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あおば動物クリニック所属

犬が自分のしっぽを追いかけてくるくる回ったり、しっぽを噛んだりする行動を見かけたことはありませんか?
放っておくとエスカレートして自分のしっぽを噛みちぎる可能性もあるため動物病院を受診するなど早めの対処が重要です。こういった行動には理由があり、遊びの延長でしている場合もありますが、ストレスや病気が潜んでいることもあるため注意が必要です。
この記事では犬がしっぽを噛む原因や対処法のほか、この行動が多い犬種について、あおば動物クリニック 獣医師の牧村さゆり先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- 犬がしっぽを噛むのをやめさせるには?
- 犬がしっぽを噛む原因はストレス、皮膚炎などさまざま
- 強いストレスから常同障害を起こしているケースも
- 犬がしっぽを噛むのを防ぐのに役立つグッズ紹介
- まとめ
犬がしっぽを噛むのをやめさせるには?
犬が自分のしっぽを噛む行動を改善するためには、その原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。この行動の原因は単なる遊び心といった軽いものから、ストレスや健康上の問題を含む重いものまでさまざまです。場合によっては、獣医師など専門家のアドバイスが必要なケースもあります。ここでは、原因を取り除くための対策と行動を防ぐための具体的な方法について解説します。
原因を取り除くための対策
犬がしっぽを噛む行動をやめさせるためには、原因を取り除くことが第一歩です。以下に挙げる対策を参考に、愛犬に合った方法を試してみましょう。
・一緒に遊ぶ
犬が退屈している場合、飼い主と遊ぶ時間を増やすことでストレス解消になります。お気に入りのおもちゃを使った引っ張り合い、ボール遊びなどは運動不足を解消するだけでなく、飼い主との絆も深める効果があります。
・散歩の時間を増やす
運動不足が原因でエネルギーを発散できず、しっぽを噛む行動につながることがあります。現在の散歩時間を見直し、少し長めに設定することで、余ったエネルギーを消費させましょう。
・無理に止めず気をそらす
しっぽを噛む行動を強制的に止めようとすると、犬がストレスを感じたり、行動がエスカレートしたりすることがあります。その代わりに、新しいおもちゃを与えたり、声をかけたりして注意をそらす方法を試しましょう。
・しっぽの皮膚トラブルを日常的にチェック
犬がしっぽを噛む理由の一つに、皮膚トラブルが挙げられます。炎症や傷、脱毛が見られる場合は速やかに動物病院を受診してください。定期的なチェックでトラブルの早期発見を心がけましょう。
・皮膚が傷ついている場合は獣医師に相談を
ひどく噛んで皮膚が傷ついている場合、家庭での対処では不十分です。専門的な治療が必要なケースも多いため、必ず獣医師の診察を受けましょう。
しっぽを噛む行動を防ぐ対策
犬がしっぽを噛むのをやめさせたいときは、以下に挙げる物理的な対策もおすすめです。これらは原因を解消する根本的な対策と併せて実施すると、より効果が期待できます。
・エリザベスカラーでしっぽをガードする
愛犬の首にエリザベスカラーを装着すると、犬がしっぽを舐めたり噛んだりする行動を阻止できます。傷がある場合には特に有効です。エリザベスカラーは愛犬にとって慣れないものです。少しでも愛犬の負担を軽減するため、柔らかい素材のものを選ぶと良いでしょう。また、利用に際しては目的に沿ったものであるかどうか、素材や固さ、サイズ等を獣医師に相談の上で検討してみるのがおすすめです。
・定期的にノミ・ダニ対策をする
ノミやダニが皮膚に寄生しているとかゆみを感じ、しっぽを噛む原因になることがあります。これを防ぐため、定期的にノミ・ダニ対策を行いましょう。市販の予防薬や駆除スプレーを自己判断で使用することは、有効性や安全性が不十分な場合があるため勧められません。必ず動物病院での相談を通じて、愛犬をノミ・ダニから守ることが大切です。
・傷口を包帯で保護する
しっぽに傷がある場合、患部に包帯を巻いて傷口を保護して噛む行動を防ぐ対策も有効です。包帯を巻く前に消毒したり軟膏を塗ったりして傷の化膿を防ぐ処置も必要です。また、包帯が適切に巻かれていないと、患部を余計に気にして傷を悪化させてしまったり、包帯を噛んで誤飲してしまったりするリスクもあるため、獣医師の指導のもとで行うのが安全です。
なお、しっぽを噛む行動とは別に、愛犬が自分のしっぽを追いかける行動に悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。犬がしっぽを追いかけるのをやめさせたい場合は、以下の記事をご参照ください。
犬がしっぽを噛む原因はストレス、皮膚炎などさまざま
愛犬のしっぽ噛みをやめさせるためには原因の特定が重要ですが、犬がしっぽを噛む行動には、遊び心や健康状態、心理的要因など、さまざまな理由が考えられます。特に若い犬では遊びの延長で行うことも多いのですが、ストレスや病気が関与している場合には早めの対処が必要になります。
犬がしっぽを噛む行動に気づいた際、飼い主がどのタイミングで動物病院を受診すべきか迷うことがあります。目立った傷や脱毛が見られる場合は、早めの受診が推奨されますが、軽度の場合でも一度獣医師に相談することで安心につながります。
ここでは、しっぽを噛む行動の主な原因について詳しく解説し、それぞれの状況に応じた注意点を紹介します。
寂しい・イライラするなどストレス発散のため
犬が寂しさやイライラを感じると、しっぽを追いかけたり噛んだりする行動を示すことがあります。この行動は軽度なストレス発散の一環として見られる場合もあれば、長期間続く強いストレスが原因となることもあります。例えば、飼い主と過ごす時間が少ない、環境の変化があった、十分な運動ができていないなどがストレス要因になることがあります。
特に、しっぽの毛をむしったり皮膚を傷つけたりするほどの行動が見られる場合は注意が必要です。こうした行動を放置すると、皮膚トラブルの悪化や皮膚の傷口から感染症を引き起こすリスクが高まります。
まずは、愛犬の生活環境やストレス源を見直し、一緒に遊ぶ時間を増やしたり、十分な運動をさせたりすることが大切です。犬がストレスを感じている場合、ストレスを軽減するための環境改善が効果的です。例えば、専用のリラックススペースを作る、アロマディフューザーで犬用のリラックス効果が期待できる香りを使用する、騒音を減らすなどの工夫が挙げられます。
場合によっては、獣医師や動物の行動、心理に詳しい専門家に相談し、適切な対応策を講じましょう。
ノミやダニがいる
ノミやダニが犬の皮膚に寄生していると、ノミやダニが体の上を動いたり皮膚を刺したりするためかゆみが出たり、皮膚が赤くなったりします。しっぽ自体がかゆいわけではなくても、ノミやダニによる強いかゆみや痛みなどの不快感から、それを軽減しようとする行動の一環としてしっぽを噛む場合があります。
これを防ぐためには、定期的な予防と駆除が重要です。ノミ・ダニ予防薬や駆除スプレーを使用し、愛犬の皮膚を守りましょう。また、散歩後や日常的なケアの中でしっぽを含む全身をチェックする習慣をつけることも効果的です。もし噛む行動が続き、かゆみが原因と思われる場合は、動物病院で適切な治療を受けることをおすすめします。
皮膚炎を起こしている
皮膚炎やアレルギーなどの皮膚トラブルも犬がしっぽを噛む原因になります。しっぽやしっぽの付け根あたり、あるいはお尻の皮膚などに赤みや腫れ、脱毛が見られる場合、しっぽを噛む行動はかゆみや痛みを和らげようとする行動の一環です。
早めの対処が重要であり、適切な治療を受けることで症状の悪化を防ぐことができます。しっぽに異常が見られた場合は、動物病院で診察を受け、アレルギー検査や薬用シャンプーなどによる適切な対処を行いましょう。また、アレルギーの原因となる食材や環境因子を特定し、それを排除することも重要です。
てんかんなどの病気がある
てんかん発作の一部として、しっぽを追い噛む行動が見られることがあります。この場合、行動は発作の一環であり、激しく吠えたり唸ったりしながらしっぽを追い、しっぽに噛み付きます。また、肝臓や腎臓の病気、中毒、末梢神経障害などが原因でしっぽを追いかける行動が現れるケースもあります。
このような場合には、早急に動物病院を受診し、詳しい診断を受ける必要があります。発作の頻度や症状の詳細を記録しておくと、獣医師による診断の助けとなります。てんかんやその他の病気が疑われる場合には、投薬治療や生活環境の見直しが必要となることもあります。
遊びの延長・飼い主の気を引きたい
しっぽを噛む行動が、単に遊びの延長や飼い主の注目を引きたいという理由で行われる場合もあります。子犬や若く活発な犬に多く見られる行動で、しっぽを「追う」「噛む」ことで楽しんでいることがあります。また、飼い主が反応すると、犬がその行動を強化することもあります。
比較的短時間で終わり、心配の少ないケースですが、行動がエスカレートする可能性を防ぐため、適切に対処することが大切です。遊び用のおもちゃを与えるなど、しっぽ以外に興味を向けさせる工夫をしましょう。また、犬がしっぽを噛むたびに過剰に反応しないように注意し、適切な行動に対して褒めることで、ポジティブな習慣を促進できます。
強いストレスから常同障害を起こしているケースも
犬がしっぽを噛む行動が、長期間にわたるストレスや不安から「常同障害」と呼ばれる精神疾患の一部となるケースがあります。行動がエスカレートし、しっぽを噛みちぎるなど深刻な問題に発展することもあるため、早期の診断と適切な治療が必要です。場合によっては投薬治療が行われることもあります。ここでは、常同障害について詳しく解説し、その症状やリスク、注意点について解説します。
常同障害とは?
犬がしっぽを噛むなど常に同じ行動を繰り返す状態を常同行動と呼び、これは葛藤やストレスによって起こります。もともとはストレスや不安を解消するために行う行動ですが、それがだんだんエスカレートするとおもちゃなど他のことでは気を紛らわせなくなります。さらに、食事中や散歩中に突然始まってやめられなくなるなど、日常生活にも支障が出てきます。
こうした病的な状態は「常同障害」と呼ばれ、獣医学的診断および薬物療法が必要とされています。症状はしっぽを噛むだけでなく、しっぽを追う、自分の体を舐めるなどがあり、エスカレートするとしっぽを噛みちぎってしまうこともあります。
この病気の背景には、葛藤やストレス、不安などがあるのですが、飼い主が気づかないうちに犬が慢性的にストレスを抱えていることが多いようです。症状が進行すると、しっぽを噛みちぎってしまうだけでなく、傷を作ることで感染症のリスクも高まります。
唸りながら回る、しっぽから血が出るような場合は要注意
犬が唸りながらしっぽを追い回したり、噛みついたりして血が出るような行動は、常同障害が進行している可能性があります。このような状態では、行動が制御できずにエスカレートし、しっぽや周囲の皮膚が深刻な損傷を受けることがあります。
特に注意すべきは、飼い主が無理に止めようとして手を出す場面です。このような状況では、犬が興奮状態にあり、手を噛まれる危険があります。犬歯が刺さるほどの深い傷を負うこともあるため、直接手を出すのは避け、間接的に犬を落ち着かせる方法をとりましょう。
常同障害が疑われる場合は、すぐに動物病院を受診し、獣医師による診断を受けましょう。獣医師の診断のもと、投薬治療や行動療法が必要になるケースもあります。また、愛犬がストレスを感じている原因を特定し、それを取り除くための環境調整やケアも重要になってきます。大切なのは早期に対応することで、それにより適切な治療や環境改善が可能となり、症状の悪化を防ぐことができます。
トイ・プードルに多い?しっぽを追う・噛む行動が多い犬種
しっぽを追い回したり噛んだりする行動は、特定の犬種で特に多く見られる傾向があります。例えば、柴犬はこの行動が比較的多く見られる犬種の一つです。柴犬以外では、ジャーマン・シェパード・ドッグ、ミニチュア・ブル・テリア、ポメラニアン、ジャック・ラッセル・テリア、ビーグルなどでも、この行動が観察されることがあります。その他、トイ・プードルは「自分の体を舐め続ける」、ボーダー・コリーは「影や光を追い続ける」といった常同障害が現れやすいといわれています。
このような犬種を飼う際には、十分な運動や遊びを提供すること、ストレスを最小限に抑える環境を整えることが重要です。日常生活で異常行動が見られる場合は、早めに動物病院や専門家に相談し、愛犬に適した対応を行いましょう。
犬がしっぽを噛むのを防ぐのに役立つグッズ紹介
エリザベスカラーの他、ノミ・ダニ対策に役立つスプレーや首輪、愛犬とのスキンシップの時間を重ねられるよう、トリミンググッズを紹介します。
なお、エリザベスカラーは独断でつけず、必ず獣医師に必要かどうか、素材や固さ、サイズ等を相談してから購入を検討してみてください。
SWEET MOMMY ONEKOSAMA OINUSAMA 日本製 抗菌・抗ウイルス素材 ソフト エリザベスカラー
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
犬がしっぽを噛む行動には、ストレスや皮膚トラブル、遊び心、さらには病気などさまざまな原因が隠れています。
単なる一時的な行動であれば問題は少ないものの、行動がエスカレートしたり長期間続いたりする場合は、常同障害や健康上の問題が関与している可能性があります。特に、しっぽを噛みちぎる、血が出るなどの深刻な状態では、早急な対応が必要です。
獣医師や専門家に相談し、適切な治療や環境改善を行いましょう。