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ちば愛犬動物フラワー学園所属。北里大学獣医畜産学部卒業 / 現在は専門学校に勤務しつつ、地域の動物病院にて勤務医として従事。

愛犬が急にドッグフードを食べなかったり、残すようになったりすると、「どこか具合が悪いのかな?」と、心配になります。
『食欲』は愛犬の健康を管理するうえで非常に重要なバロメーターです。「食べない原因」を見極めて、食べられるようにすることはとても重要なことです。
この記事では愛犬が喜んでドッグフードを食べるように、犬がドッグフードを食べない理由やそれぞれの対処法を獣医師の平田繭子先生に伺い、紹介していきます。
目次
- 愛犬がドッグフードを食べないとき、体調をよく観察! 病気が疑われる場合は動物病院へ
- 犬が元気なのにドッグフードを食べない理由と対処法をライフステージ別に解説
- 【季節が原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 【ストレスが原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 【わがままが原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 【飽きや好みの変化が原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 【子犬】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 【シニア犬(老犬)】ドッグフードを食べない特徴と対処法
- 犬がドッグフードを食べない時のトッピングやアレンジ、食いつきを良くする工夫と注意点
- さまざまなタイプのドッグフードを食べられるようにしておこう
- まとめ
愛犬がドッグフードを食べないとき、体調をよく観察! 病気が疑われる場合は動物病院へ
犬がごはんを食べなくなったら、病気のサインかもしれません。ごはんを食べないことの他にも症状がないか、愛犬の様子をよく観察して、次の表を参考に原因を探しましょう。
愛犬の食欲不振に病気の疑いがある、または原因がわからない場合は、無理にごはんを食べさせようとしないで、早めに獣医師の診察を受けて治療を受けるようにしましょう。
その際、食欲が低下し始めたのがいつからなのか、普段食べているごはんやおやつについて獣医師に説明できるようにしておきましょう。
また他に何も症状がなくても、もし丸1日以上何も口にしなかったり、食欲が半分~それ以下と言う状況が数日続いているようなら動物病院を受診してください。
✓ ごはんを食べる姿勢に強い痛みが出てしまって食べられない
症状 | 考えられる病気 |
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✓ 口の中が痛くてごはんが食べられない
症状 | 考えられる病気 |
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✓ 内臓に異常があって食欲がない
症状 | 原因 |
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犬が元気なのにドッグフードを食べない理由と対処法をライフステージ別に解説
愛犬がドッグフードを食べなくなっても、「飽きてしまったのかな」と安易に別のフードに切り替えようとしないでください。原因を調べて対処していきましょう。体調不良でないのであれば、次に紹介する主な原因に当てはまるものがないか調べていきましょう。
健康な成犬なら、1日程度はフードを食べなくても様子見で大丈夫です。
【季節が原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
本来犬は、冬季に食事量が増えて、夏季は食事量が減る傾向にあります。これは、野生動物が冬季は寒さを乗り切るためにエネルギー産生が多く必要になることが関係しています。そのため、夏になって少し食事が減ってもさほど心配する必要はないでしょう。
しかし極端に食事量が減った場合は、下痢や嘔吐、元気がないなど他の症状も見られないか、よく観察してください。
とくに夏は、夏バテによって食欲不振になることがあります。この場合は、ドライフードに水や人肌程度のぬるま湯を加えて、ふやかしてから与えてみてください。香りが立ちやすく、犬の嗅覚を刺激して食欲増進が期待できます。
またドッグフードは開封すると酸化して傷んでいくため、香りなどが劣化して犬がそれを察知して食べなくなってしまうことも。暑くて湿度の高い夏季はドッグフードが傷みやすいので注意が必要です。
基本的にドッグフードは未開封であっても直射日光を避け、冷暗所で保管し、開封したら1カ月以内で使い切るように心がけましょう。冷蔵庫での保管は、出し入れの際の温度差で結露しやすく、その結露が原因でカビが生えやすいためおすすめできません。
ウェットフードの場合は、開封後2~3日で使い切り、開封後は冷蔵保存してください。すぐに使い切れない場合は、小分けにして冷凍保存しましょう。
【ストレスが原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
人間と同様に、犬もストレスが原因で食欲が落ちることがあります。
愛犬が急にごはんを食べなくなったら、最近環境の変化がなかったか、運動(散歩)は足りているか、飼い主とのコミュニケーションは充分かなどを見直してみましょう。
たとえば引っ越しやお部屋の模様替え、家族や同居犬が増えたなどの変化はありませんか?
こういった生活環境の変化は犬にとって大きなストレスになることがあります。またお留守番が長時間に渡ったことがストレスになっていることもあります。
食欲低下の他にも犬がストレスを感じているサインには、足をペロペロと頻繁に舐める、あくびや舌なめずりをよくする、吠えたり噛んだりする、抜け毛やフケなどの症状、便秘や軟便、下痢などがあります。
愛犬の様子をよく観察してストレスの原因を探って、そのストレスを解消するような対応をしてあげましょう。
コミュニケーション不足で飼い主に構ってほしいときは、フードを手で与えると食べるようになることがあります。ただし、それが習慣になってしまうことがあるので、頻度には注意が必要です。
愛犬とのコミュニケーションを増やし、お散歩の時間をたっぷりとってあげることでストレスの発散をしましょう。リラックス効果の期待できるフェロモン製剤、サプリメントなどを活用してみてもよいですね。
【わがままが原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
ドッグフードは食べないのにおやつなら食べる、というときは、食欲はあるとわかります。なので、ドッグフードを食べない原因は「わがまま」だと考えられます。
食欲はあるのに「わがまま」でドッグフードを食べないときの対処法は、ごはんを出したら15分ほどでお皿を下げてしまうことです。心を鬼にして、愛犬がお腹を空かせて次の食事でドッグフードを食べるように食欲をコントロールしてください。しかし、子犬の場合は低血糖になる恐れがあるため注意してください。
また、おやつは飼い主さんの手からもらえることや、おやつをもらうときに飼い主がニコニコしていることなどを理由におやつを食べたがる犬もいます。そのためドッグフードも同じように手から与えたり、ドッグフードを与えるときにニコニコしてあげたりしたら食べる場合も。このように与え方を工夫するだけで改善する場合もあります。
【飽きや好みの変化が原因】ドッグフードを食べない特徴と対処法
犬も人間のように同じ食事が続くと飽きてしまったり、急に食の好みが変わったりしてしまうことがあります。
そのようなときには、ドッグフードにトッピングを加えたり、ドッグフードを別のものに変更したりすることで対応します。
また年齢によって必要な栄養素のバランスが変わったり、消化機能が変化したりするため、年齢に合ったドッグフードに変えていくことも必要です。
【子犬】ドッグフードを食べない特徴と対処法
子犬は、身体の成長とともに生後4~5カ月をピークに食欲が落ち着いて食事量が減ります。そのことを知らないでいると、「急に食欲不振になった!」と心配になり、「このフードに飽きたのかもしれない」とフードを変更してしまうことがあります。
しかし、このときに安易にフードの変更をすると、食べ飽きやすい性格になってしまうことがあるため注意が必要です。またドッグフードだけでは食べなくなってしまったからといって、トッピングなどをすると肥満の心配もあるので注意しましょう。
子犬は環境の変化に敏感で、発達段階で免疫も未熟です。食欲がないのは、ストレスが原因かもしれないし、体調不良が原因かもしれません。他に気になる症状がないか注意深く見るようにしましょう。
【シニア犬(老犬)】ドッグフードを食べない特徴と対処法
7歳以上のシニア犬が、食欲はあるのに食べる量が少なくなるのは「老化」によるものであるかもしれません。
老化によって消化機能や味覚・嗅覚が低下したり、咀嚼力が低下、運動量が低下したりすることで食欲が落ちてしまいます。
もし嗅覚や味覚の衰えによって食欲不振に陥っているようなら、食欲が増すように、ドライフードを水でふやかして香りが立つようにしてあげたり、嗜好性の高い犬用ふりかけをトッピングしてあげたりするなどの工夫で対応しましょう。
量をあまり食べられなくなっているようなら、少量でも栄養が取れるフードへの切り替えを検討してください。
さらに歯や歯茎が弱くなって硬いドライフードが食べづらいようなら、食べやすくドライフードを水でふやかしてあげたり、ウェットフードに変更したりするのも有効です。
ごはんを食べる姿勢が負担になっていることもあります。その場合は、愛犬が食べやすい姿勢を見つけてフードボウルの高さを調整するなどの工夫をすると良いでしょう。
シニア犬は体力保持のためしっかりとした栄養補給が重要です。1日の供給量を守っていれば、ごはんの時間にこだわらずに、食べたい時間に食べさせてあげて問題ありません。
また、シニア犬が急に食欲がなくなったときは、病気が心配です。他に症状がないか注意深く観察し、速やかに動物病院を受診しましょう。
犬がドッグフードを食べない時のトッピングやアレンジ、食いつきを良くする工夫と注意点
犬の主食には栄養バランスに優れた「総合栄養食」のドッグフードを与えるのがベストです。
しかし犬がドッグフードを食べないとき、おやつなら食べるからと与えすぎてしまうことがあります。するとカロリーオーバーになってしまったり栄養が偏ったりしてしまい、肥満や病気のリスクが高くなる恐れがあります。とくに体の小さな小型犬は、少しの体重増加でも内臓に大きな負担がかかるため食事管理は徹底したいところです。
そこでこのトピックでは、総合栄養食のドッグフードを愛犬に喜んで食べてもらうための工夫を紹介していきます。
① ドッグフードを食べなくなったら与え方や器に変化を加えてみて
犬はニオイや食感に敏感です。以下のちょっとした工夫だけでも、犬にとってはいつものドッグフードがうれしい食事に変身することがあります。
- フードをあたためて香りを立たせる
- 水やぬるま湯を加えて柔らかくしてみる(食感を変える)
- フードの粒を砕いて小さくする
- 器を変えて気分を変える
②ドッグフードにふりかけや茹で・蒸しフードをトッピング!カロリーオーバーに注意
ドッグフードの食いつきを良くするために、茹でた野菜や肉、市販の犬用ふりかけなどをトッピングしてみましょう。
トッピングをする際に気を付けたいのは、以下の2点です。
- 味付けをしていない食材を利用すること
- トッピングの量は1日に必要なエネルギー要求量の10%以下を目安として、トッピングをした分、ドッグフードの分量を減らすこと
③ドッグフードの切り替えは7~10日かけて少量ずつ変える
愛犬の好みに合うフードはどれか、さまざまなフードの中から愛犬が「1回分の食事を完食する」フードを探してみるのも良いでしょう。
しかし、フードは胃腸への負担を考慮して、これまで食べていたものから急に切り替えないように注意してください。1週間から10日間ほどかけて少しずつ移行していきます。食いつきだけでなく、うんちの状態もチェックしながら行ってください。
シニア犬は胃腸の機能が落ちて、さらに味の好みが頑固になっていることがあるため、もっと時間がかかることもあります。
④少量ずつウェットフードを試してみる
どうしてもカリカリのドライフードを食べないというときは、思い切ってウェットフードに切り替えてみることを検討しても良いでしょう。その場合、ウェットフードは主食として与えるので、「総合栄養食」と記載してあるものを選んでください。
切り替えは、1週間から10日ほどかけて少しずつ行います。食いつきと同時に、うんちの状態もチェックしながら切り替えていきましょう。
⑤散歩や屋内遊びで運動量を増やしてみる
散歩の量を増やしたり、室内遊びを取り入れたりしてみてください。運動量が足りないことで摂取カロリーが減って食欲不振を起こしているケースでは有効です。また、飼い主とのコミュニケーションが増えることによってストレス発散ができて食欲が増すことも期待できます。
もしシニア犬などで思うように体が動かせない場合は、知育玩具を使ったトレーニングなどもおすすめです。頭を使うことは運動と同様にカロリーを消費します。
⑥療法食を食べないときは香りを立たせる他プロに頼って
心臓病や腎臓病、糖尿病、結石など、犬が抱えている疾患や体質に対応した療法食は、獣医師の指導の下で与えるものです。疾患ごとに摂取してはいけない食材や成分などの禁忌事項があるため、療法食は各疾患に対応した栄養成分とバランスで構成されています。
そのため、療法食を愛犬が食べないからといって、飼い主の自己判断でトッピングアレンジを加えることは絶対NGです。
そこで、「良いニオイ」だけをフードに移すひと工夫を試してみてください。
だしパックやお茶パックの袋にかつおぶしや煮干し等のニオイが強い食材を入れて、フードと一緒の容器・袋に入れて振ってニオイを移します。フードに食欲をそそるニオイがついて、食いつきが良くなることがあります。
それでもどうしても食べない場合は獣医師に相談してください。
さまざまなタイプのドッグフードを食べられるようにしておこう
愛犬がさまざまな味、タイプ(ドライフード、ウェットフード)のドッグフードを食べられるようにしておくことは、将来を見据えて非常に大切なことです。
たとえば病気をして療法食しか食べられなくなってしまったり、災害のせいでフードが限られてしまったり、というようなことがあるかもしれません。そんなときに愛犬が「〇〇しか食べられない」では大変です。
また、加工された人間の食べものは犬にとって塩分や添加物などが多く含まれているため、犬が食べると肥満や病気を招くリスクを高めます。人間用の加工食品は犬に与えないようにしましょう。
まとめ
犬がドッグフードを食べないのはなぜか、考えられる原因と対処法を解説しました。
犬がドッグフードを食べないと、つい食いつきの良いものを与えたくなってしまうかもしれません。犬は高脂質で高糖質の食べ物が大好きで食いつきバツグンです。しかし、そういったものは犬の健康を害すだけでなく、「ドッグフードを食べなければ、もっとおいしいものがもらえる」ということを学習して、より一層ドッグフードを食べなくなってしまいます。
犬も人間のように同じ食事が続くと飽きてしまうことがあるということ念頭に置いて、栄養バランスを考えながら適切に対処できるようにしておきましょう。
原因がわからない、いろいろ試しても食べてくれない、という場合は獣医師に相談するようにしましょう。