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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
まるでモップのようなドレッド状の被毛がインパクト抜群で、テレビやSNSで話題になることも多いコモンドール。見るからにお手入れが大変そうですが、日本でも飼うことができるのでしょうか? 今回は、コモンドールの性格や飼育する上での注意点などを、ふくふく動物病院 院長の平松育子先生監修のもと詳しく解説します。
目次
- モップみたいな見た目のコモンドールってどんな犬?
- コモンドールの平均的な体高・体重は?
- コモンドールの平均寿命は?
- コモンドールの毛色の種類や被毛のタイプは?
- コモンドールの外見や吠え声の特徴は?
- コモンドールの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
- コモンドールは日本で飼うことができる?コモンドールを飼うのに向いている人は?
- コモンドールの日常のお手入れで気をつけることは?
- コモンドールのしつけを始める時期は?
- コモンドールの食事の注意点は?
- コモンドールを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- コモンドールにおすすめの遊びやトレーニングは?
- コモンドールがかかりやすい病気は?
- モップみたいな犬はコモンドール以外にもいる!
モップみたいな見た目のコモンドールってどんな犬?
ハンガリーの代表的な犬種であるコモンドール。そのルーツは、中央アジアに存在した犬種「ロシアン・オッタルカ」です。遊牧民族の古代マジャール人が、アジアからヨーロッパ東部へ移動した時に一緒にやって来たと考えられています。
それから数百年間、ハンガリー山間部で牧羊犬として暮らしたコモンドール。羊や犬などを襲う害獣から羊を守ることが仕事の中心でした。そのため、「害獣から襲われても大怪我をしないように」と被毛に改良が加えられていき、現在のモップのような分厚い被毛に。現在では番犬として、都心部でも飼育されるようになりました。
コモンドールの平均的な体高・体重は?
コモンドールは大型犬に分類されます。平均的な体高は、体高がオス70cm、メス65cmで、平均的な体重はオス50~60kg、メス40~50kgです。
コモンドールの平均寿命は?
コモンドールの平均寿命は10~12歳です。大型犬としては平均的と言えます。
コモンドールの毛色の種類や被毛のタイプは?
コモンドールの被毛のカラーはアイボリーのみです。モップのような形状は、上毛、中毛、下毛の「トリプルコート」から成り立っています。粗く硬めの上毛、油分が多くて水をはじく中毛、アンダーコートで温度調節をする下毛、と実はそれぞれ役割が異なります。
換毛期は春と秋。抜けた毛は下に落ちず、毛束に絡まります。抜け毛はブラッシングでは取り除けないので、指ですくように除去します。
コモンドールの外見や吠え声の特徴は?
「モップ犬」とも表現される分厚い被毛が特徴的。ただし、このようなロープ状の被毛になるまでには少なくとも2年ほどかかります。子犬のころはウエーブがかった状態の毛が目立ちます。
体型は筋肉質でがっしり。しっぽは長めです。フサフサとした被毛の中に隠れてよく見えないですが、実はきれいなアーモンド形の目をしています。
吠え声は少し高めの声質です。普段は激しく吠えることは少ないですが、吠えた時は大きく、よくとおります。
コモンドールの性格の特徴は?オスとメスで性格の違いはあるの?
牧羊犬としての歴史が長いコモンドールは、「家族や他のペットを守るぞ!」という気持ちを強く持っています。そのため、家族には優しく、面倒見がよいと言えるでしょう。近年では番犬や護衛犬として人を守る仕事をしているため、自立心が強く、頑固な一面も。敵とみなした見知らぬ人や動物に対しては強い警戒心を示すこともあります。
オスとメスを比べると、メスの方が性格は穏やかでしょう。
コモンドールは日本で飼うことができる?コモンドールを飼うのに向いている人は?
残念ながら、日本でコモンドールを飼うのは難しいです。コモンドールの原産国であるハンガリーは、夏の平均気温は22度で、冬の平均気温は4度ほど。寒い日には氷点下10度になることも。降水量は日本より少なめです。モップのような被毛を持つコモンドールにとって、日本は暑い国で皮膚病や熱中症を起こしやすいというリスクがあります。もう一点注意したいのが、日本国内でコモンドールを繁殖しているブリーダーはほとんどいないということ。海外のブリーダーとの交渉が必要になります。どうしても飼いたい場合は、温度や湿度を調節できる室内での飼育は必須。また、獣医師など専門家に相談しながら決めるのがよいでしょう。
それでは、コモンドールを飼うのに向いているのはどのような人なのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
犬の飼育経験が豊富
独立心が強く、自分で判断して行動するコモンドールは、飼い主の指示を聞かないことも。飼い主には犬に対するリーダーシップが求められます。
海外のブリーダーときちんとやり取りができる
コモンドールのブリーダーは日本にほとんどいません。海外のブリーダーと自分で交渉し、購入することになります。
根気よくしつけをし、責任を持って育てられる
人に甘えず、気難しく自立した性格の犬種です。根気よくコミュニケーションをとることが求められるでしょう。
室内の広い飼育スペースが作れる
運動量豊富なコモンドールが、室内で自由に動けるスペースが必要です。
暑さ対策の温度管理がきちんとできる
先述したハンガリーの環境に合わせた温度管理を行うことになります。
十分に散歩や運動をさせる時間と体力がある
散歩は毎日2回、1時間ほどが基本。また、大型犬で引っ張る力が強いので、飼い主はこれをしっかり制御できる体力があることも大事です。
被毛のお手入れを楽しんでできる
コモンドールの日々のお手入れについては次の8章で解説しますが、他の犬種以上に手間がかかり、ひと言で表すなら「大変」です。これを苦に感じず、楽しんでできる人が飼い主に向いているでしょう。
コモンドールの日常のお手入れで気をつけることは?
では続けて、ほかの犬種以上に注意が必要なコモンドールのお手入れについて詳しく解説していきましょう。
ブラッシングNG。汚れやほこりはこまめにとる
被毛がロープ状のため、ブラッシングができません。汚れや抜け毛などは手ですくように取り除き、被毛が束にならないようにロープとロープをほぐすようにします。
シャンプーに手間が大変かかる
衛生上、定期的なシャンプーが必要ですが、洗い方が他の犬種と異なります。シャンプー後の乾燥も家庭用ドライヤーでは風量が弱く、毛の芯まで乾かすまで時間がかかって体調を崩す恐れも。家庭でのシャンプーはおすすめしません。一方で、受け入れをしてくれるサロンも希少です。遠方のサロンへ通うことになるなど、いずれにしてもシャンプーには手間がかかります。
定期的にトリミングサロンに通う
お手入れの負担を軽くするために、独特の被毛をカットする方法もあります。ただし、コモンドールらしい外見は失われてしまいます。
コモンドールのしつけを始める時期は?
しつけは、子犬のときから始めるほうがよいでしょう。コモンドールは自律的に考える犬種のため、自我が芽生えてからのしつけは困難になる可能性が高いです。大型犬であるため、専門家に頼むことも検討してみましょう。
しつけのポイント
メリハリのあるコミュニュケーションをとる
意志がはっきりしている犬種なので、「良い」「悪い」を明確に示したコミュニケーションをとることが大切です。ただし、叱ってばかりのしつけは攻撃的な態度を助長することがあるので気を付けましょう。
留守番ができるようにしつける
自分の縄張りに対する防御意識が強いため、飼い主の留守中に起こる物音や来客に過剰反応してしまうことも。一人で過ごすことに慣れさせておくのが大切です。
無駄吠え対策をする
番犬としての優秀さから、侵入者やペットに対して威嚇のために吠えてしまいます。声が大きく怖がられてしまうので、無駄吠えをしないように子犬のころからしつけましょう。
コモンドールの食事の注意点は?
超大型犬なので、関節に負担をかけてしまう肥満には要注意。フードは、脂肪含有量とカロリーが高すぎない、関節に良いグルコサミン、コンドロイチンなどの成分が含まれているものを選ぶとよいでしょう。消化が良いもの、良質のたんぱく質が含まれているものもおすすめです。
このほか、ライフステージにあった食事を選ぶことが大事。胃捻転防止のために、食事は運動前に与えないのも鉄則です。
コモンドールを散歩させる際に気をつけるべきことは?
運動量が多い犬種なので、しっかり運動しないとストレスがたまります。散歩は1日2回、1時間以上歩きましょう。暑さに弱いので夏は時間帯に注意が必要です。高温多湿な日本の夏は苦手なため、涼しい時間帯を選び、湿度の高い日の散歩は避けましょう。散歩中は水分を十分とれるようにしておくことも大切です。
コモンドールにおすすめの遊びやトレーニングは?
もともと牧羊犬であったことから、コモンドールは広い場所を自由にのびのびと走る時間を必要としています。普段の散歩ではどうしても制限されるため、時にはドッグランを利用するのもおすすめです。ドッグランの中には「大型犬お断り」という施設もあるので、事前に調べてから訪れるとよいでしょう。
コモンドールがかかりやすい病気は?
コモンドールがとくに気を付けたい病気や予防法は次の通りです。
皮膚炎
被毛の密度が高いので蒸れやすく、細菌感染が起こりやすいと言えます。膿皮症などの皮膚炎には注意が必要。皮膚を清潔に保つように心がけ、定期的にチェックを。
眼疾患
被毛が目に当たることから結膜炎や角膜炎が起こりやすいでしょう。被毛を縛るなどの工夫で予防できます。
外耳炎
耳周辺の被毛が長く、耳道の風通しが悪いことで外耳炎を起こしやすくなります。定期的な掃除やチェックをしましょう。
熱中症
コモンドールは気温が22~23度を超えると熱中症になりやすいと言われています。散歩は涼しい時間帯に行い、水分を十分とれるようにしましょう。
股関節形成不全
股関節が正常に形成されず、歩行に異常をきたす病気です。主な症状は、横すわりをする、腰を振って歩く、うさぎ跳びのように後肢をそろえて走るなど。気づいたら、早めに動物病院を受診しましょう。成長期の発症が多く、遺伝すると言われています。重症化を防ぐには、子犬のころに食事の適正量を守り、急激な体重増加を避けるようにしましょう。
モップみたいな犬はコモンドール以外にもいる!
最後に、「モップみたい」と表現されるほかの犬種とコモンドールとの違いを見ていきましょう。
プーリー
体高がオス39~45cm、メス36~42cmほどで、コモンドールよりずっと小柄です。また被毛のカラーは、コモンドールならアイボリー色のみですが、プーリーはブラックやパール・ホワイトの犬もいます。
ベルガマスコ・シェパード・ドッグ
ベルガマスコ・シェパード・ドッグも被毛のカラーがグレー、ブラック、混色などがあります。また、被毛の束はコモンドールのものと形状が異なり、ベルガマスコ・シェパード・ドッグは束が平たく太めです。
オールド・イングリッシュ・シープドッグ
被毛のカラーがコモンドールより多く、グレー、グリズル、ブルー、ブルーマールなど。また、被毛が伸びた時、コモンドールはロープ状の束になりますが、オールド・イングリッシュ・シープドッグは束になりません。