みは放っておくと自然に直る?
子犬の甘噛みは成犬になれば自然となくなると思われがちですが、放置していて直ることはほとんどありません。自然界では、犬の兄弟同士で噛み合って遊ぶうちに、強く噛んだ時に相手が痛がって「キャン」と鳴いて去ってしまうということを経験し、噛むことはいけないことだと学習していきます。飼い主さんもこれと同様に、噛まれるのはいやなのでやめて欲しいということを伝えていくことが必要です。
子犬の甘噛みをやめさせるしつけとは?
上記で述べたように、甘噛みには本能や習性によるもの、気持ちの表現としてのものがあります。習性やストレス発散の結果としての甘噛みについて叱っても意味がありません。甘噛みはよくないことだとしつける一方で、以下のようなポイントをおさえつつ、甘噛みすることを忘れるような環境を整備しましょう。
犬の歯が手に当たったらすぐに引っ込める
甘噛みされたら手をひっこめることでいやがっていることを伝えます。このときに気をつけたいのは、犬を興奮させないことです。また、反応が面白くていたずら心から甘噛みをするようになることもありますので、静かに対応するようにしましょう。
自発的な「お座り」を促す
「お座り」以外でもなにかコマンドを覚えさせることで、それをスイッチにして、噛むのをやめさせることができます。
甘噛みできない環境を作る
飼い主の匂いのついたスリッパやタオルなどはとくに甘噛みの対象になりがちです。これらを犬の手の届くところに置いておくと甘噛みが悪化しやすくなります。なるべく片付け、代わりに噛んでもいいおもちゃを与えてあげましょう。
留守番中の甘噛みをやめさせる
留守番に対する不安が原因で甘噛みをしてしまうことがあります。またひとりで留守番をしていると退屈して甘噛みが習慣化してしまいがちです。居心地のいいクレートやサークルに、気を紛らわすようなお気に入りのおもちゃを用意し、犬にとっての安心できるスペースを作ることで、留守番も落ち着いてできるようになります。
十分に散歩させる
留守番などをさせる前に散歩などの運動をさせると、疲れて留守番中に寝ていることが多くなります。留守番中に寝ていれば、甘噛みを誘う留守番の不安や寂しさの感じ方も少なくて済みますし、甘噛みで退屈をまぎらわすこともなくなります。
グッズやおもちゃを活用
なかなかおやつが出てこないおもちゃなど、愛犬が気に入るような知育おもちゃを探してみましょう。集中力を養い、暇な時間を甘噛み以外で解消することができます。ガムなどの食べられるおもちゃを与えて、噛みながら一人遊びする癖をつけるのもいいです。噛んでもいいおもちゃで飼い主と遊ぶのはOKですが、その場合は興奮させないように注意してください。
子犬の甘噛みを悪化させてしまうNG行動
子犬が甘噛みを始めたときに、しっかりとしつけておかないと、将来的に噛み癖をコントロールできなくなります。甘噛みの習慣をつけてしまう行動について以下にご紹介します。
大声を出したり叫んだりする
甘噛みされたときに声を出して痛いことを伝えることは間違いではありません。しかし、驚くほどの大声を出したり、怒鳴りつけたりなど、声の出し方によっては犬を興奮させて、甘噛みを悪化させてしまうリスクがあります。
叱ったり、叩いたりする
甘噛みは習性から来るものなので、叱るという対応はとらないようにしましょう。叩いたりすることで、反撃するために噛みつき行動が悪化する場合があります。
家具や壁を噛むのを許してしまう
噛んでいることを注意されない場合、その行動がやめるべきものであることが犬には伝わりません。噛んでいるときはほかのものに気を向かせたりして、やめさせるようにしましょう。
興奮するまで遊ばせる
たくさん遊ぶことは犬にとっても嬉しいことなのですが、興奮させることで甘噛みもエスカレートしやすいので気をつけましょう。
人の手で遊ばせる
飼い主が自分の手をひらひらさせて遊ばせることなどはNGです。手にじゃれてもいいと思ってしまうと、噛みつくようになる原因となるからです。このように犬と遊ぶ時は、噛みついてもいいおもちゃを手に持ってじゃれさせるようにしましょう。おもちゃは犬が間違って飼い主さんの手に触れてしまうことがないくらいの、ある程度の長さがあるものを使ってください。
甘噛みされたときにかまう
甘噛みされたときは、過度にかまうことなく冷静に対応しましょう。子犬同士で遊んでいて噛まれたときの対応を参考に、甘噛みされたときは意識して相手にせず静かに席を外すようにして、噛むことはいけないことだと学習させましょう。
家族で甘噛みに対するしつけがバラバラ
家族の甘噛みに対する対応がばらばらだと犬は混乱し、していいことといけないことの区別がつかなくなってしまいます。甘噛みされた時の対応も家族で統一するようにして、噛まれるのは家族みんなにとって困ることなのでやめて欲しいと、理解できるようにしてあげましょう。
子犬の頃に甘噛みの習慣化を阻止しよう
甘噛みされて多少痛くても許してしまっている飼い主はいないでしょうか。小さい頃にその習慣が身についてしまうと、成犬となったときに他の人を噛んでトラブルを起こしてしまったり、誤飲・誤食による事故を招いたりしてしまいます。早い段階でやめさせることが大切です。
第2稿:2021年7月19日更新
初稿:2021年4月8日公開
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