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往診専門るる動物病院、TNRののいちアニマルクリニック 所属。小動物臨床15年、往診による一般診療、終末期医療、オンラインでの診療や相談にも積極的に取り組む。

犬は酢の匂いが苦手で、酢の物はあえて与える必要のない食べ物です。人間の体にはよいとされる酢の物を、愛犬にもあげてみたいと考えることがあるかもしれません。
しかし、酢の物には塩分や糖分も含まれるため、食べさせない方がいいといえます。
この記事では、犬に酢の物を与える必要がない理由について、往診専門るる動物病院 院長、TNRののいちアニマルクリニック 顧問獣医師の岡田京子先生に解説していただきます。
目次
- 犬は酢が苦手?犬に酢の物は与えない!漬物などの加工食品も与えないで
- 犬が酢を舐めるとどうなるの?お酢アレルギーに注意
- 酢はペットの食器洗いに活用してみよう
- 犬の食器洗いに使えるおすすめのスプレーボトル
- まとめ
犬は酢が苦手?犬に酢の物は与えない!漬物などの加工食品も与えないで
酢の物は、酢だけでなく砂糖や塩といった調味料で味付けされています。犬にとって、これらの調味料はあえて摂る必要がありません。必要な糖分も塩分も、ドッグフードに含まれているからです。
酢の物を与えることで、糖分や塩分が過多になる恐れがあります。また、刺激のある酢の匂いや酸味は一般的に犬が嫌うため、あえて与える必要は全くありません。リンゴ酢や黒酢なども同様です。
なお、酢の成分には筋肉や臓器などの素になるたんぱく質の構成要素、アミノ酸が豊富に含まれています。しかし、良質なタンパク質を原料とするドッグフードから十分に摂取できるため、わざわざ酢から摂る必要はないといえます。
人間は体内で生成できないアミノ酸(必須アミノ酸)9種類を食事から摂る必要があり、犬はそれにアルギニンを加えた10種類を食べ物から摂る必要があります。ちなみに、猫はさらにタウリンを加えた11種類となります。
<犬にとっての必須アミノ酸>(50音順)
- アルギニン
- イソロイシン
- スレオニン
- トリプトファン
- バリン
- ヒスチジン
- フェニルアラニン
- メチオニン
- リジン
- ロイシン
また、酢には酸味のもとであるクエン酸も含まれています。クエン酸は疲労回復に効果的な成分ですが、あえて酢の物で与える必要はないでしょう。
クエン酸を含む食べ物で犬に与えても大丈夫な食品としては、レモンやキウイ、いちご、パイナップルなどがあります。なお、クエン酸には胃酸分泌を促進する作用もあるため、胃酸過多の犬にはおすすめできません。
酢の物によく使うきゅうりの漬物やキムチなど加工食品も与えないで!
酢の物によく使われるきゅうりなどの野菜は、漬物やキムチなどの加工食品も多く出ています。人間の食卓にはなじみの深い食品ですが、漬物やキムチには塩分や香辛料が多く使われているため与えてはいけない食品です。
塩分の過剰摂取は犬の腎臓や心臓に負担をかける可能性があります。さらに、香辛料やニンニクなどの成分が含まれていることもあり、これらは犬にとって有害です。たとえ水洗いしても塩分が完全に除去されるわけではなく、犬の体に過剰な負担をかけることになるため、食べさせないようにしましょう。
このほか、酢の物に使われるわかめや海藻類にも注意が必要です。これらにはヨウ素が多く含まれており、犬が摂取しすぎると甲状腺機能に影響を与える可能性があります。特に加工された海藻類には塩分が追加されている場合が多いため、犬には与えないようにしましょう。
犬が酢を舐めるとどうなるの?お酢アレルギーに注意
もし、犬が誤って酢を口にした場合でも、少量であれば健康上の問題はほとんどないといえるでしょう。ただし、まれにお酢アレルギーを持つ犬もいます。いつもと違う様子が見られたら動物病院を受診しましょう。
アレルギー反応が見られた場合は、まず犬の行動や症状を冷静に観察し、すぐに動物病院に連絡してください。診察時には、犬が舐めた酢の種類や量、摂取後に現れた症状の詳細を獣医師に伝えると診断がスムーズになります。また、初めて与える食品には少量から試し、犬の様子を確認することでアレルギーの有無を確認することが重要です。
<主なアレルギー症状>
- 下痢
- 嘔吐
- 目の充血
- かゆみ
- 食欲不振
- 元気がない
- アナフィラキシーショック など
特に、アナフィラキシーショックを起こした場合には、一刻も早い対応が必要です。アナフィラキシーショックには脈が速くなる、ぐったりする、呼吸困難、激しい下痢や嘔吐といった症状が見られます。命に関わる症状のため、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
酢はペットの食器洗いに活用してみよう
犬に酢をあえて与える必要がないことを解説してきました。一方で、酢の持つ酸性の性質を、犬の食器洗いに活用することができます。
愛犬の食器のヌルヌルした汚れが、洗ってもなかなか落ちないのを不思議に思ったことはありませんか? これは、複数の微生物が集まって形成する「バイオフィルム」という膜が原因です。
犬の唾液はアルカリ性で、細菌が繁殖しやすい環境をつくります。犬の唾液や食べかすなどが付いた食器をすぐ洗わないと、バイオフィルムが発生してしまいます。バイオフィルムは、中性の食器用洗剤では落としきれないことが多いようです。
ヌルヌルを落とすには、バイオフィルムの膜を破壊する必要があります。酢は天然の酸性成分を含んでおり、細菌や汚れを効果的に除去できます。犬にとっても安全性が高いため、安心して使用できます。
酢を使った食器洗いは次の手順で行います。
- 食器の汚れを布やペーパーで拭き取る
- 酢と水を1:2で混ぜた液体をスポンジに含ませて食器を洗う
- 酢の匂いが気になる場合はぬるま湯ですすぎ、しっかり乾燥させる
まずは、乾いた状態で布やペーパーナプキンでヌルヌルを拭き取ります。その上で、お酢と水を1:2で混ぜたものでこすり洗いしましょう。
お酢の匂いが気になる場合は、ホワイトビネガーを用いてもいいでしょう。アルカリ性のバイオフィルムが酢の持つ酸性で破壊されて、汚れをスッキリと落とせます。
スプレーボトルに酢水を作っておくと便利でしょう。酢は食品のため、安心して使えるのもうれしいですね。
なお、しつけのために犬に酢水スプレーを使うのはおすすめできません。犬が酢の匂いに慣れると効果が薄れたり、犬が嫌いな匂いを飼い主がスプレーしていると信頼関係が崩れたりする可能性があります。しつけはトレーニングによって行うようにしましょう。
犬の食器洗いに使えるおすすめのスプレーボトル
カインズのオンラインショップでは、愛犬の食器洗いに使える酢水スプレーにおすすめのボトルを取り扱っています。ぜひチェックしてみてください。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
この記事では、犬に酢の物を与えることの注意点について解説してきました。酢にはアミノ酸が豊富に含まれていますが、アミノ酸は良質なタンパク質を原料とするドッグフードから十分に摂取できるため、わざわざ酢の物から摂る必要はありません。栄養面や健康への効果を期待して与える必要はないといえるでしょう。
刺激のある酢の匂いや酸味は一般的に犬が嫌うため、口にする心配は少ないといえますが、誤って舐めないように置き場所には気を付けましょう。