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オールペットクリニック所属。日本獣医皮膚科学会認定医。 アメリカChi University Veterynary Food Therapyコース修了。
愛犬がドッグフードを食べなくて困っている、という飼い主さんが意外と多いようです。ドッグフードは総合栄養食として、犬の健康を支える強い味方です。普段は手作り食を与えている場合でも、将来病気をして療養食を食べることになったり、災害時に食事を選べない状況になったりしてしまっても対応できるように、愛犬がドッグフードを食べられるようにしておくことはとても重要です。愛犬が喜んでドッグフードを食べてくれるように、原因とそれぞれの対処法を紹介していきます。
目次
- 犬がドッグフードを食べない原因と特徴
- 犬がドッグフードを食べない時の対処法
- 犬が好むドッグフードの探し方
- まとめ
犬がドッグフードを食べない原因と特徴
愛犬がごはんを食べなくなったら、「体調が悪いんじゃないか」と心配になりますよね。犬がご飯を食べなくなるケースを紹介していきます。愛犬がどうして食べないのか、原因を探しましょう。
季節が原因の場合の特徴
本来犬は、冬季に食事量が増えて、夏季は食事量が減る傾向にあります。これは、野生動物が冬季は寒さを乗り切るためにエネルギー産生が多く必要になることが関係しています。そのため、夏になって少し食事が減ってもさほど心配する必要はないでしょう。しかし極端に食事量が減った場合は、下痢や嘔吐、元気がないなど他の症状も見られないか、よく観察してください。
特に夏は、夏バテによる食欲不振となる場合もあります。
またドッグフードは開封すると酸化して傷んでいくため、香りなどで犬がそれを察知して食べなくなってしまうことも。暑くて湿度の高い夏季は、特にドッグフードが傷みやすいので注意が必要です。
わがままが原因の場合の特徴
嗜好性の高いおやつや味付けされた人間の食べ物を頻繁に与えられていると、ドッグフードを食べなくなることがあります。ドッグフードは食べないのにおやつなら食べるという場合は、食欲は問題ないわけですから「わがまま」が原因と考えられます。
また、おやつは飼い主さんの手からもらえること、おやつをもらうときは飼い主さんがニコニコしていること、などの理由でおやつを食べたがる犬もいます。ドッグフードも同じように手から与えてみると、犬が食べてくれることがあります。
食にわがままなわんちゃん対策には、こちらの記事もおすすめ!
>偏食・食べ渋り・食べムラ……犬がなかなかご飯を食べてくれないときの対処法8選【獣医師監修】
ストレスが原因の場合の特徴
人間と同様に、犬もストレスが原因で食欲が落ちることがあります。
愛犬が急にごはんを食べなくなったら、最近環境の変化がなかったか、散歩などの運動は足りているか、飼い主とのコミュニケーションは充分か見直してみましょう。
犬がストレスを感じているサインには他に、足をペロペロ頻繁に舐める、あくびや舌なめずりを良くする、吠えたり噛んだりする、抜け毛やフケなどの症状、便秘や軟便、下痢などがあります。
ストレスのサインはこちらの記事を参考に!
>愛犬のストレスを見抜こう!その行動、じつは「ストレスサイン」かも!
病気が原因の場合の特徴
犬がごはんを食べなくなったら、病気のサインかもしれません。ご飯を食べないことの他にも症状がないか、愛犬の様子をよく観察をして、次の表を参考に原因を探しましょう。
ご飯を食べられない理由 |
他の症状 |
考えられる病気 |
頭を下げたり腰を丸めたりするごはんを食べる姿勢で強い痛みが出てしまってごはんが食べられない。 |
段差の上り下りが苦手になった 抱っこをすると嫌がる 歩行がふらつく |
椎間板ヘルニア、関節炎など |
口の中が痛くてごはんが食べられない |
口臭、歯茎の腫れ、歯の汚れ |
口腔疾患(歯肉炎、歯周病、口内炎) |
内臓に異常があって食欲不振 |
咳、呼吸が荒い、呼吸困難 |
心疾患、呼吸器疾患、フィラリア症など |
嘔吐、元気がない、黄疸など |
肝臓の病気(肝臓病、肝炎など) |
|
多飲多尿、尿の色の異常など |
腎臓の病気(腎臓病、腎不全など) |
|
いびき、喘鳴、失神など |
呼吸器疾患(短頭種気道症候群、気管虚脱など) |
|
嘔吐、下痢、血便、元気がない、体重が減る |
消化器疾患、寄生虫による感染症など |
ストレス、病気が原因と思われる食欲不振については次の記事もおすすめ!
>犬が急にご飯を食べなくなる理由とは?考えられる病気や病院に行くべき症状について解説【獣医師監修】
老化が原因の場合の特徴
7歳以上のシニア犬が、急にごはんを食べなくなった場合、他に症状はなく口内環境にも問題がない、食欲はあるけど食べる量が少なくなった、というのであれば「老化」が原因かもしれません。
老化による消化機能や味覚・嗅覚の低下、咀嚼力の低下、運動量の低下などが原因です。例えば散歩で歩く距離が短くなっていたり、歯や歯茎が衰えたりしていませんか?また食べる時の体勢が辛そうではありませんか?
老犬がごはんを食べないときは、こちらの記事もおすすめ!
>老犬がご飯を食べない時はどうすれば?飼い主ができる食事の工夫と考えられる病気、注意点について解説【獣医師監修】
犬がドッグフードを食べない時の対処法
愛犬がドッグフードを食べないからといって、食いつきの良いおやつばかり与えてはいけません。おやつの与えすぎは栄養が偏ってしまいますし、ごはんを食べないことの解決にはなりません。愛犬がご飯を食べない理由が病気以外の場合、次に紹介する対処法を試してみてください。
季節による体調の変化やドッグフードの酸化が場合の対処法
夏バテによる食欲不振の場合は、ドライフードに水や人肌程度のぬるま湯を加えて、ふやかしてから与えてみてください。香りが立ちやすく、犬の嗅覚を刺激して食欲増進が期待できます。
またドッグフードの劣化が原因の場合は、ドッグフードの保存方法を見直しましょう。
基本的にドッグフードは未開封であっても直射日光を避け、冷暗所で保管しましょう。特に暑くて湿度の高い夏季はドッグフードが傷みやすいので、開封したらドライフードは1カ月以内で使い切るように心がけましょう。
冷蔵庫で保存すると、出し入れの際の温度差で結露しやすく、その結露が原因でカビが生えやすいためおすすめできません。
ウェットフードの場合は、開封後2、3日で使い切り、開封後は冷蔵保存し、すぐに使い切れない場合は、小分けにして冷凍庫で保存しましょう。
ドッグフードの正しいふやかし方を知りたい方はこちらの記事もおすすめ!
>ドッグフードの正しいふやかし方は?ふやかすメリット・デメリット、注意点についても解説【獣医師監修】
わがままが原因の場合の対処法
おやつなら食べるのにドッグフードは食べない場合や、おやつを食べ過ぎてドッグフードが食べられなくなっている場合は、おやつを控えましょう。
そしてごはんを出しても食べないようだったら、10~15分ほどでお皿を下げます。心を鬼にして、愛犬がお腹を空かせて次の食事でドッグフードを食べるように食欲をコントロールしてみましょう。しかし、この方法は特に子犬などでは低血糖になる恐れがあるため、よく観察をしながら行ってください。
またどうしてもドライフードだけでは食べないという場合は、犬用のおやつやふりかけ、犬が食べても安心なお肉やお野菜を少量トッピングする他、ウェットフードを使用するのも良いでしょう。
ストレスが原因の場合の対処法
愛犬の様子をよく観察してストレスの原因を探ります。そしてそのストレスを解消するような対応をしてあげましょう。
例えば引っ越しやお部屋の模様替え、家族や同居犬が増えたなどの変化はありませんか? こういった生活環境の変化は犬にとって大きなストレスになることがあります。またお留守番が長時間に渡ったことがストレスになっていませんか?
愛犬とのコミュニケーションを増やし、お散歩の時間をたっぷりとってあげることでストレスの発散を手伝ってあげましょう。また、リラックス効果のあるフェロモン製剤(フェリウェイやアダプティル)、サプリメント(ジルケーンなど)もストレス解消におススメです。
病気が原因の場合の対処法
愛犬の食欲不振に病気の疑いがある、または原因がわからない場合は、無理にごはんを食べさせようとしないで、早めに獣医師の診察を受けて治療を受けるようにしましょう。
その際、食欲が低下し始めたのがいつからなのか、普段食べているごはんやおやつについて獣医師に説明できるようにしておきましょう。
老化が原因の場合の対処法
もし愛犬の食欲不振が、老化によるものだったら、老化によるどのような理由で食べる量が減ったのかよく見てあげてください。
もし嗅覚や味覚の衰えによって食欲不振に陥っているようなら、食欲が増すように、ドライフードなら水でふやかして香りが立つようにしてあげたり、嗜好性の高い犬用ふりかけをトッピングしてあげたりするなどの工夫ができます。量をあまり食べられなくなっているようなら、少量でも栄養が取れるフードへの切り替えを検討してみてください。
さらに歯や歯茎が弱くなって硬いドライフードが食べづらいようなら、食べやすくドライフードを水でふやかしてあげたり、ウェットフードに変更したりするのも有効です。また、ご飯を食べる姿勢が負担になっていることもあります。その場合は、愛犬が食べやすい姿勢を見つけてフードボウルの高さを調整するなどの工夫をすると良いでしょう。
シニア犬は体力保持のためしっかりとした栄養補給が重要です。1日の供給量を守っていれば、ごはんの時間にこだわらずに、食べたい時間に食べさせてあげても問題ないでしょう。
犬が好むドッグフードの探し方
ドッグフードは数多くの商品が販売されていて、どれが愛犬にとってベストなものか選ぶのが大変です。タンパク源だけでもチキンやビーフ、ラムにフィッシュなどさまざま。ドライフードは粒の大きさや形状もメーカーによって異なります。そこで、愛犬が好むドッグフードの探し方を紹介していきます。
胃腸への負担を考慮しながら少量ずつ試す
毎日の主食となるドッグフードは「総合栄養食」と記載されたものです。「総合栄養食」はそれと水だけで、健康を維持できるように栄養バランスを調整されているドッグフードです。「子犬用総合栄養食」「成犬用総合栄養食」「高齢期用総合栄養食」などと、成長段階ごとに栄養の基準が設けられています。
数種類を少量ずつ試していきましょう。愛犬の好みを「1回分の食事を完食するか」で測っていきます。その際、胃腸への負担を考慮し、これまで食べていたフードから急に切り替えないようにします。
今までのフードに対し、新しいフードの量を、1〜2日目に25%、3〜4日目は半分の50%、5〜6日目に75%、7日目で100%と切り替えていくイメージで、愛犬の食いつきやお腹の調子を見ながら、徐々に移行していきましょう。特にシニア犬は胃腸の機能が落ちて、味の好みが頑固になっているため、もっと時間をかけて慣らしていきましょう。
またドッグフードは、食いつきだけでなく、うんちの調子もチェックして決めましょう。
ドッグフードについてはこちらの記事もおすすめ!
>【獣医師監修】ドッグフードの種類は大きく分けて4つ!その違いとは?
さまざまな味やタイプのドッグフードを食べられるようにしておこう
最近では手作り食を与えるケースもありますが、さまざまな味やタイプのドッグフードを食べられるように慣れさせておくことは、将来的に愛犬が病気をして療法食を食べなくてはならなくなったり、災害時に与えられるフードが限られてしまったりすることを想定すると、非常に重要なことです。愛犬が「これしか食べない」といったこだわりの強さを持たないように、幼少期からさまざまな味やタイプのドッグフードに慣れさせておきましょう。
犬用おやつの与えすぎは、栄養が偏ってしまいますので注意が必要です。おやつは犬の1日に必要な摂取カロリーの2割以内にし、あくまでメインは「総合栄養食」と記載されたドッグフードを与えましょう。
また、加工された人間の食べものは犬にとって塩分や添加物などが多く含まれているため、犬が食べると肥満や病気を招くリスクを高めます。「少しだけだから大丈夫だろう」と自己判断せず、人間用の加工食品は犬に与えないようにしましょう。
まとめ
犬がドッグフードを食べないのはなぜか、考えられる原因と対処法を解説しました。犬が急にドッグフードを食べなくなった場合、食欲がないのか、ドッグフードが嫌なのかを見極めなくてはいけません。食欲がない場合は、なんらかの病気かもしれないので、他に症状が見られないか注意深く見てあげましょう。
また、わがままでドッグフードを食べなくなってしまった場合は、時には専門家に相談したり、愛犬の好みのフードを探してあげたりするのも良いでしょう。「食」は健康の源です。愛犬がきちんと適切な食事をとっているか、食事管理には気を遣いましょう。