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ちば愛犬動物フラワー学園所属。北里大学獣医畜産学部卒業 / 現在は専門学校に勤務しつつ、地域の動物病院にて勤務医として従事。

犬が下痢をするのは珍しいことではありませんが、中には注意が必要なケースがあります。そのため愛犬が下痢をしたときに、慌てずに適切に対処できるようにしておきましょう。
この記事では、犬の下痢の種類や原因、病院へ行った方が良いかの判断基準、自宅での対処方法などについて獣医師の平田繭子先生に伺い、解説していきます。
犬の下痢は、一見症状が軽そうであっても急速に悪化するケースがあります。少しでも心配なことがある場合は、自己判断で様子見せず、ためらわずに動物病院を受診するようにしましょう。
目次
- 犬の下痢、誤飲・誤食や発熱などは動物病院を受診して
- 犬の下痢、様子見しても大丈夫? 観察のポイントは?
- 犬の下痢、原因はさまざま! 主な原因6つとその対処・治療法
- 【原因①】食事消化不良やアレルギー、食べ過ぎなど
- 【原因②】環境の変化などのストレス
- 【原因③】ウイルスや細菌感染
- 【原因④】寄生虫感染
- 【原因⑤】内臓疾患などの病気
- 【原因⑥】異物誤飲や誤食
- 子犬の下痢
- 老犬の下痢
- うんちがゆるい? 下痢? 愛犬のうんちはどんな形状?
- 愛犬が下痢をした時の対処法や注意するポイント
- ①下痢止め・市販薬は自己判断で与えない
- ②下痢が軽症な場合の食事と水の与え方
- ③下痢が落ち着くまでのケアや注意点
- 犬は寒いと下痢をする? なりやすい季節がある?
- 愛犬が安心できる環境づくりに! おすすめのペットベッドやグッズ
- まとめ
犬の下痢、誤飲・誤食や発熱などは動物病院を受診して
犬の下痢にはさまざまな原因のものがありますが、中にはすぐに病院受診をした方が良い緊急性の高いものがあります。
下痢の原因やうんちの状態から、病院受診をした方が良いのかどうかの判断ができるように、チェックするポイントを紹介していきます。
緊急性の高い犬の下痢、次の症状は迷わず受診する目安
犬が下痢をした際、次のことが当てはまる場合にはすぐに動物病院を受診しましょう。
また下痢は急速に症状が重くなることがあります。犬がぐったりしているなど症状が強く出ている場合は、夜間でも救急にかかるようにしましょう。
【緊急】誤飲・誤食をした、誤飲・誤食の疑いがある
- 下痢症状の他に、元気消失、食欲不振、発熱、腹痛、しぶり、体重減少などの症状がある
- 水下痢が何度も続いている
- 下痢と嘔吐が何度も続いている
- 下痢を伴う血便や黒い便(タール便)が出た
- 脱水症状を起こしている(皮膚をつまんでもなかなか元にもどらない、口内が乾燥している、尿の色が濃く量が少ない)
- 元気だけど2~3日経っても下痢が良くならない
病院を受診するときは便を持参しよう
下痢症状で病院を受診する際には、便の形状や色の確認ができると診察に役に立つので、便を少量(小指の先程度の量で十分)持参すると良いでしょう。
便を、アルミホイルやラップなど水分を吸収しないもので包み、さらにビニール袋などに入れて持参しましょう。便を持参するのが難しい場合は、スマートフォンで撮影したものを見せてください。
また他にも、「いつから下痢をしているのか」「どれくらいの頻度でどのような便なのか」などといった症状のメモを取っておくと診察の役に立ちます。
犬の下痢、様子見しても大丈夫? 観察のポイントは?
犬が下痢をしたときは、犬の様子をよく観察して、下痢の回数や便の形状、下痢の他に嘔吐や吐き気、元気消失など他の症状がないかを注意深く見てください。
先に紹介した緊急性の高いケースでないことに加えて、成犬であれば「下痢の他に症状がない」「元気と食欲がある」場合は自宅で様子見をして良いでしょう。
また下痢の原因がわかっている場合は、次に紹介する対処法を参考にしてください。しかし原因がわからなくて少しでも心配があるときや、少しでも普段と違う様子がある、気になる症状がある場合は動物病院を受診するようにしてください。
犬の下痢、原因はさまざま! 主な原因6つとその対処・治療法
犬のうんちがゆるいと、食べ物や病気が原因だと考えることが多いかもしれませんが、下痢にはそれ以外にもさまざまな原因があります。それらの主な原因を紹介していきます。頭に入れておくと、愛犬が下痢をした際に判断しやすくなります。
【原因①】食事消化不良やアレルギー、食べ過ぎなど
新しいフードに切り替えたり、フードやおやつを与えすぎたりすると、愛犬が食べ物をうまく消化できずに下痢になることがあります。
フードを変える場合は、いきなり新しいフードに切り替えるのではなく、今まで与えていたフードに少しずつ新しいフードを混ぜ、1週間程度かけて新しいフードの割合を増やして慣れさせると良いでしょう。
なお、乳製品や小麦、卵など特定の食材を食べた場合に下痢を繰り返す場合は、食物不耐性や食物アレルギーの可能性があります。食物アレルギーの場合は、下痢のほか、嘔吐、目や口の周辺が腫れたり赤くなったりするなどの症状が出ることがあります。
初めて与えるおやつや食べ物は、一度に何種類も与えてしまわないようにしてください。また訪問者などの愛犬の体質を知らない人からも、もらってしまわないよう注意が必要です。
【原因②】環境の変化などのストレス
人間がストレスでおなかの調子を崩すように、犬もストレスで下痢を引き起こすことがあります。
犬がストレスを感じる例としては、トリミング、ペットホテルや動物病院の利用、慣れない来客、引っ越し、花火や雷などの大きな音、季節の変わり目による気温差や気圧差などが挙げられます。
とくに夏から秋にかけての急激に寒くなる季節の変わり目では、気温の変化から下痢をしやすくなる犬が多いようです。なかでも子犬と老犬は体温調整がうまくできなかったり、急な環境変化にすぐ適応することが難しい場合があったりするので注意しましょう。
なんらかのストレスが原因の下痢は、そのストレス源を取り除けば1~2日程度で改善されます。もし下痢が長引くような場合は、別の要因が複雑に関係している可能性があるため、獣医師に相談するようにしてください。
【原因③】ウイルスや細菌感染
犬が感染するウイルス性の感染症で下痢症状があるのは、犬パルボウイルスや犬ジステンパーウイルス、コロナウイルスなど、細菌感染症では大腸菌やサルモネラ菌などがあります。ウイルスや細菌感染はときには命に関わる重篤な症状を引き起こします。
これらのウイルス感染症は混合ワクチンを接種することで予防ができます。万が一感染しても症状が軽減されるので、年に一度混合ワクチンの接種をして愛犬の健康を守りましょう。
【原因④】寄生虫感染
犬にはノミやダニのような体外に寄生する虫のほか、回虫や瓜実条虫(サナダ虫)、鞭虫、糞線虫などの体内に寄生する虫がいます。
体内寄生虫によって引き起こされる症状はさまざまですが、下痢や嘔吐を引き起こし、排泄物と一緒に寄生虫が排泄されるケースもあります。
寄生虫に感染している犬は、他の犬に感染させたり、中には人間にも感染させたりするものもあります。そのため多頭飼育をしている場合は他の犬も感染していないか注意が必要です。
犬が寄生虫感染をしてしまった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。寄生虫の種類によって駆虫薬で対応します。
【原因⑤】内臓疾患などの病気
腸の腫瘍や慢性腸炎などといった腸の病気をはじめ、胃炎や膵炎、腹膜炎、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症など慢性的な病気によって下痢を引き起こしている可能性があります。
こういった病気が原因の場合は、自宅で様子見をしていても改善しないことが多いです。
また、元気消失や食欲不振、嘔吐、発熱などの症状を伴うことも多いため、そのような症状があればすぐに動物病院を受診しましょう。
【原因⑥】異物誤飲や誤食
犬は匂いを嗅いだり、舐めたりして物の状態を確認する性質があるため、誤飲や誤食につながるケースが少なくありません。とくになんでも口に入れてしまうような好奇心旺盛な若い犬には注意が必要です。
ネギ類やチョコレートなど犬にとって有害な食べ物の誤食や、おもちゃなどの食べ物ではないものを誤飲した場合は、突発的な下痢で頻回の嘔吐を伴うことが多いです。このような誤飲や誤食は、命に関わる危険性があるため、一刻も早い受診が必要です。
病院では、吐き気を催す薬や注射などで催吐処置や、胃の内容物を取り除く外科的処置が行われることがあります。
また食べ物を誤食した場合は、その食べ物のパッケージなど成分表示がわかるものがあると診察の参考になるので持参するようにしましょう。
子犬の下痢
子犬はまだ免疫力が低く、腸内細菌叢のバランスが整っていないことから、ウイルス性や細菌性の感染症に感染しやすいため注意が必要です。また、ブリーダーやペットショップからきたばかりの子犬は、寄生虫感染や環境変化のストレスが原因の下痢も多くあります。
子犬が下痢をしたときは、他に食欲不振や嘔吐を伴うことが多く、急速に悪化して低血糖を起こす恐れがあります。注意深く経過を見ながら、少しでも異変や心配があったら早めに動物病院を受診するようにしてください。
老犬の下痢
老犬は体調を崩しやすく、下痢もしやすい傾向にあります。
また、老犬の下痢は、内臓疾患などの病気が原因となっているケースが他の年代と比べて多いのが特徴です。下痢がきっかけで病院を受診して病気が見つかるケースもあるため、老犬で下痢が続く場合は、病院で原因を調べて対処するようにしましょう。
うんちがゆるい? 下痢? 愛犬のうんちはどんな形状?
一般的な健康な犬のうんちは、拾い上げるときに形が崩れず、地面にうんちの跡がほとんど残らない硬さです。色は黄土色~こげ茶色が理想的だといわれています。
また1日のうんちの回数は「食事の回数+1回程度」が適切とされていて、1日2食の犬の場合は3回程度が目安になります。しかし個体差があるため、日頃から愛犬のうんちの回数や排泄する時間をよく観察しておくことが大切です。
対して下痢のうんちはどのような状態かというと、いつものうんちよりやわらかかったり、ドロドロしていたり水っぽい形状です。血が付いたり、硫黄臭や生臭さ、酸っぱい臭いがしたりすることもあります。
また、犬が下痢をしているとオナラも多くなったり、腸の蠕動運動が活発になってお腹がゴロゴロと鳴ったりすることもあります。小型犬は、腹痛による震えの症状が出ることもあります。
愛犬が下痢をした時の対処法や注意するポイント
軽症の下痢のときや、動物病院を受診して家で様子見をしても良い、というときの家での過ごし方や注意するポイントを3点解説していきます。
①下痢止め・市販薬は自己判断で与えない
下痢は薬で止めない方が良いことがあるため、原因がわからない段階では自己判断で下痢止めなどの薬を与えるのは危険です。また人間用の薬は、犬にとって有効な量がわからないため、自己判断では使用しないでください。
下痢止め薬だけでなく、整腸剤や乳酸菌のサプリなどを犬に与える場合も獣医師に相談してからにしましょう。
②下痢が軽症な場合の食事と水の与え方
下痢症状が軽い場合は、半日から1日程度食事を抜いて胃腸を休ませるのが有効です。食欲がないときは、無理に食べさせようとしないで休ませてあげましょう。
しかし脱水を招かないよう、水分を摂っているかは意識して見てあげてください。
水を与えるときは、少量ずつ数回に分けて与えるようにしてください。一度に大量の水を飲ませてしまうと下痢や嘔吐がひどくなってしまうことがあります。
おしっこの色が濃く量が少ない、皮膚の弾力が低下しているなどの症状があった場合は、脱水症状を起こしているかもしれません。犬が水分を摂取できないようであれば、動物病院を受診してください。
水を飲ませても下痢や嘔吐の症状が出なければ、消化に良いドライフードをぬるま湯でふやかし、少量ずつ与えてみましょう。様子を見ながらフードの増量、ふやかし具合を調整していき、4~5日かけていつもの給餌スタイルに戻していきます。
手作り食を与えている場合は、消化に良い食材を与えるようにしてください。肉や魚は脂肪分が少ないものを選んでください。食物繊維を含むバナナやリンゴ、サツマイモも少量なら与えて大丈夫です。ヨーグルトは整腸作用が期待できる食材ですが、下痢をしている最中は控えた方が良いでしょう。
軽症の下痢では、ほとんどの場合2~3日程度で症状が落ち着いてきます。もし下痢が改善しない、症状が重くなっていく場合は動物病院を受診してください。
※子犬や老犬、持病がある犬では、絶食が身体の負担になってしまうことがあるので、獣医師に相談してから対応するようにしてください。
③下痢が落ち着くまでのケアや注意点
✓お尻周りは清潔にする
下痢をしているとお尻周りが汚れやすくなります。汚れたままにしておくと炎症を起こしてしまうことがあるので、やさしくぬるま湯などで洗ってあげたり、ウェットティッシュで拭き上げたりして清潔に保ってあげましょう。
✓同居の犬猫がいる場合は感染注意
感染性の下痢の場合は、同居の犬や猫にうつってしまう可能性があります。隔離が難しい場合でも、できるだけ接触しないようにし、便や嘔吐物の処理や消毒などに気を付けましょう。
✓安静を心がける
下痢が落ち着くまでは安静に過ごせるように配慮しましょう。犬の体調を見て、散歩はお休みさせ、激しい運動を控えましょう。トリミングやシャンプーも体調が落ち着くまで延期した方が良いでしょう。
犬は寒いと下痢をする? なりやすい季節がある?
季節の変わり目は、犬も人間のように体調を崩しやすく、お腹の調子が悪くなることがあります。
また夏は冷たい水の飲みすぎや夏バテ、冷たい床でお腹を冷やすなどして下痢になることがあり、冬は感染性の胃腸炎による下痢が多いです。
クリスマスやお正月などのイベント行事では、食べ慣れないものを食べてお腹を壊すことがあります。とくに人間の食べ物は、犬にとっては高脂質で消化しにくいため下痢になりやすいので気を付けましょう。
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まとめ
下痢の原因にはさまざまなものがあります。しかし、犬が食べ過ぎないように適量のフードを与えることや、フードの急な変更をしないこと、混合ワクチンを接種することなどで、飼い主が防いであげられる下痢もあります。
ほとんどの場合では下痢は2~3日で快方に向かいますが、中には長期化や急速に悪化して命に関わるようなケースもあるため油断は禁物です。日頃から愛犬の健康管理に気を留めて、変化を見逃さないように心がけましょう。
愛犬の体調に少しでも心配なことがあったら、速やかに獣医師に相談するようにしてください。