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カメムシといえば、強烈な臭いを発する迷惑な虫といったイメージを持つ人は多いかもしれません。ときに大量発生して、家の中まで入ってくることもありますね。
カメムシの仲間、クサギカメムシは、果樹などの汁を吸って農作物を傷める害虫でもあります。今回は、クサギカメムシの生態や大量発生の理由を紹介し、予防と駆除の方法を解説します。
クサギカメムシは、全身が濃い茶褐色で、細かいまだら模様のあるカメムシです。成虫の体長は13~18mm。東アジア原産のカメムシで日本全国に分布していますが、主に中部地方から東北地方、北海道などの寒冷地に多く見られます。
臭いを発することで知られるカメムシですが、クサギカメムシの臭いは特に強烈です。これは、敵を威嚇するためなので、刺激しなければ臭くないのですが、危険を感じると臭いを発する性質を持ちます。
クサギカメムシの臭いはなかなか消えないので、うっかり手で触ったり潰したりしないよう要注意です。
クサギカメムシは、大量発生するとあらゆる植物を吸汁して加害します。そのせいで害虫扱いされてしまっていますが、意外なことに人間が食べる農産物はクサギカメムシの好物ではありません。
クサギカメムシの好物は、ヒノキやスギといった針葉樹の種子。成熟した針葉樹の球果に入っている種子は、クサギカメムシの幼虫の発育を促進し、成虫の繁殖にも不可欠な栄養分が豊富に含まれています。
本来は針葉樹の種子を好んで吸汁するクサギカメムシですが、個体数が増えすぎて針葉樹を吸い尽くしてしまうと、近隣の果樹園などに飛来して農作物を加害してしまうというわけです。
クサギカメムシは、口針を植物に突き刺してその汁を吸います。もともと種子の中の成分を餌にしていることもあり、葉への被害はそう多くはありません。
しかし、大量発生した年や餌不足のときには、葉の汁も容赦なく吸います。吸汁被害にあうと、葉が縮んで変形したり、穴が開いたりしてしまいます。
花も葉と同様、クサギカメムシの被害は受けにくいですが、蕾が吸汁されて開花が妨げられたり、花が縮んだように変形したりします。開花後の花が吸汁された場合も、変形したり弱って枯れたりします。
クサギカメムシの被害が最も深刻なのは、果実への被害です。カキ、ナシ、リンゴ、モモなど、さまざまな果樹を加害します。
カキは、ヘタ付近が吸汁されることが多く、吸汁された部分を中心に丸い斑点ができます。時間が経つと斑点部分がくぼみ、黒っぽく変色します。4、5ヶ所吸汁されてしまった果実は、2~3日のうちに全体が黄ばんで光沢を失い、落果してしまうこともあります。
ナシやリンゴは、吸汁されても落果することはありません。ただ、果実の肥大が進む時期に加害を受けると、吸汁痕が深く陥没し、凸凹した奇形果になります。果実が肥大化した後に吸汁された場合、奇形は少ないですが、吸汁された部分の果肉がスポンジのようになって品質が劣化します。
モモは、肥大前に吸汁されると吸汁痕が陥没して落果します。ある程度肥大してからは落果しませんが、吸汁された部分からヤニのような物質がしみ出てきます。さらにその痕から果汁がしみ出て見た目を損なう上、収穫後の腐敗を早めてしまいます。
クサギカメムシの発生量を左右する要素は、主食であるスギやヒノキなどの針葉樹の球果の量です。
針葉樹の球果の量が非常に多い年は餌が豊富なので、クサギカメムシは山林にとどまり果樹園などにはあまり飛来しません。また、球果の量が極端に少ない年はクサギカメムシの個体数も少なくなるので、その場合もあまり飛来しません。
クサギカメムシが大量発生するのは、針葉樹の球果の量が多くもなく少なくもない年。その年に羽化した成虫が、越冬前に食べる餌を求めて、山林の外へと飛来してくるのです。
クサギカメムシの発生予測の第一段階は、針葉樹の球果量を調べることです。正確な球果量を調べるのは困難ですが、山林の針葉樹を観察することで大まかに把握できます。針葉樹の球果が大きくなる5月頃に、果樹園近くの針葉樹林を回ってある程度のサンプルを集めるとよいでしょう。
球果量が豊作か凶作かを調べる基準は、樹の上部にのみ球果の結実が見られる場合は凶作、上部から中央部まで結実が見られる場合は平年並み、下部まで結実が見られる場合は豊作、と判断できます。
また、スギ花粉、ヒノキ花粉の飛散量が多い年は球果の結実も多いので、花粉の飛散量情報も重要な手がかりになります。さらに、7月の気象条件も、翌年の球果の結実に影響を与えるため要チェックです。猛暑なら翌年の球果は多く、冷夏なら少ない傾向にあります。
クサギカメムシは、8月以降に羽化した成虫がそのまま越冬して、翌年の7月まで生存します。そして8月からは新たな世代が羽化し、次の年の7月まで生存するというサイクルを繰り返します。
このため、前年8月以降に生まれたクサギカメムシのうちどれだけの個体が越冬するかを調べれば、翌年7月までの発生量が予測しやすくなります。また、越冬成虫が少ない年は新世代が増える可能性が高く、8月以降の発生量の予測にもつながります。
クサギカメムシの越冬量を調査するには、壁や物の隙間で越冬する性質を利用します。クサギカメムシが越冬準備に入る9月中に、ワラや肥料袋、古い毛布、麻袋などの素材を選んでトラップをしかけます。雨が直接当たらない小屋や軒先などに、選んだ素材を折りたたんで設置します。越冬期間に入ったら、トラップをめくって1平方メートルあたりの頭数を数えましょう。
越冬量調査は、なるべく多くの地点で数年にわたり実施することで精度を増すものです。個人で数か所にトラップをしかけるほか、都道府県の試験場や防除所などに問い合わせるなど、なるべく多くの情報を収集することがポイントです。
クサギカメムシが大量に飛来するサインのひとつが、キリ(桐)の木への飛来状況です。クサギカメムシは、餌不足になると春から秋にかけてキリの木全体を好んで吸汁します。
キリの木が枯れてしまうまで吸汁する年もあれば、針葉樹の球果が豊富でキリには全く飛来しない年もあります。キリの木にクサギカメムシが飛来し始めたら餌不足のサイン。急いで防除策を施しましょう。
球果を吸い尽くしたクサギカメムシは、徐々に山林から外へと行動範囲を広げます。よって、山林に隣接する山間部の果樹園などに加害が見られるようになったら、その発生量に要注意です。発生量が多いと、2~3日もすれば平坦部にも飛来してくる可能性大です。
クサギカメムシは夜行性で、気温の高い夜は特に活発になります。湿度が高く、急に気温が高くなるような夜は、ぶんぶん飛び回ります。天気予報で最低気温が上がることが予測されている日や梅雨時期には警戒しましょう。
クサギカメムシは、ときに物理的な防除方法では間に合わないほど大量発生し、たちまち作物を吸い尽くしてしまいます。そんなときは、速効性のある農薬を使って被害を食い止める必要があります。
速効性の高い農薬といえば有機リン系や合成ピレスロイド系の薬剤ですが、使用には注意が必要です。これらの薬剤は、多くの害虫の天敵にあたる益虫も殺す効果があるからです。
「クサギカメムシは駆除できたけれど、寄生バチもいなくなってカイガラムシが急増した」といった事態も招きかねません。使用する際は残効期間が短いものを選び、必要最小限の使用に留めましょう。
クサギカメムシには、他の昆虫と同様に天敵がいます。例えば、クサギカメムシの卵に寄生する寄生バチや成虫に寄生する寄生バエ。そして、カメムシを食べるクモなどの捕食性天敵です。
すでに述べた通り、クサギカメムシを駆除しようと農薬を散布する際、寄生バチやクモも一緒に駆除してしまう恐れがあります。農薬による駆除は最小限にとどめ、基本的には天敵を生かす防除方法を考えるのが得策といえるでしょう。
農薬を使わない対策のひとつが、ネットや袋かけです。
ネットで果樹や畑全体を覆う方法は少々コストがかかりますが、クサギカメムシだけでなく鳥害防止や防風の効果もあるので、導入メリットは大きいです。クサギカメムシの侵入を防ぐには、4ミリ目のネットを使うとよいでしょう。
袋かけでも対策できますが、クサギカメムシは袋をつき破って吸汁する恐れがあります。果実が肥大して袋に接する前に、二重に袋かけをするなど、果実にクサギカメムシの口針が届かないよう対策しておきましょう。
クサギカメムシを含むカメムシは、ミントの香りが苦手です。果樹園や畑で大規模に農作物を育てるような場合の効果は期待できませんが、小規模なベランダ栽培では、ミントがカメムシ除けに有効です。
ベランダで実もの野菜を育てるような場合は、近くにミントの鉢を置いたり、ミント水を作ってスプレーしたりすることで、クサギカメムシを寄せ付けない効果が期待できます。
クサギカメムシは、大量発生した後に対策しても駆除しにくい害虫です。できる限り発生量や飛来を予測して防除したいものです。また、よく知られているとおり、カメムシは刺激すると強烈な臭いを発します。むやみに刺激したり手で触ったりしないよう気を付けましょう。