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NPO CANBE NPOつなっぐ 日本動物病院協会理事 子どもの動物福祉教育、小児病棟犬セラピー、被虐待児童へ付添犬の派遣などに注力。保護犬猫問題にも取り組む
犬と生活をしていると、犬がはあはあと呼吸をしている姿は見慣れているかもしれませんが、犬が荒い呼吸をしている場合、中には病気のサインが潜んでいることがあります。この記事では、犬がはあはあと呼吸する理由と、緊急性が疑われるケース、病気が原因となっているケースについて解説します。
目次
- 犬がはあはあする原因が病気ではないケース
- 犬がはあはあしている原因が体調不良や病気の可能性があるケース
- 愛犬のパンティングは正常?症状を目安にすぐに病院へ
- まとめ
犬がはあはあする原因が病気ではないケース
犬が口を開けて舌を出しながらはあはあと浅く洗い呼吸をすることを「パンティング」といいます。どのようなときに犬はパンティングをするのか、心配のいらないケースから見ていきましょう。
体温調節をしている
犬は人間のように体表の皮膚に水の汗を出す汗腺がないため、汗をかいて体温調節をすることができません。パンティングをすることで、口の中の水分を蒸発させて身体の熱を下げようとします。そのため犬は、気温が高かったり、運動をして体温が上昇したりするとパンティングをして体温を下げようとします。体温が下がればパンティングは収まります。
気温の高い屋外で犬がパンティングをしていたら、体温が上がってしまっているのかもしれません。涼しい場所に連れて行ってあげましょう。明らかな熱中症の症状がある場合は、身体を水で濡らしあおぐなど体温を下げる処置を速やかに行う必要があります。
ストレスによる息切れ
犬のパンティングは、動物病院や雷、花火、工事現場の近くなど、犬にとって苦手な環境にいるときにも見られます。このようなストレス下では、パンティング以外にもあくびやウロウロと歩き回る、震えなどといったサインが出ることもあります。
愛犬が興奮したり緊張したり、不安に襲われているとき、落ち着きがないときなどは、ストレスの原因を突き止めて、そのシチュエーションを避けたり安心できる場所に移動するなどして、犬を落ち着かせてあげましょう。
なお、この際飼い主が心配して犬に声をかけると、場合によっては犬が「何かまずい状況だ」と感じて不安が助長される可能性があります。飼い主は何ともないふりをして、その状況から一緒に立ち去るのが望ましいです。ストレスの原因がなくなれば、パンティングは落ち着き、正常な呼吸に戻ります。
運動による息切れ
犬が体を動かした後にパンティングをするのは、体が酸素を早く取り込もうとするためです。このようなときは、犬を静かな場所で休ませて呼吸を落ち着かせてあげましょう。
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犬がはあはあしている原因が体調不良や病気の可能性があるケース
運動をしたわけでないのに愛犬の息が上がっていたら、他にいつもと違う様子がないかよく観察しましょう。何らかの対処や治療が必要な状態かもしれません。次に紹介する病気が疑われるケースに似た症状がないか見てください。
熱中症
犬は暑さが得意ではありません。外気温25℃以上、湿度60%以上だと熱中症に陥る恐れがあります。犬にとって快適に過ごすことができるお部屋の温度は18~22℃とされています。
普段のエアコン設定温度が人間にとって快適でも、犬にとっては暑い可能性があるので、見直してみましょう。人にとっては少し寒いかもしれませんが、服装などで調整しエアコンの設定温度は犬の適温にして、犬が過ごすエリアきちんと冷えているかをチェックします。
熱中症の症状は、ハアハアとあえぐような呼吸、体温が高い、よだれ、目の充血、ぐったりするなどです。熱中症は命に関わります。愛犬にこのような症状が見られたら、身体を冷やしながら早急に動物病院を受診しましょう。夏季の散歩は、早朝や陽が沈んでから、犬が歩くアスファルト面が冷えている涼しい時間帯に行きましょう。
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心臓、呼吸器系疾患などの病気
心臓や肺、気管支の病気でもパンティングが見られます。心臓の病気では、僧帽弁閉鎖不全症や心室中隔欠損症、フィラリア症など、肺の病気には肺炎、気管支の病気には気管支炎や気管虚脱などがあります。
少し動いただけでハァハァと息が上がる、ゼーゼーと苦しそうな呼吸や、不規則にあえぐように呼吸をするのが特徴で、心臓や呼吸器系の病気は進行すると深刻なものが多いです。
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痛みを感じている
犬が激しくパンティングをしていているときは、身体に痛みを感じていることがあります。その場合、抱き上げたり痛い箇所に触れると威嚇したり噛もうとしたり、逃げたりして嫌がる場合もあるので、そのサインを見逃さないようにしましょう。
異物を誤飲してしまった
犬が異物を飲み込んでしまって喉に詰まってしまうと、激しくパンティングします。犬が何か咥えていなかったか、咳込んだりえずいたりしないか注意深く観察してください。
泡を吹く、嘔吐をする、もがき苦しむ、舌の色が紫色になるなどしていたら飲み込んだものが喉や食道、気管につかえて呼吸困難になっているかもしれません。一刻を争うため、早急に獣医師の診察を受けてください。
異物を誤飲している場合、自己判断で無理に吐き出させようとせず、必ず獣医師の指示や処置に従いましょう。ネット上に食塩水や塩を大量に飲ませて吐かせる方法などが記載されていることがありますが、これは塩分中毒を引き起こし、最悪の場合死に至ることもありますので絶対に行ってはいけません。
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愛犬のパンティングは正常?症状を目安にすぐに病院へ
愛犬の呼吸が少しおかしい気がするけどどうかな…というときのために、平常時の呼吸数を測っておきましょう。また、呼吸数がいつもと変わらなくても、次に紹介するような呼吸の異常が見られたら迷わず獣医師の診察を受けましょう。
正常な呼吸は1分間に10~30回
愛犬の異常な呼吸に気が付くために、平常時の呼吸数を知っておきましょう。呼吸数は、犬の胸が上下する回数を上下で1セットとして1分間測りましょう。
犬の正常な呼吸は、1分間に小型犬だと20回前後、大型犬だと15回前後、短頭種は大型犬に比べると呼吸数が多い傾向にあります。
呼吸数に異常がなくても病院を受診すべき呼吸の症状
呼吸数が増えたり減ったりしていなくても、次のような症状があったら動物病院へ行ってください。
- 気温や湿度が高いわけでもなく、運動をしたわけでもないのに呼吸が荒い場合
- 時間が経過してもパンティングが収まらない
- 舌が白くなったり、紫色になったりしている
- 呼吸がいつもより苦しそう
- 咳が続いて呼吸が苦しそう
- 体の表面がとても熱いあるいは冷たい
まとめ
犬がはあはあと荒い呼吸をする症状について解説してきました。犬の息が上がっていても問題ないのは、暑くて体温調節をしようとしているときや、興奮しているとき、ストレス下にいるとき、運動後などです。
しかし、熱中症や誤飲の場合は即座に処置と動物病院での診察が必要となります。また、心臓や肺の病気でも呼吸に異常が出ることがあります。愛犬の異常な呼吸が緊急性のあるものなのかどうか、日ごろから愛犬の様子をしっかり観察したり触っておくことが重要です。