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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
感情によって自由自在に向きや形を変える犬のしっぽですが、内部に骨が入っていることをご存知でしょうか。骨が入っているということは、体の他の部位と同じようにふとしたきっかけで骨折してしまう可能性があるということです。今回は、犬のしっぽが折れる原因と折れてしまった場合の対処法についてchicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬のしっぽの仕組みとは?
- 犬のしっぽの種類
- 犬のしっぽの役割とは?
- 犬のしっぽの骨が折れてしまう原因は?
- しっぽの骨が折れやすい犬種や年齢は?
- 犬のしっぽの骨が折れてしまった場合の対処法は?
- 犬のしっぽの骨折を予防するには?
犬のしっぽの仕組みとは?
犬の尻尾は、尾椎と呼ばれる小さな骨の連なりと筋肉によって構成されています。尾椎の数は6~23個と犬種によって異なり、これに仙尾筋、尾横突間筋、直腸尾筋といった筋肉が組み合わさってしっぽとなっています。犬がしっぽを上下左右に動かせるのは、これらの筋肉の収縮によるものです。なお、尾椎はしっぽの先にいくほど小さく細くなり、もろくなります。
犬のしっぽの種類
犬のしっぽには犬種によってさまざまなタイプがあります。代表的なものは以下の通りです。
・垂れ尾(ダルメシアンなど):お尻の下にだらんと垂れ下がったしっぽ
・スクリューテール(パグ、ブルドッグなど):クルクルとらせん状に巻いたしっぽ
・飾り尾(ゴールデンレトリバーなど):ふさふさの毛に覆われたしっぽ
・ボブテイル(ウェルシュコーギーなど):まったく生えていないように見えるごく短いしっぽ
・立ち尾(ビーグルなど):お尻の上に垂直に立ったしっぽ
・鎌尾(チワワ、シベリアンハスキーなど):鎌の刃のような曲線を描いたしっぽ
・リス尾(パピヨンなど):ふさふさの毛で覆われ、巻き上がった状態のしっぽ
・巻き尾(柴犬など):体の上にくるんと巻き上がった状態のしっぽ
犬のしっぽの役割とは?
可愛らしい飾りのように見える犬のしっぽですが、実はさまざまな役割を果たす大切な体の部位です。しっぽの主な役割について解説していきます。
コミュニケーションをとる
犬のしっぽの役割の中でもっとも有名なのが、しっぽの上がり下がりや動かし方による感情表現です。しっぽを左右に小刻みに振るときは喜びや興奮、ゆっくり振るときは不安や好奇心を示していると言われています。
他にも、後ろ足の間に挟んだときは恐怖や服従心を、ピンと直立させたときは自信を、だらんと下に垂らしているときは無関心を、水平に維持するときは未知の状況への不安を表現しています。このように、しっぽを使って豊かな感情を表現することで、人間や他の犬といった相手とコミュニケーションを取ろうとしているのです。
体の温度を保つ
犬は、体温を保つためにしっぽを巻き付けて温めるような行動を取ることがあります。このことから、しっぽは寒さ対策にも一役買っていると考えられています。
体のバランスをとる
船でいう舵のように、犬はしっぽを使って体のバランスを取っています。地上であれば転倒しないようにしっぽをうまく使い、水の中であれば泳ぐ方向をしっぽによって調節しています。
外敵から身を守る
犬がしっぽを振るのは、喜びや不安といった感情を感じているときだけではありません。外敵から自分の身を守るため、相手を威嚇するためにしっぽを振ることもあります。
犬のしっぽの骨が折れてしまう原因は?
犬のしっぽを構成している尾椎は小さくもろい骨のため、時には骨折することもあります。犬のしっぽの骨折にはどのような種類があるのでしょうか。また、どのような原因で骨折してしまうのでしょうか。
犬のしっぽの骨折の種類
犬のしっぽの骨折の種類には以下のようなものがあります。
・疲労骨折:弱い力が同じ場所に繰り返し加わることで起こる骨折
・亀裂骨折:骨にヒビが入った状態のこと
・剥離骨折:筋肉や靭帯が強い力で引っ張られた時に起こる骨折
・圧迫骨折:強い力で押しつぶされたときに起こる骨折
犬のしっぽの骨折の原因
犬のしっぽの骨折は、交通事故や他の犬とのケンカ、物との衝突、過度な運動などによって起こることがあります。また、高い場所から落下したり、外部から強い力が加わったりすることでもしっぽの骨は骨折します。
骨が弱くなっていると骨折しやすい
栄養不足によって骨密度が低下していたり、骨の腫瘍などによって骨自体が弱くなっていたりすると、少しの力が加わっただけでも折れてしまう場合があります。また、小型犬は大型犬に比べて骨がもろいため、より骨折しやすいと言われています。
しっぽの骨が折れやすい犬種や年齢は?
しっぽの骨が折れやすいのは、まだ体ができあがっていない子犬や、骨密度が低下するシニア犬などです。特にしっぽの骨が折れやすいとされている犬種はありませんが、イタリアン・グレイハウンド、ポメラニアン、トイ・プードル、ミニチュアピンシャー、パピヨンなどは他の犬と比べて、骨が弱い犬種として知られています。
犬のしっぽの骨が折れてしまった場合の対処法は?
愛犬のしっぽが折れてしまったかどうかを、どのように判断すればいいのか迷う人もいるでしょう。「しっぽが折れてしまったかも?」と思ったとき、飼い主としてどう対処すべきなのでしょうか。
犬のしっぽが折れた場合に出る症状
犬のしっぽが折れた場合は以下のような症状があらわれます。
・元気がない
・食欲がない
・運動を嫌がる
・しっぽの形がおかしい
・歩き方がおかしい
犬のしっぽが折れてしまったときは、痛みやそれに伴って元気や食欲の減退、運動を嫌がるなどの症状が見られます。また、しっぽが腫れたり、左右非対称の歩き方をしたりするのも特徴です。
しっぽを骨折し、神経や血管に異常をきたしているときは、そのまま放っておくと最悪の場合、しっぽが壊死してしまいます。普段と違う様子があれば、すぐに動物病院を受診しましょう。
犬のしっぽが折れた場合の対処法
「愛犬のしっぽが骨折しているかも」と思ったら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。どの部分にどの程度の骨折が見られるのか、獣医師に診てもらう必要があります。
折れているかどうかわからない、触っても嫌がらない、痛がらないといった場合は、人間が骨折したときに行う添え木のように、固めの板と包帯で応急処置を施すのもいいでしょう。ただし、包帯をきつく巻きすぎてしまうと症状がひどくなってしまう場合もあるため、やはりすぐに動物病院に連れて行くことをおすすめします。早めに受診・治療することで、再発の予防や早めの回復が期待できます。
犬のしっぽの骨折を予防するには?
しっぽの骨折を防ぐためには、普段から愛犬の食事や生活環境に気を遣う必要があります。特に、一度しっぽを骨折した犬は再発しやすいため注意が必要です。
食事のバランスを整える
骨密度が低下しないよう、栄養バランスがよくカルシウムの多い食事を与えましょう。
家具の配置や家の作りに気を付ける
家具の配置などを調節し、尻尾をぶつけてしまうような場所を減らしましょう。また、ドアで挟んだり、人間がしっぽを踏んでしまったりすることのないよう、生活の導線を調整するようにしてください。
過度な運動をさせない
犬が興奮するとしっぽの触れが激しくなるため、家具などにぶつけやすくなり、しっぽの骨折につながる可能性があります。狭い家の中などでは、過度な運動をさせないように注意しましょう。
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