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定期的な手入れをした方が良いと知りながらも、なかなか億劫で手をつけられないのが、革靴のメンテナンス。その理由のひとつに、靴磨きには何を用意したらいいのか、何から始めればいいのか分からない方が多いのではないでしょうか?
長嶺素義
ミスターミニットにて2014年に靴磨きサービスを導入し、年間50万足の実績になるまで成長させる。また、催事などのイベントや講座などを担当し、多数の実績あり。2019年に銀座三越にて開催された靴磨き選手権大会では、予選を通過し本戦出場をはたす。
今回、靴磨きについて細かく教えて下さったのは、ミスターミニットの長嶺素義さん。ミスターミニットといえば、靴磨きや靴・バッグのメンテナンスから、合鍵やはんこの作製、腕時計の電池交換や修理など、幅広いサービスを展開する「町の何でも屋さん」です。
お客様の困りごとと真摯に向き合い解決してきた長嶺さんに、「この記事を読めば靴磨きの基本が分かるようになる」ように、自宅でできる基本工程と揃えておきたい道具について教えてもらいました。
駅ナカでよく見かけるミスターミニットですが、カインズの「八王子長房店」と「朝霞店」の中にも出店。道具で暮らしを豊かにするという面で親和性があります
今回はミスターミニットの商品を参考に靴磨きの手順をご紹介します
<靴磨きに必要なアイテム> ・柔らかいタイプのブラシ(羊毛) |
上記のほかに、クリーナーとして使用するコットン100%のクロスや、シューキーパーがあるとより望ましいです。これらのアイテムが揃っていれば、自宅で行う基本的な靴磨きについては問題ありませんよ。とはいえ、最初からすべて揃えるのは難しいという声もあるかもしれません。その場合は、もう少し簡略化したセットを「靴のお手入れセット」として販売しておりますので、ご安心を。
今回は、一般的な紳士用の革靴を例にして靴磨きの方法を紹介します。特殊な材質の革を使用していない限り、靴磨きの工程はこれを見てもらえればマスター出来ます。
それでは、さっそく始めましょう!
靴磨きを始めるときは、できればシューキーパーを使いましょう。
履きじわを伸ばすことで、靴磨き中に革が割れるのを防いでくれます。おまけに、靴本来のきれいな形を保ってくれるので、靴磨きが格段にやりやすくなるんです。
また、靴を長持ちさせるという観点からも、シューキーパーは重要です。シューキーパーとは言わば「靴のハンガー」。例えば、スーツを脱いだときはそのまま放置をしないで必ずハンガーにかけてクローゼットにしまいますよね。靴も同じようにシューキーパーを入れて保管してあげると、変なクセがつかないですし長持ちしますよ。
まずは、バッフィングブラシを使って、靴の表面に付着しているほこりを払い落していきます。ブラシは用途に合わせて使い分けるのですが、ここでは馬毛の柔らかいブラシを選びましょう(コシがある豚毛のツインセットブラシは、後ほど使います)。
全体をブラッシングするときは、撫でるようなイメージで。履きじわとコバ(靴底の側面のこと)周りをしっかりきれいにしないと、仕上がりに影響が出てしまいます。履きじわをブラッシングするときは、しわの向きに沿うように。コバ周りはブラシの先端を使ってかき出すようにすると、上手にほこりを取り除くことができます。
ここでとれない汚れは、払っただけでは取れないものや前回の靴磨きのときに塗ったクリームの残りです。
靴の汚れ具合によって変動しますが、片足分に必要なクリーム量は第一関節分くらい
クロスにクリームをつけて、汚れを落としていきます。コットン100%のものを使用しましょう。
ありがちなのが、クリームをたくさんつければその分汚れが落ちるという勘違い。革にはそれぞれ含油量が決まっているので、それ以上どれだけクリームを付けようとも、ただ乗っかっていくだけで意味がないのです。
メイクを思い浮かべてもらえればと思いますが、十分に化粧を落としきれていないと化粧水は浸透していきませんよね。同様に、革靴もまっさらの状態まで戻さないと革の栄養補給ができないので、まずはすっぴんを目指すというわけです。
クロスが無い場合はタオルでも代用できるが、目が粗いものが多いので着なくなったTシャツを代用するのが望ましい
ここでは、汚れをある程度落としてあげることが重要。ただし、擦りすぎないように注意してください。汚れを落とそうとしてずっと擦ってしまうと、革が荒れて毛羽立ってくることも。どんなに頑張っても、落ちない汚れはあります。クリーナーをつけて、2〜3回擦ってみて何の変化もないようであれば、深追いはやめましょう。
商品によっては、スポンジが付属していないこともあるでしょう。そのときは、歯ブラシで代用することができます
すっぴん状態となった革靴に、今度は栄養素を付与していきます。革にとっての栄養素とは、油分や乳化剤と呼ばれるもののこと。人間も年をとってくると肌が乾燥して油脂が少なくなってきますよね。革靴も同じで、履いているうちに、どうしても油分が抜けてきてしまうので、保革・補色クリームを塗ることで補完していきます。
油分が抜けた状態が続くと、革のひび割れが起きることも
保革クリームを片足につき米粒3〜4つくらいスポンジにつけて、靴全体に塗っていきます。そのまま靴に押し付けるのではなく、蓋の裏などでクリームを慣らしてから塗っていくと固まりづらくなりますよ。
革靴に塗るときは、革の表面にクリームを乗せていくようなイメージで行ってください。ここでは、全体にざっとクリームを乗せることができれば大丈夫です。
革にクリームを塗っただけでは、栄養素は入っていきません。今度は、先ほど全体に塗ったクリームを、固めの豚毛ブラシを使って浸透させます。
ポイントは、ブラシを押し込むようにダイナミックに力強く動かすこと。ほこりを落とすことが目的だった最初のブラッシングとは違い、ここではクリームを摩擦熱によって溶かして革の繊維にまで浸透させることが目的です。
固いブラシなので革が傷つくことを心配されるかもしれませんが、むしろ思い切って動かしましょう。ゴシゴシと擦っているうちにクリームの成分が分離して、栄養素が革の繊維に浸透し、油脂は表面に浮き出てツヤとなっていきます。擦る回数よりは、力を入れることを意識すると良いと思います。
コバが革の場合は、ブラシの先端に少しクリームをつけて擦ってあげると、ひび割れを防ぐことができます
ここでの失敗は、中途半端な磨き方になって、ねちょねちょ感が残ってしまうこと。靴は床や地面など、ほこりがたまりやすい場所と接するため、ブラシで伸ばしきれていないとほこりを吸い寄せてしまいます。クリームを塗ったときのねちょねちょ感がなくなるまで擦ることが大事です。
心配な方は、ブラッシングのあとにコットン100%のクロスで空拭きをしてみてください。そのときにクリームがクロスについてくる場合は、革が吸いきれていないということ。余分なクリームはしっかり拭きとってあげましょう。
化繊のクロスを使用しているが、コットン100%のクロスでも大丈夫
クロスの表面に、水を3滴前後つけて湿らせたら、靴全体を磨いていきます。湿らせなくても問題はありませんが、水を使った方がつやの出方がきれいになりますよ。
ポイントは、ムラなく全体を磨いていくことだけです。
ワックスを使用するときは、蓋を開けた状態で1週間くらい放置して、成分を揮発させてから使うのが望ましい。ミスターミニットの商品であるハイシャインワックスの場合は、その工程は不要
基本的な靴磨きとしては、実はSTEP6までで十分。ここからは、+αでもっとつや出しをしたい方向けです。
使用するのは、ハイシャインワックス。革に栄養を与えることはできませんが、つやを出す目的で使用します。
ワックスによるつや出しは、薄く均等な面を作っていく作業なので、目の細かいフランネルなどをクロスに使用すると安定します。
クロスにワックスをつけたら、水をほんの少しだけつけて滑りやすくした上で、革靴に塗っていきます。ワックスの成分に含まれる蝋分に水を加えることで、伸ばしやすくなるんです。
注意点は、全体に均一に塗るわけではないということ。革の表面に薄く蝋を塗って固めているので、革にしわが入ると蝋は割れてしまいます。そのため、ワックスを塗る場所は、つま先とかかとが中心。この2か所には芯材が入っているため、しわができないのです。
つま先とかかとだけがやたら光っていると、コントラストがきつくバランスが悪いので、それ以外の場所にも薄く塗ると良いでしょう。磨いているうちにワックスの膜が固まってくると、力を入れても壊れなくなるので、だんだんと力を強くしながら、磨き込みます。そうすると、クリームだけでは出ないつやが生まれますよ。
ワックスを塗り終わったら、最後に水だけで磨きます。磨き目を無くし、全体を整えたら、完成です!
手前が靴磨き後、奥が靴磨き前のもの。写真では少し分かりづらいですが、茶色い色味がよく出ています
以上の工程が革靴の靴磨きの基本です。およそ15分もあれば最後まで磨き終えることが出来て簡単ですし、ご自宅でここまでできたら、十分すぎるほどですね。
意外と勘違いされている方が多いのですが、靴磨きをする目的は靴をきれいにすることではなく、長持ちさせることです。つやが出たり、きれいになるというのは、靴に栄養を与えて長持ちさせるための工程で生まれる副産物。きれいに仕上げたいがあまりクリームやワックスをたくさん使うと、革は圧迫を受けますし、化粧の厚塗りのようにパキッと割れてしまいます。そうなると本末転倒ですよね。
厚塗りされた靴はきれいに光りません。汚れをしっかりと取り除き、革の栄養が行き届いた靴が、結果的に光りやすくなるというだけなのです。
使用しているブラシは、馬毛のバッフィングブラシ
革靴のほかに、お手入れが必要な靴として一般的なのがスウェードやエナメルの靴。工程が少し異なるので、番外編として簡単にお教えします。
スウェードの靴をお手入れするときは、基本はブラッシングだけで大丈夫です。スウェードの場合は、ワイヤーブラシもありますが、汚れを毛も含めて削り取るものなので、デイリーケアでは使用しない方がいいでしょう。
ブラッシングのポイントは、毛の流れを把握すること。スウェードには、毛の寝る方向と立つ方向があります。汚れを落とすためには、まず毛を力強く起こし、毛の中の汚れをかき出してから最後に撫でるようにブラッシングして毛を寝かせるイメージです。仕上げに、防水スプレーを吹きかけてあげると、汚れがつきにくくなります。
一方、エナメルの場合は、スウェードと同じくらい簡単なケアで済みます。革靴と異なり、クリームなどを入れる意味がないので、エナメル用のクリーナーで表面の汚れを落とすだけです。
エナメルの場合は、防水スプレーはNG。そもそも、水を吸わないので意味はありません
クリーナーが特別強力なものでなければ、ある程度強めに擦っても大丈夫です。成分が強い
ものだと、擦りすぎるとエナメルが溶けてしまうことがありますのでご注意を。
革の栄養分は、だいたい1.5ヶ月くらいのサイクルで抜けていくので、今回ご紹介した靴磨きも同じくらいの頻度で行うことをおすすめします。
ちなみに、靴は1日履くとコップ1杯分の汗をかくそうです。それを乾かすのにかかる日数は2日程度。乾かないうちに履いてしまうと、菌にどんどん栄養が与えられ、ニオイの元になってしまいます。
つまり、基本的には1日履いたら必ず2日は空けることが大切。その間は、シューキーパーを入れて靴を休ませてあげるのが理想です。
靴の寿命は、もともとの素材よりも、どんな手入れをするかによって大きく変動します。同じ靴でも、手入れをするかしないかで、寿命が年単位で変わってくることだってあります。
やったことがないと、定期的なメンテナンスにハードルの高さを感じてしまうかもしれませんが、慣れてしまえば簡単なものですよ。この記事を読んでぜひ一度、試してみてください!
もしご自身で靴磨きをする時間がないときや、スペシャルなケアが必要なときは、550円から承れるので、ぜひお店でお待ちしております!