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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
食事をしている時、「ちょうだい」とばかりに膝に乗ってくる際に、ついついおねだりされるままに自分の食べ物を与えてしまうこともあるかと思います。また、飼い主が目を離した隙に、キッチンなどに置いてある食べ物を犬が食べてしまうこともあるでしょう。しかし、人間の食べ物の中には、犬が食べると体調を崩してしまうものがいくつかあります。時には深刻な事態にもなりかねない、犬が食べてはいけないものについて、また、うっかり食べてしまった場合の対処法などを、chicoどうぶつ診療所 所長の林美彩先生に解説していただきました。
目次
- 犬に絶対に与えてはいけない食べ物
- タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどのネギ類
- アボカド
- チョコレートやココア
- キシリトールを含んだお菓子
- コーヒー、お茶類
- ぶどう、レーズン
- 鳥の骨
- ナッツ
- 犬になるべく与えないほうがいい食べ物
- 牛乳
- パン
- チーズ
- ほうれん草、ゴボウ
- フルーツ類
- 生卵(白身)
- 生肉
- 「食べてはいけないもの」を犬が食べてしまった時はどうする?
- 犬に与えるドッグフードの与え方や原材料にも注意
- 犬の拾い食いにも注意して!
犬に絶対に与えてはいけない食べ物
犬が食べてしまうと中毒症状などが出る危険な食べ物は、普段の生活の中でもかなりの数があります。どれも食卓に並ぶ機会が多い食べ物なので、飼い主としては愛犬がうっかり食べることがないようにきちんと管理することが必要です。犬が食べてはいけない食べ物について、まずは絶対に食べるのがNGなものから解説していきます。
タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどのネギ類
ネギ類には「有機チオ硫酸化物」という成分が含まれています。人間にとっては体にいいとされているネギ類ですが、犬が食べると有機チオ硫酸化物によって赤血球が破壊され、多量に摂取するとヘモグロビンが酸化し溶血性貧血を起こします。ネギ類そのものだけでなく、エキスなどが入った加工食品でも中毒を起こす可能性がありますので要注意です。ネギ類の中毒の症状はすぐに出るわけでなく、半日後ないしは2日間くらい後に体調が悪くなって気づくこともあります。思い当たるところがあればすぐに動物病院を受診しましょう。
アボカド
アボカドは人間にとってはヘルシーな食材ですが、含まれる「ペルシン」という成分によって犬に下痢や嘔吐を引き起こします。また、「森のバター」と呼ばれるほど豊富な脂肪分が、膵炎を引き起こすこともあるようです。ペルシンはアボカドオイルにも含まれているために、手作り料理を作るときには使用しないようにしましょう。
チョコレートやココア
チョコレートやココアの主原料であるカカオ豆には、苦みの成分である「テオブロミン」という物質が含まれています。これは、人間にはリラックス効果やダイエット効果などの作用がありますが、犬はこのテオブロミンを体内で分解する能力が低いため、嘔吐、下痢、多尿、痙攣などを引き起こします。中毒症状はチョコレートを食べた直後ではなく、一般的には数時間から半日ほど経ってから現れます。カカオの摂取量によっては死に至ることもあるので、チョコレート好きの飼い主や小さい子どものいるご家庭では特に、チョコレートの管理には注意してください。
キシリトールを含んだお菓子
キシリトールは「糖アルコール」という物質の一種で、砂糖のかわりに甘味料として、キャンディやラムネなどのお菓子に使われています。犬が食べると、インシュリンが大量に分泌されて急激な低血糖を起こします。嘔吐や下痢、無気力、震えなどの症状を起こしてしまうので注意が必要です。
コーヒー、お茶類
コーヒーに含まれるカフェインは中枢神経を刺激する働きがあります。飼い主の眠気防止には有効なのですが、犬がコーヒーを摂取すると刺激が強すぎて、めまいや心拍数増加、興奮、震え、不安、下痢、嘔吐などを起こします。緑茶や紅茶、ウーロン茶など、カフェインが含まれているお茶類に関しては、コーヒー同様の症状が見られる場合があるので、控えたほうがいいとされています。
ぶどう、レーズン
ぶどうやレーズンを食べた犬が急性腎不全を起こすという、中毒症例が報告されています。このぶどう中毒の原因としては、農薬、カビ毒、その他ぶどう由来のなんらかの成分が原因物質であると考えられますが、特定には至っておらず、メカニズムも解明されていません。犬がぶどうやレーズンを摂取すると、数時間以内で嘔吐を起こします。その他、下痢や食欲低下、震え、呼吸速拍などを起こす子もいます。
鳥の骨
たんぱく質が豊富な鶏肉ですが、骨付きのものには注意が必要です。とくに、加熱した鶏の骨はもろく、縦に割れやすくなり、細く鋭利な形状になります。そのため、骨が食道や胃、腸を傷つける危険性があるので、食べさせないようにしましょう。生肉、あるいは骨がホロホロになるまで加熱したものであれば安心です。
ナッツ
ナッツにはたくさんの種類がありますが、犬がマカデミアナッツを食べると神経症状を起こすことがあります。その他のナッツについても、脂質分が多いために肥満や膵炎の原因になる危険性があります。また、消化しにくいため下痢や嘔吐、便秘などを起こす可能性があるので、ナッツ類全般は避けた方がいいでしょう。
犬になるべく与えないほうがいい食べ物
上記で解説したように中毒症状を起こしたり、命にかかわるような危険な食べ物以外にも食べさせてはいけないというわけではないですが、様々な理由から犬に与える際に注意が必要な食べ物もあります。それぞれ、どんなことに注意が必要なのか解説していきます。
牛乳
牛乳にはたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれていますが、犬に与えるのは控えましょう。牛乳に含まれる「乳糖」を分解するための「ラクターゼ」という消化酵素が少ない犬は、下痢や消化不良といった症状を起こすことがあります。もし、犬が牛乳を欲しがるようなら、ごく少量か水で薄めたものを与える程度にしましょう。
パン
パンは飼い主にとって身近な食べ物かもしれませんが、食塩や砂糖を使っているので愛犬に与えるのは控えたほうがいいとされています。また、気軽に与えた総菜パンに、玉ねぎが入っていたりすることもあるので注意が必要です。
チーズ
塩分が多いチーズを食べさせるのは控えましょう。もし、食べたがるようならば、塩分が少ないモッツァレラやリコッタ、カッテージチーズ等を選ぶのがオススメです。
ほうれん草、ゴボウ
野菜を与えてはいけないということはありませんが、いくつか注意が必要です。例えば、ほうれん草はシュウ酸を含むため、シュウ酸カルシウム結石を持つ犬には、茹でこぼして与えるようにしましょう。また、ゴボウなどの食物繊維が豊富な野菜は、しっかりと火を通し細かく刻んで与えることをお勧めします。
フルーツ類
飼い主がおいしそうにフルーツを食べていると、欲しがる場合があるかもしれません。ただし、種があるフルーツであれば飲み込むことによる閉塞のリスクはありますので注意が必要です。みかん類の皮や種は消化不良を引き起こしますし、熟していないものには下痢や嘔吐、呼吸困難などを起こす中毒物質「アルカロイド」が含まれているので与えないようにしましょう。また、フルーツ全般は糖質が多いので、与えすぎは肥満のもととなります。
生卵(白身)
火を通していない白身に含まれる「アビジン」というタンパク質成分が、犬の皮膚や神経を正常に保つ役目をする「ビオチン」(ビタミンB郡の1種)の吸収を抑制してしまいます。生卵の白身は、食欲不振や皮膚炎を起こす可能性があるので大量に食べさせるのは避けましょう。
生肉
生肉を与える場合は生食用のものを選びましょう。ジビエの場合には寄生虫やウイルスの抗体検査を行っているか否かなど、人間が食べるとき以上の注意が必要です。体質にあわない場合もいますので、嘔吐や下痢などが見られるようなら食べさせないようにしましょう。
「食べてはいけないもの」を犬が食べてしまった時はどうする?
ネギ類やアボカド、チョコレートなどの絶対に食べてはいけないものを食べてしまった場合には、すぐに動物病院を受診してください。無理に吐かせようとすると、かえって負担をかける場合がありますので、飼い主が処置を行うのではなく、なるべく早く獣医師に診てもらいましょう。飼い主はあわててしまうかもしれませんがまずは少し落ち着いて、何時頃にどのくらいの量を食べたのかなどの情報をメモ書きし、獣医師に伝えるといいでしょう。
犬に与えるドッグフードの与え方や原材料にも注意
犬には専用のドッグフードがあるので、安心して与えることができます。ただし、給与量が記載されているので、与えすぎに注意するようにしましょう。また、1日に1回だけですと空腹に困って、早食いする傾向になります。早食いをすると血糖値の急な上昇を招き、膵臓にも負担をかけてしまいます。原材料にも注意しましょう。BHAやエトキシキンのような酸化防止剤、ソルビン酸カリウムなどの保存料、動物性油脂などは愛犬の健康に重大な影響を与える可能性があるので、原材料は必ずチェックするようにしましょう。
安全性をチェックするために見るべき項目
ドッグフードの安全性をチェックするためには、以下の項目をチェックするようにしてください。
・好ましくない原材料が使われていないか
・主原料が動物性タンパク質源か
・人工添加物が使われていないか
・タンパク質量がAAFCO最低基準を満たすか
・脂肪量がAAFCO最低基準を満たすか
・合成酸化防止剤を使っていないか
これらの基準をクリアしている場合は原材料の品質や成分ともに優れたドッグフードで、安心しておすすめすることができます。
犬の拾い食いにも注意して!
散歩中の犬が、拾い食いによって、食べてはいけないものを口にしてしまうこともあります。拾い食いを防止するトレーニングを行う、空腹時前には散歩に行かないようにする、などの対策をとると良いと思います。難しい場合には、バスケットタイプの口輪をして散歩する方法もあります。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。