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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬と暮らしていると、犬が自分の足を舐めたり、噛んだりしている光景を見たことがあるかと思います。あまりにもその頻度が多いと、どういった原因や理由があってその行動を起こしているのか飼い主としては気になるところですよね。今回は、犬が自分の足を舐めたり噛んだりする行為について、chicoどうぶつ診療所 所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬が自分の足を舐めたり、噛んだりする理由は?
- 犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする原因となる病気やケガは?
- 犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする場合は病院へ連れて行くべき?
- 犬が自身の足を舐めたり、噛んだりすることの予防法は?
- 犬は自身の足を舐めたり、噛んだりすることでサインを送っている可能性も
犬が自分の足を舐めたり、噛んだりする理由は?
犬が自分の足を舐めたり、噛んだりする行動にはいくつかの理由があります。それぞれ見ていきましょう。
気持ちを落ち着かせている
カーミングシグナルの一種として、犬は自分の足を舐めたり、噛んだりすることがあります。カーミングシグナルは、いわば犬(動物)の気持ちや立場を表すサインのことです。人間に例えるならば、ボディーランゲージともいえるでしょう。犬同士の不必要な争いを避けるために犬自身が生まれ持っているものです。
グルーミングを自身で行っている
グルーミングを自身で行うために足を舐めたり、噛んだりしているケースがあります。グルーミングというと「毛づくろい」というイメージが強いかもしれませんが、こちらも先ほどと同様に、気持ちを落ち着かせる効果があるために毛づくろいをしていることが多いです。
暇をつぶしている
単なる暇つぶしの一環として、足を舐めることで退屈しのぎをしていることがあります。特に前足は犬からすると自分の口からすぐ届くので、舐めやすいポイントでもあります。
ストレスを感じている
ストレスを感じているときに足を舐めたり、噛んだりすることがあります。これも先ほどお伝えしたカーミングシグナルの一種です。ストレスを和らげたい、気持ちを落ち着かせたいといったサインと考えて良いでしょう。
犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする原因となる病気やケガは?
先ほどは病気やケガとの関連性がない場合についてご紹介しましたが、犬が頻繁に自身の足を舐めたり、噛んだりしていると、病気やケガを抱えているのではないかと不安になることも多いかと思います。ここでは、犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする場合に考えられる病気やケガを紹介します。
かゆみ
かゆみを感じていて、その部分を掻くことが難しいが口なら届くという場合、犬は舐めたり、噛んだりしてかゆみを紛らわせようとすることがあります。
身体の痺れ
足などが痺れているときに、痺れを和らげるために足を舐めたり、噛んだりすることがあります。犬も人間と同じように、睡眠時などに長時間同じ姿勢をとっていた場合、足が痺れてしまうことがあります。すぐに元気に歩いているようならば問題ないでしょう。ただし、頻繁に痺れが見られるようであれば、動物病院へ連れていってあげてください。
痛み、出血
足に痛みがあるとき、その痛みを和らげようとして足を舐めたり、噛んだりすることがあります。特に出血していたり、傷ついていたりする場合は、唾液に含まれる成分である「リゾチーム」による殺菌効果を得るために舐めようとすることがあります。
犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする場合は病院へ連れて行くべき?
犬が自身の足を舐めたり、噛んだりする頻度が高いと心配になりますが、動物病院に連れて行くべきかどうかは判断に迷うところだと思います。病院に行く必要のないケースと、すぐに病院に連れて行くべきケースについてそれぞれ判断の基準を見ていきましょう。
病院に行く必要のないケース
足を舐めたり、噛んだりするのが習慣化しておらず、皮膚や肉球に異常がなければあまり心配はいりません。気持ちを落ち着かせたいと思っての行為かもしれないので、犬が自分の足を舐めたり、噛んだりしているときには、飼い主がやたらとかまうのはやめておいた方が良いでしょう。
すぐに病院へ連れていくべきケース
手足が真っ赤になっている、毛が抜けている、手足が震えている、手足を引きずっている、足先が冷たいといった異常が見られたときは、すぐに病院へ連れていってあげてください。皮膚に赤みやかぶれ、フケなどが見られていたりするときも同様に、異変が起こっている可能性があります。また、足だけでなく元気がない、食欲が落ちているといった症状がある場合も注意が必要なので、病院に連れて行った方が良いでしょう。
犬が自身の足を舐めたり、噛んだりすることの予防法は?
犬が頻繁に自身の足を舐めたり、噛んだりするのは心因的な要因と病気や怪我などの身体的要因があることは説明しましたが、それに対して飼い主は普段からどのようなことをすればいいのでしょうか。飼い主ができる予防法を見ていきましょう。
心因的要因の場合
ストレスを感じさせないようにする
前述のように、犬が足を舐めたり、噛んだりするのはストレスを感じているというケースが多くあります。ストレスの原因がわかっているのであれば、飼い主がそれを取り除いてあげることで改善するでしょう。ストレスの原因がわからないときには気持ちが落ち着くようなアロマやハーブを炊いてみましょう。ラベンダーやオレンジスイート、ベルガモット、バレリアン、ジャーマンカモミール、スカルキャップ、パッションフラワーなどといったものが効果的と言われています。あまりにも症状がひどいときにはかかりつけの病院で薬を処方してもらっても良いかもしれません。
愛犬のひとり時間を充実させる
暇なことが理由で足を舐めたり、噛んだりしている場合、寂しさを感じないようにテレビやラジオをつけるのもよいでしょう。特に、ケージのなかでひとりにさせる場合は知育トイを入れてあげたり、ラジオをかけてあげたりするのもいいですね。ただし、大きな音量でかけるとストレスがかかってしまうため、小さな音量にしてあげましょう。
身体的要因の場合
アレルギーの対策をする
動物病院などでアレルギー検査を受けて、アレルゲンの除去を心がけましょう。とはいえ、アレルギー検査も100%確実なものではありません。そのため、飼い主から見て原因と考えられるものを一つずつ除いてあげるとよいでしょう。
皮膚炎を防ぐ
犬が足を舐めたり、噛んだりすると、皮膚の常在菌のバランスが崩れてしまいかねません。ほかにも、口腔内の雑菌による感染リスクが高まります。皮膚炎を防ぐにはストレスケアの他、定期的なブラッシングとシャンプーが重要です。またシャンプー後にはしっかりと乾かすようにしましょう。万が一、皮膚炎になってしまった場合は、速やかに病院で薬を処方してもらいましょう。
皮膚を乾燥させない
皮膚が乾燥することでかゆみやあかぎれを起こし、舐める頻度が高まってしまいます。そのため、足に保湿剤などをこまめに塗ってあげて乾燥対策をしましょう。保湿剤としては犬用のものを使用するようにしましょう。セラミドが配合されているものが良いでしょう。
怪我を防ぐ
足を舐めたり、噛んだりするのは、その部位の怪我がもとになっているケースもあります。その怪我を防ぐために、犬用の靴や靴下を履かせてあげると効果的でしょう。
犬は自身の足を舐めたり、噛んだりすることでサインを送っている可能性も
犬が自身の足を舐めたり、噛んだりしているときには、違和感を覚えるようなことがあったり、精神的な問題を抱えていたりする可能性が高いです。そのため、普段からしっかりと愛犬の姿を観察してあげてください。