埼玉県平野部なぜ暑い? 熊谷地方気象台と熊谷市長に聞いてみた
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キッチンや和室で、茶色いゴマ粒のような虫を見かけたことはありませんか?
茶色のゴマ粒のような虫の正体はシバンムシ
夜になるとどこからともなく飛んできて、潰すとプチっと不快な感触がする虫は、もしかしたら「シバンムシ」かもしれません。
シバンムシは、シバンムシ科に属する甲虫の総称です。吸血したり、毒針で刺したりすることはなく、屋外で遭遇する分には害はないですが、小麦粉や乾麺類、お菓子などの乾燥貯蔵食品を食い荒らす害虫に分類されます。
また、発生状況によっては別の害虫を呼び寄せ、アレルギー症状などの二次被害を引き起こすケースもあるそう。一体どのように状況を見極め、どんな対策ができるのでしょうか。
害虫バスターズ代表の今西智洋さん
シバンムシやトコジラミ駆除を専門に行っている大阪の害虫駆除会社、害虫バスターズの今西智洋さんに聞いてみました。
国内で発見されているシバンムシは約150種ほど。家屋でよく見られるのが、タバコシバンムシとジンサンシバンムシの2種類です。どちらも全長1.5〜3ミリの茶色い甲虫で、触覚の形状にわずかな違いがあるものの、見た目はほとんど変わりません。
どちらのシバンムシも日本列島のどこでも見られ、5〜10月の暖かい時期に活動が活発化。そうめんやパスタなどの乾物、畳、古本、ドライフラワーなどの乾燥した天然素材を食害します。
シバンムシの死骸
シバンムシは生まれてから約1ヶ月で成虫になり、寒い時期は活動量が落ちるものの、餌となるものがある限り繁殖し続けます。
タバコシバンムシの幼虫は、ジンサンシバンムシに比べてやや大きいのが特徴。体長は1〜数ミリ程度で、目で確認することは比較的容易です。なお、タバコシバンムシは、畳に発生しやすい傾向があります。
乾物だけでなく、植物以外の天然素材も食べるシバンムシ。一体、何が原因で発生するのでしょうか?
もし、屋内でシバンムシがたくさん発生してしまったときは、餌になるものがないか確認してみましょう。
乾燥した自然素材を好むため、パスタや小麦粉といった食品に限らず、畳や建材もシバンムシの餌になります。
今西さん
未開封の食品であっても、シバンムシはパッケージを食い破って侵入します。ボタン式の米びつやペットの餌皿など、隙間がある容器は要注意ですね。
そうめんに発生したシバンムシ
侵入経路も幅広く、買ってきたドライフラワーや古本、骨董品や配達物など付着したものを持ち込んでしまうケースもあります。野生にも生息している虫なので、洗濯物に付着したり、網戸の目を通り抜けたりして侵入することも。
今西さん
シバンムシは普通サイズの網戸の目を通り抜けることができます。屋内で繁殖するかは侵入された数や個体の状況によりますが、餌が容易にみつかる状態だと、リスクが高くなりますね。
シバンムシが分電盤に侵入することも……
また、壁の内側や天井裏、床下などの建材やカンナ屑などのゴミが餌となって呼び寄せてしまうケースもあります。見えない場所で発生した後に、分電盤の引き込み線を伝って室内に侵入し、別の場所に被害が広がる場合もあるそうです。
今西さん
よく原因になるのが、コーリャンというモロコシ素材の建材です。現在はあまり使われていませんが、古い家屋だと建材が原因の場合があるので注意が必要です。
多様な侵入経路で屋内に忍び込むシバンムシ。さまざまな場所での発生があるようですが、特に注意が必要なケースはあるのでしょうか。
今西さん
畳に発生した場合は要注意ですね。シバンムシ自体、人体への直接的な悪影響はありませんが、畳に発生するタバコシバンムシの幼虫に寄生するアリガタバチの1種は毒針を持っています。
アリガタバチはアリに似た小型のハチです。全長1〜3ミリと非常に小さく、群の大半を構成するメスに羽がないため、一見するとアリに見えます。
※アリガタバチのイメージ画像
基本的に人を攻撃する習性はないのですが、触れられると攻撃と勘違いし、身を守るために人を刺すことがあるのです。
今西さん
刺されるとチクっとした痛みがあります。オスには羽がありますが、刺すのは羽を持たないメスです。知らずに畳に座ったり寝転んだりして、アリに噛まれたと勘違いする人もいます。
また、畳は隠れる場所も多いので、アリガタバチに限らず他の害虫の温床にもなり得ます。被害が急拡大しやすいため、早めの対処が重要です。
では、シバンムシを見つけたら、どのように対処すればよいのでしょうか。
今西さん
個人で対処する場合は、餌になっている食品など、虫の温床となったものを、処分しましょう。その後、空間に広がる蒸散系の薬剤を使ってください。
シバンムシは比較的薬剤に弱い虫のため、適切な薬剤を使うことで駆除効果が期待できます。アリガタバチも同様で、一般的なピレスロイド系の薬剤で一緒に駆除することが可能です。
ただし、これらの薬剤を食品に噴霧することはできないため、シバンムシが食べた形跡のある食品などが他にないかをチェックし、全て処分することから始めましょう。
今西さん
食品はそれ自体が保温剤になるので、食品内の幼虫は越冬します。冬に見なくなっても春にまた出てくる場合は、死滅したのではなく気温が下がって活動量が減っているだけと考えた方がいいでしょう。
ただし畳に発生した場合、蒸散系の薬剤を使うだけでは畳の中で繁殖するシバンムシは駆除できません。薬剤が畳の奥までは、届かないからです。
今西さん
シバンムシの被害を受けている畳は、ボールペンで突いたような穴が開きます。僕らは畳をまるごと加熱処理で駆除しますが、薬剤を使う場合は、シバンムシが畳に開けた穴のひとつひとつに薬剤を入れる必要があります。
プロが行う加熱処理の代わりに、アイロンのスチームで応急処置を行うこともできますが、畳の縁や糸には、ナイロンが含まれていることが多くあります。素材によっては比較的低温でも熱で溶けてしまう場合もあるため、使用する際は注意しましょう。
今西さん
建材が原因の場合は、究極的には建材を食害されないものに交換するしかありません。ただ、そこまで害のある虫ではないので、隙間から薬剤散布を行い、そのとき発生している分を駆除するケースが多いです。
一度侵入されると、徹底した処置が求められるシバンムシ。そもそも侵入を防ぐことはできるのでしょうか。
今西さん
シバンムシが、何を頼りに餌を探しているかは明確ではありません。移動が可能であれば、どこにでも侵入すると想定して対策しましょう。
シバンムシの被害を防ぐ道具として、仲間を呼び寄せるフェロモンで誘引して補殺する商品もあります。これは餌となるものを守るためには有効ですが、窓際などに設置すると、むしろ招き入れることになる危険性があります。
また特定の匂いを忌避したり、湿度の高い場所を好むといった、一般的な害虫に見られる特性もないため、匂いや湿度管理での対策は困難です。
物を減らし、掃除のしやすい環境を維持すること、ビニール袋や紙など食い破られる可能性のあるパッケージの食品は、瓶や密閉できる容器に入れるか冷蔵庫で保管するなど、地道な防衛対策が効果的です。
今西さん
ふたと容器だけの食品保存容器は、隙間から侵入される恐れがあるので、パッキンがついている容器を選ぶようにしてください。
他に有効なのは、紫外線量が白熱電球より少ないLEDライトの使用です。シバンムシは夜行性で、夜間は電球の灯り(紫外線)に集まる習性があります。夜間に隙間の大きい網戸で窓を開けていると、引き寄せられたシバンムシに侵入されかねません。室内照明を白熱電球からLEDに交換することで、虫が寄り付くリスクを低減できます。
今西さん
LED照明は、紫外線に集まる夜行性の他の虫にも効果があります。虫嫌いの人にはおすすめの対策です。
それ自体は大きな害はなくても、二次被害に注意が必要なシバンムシ。
野生に存在する以上、侵入そのものをゼロにするのは困難なので、万一侵入されても餌を発見されないよう、食品はパッケージから出して密閉するのがベストです。
防災シーズンになると、ついつい長く保存できる食品を買いだめて放置しがちですが、麺類などの乾物は密閉して保存することも忘れずに。災害だけでなく、シバンムシからも身を守れるように気をつけたいですね。
※ご紹介した商品は一部店舗ではお取り扱いがない場合がございます。また価格は変更される可能性があります。ご了承ください。
今西さん
どちらも形状はカブトムシの幼虫に似ていて、頭が茶色で体を丸めています。全身が同じ色のダニよりは、発見しやすいですね。