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NPO CANBE NPOつなっぐ 日本動物病院協会理事 子どもの動物福祉教育、小児病棟犬セラピー、被虐待児童へ付添犬の派遣などに注力。保護犬猫問題にも取り組む
犬が水やフードを吐いてしまうことはそんなに珍しいことではありません。そのため愛犬が嘔吐しても、まずは様子見をしよう、という飼い主さんが多いのではないでしょうか?しかし犬が嘔吐を繰り返す場合は、深刻な病気のサインかもしれません。いつもの様子見で大丈夫な嘔吐と、すぐに病院に連れて行った方が良い嘔吐はどう違うのかを解説していきます。
目次
- 犬が繰り返し嘔吐するとき、様子見で大丈夫なケースと要注意なケース
- 嘔吐を起こす病気
- 犬が吐いたときの対処ケアは?
- まとめ
犬が繰り返し嘔吐するとき、様子見で大丈夫なケースと要注意なケース
犬が繰り返し嘔吐をする場合、何を見極めて病院へ連れて行くか判断したらよいでしょうか。犬がよくする心配のいらない嘔吐と、病気の疑いがある嘔吐の見分け方を解説していきます。
様子見で大丈夫なケース
次のようなケースは犬が嘔吐しても、しばらくは様子見で良いでしょう。しかし、何度も頻繁に嘔吐するなど、他の症状が見られる場合は動物病院へ連れて行ってください。
・早食いした後に吐く
「食後すぐに嘔吐した」、「食べたものが未消化のまま排出される」、「吐いた後はケロッとしている」、この条件がそろっていればご自宅で様子を見ましょう。水も同様に、がぶ飲みした後に水を吐いてしまって、吐いた後はケロッとしているようなら様子見で問題ありません。食べ過ぎか早食いが原因だと考えられるため、フードの量の調整や、何回かに分けて与えるなど早食いできないような工夫をして、愛犬が嘔吐しないように配慮してください。
・黄色や透明の液体、白い泡を吐く
空腹が長時間続いていませんか?胃が空っぽになると、胆汁が胃粘膜を刺激して嘔吐することがあります。こういった場合は、空腹状態を長時間作らないように食事の感覚を短くしてみてください。朝方に嘔吐してしまう場合は、寝る前に少しフードやおやつを与えるなど調整してみてください。これらの対策をしても治らない場合は、病気の疑いがあるので病院へ連れて行きましょう。
・乗り物酔いで吐く
犬も人間のように車酔いをすることがあります。感受性の強い犬は、車酔いで嘔吐することもあります。空腹状態でも満腹状態でも吐き気を催しやすいためどちらも避け、車内で眠れるように乗車前に運動をさせるなどの対策が有効です。また車酔いをする犬をどうしても車に乗せなくてはいけないときは、動物病院で診察を受けて酔い止めの薬を処方してもらうとよいでしょう。
・ワクチン後に吐く
ワクチン接種後に、まれにアレルギー反応やストレスなどが原因で吐くことがあります。この場合、タイミングや様子によって対応が変わるため、早めにワクチンを打った動物病院に連絡し、判断を仰ぎましょう。
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こんな症状は要注意!すぐに病院へ連れて行った方が良いケース
犬が嘔吐しても、いつものことかと見過ごさず、次のような症状があったら病院へ連れて行ってください。嘔吐の回数や、どのような状況で吐いたのか、吐しゃ物の色や内容物をチェックしましょう。
- 1日3回以上嘔吐した
- 連日吐く
- 嘔吐の他に、発熱や下痢、血便などの症状がある
- おしっこが出ない
- 元気がない、食欲がない
- 異物を吐く
- ピンク色、赤~黒茶色の液体を吐く
- 吐きたそうにするがなかなか吐けない、えずく状態が続いている
- 吐いたものから便臭がする
- 吐いたものに寄生虫がいる
中でも激しい下痢が起きている場合、おしっこが出ないような状態は危険性のある状態かもしれません。至急病院へ連れて行きましょう。
子犬が繰り返し嘔吐する場合
子犬はまだ消化器官が発達していないため、成犬より吐きやすい、ということは覚えておきましょう。水を飲んだり、フードを食べたりした後に戻してしまっても、ケロッとしているのであればまずは様子見でよいでしょう。
しかし、子犬は体力があまりないため、数回の嘔吐でも、子犬の体力を消耗し、体液のバランスを崩してしまう恐れがあるため、獣医師の診察を受けるようにしましょう。
嘔吐だけでなく発熱や下痢、痙攣や脱力など他の症状もあるようなら速やかに病院へ連れて行ってください。子犬は抵抗力が弱いため、成犬なら治る症状でも重篤になることがあります。そのため子犬が嘔吐を繰り返す場合は、注意深く観察をするようにしてください。
嘔吐を起こす病気
嘔吐症状が出る犬の病気には次のようなものがあります。愛犬の症状が必ずしも深刻な病気によるものとは限りませんが、ケースによっては一刻を争う事態となります。少しでも心配があるようなら獣医師の診断を仰ぐようにしましょう。
・胃の病気(胃腸炎や胃潰瘍、腫瘍、胃捻転など)
胃拡張や胃捻転は特に大型犬に多く、吐こうとしても吐けない様子を見せます。小型犬、中型犬でも起こる可能性はあります。発見が遅れると死に至る可能性もある深刻な病気です。
・腹腔内の病気(膵炎、腹膜炎、腫瘍など)
“お祈りのポーズ”のようにお尻を高く上げて痛みをしのごうとする所作が見られたら急性膵炎の可能性があります。早期に治療を始める必要があります。
・小腸の病気(腸炎、腸捻転、腸閉塞、寄生虫など)
腸炎の原因はさまざまありますが、細菌やウイルスが原因の場合は症状が重くなりやすいので注意が必要です。また腸閉塞の原因もいろいろありますが、ひとつに異物誤飲が挙げられます。おもちゃや飼い主の靴下・ウレタン/不織布マスク、歯磨きシートなどでも起こり、多くの場合外科手術で異物を除去することになります。犬回虫はフィラリアの薬が有効です。
・腎臓や肝臓の病気(腎不全、肝不全、糖尿病など)
急性腎不全の症状では、嘔吐を頻繁に繰り返すことがあります。腎臓に問題があると、水をたくさん飲むようになり尿量が増えることがありますが、症状の進行とともに尿を出せなくなってしまいます。腎臓や肝臓は、悪くなってからでは元通りに直すことができない臓器です。
特に7歳くらいからは、食欲の低下や飲水量・尿量をチェックして、多飲多尿あるいは尿量が少ないなどがあったら早い段階で獣医師に相談するようにしましょう。早期発見で、食欲のあるうちであれば、食事療法やサプリメントで改善することもあります。
・ウイルス性の感染症
「犬パルボウイルス感染症」は1~2日で死に至るような怖い感染症ですが、混合ワクチンを接種することで感染予防ができます。他のウイルス性感染症でも、まだ混合ワクチンを接種していない子犬の場合は重篤な症状になりやすいため、速やかで集中的な治療が求められます。
・中毒やアレルギー
犬が中毒を起こすもので代表的なものはチョコレートやキシリトール、タマネギ、ブドウです。また生花や観葉植物、お庭の植木も犬にとっては有害なものがあります。これらを愛犬が口にした心当たりがある場合は、急いで動物病院へ連れて行ってください。また急激なアレルギー症状(アナフィラキシーショック)も非常に危険です。嘔吐とともに呼吸がおかしい、震える、よだれが止まらないなど愛犬の様子に少しでも異変があったら急いで動物病院へ連れて行きましょう。
犬が吐いたときの対処ケアは?
犬が嘔吐を繰り返ししている場合、何をすればいいのか、愛犬が早く回復するように次に紹介する内容を心に留めておきましょう。
自宅ケアで気を付けたいこと
自宅で愛犬の看病をする際に気を付けたいことを2点紹介します。
①半日程度は絶飲絶食をする
吐き気が誘発されるのを防ぐ目的と、消化器官を休めるためです。しかし長時間絶飲絶食を続けると、逆に負担になることがあるため、愛犬の様子を見ながら少しずつ水分を与えましょう。ごはんは胃に負担がかからないよう、ふやかしたフードなどを少量ずつ与えていきましょう。獣医師の診察を受けた場合は、獣医師の指示に従ってください。また、極端に幼齢である場合、脱水や低血糖になりやすいため注意が必要です。
②吐しゃ物はすぐに片付けて消毒、素手で触らないこと
ウイルス性の病気のなかには、犬レプトスピラ病など人間にも感染するものがあります。病気の診断がつくまでは、吐しゃ物や排泄物からウイルス感染する恐れがあるため、念のため使い捨てのゴム手袋などをし、すぐに片付けて、汚れた場所は消毒するようにしましょう。同居犬や猫がいる場合は感染の恐れがなくなるまで離しておきましょう。
病院で愛犬の様子を正しく伝えるためにしたいこと
何度も嘔吐を繰り返す場合は、動物病院へ連れて行くことを検討しましょう。病院では、獣医師へ次のようなことを説明しましょう。
- どんなシーンで吐いたのか(水を飲んだ後、食後とか)、いつ吐いたのか(毎日朝に吐く、など)、何度吐いたのか、など。これらの記録や気が付いたことなどはメモを取っておくと良いでしょう
- 吐しゃ物の内容をスマートフォンで撮影し、すぐに病院へいけるのであれば吐しゃ物を持参しましょう
- 誤飲の疑いのある物は、その残骸や同型のもの(ボタンや何かの部品など)を持参してください。人の薬やお菓子、お菓子の包装なども同様です
- 嘔吐以外の症状(発熱や下痢、ふるえなど)があれば細かく伝えましょう
まとめ
犬が嘔吐を繰り返す場合、自宅で様子を見て大丈夫なケースと病院へ連れて行った方が良いケース、自宅でのケア時の注意などを解説してきました。
犬が嘔吐を繰り返す場合は、緊急性のある症状かもしれないので注意深く観察しましょう。愛犬の異変にいち早く気が付いてあげるためには、日頃から愛犬の様子をよく見ていることが重要です。少しでもいつもと違う症状が見られて心配があるようなら動物病院で診察を受けることをおすすめします。
正しい知識を持って、愛犬の健やかな生活を守りましょう。判断に迷う時は、かかりつけに迷わず連絡を入れてみてくださいね。
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