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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。

犬も人と同じように、年齢を重ねると白髪が生えるようになります。これは加齢によって毛の色をつくるメラニン色素の生成が減るためで、どんな毛色の犬でも毛色が薄くなることがあります。
しかし、若い犬で急に白髪が目立つようになった場合は、病気やストレスといった健康上の問題が隠れている可能性があります。原因によっては犬の白髪の進行を抑えたり、遅らせたりできることもあります。
この記事では、犬の白髪や毛色の退色について獣医師の平松育子先生監修のもと、解説していきます。
目次
- 急に犬の白髪が増えたときは病気やストレスのサインかも
- 犬の白髪は減らせる? 戻る? 対策は栄養管理とストレスケアがポイント
- 犬に白髪が生える原因とは? 加齢・栄養・ストレス・病気の影響を解説
- 白髪・退色の原因①加齢・老化
- 白髪・退色の原因②栄養不足
- 白髪・退色の原因③ストレス
- 白髪・退色の原因④病気
- 犬の白髪Q&A
- 犬の白髪や被毛ケアにおすすめのグッズ
- まとめ
急に犬の白髪が増えたときは病気やストレスのサインかも
白や茶、黒など、どんな毛色の犬でも、加齢に伴って白髪や、白髪にならなくても毛色が薄くなっていく「退色」が起こることがあります。
ただし、まだ若いのに白髪が急に目立ってきた場合は、病気が原因で白髪が増えているのかもしれません。たとえば、全身の片側だけ白髪が増えてきた場合や、特定の部位だけ被毛が白くなっている場合は、皮膚病やホルモン疾患を疑います。そのため、もし白髪が短期間に急激に増えた、若いのに大量に白髪が生えている、といった症状がある場合は、動物病院を受診するようにしましょう。
また他にも気になる症状がないか注意深く観察してください。いつ頃から白髪が目立つようになったのか、他の症状とその症状はいつ頃から気になるようになったのかなどをメモしておくと、受診の際に獣医師に正確に情報を伝えることができます。
▼他にも以下のような症状がないかチェックして
- 抜け毛が異常に増えた
- 被毛がパサつくようになった
- 皮膚に異常がある
- 食欲不振や元気がない
犬の白髪は減らせる? 戻る? 対策は栄養管理とストレスケアがポイント
私たち人間の「加齢による白髪」が元通りにならないように、犬にも加齢による白髪を元通りにする薬や治療法はありません。しかし犬の白髪の原因が加齢によるものでない場合は、適切な対処で白髪の増加を防げることがあります。
私たち飼い主にできる対策は、①栄養管理と②ストレスケアの2つです。
①栄養管理
若い個体なのに毛の色が薄い、毛量が少ない、毛にツヤがない、パサついているなど、被毛に気になることがある場合は、まずは食事を見直してみましょう。
食事の基本は、犬に必要な栄養素がバランス良く配合されている「総合栄養食」のドッグフードを与えることです。栄養不足で被毛にトラブルが起きている場合は、栄養が満たされることで毛色や毛艶が改善します。とくに成長期の犬にはしっかり栄養を与えるようにしましょう。
また無理なダイエットは栄養不足に陥りやすく、抜け毛や毛にツヤがなくなる、パサつくなどの被毛トラブルの原因になります。
食事だけで補いにくい場合は、獣医師に相談したうえで、皮膚や被毛のためのサプリメントを取り入れる選択肢もあります。
②ストレスケア
ストレスが原因で消化吸収機能が落ち、緊張状態が続くことで血流が悪くなると、健やかな被毛が生えてこなくなることがあります。とくに高齢犬の場合は、若い頃と比べてストレス耐性が落ちているので注意が必要です。
犬は、住環境の変化や騒音、発情期にストレスを感じやすいといわれています。運動不足や睡眠不足などもストレスになります。愛犬が何らかのストレスを感じていないか、日ごろから注意深く観察するようにして、運動不足なら十分な散歩をするなど、それぞれのストレスに適した対処を心がけましょう。血行不良が気になるときは、マッサージで血流を促す工夫もあります。
被毛の変化には個体差がありますが、ストレスが原因の白髪であれば、新たに健やかな被毛に生え変わることで白髪が目立ちにくくなるケースは十分にあります。
犬に白髪が生える原因とは? 加齢・栄養・ストレス・病気の影響を解説
白髪や被毛の退色は、ホルモンバランスや栄養不足、体質、遺伝など、複数の要素が重なって起こると考えられています。
ここでは、白髪が生える主な原因である、①加齢・老化、②栄養不足、③ストレス、④病気の影響について解説していきます。
白髪・退色の原因①加齢・老化
犬も私たちと同じように、年を取るにつれて白髪が生えてきたり、毛の色が薄くなってきたりします。個体差はありますが、 犬は6~8歳頃から白髪や退色が始まることが多いようです。
毛色の元になっているのはメラノサイト(色素形成細胞)がつくる「メラニン」という色素です。犬に白髪が増えたり被毛が退色したりするのは、加齢によってメラノサイトの働きが弱まり、メラニンを十分につくれなくなるからです。
多くの犬では、鼻や口、目の周りから白髪が生え始め、徐々に全身で白髪が目立つようになっていきます。
加齢による白髪は、防いだり治したりすることはできません。また加齢によって、毛色だけでなく毛の質感や量も変化していきます。毛艶がなくなったり、パサパサしたり、細くなったりしていくのは、代謝機能が低下して皮膚の血流が悪くなることが原因といわれています。
白髪・退色の原因②栄養不足
被毛は食べ物の栄養が最後に届く部分です。栄養は血管を通じて運ばれるため、血行不良は被毛の栄養不足の原因になります。
また、十分に栄養を摂取できていないと、メラニンが不足し、若くても白髪が出たり被毛が退色したりすることがあります。その結果、被毛のツヤが失われ、パサパサした質感に変化します。
白髪・退色の原因③ストレス
ストレスが続くと血管が収縮して血流が悪くなり、毛根への栄養供給が阻害されたり、活性酸素が増加したりしてメラニンを作る働きが弱まります。その結果、白髪が増えたり被毛が退色したりするのです。加えて、ホルモンや自律神経の乱れも被毛に影響します。
白髪・退色の原因④病気
犬の身体の一部分だけ白くなっている場合は皮膚病を疑います。犬が皮膚をかゆがっていないか、フケが出ていないか、抜け毛がないかなどをチェックしてください。
また腎臓病や甲状腺疾患、貧血などでは、白髪が増えたり毛色が変化したりする症状が見られます。たとえば腎臓病になると、健やかな被毛を作るために必要なタンパク質やミネラルなどの栄養成分を充分に吸収できなくなることで白髪が増えることがあります。
犬の白髪Q&A
犬の白髪に関する飼い主の疑問や質問にお答えします。
白髪が生えやすい犬種はありますか?
ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、柴犬、トイ・プードルは白髪になりやすい(被毛が退色しやすい)犬種だといわれています。
白髪ではないけど毛色が白っぽく退色してきた。どうして?
犬種によっては、老化とは関係なく成長とともに毛色が白っぽく退色していくことがあります。
トイ・プードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンド、柴犬などの犬種でよく見られ、1~3歳頃から退色が始まることがあります。ただし犬種や個体によっては、より早い子犬期(パピー期)から退色が見られることもあるようです。
またヨークシャー・テリアは、成長とともに被毛の色が変わっていく特徴があります。黒い部分がシルバーに、茶色い部分がフォーンやゴールドに変色していきます。
ミニチュア・シュナウザーやワイヤーコートを持つテリア種では、トリミングでバリカンを使うと被毛が退色しやすいといわれています。ポメラニアンは、バリカンを繰り返し使用することで、退色だけでなく毛質が変わったり毛がしばらく生えなくなってしまったりすることもあります。
何歳くらいから白髪が生えるのが普通ですか?
犬種や個体によりますが、加齢による白髪は高齢期(シニア期)といわれる7歳頃から増えていきます。しかし個体差が大きく、早い犬だと3歳頃から白髪が生え始める犬もいます。
白髪は自然に元の毛色に戻ることはありますか?
白髪の原因がストレスや栄養不足など一時的な場合は、その原因が解消されれば、新しく生える健康な被毛によって白髪が目立たなくなることがあります。
しかし白髪の原因が加齢や体質によるものの場合は、基本的に白髪が治ることはありません。ただし、栄養管理やストレスケア、血行促進をしたりすることで、被毛の質を変えることは可能です。
犬に白髪染めをしてもいいですか?
人間用のヘアカラーや毛染めシャンプーなどの薬剤は犬には刺激が強すぎるため、犬には絶対に使用しないでください。また、犬の白髪が気になるからと抜くのもやめましょう。
犬の毛を無理に抜くと毛根を傷つけたり、皮膚を刺激したりして炎症を起こす恐れがあります。白髪が気になる場合は、抜かずにハサミでカットするようにしましょう。
犬も若白髪になる? 犬が若白髪になるのはなぜ?
まだ若年なのに白髪が生える「若白髪」は犬にもあります。白髪が数本だけなら、毛が育つ過程でなんらかの不具合があった可能性があるため心配はいりません。しかし、急に多量の若白髪が生えてきた場合は、皮膚の病気や栄養失調、過度なストレスなど、何らかの不調があるのかもしれません。
※参考:Anxiety and impulsivity: Factors associated with premature graying in young dogs、December 2016
Camille King Ed.D, MS, Thomas J. Smith PhD b, Temple Grandin PhD c, Peter Borchelt PhD
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159116302775
犬の白髪や被毛ケアにおすすめのグッズ
毎日の食事や運動、適切な生活環境の積み重ねが、被毛の健やかな状態を保つために役立ちます。
カインズでは愛犬の被毛を健やかに保つ、おもちゃや被毛ケアのグッズも取り揃えています。たくさんの商品から、愛犬のライフステージや体質、好みに合わせて選んであげましょう。オンラインショップだけでなく、ぜひお近くのカインズにもお出かけください。
※売り切れや取扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
加齢や老化によって白髪が生えてくることは自然なことですが、まだ若い愛犬に急に白髪が目立つようになったなら注意が必要です。
大きなストレスを感じていたり、身体に不調があったりするのかもしれません。変化に気づいたときは、いつ頃から始まったのか、他の症状と合わせてメモしておき、早めに動物病院で相談しましょう。
総合栄養食であるドッグフードを基本に、適度な運動や快適な生活環境を整えることが、被毛を健やかに保つための大切なポイントです。小さな変化も前向きに受け止めながら、愛犬と健やかに過ごせる日々を大切にしていきましょう。