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転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

大型犬が転勤族の家の前に捨てられていた……!
捨て犬を家族に迎え、少しずつ形を変えていく家族の日々。
森田めぐみさんと、愛犬・レイルくんとの10年を振り返っていきます。毎月第2・第4水曜日更新
目次
- 仔犬のためにペット用品を買い出し
- 初めての仔犬のお世話で大泣き
- 拾った仔犬が“我が家の犬”に
仔犬のためにペット用品を買い出し
前回の話の続きです。
えーと、どこまで話しましたかね……、あ、拾った仔犬を連れて動物病院に向かっているところだ。
この日、暑かったんですよね。日焼け止めを塗りたくった時、首の後ろを忘れて、あとで真っ赤になったんだった……。
さて、話は戻って、動物病院に着いた、人間・犬(大)・犬(小)の一行。
子どもの頃から我が家の犬猫がお世話になっている先生に診察してもらうと、看護師さんともども、仔犬の可愛さに大盛り上がり! もうすぐ離乳が始まる時期とのことだったので、離乳食やミルクの回数の相談をして、虫下しの薬をいただき、ようやく帰路に着く。
本当に長い散歩だったよ……。腕時計の針は、もう正午を回っていた。
自宅に犬たちを連れ帰り、レイルにおやつと水、仔犬には動物病院からご厚意で分けていただいたミルクを与える。
落ち着いたら、フードやミルクを買い足して、ペットシーツも買ってこないと。
私は、菓子パンと牛乳でお昼ごはんを済ませ、近所のホームセンターへ出かけた。
レイルは成犬になってから我が家にやってきたので、私が仔犬のお世話をするのは初めて。
近所のホームセンターは、ペットのコーナーがとても充実している。店員さんに、仔犬に必要な物を相談すると、親身になって揃えてくれた…。
が。お会計前にハッとする。
私が飼うわけじゃないのに、こんなに揃えていいのか?
はぁ……びっくり!(←自分に)仔犬可愛さに、うっかり何もかも取り揃えるところだったわ!!
店員さんに事情を説明すると(「拾った」と言ったら、ものすごく怒ってくれる、優しいかただった)、必要最低限のものに変更。それでも両手に抱える量だ。
初めての仔犬のお世話で大泣き
大急ぎで自宅に戻ると、リビングはなかなかの惨状だった。
ケージやペットシーツが無かったため、取り急ぎ娘が赤ちゃんの頃に使っていたベビーサークルを引っ張り出して仔犬を入れておいたのだが、仔犬は脱走し、ベビーサークルの中にはなぜかレイルが鎮座している。
脱走した仔犬は当然あちこちで粗相しているわけで、めちゃくちゃ大変だったレイルのトイトレを思い出し、私は白目になったのだった……。
連載開始当初に書いたことだが、私には根気というものが欠落している。
そして、仔犬にトイレを教えるに当たって、最も重要なのは間違いなく根気。
あぁ、詰んだわ…。まぁいいや、ここは夫に頑張ってもらいましょう!!
…と思ったのだが、日中家にいない夫にはトレーニングをするタイミングが少なく、家の中はしっちゃかめっちゃかになっていく。
トイレの場所を外すくらいなら可愛いもので、ある時には床のクッションフロア材をかじってビリビリに破き、リビングの床半分が剥げてしまい、私は泣いた。比喩表現や大げさに言っているわけでもなく、そりゃもう、おんおん泣いた。
ちなみに、仔犬がそんなイタズラをしている時、レイルはどうしているかというと、信じられないことに、一緒になって悪さしているのである。
仔犬は純粋にイタズラを楽しんでいるのだが、レイルの方は悪いことだとわかっているのが、またタチが悪いところで(笑)、叱るとものすごく反省した表情を見せる。なのに、また、性懲りも無くやる。なんでだよ!!
今思えば、ちょっと育児ノイローゼ気味だったのかもしれない。仔犬のしつけは、生半可な覚悟では出来ないのだ。
拾った仔犬が“我が家の犬”に
そのまま、バタバタと2ヶ月を過ごし、犬は法的に“一時的に預った拾得物"から私の“所有物“となった。
これが意味していることは何か。そう、私が飼い主を探すことが出来るようになったのである。
私のようなものが育てているにも関わらず、仔犬はなんとかトイレを覚え、お散歩デビューも果たし、社会性を身に着け始め、一時的とは言え、名前もつけた。
私の母、喜美子がつけた名前は”ナツ”。「夏日にやって来た子だから」という理由だが、イタズラ大好きなこの仔犬になんとなく似合っているような気もした。
(余談だが、ナツがやって来る前に亡くなった実家の犬は”アキ”。理由は、秋の日に迷い込んできた犬だから。喜美子よ…)

さぁ、いよいよ飼い主探しへ!
これがまた初めてのことばかりで思い出深いのだ。
2話で終わる予定だったのだけれど、次回までお付き合いいただけますでしょうか?
次回、新たな飼い主探し編もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!
