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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
かつては牧羊犬として活躍していたことから、賢い犬種の代表格とされるボーダー・コリー。高い身体能力をもつため、アジリティやディスクなどのドッグスポーツも得意としている、活動的で従順な犬種です。今回は、ボーダー・コリーの性格や特徴、しつけのコツやかかりやすい病気まで、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生にご紹介していただきます。
目次
- ボーダー・コリーの歴史やルーツは?
- ボーダー・コリーの体高、体重は?
- ボーダー・コリーの平均寿命は?
- ボーダー・コリーの毛色の種類や特徴は?
- ボーダー・コリーの外見や吠え声の特徴は?
- ボーダー・コリーはどんな性格?
- ボーダー・コリーのオスとメスの性格の違いは?
- ボーダー・コリーを飼うのに向いている人は?
- ボーダー・コリーを飼う上で気をつけることは?
- ボーダー・コリーのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
- ボーダー・コリーの食事の注意点は?
- ボーダー・コリーにおすすめの遊びは?
- ボーダー・コリーを散歩させる際に気をつけることは?
- ボーダー・コリーがかかりやすい病気やアレルギーは?
- ボーダー・コリーの日常のお手入れで気をつけることは?
ボーダー・コリーの歴史やルーツは?
ボーダー・コリーは、もともとはトナカイの牧畜犬がイギリスに持ち込まれ、繁殖された犬種と言われています。原産国はイギリスで、次第に牧羊犬として活躍するようになりました。スコットランドはイングランドから見て辺境です。境のエリアで飼育される牧羊犬という意味で“ボーダー”・コリーと名付けられたと言われています。
ボーダー・コリーの体高、体重は?
ボーダー・コリーの体高・体重を見ていきましょう。
体高
体高は個体差がありますが、オスは53cm程度、メスはそれよりもやや低いと言われています。
体重
体重も個体差がありますが、約14~20kgと言われており、オスのほうがメスよりも体が大きく体重も重い傾向があります。
ボーダー・コリーの平均寿命は?
ボーダー・コリーの平均寿命は10〜17歳と言われています。ただ、ボーダー・コリーには先天的な神経系の異常が見られる場合もあり、寿命には個体差があります。
ボーダー・コリーの毛色の種類や特徴は?
トライカラーと呼ばれる3色の毛色から成る種類、ブラックアンドホワイトなどバイカラーと呼ばれる2色の毛色から成る種類、単色の種類など、毛色のバリエーションは豊富です。
被毛の長さも、スムースと呼ばれる短い毛質と、ラフと呼ばれる長めで粗い毛質があります。
ボーダー・コリーの外見や吠え声の特徴は?
中型犬で、外見は大きめの子から小柄な子まで個体差があります。吠え声は比較的大きい子が多く、住宅地で飼育する場合、トラブルが生じることがあります。何が原因で吠えているかを把握し、その原因に応じた対処法を取る必要があるでしょう。
ボーダー・コリーはどんな性格?
ボーダー・コリーの性格にはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
賢い
ボーダー・コリーはもともと牧羊犬ですが、羊を追うという使役には、頭を働かせて人の動きと羊の動きを総じて把握する必要があります。瞬時に自分の動きを判断するため、賢い性格と言えるでしょう。
状況判断が得意
前述のように、牧羊犬はとても頭を使う必要のある仕事をします。そのため、状況判断をして行動することをボーダー・コリーは得意とします。
一方、この特徴は、飼い主がしつけをしっかりと行い、問題行動に対してセーブする習慣をつけないと、更なる問題行動へとつながってしまう可能性もあります。従順なので、使役犬として活躍できるようにきちんとしつけ、飼い主をリーダーと認めてくれれば、従ってくれる犬種です。
責任感が強い
使役犬として活躍していた歴史からもわかるように、本来は責任感が強く、自分に仕事が与えられると全うします。
運動が得意
走り回って羊を追いこめるくらい運動能力は高く、アジリティーやフライングディスクなどのスポーツを得意とする子も多いです。
ボーダー・コリーのオスとメスの性格の違いは?
オスのほうが体力があり、発散をさせるためにも、飼い主はたくさんの運動に付き合ってあげる必要があるかもしれません。発散不足によりストレスを感じると、問題行動へ発展してしまう可能性もあります。
またオスの場合、去勢をしていないと、本来の雄性ホルモンによる縄張り意識で、発情期のメスが近くにいるときなどに攻撃的になることもあります。
ボーダー・コリーを飼うのに向いている人は?
運動が好きで、ボーダー・コリーの体力発散に付き合ってあげられる人、幼少期のしつけはより時間をかけてしっかりと向き合える人が向いているかもしれません。
お留守番も慣れてくれば難なく行えるはずですが、長時間になるとストレスが溜まってしまったり、体力の発散不足になったりする可能性があります。
とても賢く、体力のあるボーダー・コリーは、体力の発散という意味でも、犬の精神状態を把握してあげるという意味でも、向き合ってあげる時間がたくさん必要な犬です。それだけのやる気がある、時間を使ってあげられる人であれば、そしてトレーナーさんなど信頼できる専門家が身近にいるのであれば、初めての方でも飼うことは可能でしょう。ただし、覚悟は必要です。簡単には飼えない犬種であることを理解しておきましょう。
ボーダー・コリーを飼う上で気をつけることは?
ボーダー・コリーを飼うにあたって、どういった点に気を付ければいいのか見ていきましょう。
多めの運動量を確保する
体力がある犬種なので、日々の発散が十分でないと、いたずらなどのトラブルにつながる可能性があります。毎日ではなくても、多めの運動をしてあげられるとよいでしょう。
熱中症対策に気をつかう
長時間の散歩が必要な犬種ですが、夏場は他の犬種同様に熱中症に注意が必要です。できれば涼しい時間帯など、犬の負担にならないときを選んで運動させてあげましょう。
こまめにブラッシングする
ボーダー・コリーの被毛は、伸び続けるのでなく、毛周期があって定期的に生え変わるので、皮膚の健康のためにこまめなブラッシングやシャンプーなどのお手入れが必要です。また、外で運動をした際の体の汚れを除去するためにも必要です。
ボーダー・コリーのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
ボーダー・コリーは、賢いがために飼い主さんがリーダーとして認められないと暴走してしまう危険性があります。ここでは、しつけを始める時期やおすすめのしつけ方法をご紹介します。
しつけを始める時期
状況判断が得意な犬種です。できるだけ早い時期から、「社会化」と呼ばれる、他の犬との生活の中で身に着けるべきルールなどを学ぶ必要があります。なかには、自動車やバイクなどの動くものを羊のように追いかけてしまう習性がある子もいるので、飼い主との生活の中で、そのようなものに出会った際はどうふるまうべきかなどのしつけをすべきです。
おすすめのしつけ方法
とても頭のいい犬種なので、ただ厳しくするのではなく、コマンドを守れたらきちんとほめるなど、報酬を与えながら行っていくしつけがよいでしょう。飼い主との関係が良好であれば、おやつなどのご褒美がなくても、「ほめてもらえる」「飼い主が喜んでくれる」ということが報酬になることもあります。ただし、正しい方法で行うことが大切なので、日常生活で問題行動や悩み事がある場合は、トレーナーや訓練士などの専門家を頼るようにしましょう。
ボーダー・コリーの食事の注意点は?
運動能力が高く、日常的に体力を発散する犬種ですが、肥満になりすぎると、関節を痛めてしまうこともあります。運動が好きな子であれば、より注意をして、肥満を予防してあげる必要があるでしょう。
ボーダー・コリーにおすすめの遊びは?
体力を発散できて、飼い主との絆を深められる遊びがおすすめです。例えば、ボールやおもちゃを「とってくる」または「持ってくる」ことを教えたうえで、飼い主が投げたのを取ってこさせる行動を繰り返すと、飼い主のリーダーシップを強めながらボーダー・コリーの体力発散もできるでしょう。
ボーダー・コリーを散歩させる際に気をつけることは?
体力があり余る子たちなので、お散歩だけでは完全な発散にはならない可能性が高いです。お散歩の道中には、自動車やバイクなど本能的に追いかけたくなる誘惑がたくさんあります。例えば、お散歩はそのようなものに出会った際の対処の仕方を学ぶためのしつけの時間として1〜2時間程度取り、そのうえで、本当に体力発散するための時間として、30分〜1時間程度、ドッグランなどの広い場で思い切り走って遊ばせるなど、併せて計画してみてもよいでしょう。
ボーダー・コリーがかかりやすい病気やアレルギーは?
体力のあるボーダー・コリーがかかりやすい病気について、どういった症状があるのかご紹介していきます。
股関節形成不全
股関節の先天的な形状の異常により、歩く際や座る際など、股関節に負荷がかかるときに違和感や痛みを生じることがあります。また、程度によっては外科的な処置が必要となります。
肘関節異形性
肘関節が発育不全を起こすことで、痛みや違和感を生じさせ、歩き方の異変につながることがあります。骨の成長する4~10か月くらいの子犬期に、歩き方の変化や運動を好まなくなるなどの行動変化が見られると言われています。
コリー眼異常
先天的な目の異常で、脈絡膜と呼ばれる部分の構造に異常が生じて起こる病気です。場合によっては失明することもあります。また、遺伝的な疾患であるため、DNA検査で家系的な傾向がわかる可能性が高いです。
セロイドリポフスチン症(CL症)
先天的な病気で、脳内の老廃物の代謝が上手くいかず、視力異常や行動異常、歩行異常など神経系に異常が見られる疾患です。この病気は遺伝性の疾患であるため、DNA検査で発症前に家系的な傾向がわかる場合もあります。
グレーコリー症候群
特定の毛色の子たちに発生する可能性のある血液の病気です。先天的な異常として発症し、白血球の中の種類の一つである好中球の数が減少します。発熱や食欲低下などが見られ、最終的には敗血症や肺炎などの感染により死に至る場合もあります。
てんかん
神経疾患の一種で、何かが引き金で、もしくは無条件で神経発作が起こる病気です。てんかんの原因にもよりますが、基本的には内科的な治療を行うケースが多いです。重責と呼ばれる連続した発作が起こることで死につながる可能性もあります。
原発性水晶体脱臼
水晶体脱臼とは、何らかの原因により、水晶体が本来の場所からずれてしまう病気のことです。ボーダー・コリーは先天的、もしくは遺伝的に水晶体がずれた状態になってしまうことがあります。症状がない場合もありますが、視力に異常が出たり、眼球内の構造に炎症が起こって状態が悪化したりする等の可能性が考えられます。
黒色被毛包形成不全
遺伝的にメラニン色素の形成などに異常が起こる病気です。毛が擦り切れて被毛が薄くなったように見えたり、脱毛を起こしたりする病気です。
ボーダー・コリーの日常のお手入れで気をつけることは?
個体差はもちろんありますが、外で遊ぶのが好きな子たちが多い犬種です。外遊びで汚れたら、皮膚の健康のためにも定期的なシャンプーがおすすめです。ブラッシングもこまめに行ってあげましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。