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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
犬をお迎えするときに毛が抜けにくい犬種を選ぶと、飼い主さんにとって多くのメリットがあります。抜け毛が少ないと、室内を清潔に保ちやすくなり、犬アレルギーを持つ人にも体への負担がかかりづらくなるでしょう。しかし、毛が抜けにくい犬種を飼う際にも注意は必要です。この記事では、毛が抜けにくい犬の被毛の仕組みや、毛が抜けにくい犬種の選び方、注意点について解説します。
目次
- 毛が抜けない犬と毛が抜ける犬の違い
- 毛が抜けにくい犬を飼うメリット
- 毛が抜けにくい犬種
- 毛が抜けにくい犬を飼う際の注意点
- まとめ
毛が抜けない犬と毛が抜ける犬の違い
毛がまったく抜けない犬は存在しませんが、毛が抜けやすいかどうかは犬の種類や被毛の構造によって変わってきます。一般的に、シングルコートの犬は比較的毛が抜けにくい傾向にあり、ダブルコートの犬は毛が抜けやすいとされています。オーバーコートとアンダーコートの違いについて、詳しく見ていきましょう。
オーバーコート
オーバーコートは、犬の外側にある被毛の層を指します。人が犬を撫でるときに触るのも、このオーバーコートです。この毛のおもな役割は、犬の体を保護し、体温調整を助けることです。多くの場合、季節の変化に応じて夏毛と冬毛が生え、春と秋の換毛期に抜け落ちます。
たとえば、シュナウザーやシー・ズー、ビション・フリーゼなどの毛が抜けにくい犬種では、オーバーコートがあまり変化せず、ほとんど抜け落ちない傾向があります。その理由は、その理由は、外部の刺激から身を守るためにワイヤー状の被毛は丈夫で抜けにくくなっているからです。オーバーコートは、定期的なブラッシングや手入れが必要なものの、抜け毛が目立つことはありません。
アンダーコート
アンダーコートとは、犬の皮膚に接する、密度の高い毛の層です。この層は、体温調節や保温、防水などの重要な役割を果たしています。一般的に、アンダーコートは季節の変化に応じて大量に抜け落ちる特徴があります。
たとえば、ゴールデン・レトリーバーやサモエドなどのダブルコートを持つ犬種では、アンダーコートの抜け落ちがとくに顕著です。毛の厚さは季節ごとに変化し、冬には密度を増し、夏には薄くなります。春と秋には毛が抜けやすい換毛期が訪れるため、こまめなブラッシングや手入れが必要です。
しかし、中にはアンダーコートの抜け落ちが少ない犬種や、ほとんどない犬種もいます。たとえば、シベリアン・ハスキーやアラスカン・マラミュートなどは、アンダーコートの抜け落ちが比較的少ない傾向にあります。
毛が抜けにくい犬を飼うメリット
毛が抜けにくいかどうかに対する印象は、人それぞれです。自身にとって、毛の抜けにくさがどれほど重要なのかを見極めるために、毛が抜けにくい犬を飼うメリットについて、詳しく見ていきましょう。
抜け毛のお掃除が楽
毛が抜けにくい犬を飼うと、抜け毛によるお掃除の負担を軽減できることが魅力です。たとえば、プードルやヨークシャー・テリアなどの毛が抜けにくい犬種を飼うと、床や家具に抜け毛が目立ちにくくなります。そのため、掃除機やモップを使って清掃する頻度が減っても、家庭内を清潔に保ちやすくなります。掃除の負担が減るため、忙しい生活の中でも他の家事や仕事、犬とのスキンシップなどに時間を割けるでしょう。
犬アレルギーでも飼いやすい
毛が抜けにくい犬であれば、犬アレルギーを持つ人にとっても飼いやすいでしょう。抜け毛が少ないため、アレルギー反応が起こりにくくなります。抜け毛が少ないと、部屋の中にあるアレルゲンの量を抑えられるため、アレルギー症状を軽減するのに効果的です。
ただし、アレルギーのレベルや症状の現れやすさ、現れるタイミングなどには個人差があります。そのため、毛が抜けにくい犬種だからといって、必ずしも犬アレルギーの方でも飼いやすいとは限りません。これまでの犬アレルギー症状の傾向を踏まえつつ、医師と相談して決めるのをおすすめします。
においが気になりにくい
毛が抜けにくい犬を飼うことで、においが気になりにくくなります。室内に漂うペット臭は毛に付着した汚れや皮脂が原因のため、毛が抜けなければそれだけにおいが発生しません。来客時に慌ててにおい消しスプレーをまいたり、部屋のすみずみまで掃除したりする必要もなくなります。
インテリアの素材が制限されない
毛が抜けにくい犬を飼うことで、室内に犬のにおいがつきづらくなるため、家具やインテリアの素材の選択肢が広がります。たとえば、丸洗いしやすい布製品や繊維製品だけでなく、革製品や木製品なども気兼ねなく使えます。多様な素材を組み合わせて、インテリアのデザインを自由に選べるようになるでしょう。
毛が抜けにくい犬種
毛が抜けにくい犬種もたくさんいるため、どの犬種をお迎えしたらいいか迷うかもしれません。そこで、毛が抜けにくい犬種の代表例と、それぞれの特徴を簡単に紹介します。
シー・ズー
シー・ズーは、豊かな被毛で知られていますが、実は抜け毛が少ないのが特徴です。一見すると長い被毛が抜けやすそうに見えますが、実際には他の犬種に比べて抜ける毛が少ないため、家庭内での掃除の手間が大幅に減ります。
シュナウザー
髭のような被毛が魅力のシュナウザーも、抜け毛が少ない犬種です。硬い被毛が密集しており、密度の高い被毛は抜け毛が目立ちにくくなっています。定期的なブラッシングをおこなうことで、さらに抜け毛を抑えられるため、家庭内を清潔に保ちやすいでしょう。
チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
チャイニーズ・クレステッド・ドッグは、抜け毛がほとんどないとされる犬種です。犬種のほとんどが無毛種であり、毛が抜けることが稀であるため、犬アレルギーを持つ方や毛が気になる方が飼うのに適しています。
トイ・プードル
トイ・プードルは、抜け毛が少ない犬種として人気があります。被毛が柔らかく、くるくるとした巻き毛に抜け毛が絡み床に落ちる毛や家具につく毛が目立ちにくいため、家庭内での清潔を保ちやすいでしょう。
トイ・プードルはアレルギー反応が起きにくいとされることもあり、犬アレルギーの人にもおすすめの犬種です。ただし、前述したように、毛が抜けにくい犬種であればアレルギー反応が特別に起こりにくいわけではありません。個々の体質も関係しているため、犬をお迎えする際は慎重におこないましょう。
ビション・フリーゼ
ビション・フリーゼも、抜け毛が少ない犬種の一つです。被毛は綿のように柔らかく、抜け毛が目立ちにくい特性があります。床や家具に抜け毛がほとんど付着しないため、掃除の手間が大幅に軽減されるでしょう。
ビション・フリーゼを飼う場合は、定期的なブラッシングが重要です。被毛を手入れすることで、抜け毛をさらに抑えられます。
マルチーズ
マルチーズは、抜け毛がほとんどないとされる犬種の一つです。被毛は絹のように柔らかく、抜け毛が目立ちにくくなっています。この特性により、マルチーズの毛は床や家具に抜け毛がほとんど付着せず、掃除の手間が大幅に軽減されるでしょう。
マルチーズを飼う場合、ビション・フリーゼと同様に日々のブラッシングが大切です。被毛を手入れすることで、美しい被毛を保てます。
ヨークシャー・テリア
ヨークシャー・テリアは、抜け毛が少ない犬種の一つです。被毛は細かくて柔らかいところが特徴的で、抜け毛は目立ちにくいです。このような毛の特性により、ヨークシャー・テリアを飼う場合は、掃除の手間が軽減され、家庭内の清潔を保ちやすくなるでしょう。被毛の絡まりを防ぎ、美しいコートを保つために、週に数回のブラッシングを推奨します。
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毛が抜けにくい犬を飼う際の注意点
犬を飼う際に毛が抜けにくい犬種を選ぶ場合、次のような注意が必要です。
ブラッシングが欠かせない
毛が抜けにくい犬種を飼う際には、定期的なブラッシングが欠かせません。ブラッシングによって、抜け毛を取り除き、皮膚や被毛の健康維持につながります。
たとえば、毛が抜けにくいとされるヨークシャー・テリアやビション・フリーゼなどの犬種でも、毛が絡まったり毛玉が発生したりする可能性があります。そうしたリスクは、定期的なブラッシングにより防止可能です。ブラッシングは飼い主さんとのスキンシップとしての効果もあるので、結果的に犬にとって快適な生活をサポートできるでしょう。
トリミングが必要
毛が抜けにくい犬種を飼う場合、定期的なトリミングが必要です。とくに長毛種や密度の高い被毛を持つ犬種では、適切なトリミングが被毛の管理に欠かせません。
たとえば、ヨークシャー・テリアやマルチーズなどの長毛種は、定期的にトリミングをすることで毛の長さを調整し、清潔な状態を維持する必要があります。トリミングによって、毛玉や絡まりを防ぎ、犬の快適さと健康を促進できます。また、トリミングは美容面でも重要です。トリミングで外見を整えることで、犬の愛らしさが引き立つでしょう。
犬種ごとの性格や個別の注意点の確認が必要
犬種を選ぶ際には、毛の抜けにくさだけでなく、その犬種の性格や特性も考慮する必要があります。
たとえば、シー・ズーは活発で愛情深い性格を持っていて、日々の生活において適度な運動や精神的な刺激が必要です。一方、トイ・プードルは知的で従順な性格を持ち、適切な訓練と社会化が必要です。
さらに、犬種ごとに健康上の問題や注意点は異なります。犬種ごとの特性などの情報を入手し、獣医師へ相談することも検討しましょう。たとえば、ビション・フリーゼは歯の問題に注意が必要であり、マルチーズは関節疾患のリスクが懸念されます。
まとめ
毛が抜けにくい犬を飼うメリットは多岐にわたります。抜け毛のお掃除が楽になり、犬アレルギーの人にも飼いやすい環境を提供できるでしょう。ほかにも、においが気になりにくくなる、インテリアの素材に制限が生じにくいなども特徴です。ただし、毛が抜けにくい犬種を選ぶ場合でも、定期的にブラッシングやトリミングをおこなうことは必要になります。各犬種の性格や健康上の注意点を把握しておきましょう。