更新 ( 公開)
chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬が本気ではなく軽く噛みつく行為「甘噛み」。かまってほしいと訴える姿はかわいらしいですが、「靴が甘噛みの跡だらけ」「スリッパを甘噛みされたまま失くしてしまった」など困る場面も多いのでは? 今回は、獣医師の林美彩先生に教えていただいた、犬が甘噛みする理由や甘噛みを直すしつけの方法などについて解説していきます。
目次
- そもそも犬の甘噛みとは?
- 犬はなぜ甘噛みをするの?
- 犬の甘噛みを直さないと起こるトラブルは?
- 犬の甘噛みを直すしつけの方法は?
- 犬の甘噛みを直すときにやってはいけないNG行動は?
- 犬の甘噛みがひどいときは病院に連れて行くべき?
- 犬の甘噛みを直すときに役立つグッズやおもちゃは?
そもそも犬の甘噛みとは?
犬の甘噛みとは、文字通り「甘く噛む」行為です。じゃれるように「はむっ」と口に含んで歯も当てますが、本気ではないので噛まれても痛みはありません。
犬はなぜ甘噛みをするの?
犬が甘噛みする理由はいくつかあります。どんな理由で甘噛みするのか、それぞれ解説していきます。
歯がかゆいから
犬は、生後1カ月頃から乳歯が生え始め、6カ月頃に永久歯に生え変わります。この時期はどうしても歯が安定しないため、むずむずした感覚を解消するために甘噛みをしてしまいます。
本能的な欲求を満たすため
犬には本能があるので、「何かに噛みつきたい」という欲求や、顎の筋肉を鍛えたり、脳に刺激を与えて成長させたいという本来の習性にしたがって甘噛みをします。
好奇心から
初めて見るおもちゃや物など、「これはなんだろう?」と思ったものを甘噛みしてどんなものか確かめる場合があります。特に子犬期には、見るもの全てが新しく、キラキラして見えます。犬は人間と違って手足をうまく使えないので、なにかを確認するために口を使うことが多いのです。
感情の昂ぶり
遊んでいて盛り上がると、つい甘噛みしてしまいます。
かまってほしくて
飼い主さんやその家族が自分を構ってくれないときに、自分の方を向いてほしくて甘噛みしてしまいます。
犬の甘噛みを直さないと起こるトラブルは?
子犬の頃に甘噛みをしてくると、「かわいいなあ」と笑ってすませてしまう人もいますが、直さないままでいるのは問題です。子犬期にはかわいく思えた甘噛みも、成犬になるとそれなりの力を持ちます。
特に、人に対して甘噛みをするのを直さないでいると、来客や散歩時に思わぬトラブルに発展しかねません。また、家具に対しての甘噛みも、傷が残ってしまう可能性があります。
犬の甘噛みを直すしつけの方法は?
犬の甘噛みを直すのに効果的なしつけの方法を具体的に見てみましょう。
「ダメ」「NO」を教える
甘噛みを直すには、まず「ダメ」「NO」という言葉を覚えさせましょう。甘噛みをした時に「ダメ」「NO」と言いながらその場を離れたり、過度にリアクションしたりしないで、犬に甘噛みはよくないことなのだと教えます。「ダメだよ」と言いながら遊んだり、抱き上げたりしてしまっては意味がないので注意しましょう。
しかし、「ダメ」ばかり言われては犬にもストレスが溜まります。犬にとって噛むという行為はストレス発散も兼ねているので、噛んでもいいおもちゃやアイテムを用意してあげましょう。
特に子犬期の甘噛みでは、噛んでいいものとそうではないものの区別がついていないケースが多くあります。そのため、噛んでもいいおもちゃを与えることで、安心してストレスを解消できます。
「ちょうだい」を教える
犬がくわえている物に対して、飼い主さんが「ちょうだい」と言うと口から離すよう覚えさせます。これを覚えると、タオルや飼い主さんの靴を甘噛みして遊んでいるときに「ちょうだい」と言えば、犬が自分から口を離すようになります。
覚えさせ方は、まず、犬が何かをくわえた時に鼻先におやつを乗せた飼い主さんの手を差し出します。犬がくわえていたものを離したら、褒めながらおやつを与えます。この時、くわえていたものをすぐに犬の視界から見えなくするのがポイントです。飼い主さんの背後に隠すなどして、おやつを食べ終わった後にまた噛み始めないように気をつけましょう。
甘噛みしそうなものが周囲にない環境を作る
犬にとって、飼い主さんの匂いがついているものは魅力的な存在です。ハンドタオルや靴、スリッパなどは噛み応えもあり、飼い主さんの匂いもする絶好のおもちゃになってしまいます。こういった犬の好奇心を刺激しそうなアイテムは、犬の手の届かないところに置くようにしておきましょう。
犬が噛みつくものが犬にとって安全とは限らず、誤飲する危険性もあります。また、ごみ箱をあさる犬の場合は、食中毒にも注意が必要です。危険なものは扉付きの棚にしまったり、ごみ箱は蓋つきのものにしたりするなど工夫しましょう。
お散歩でストレスを発散させる
子犬期の甘噛みは、ストレス発散も兼ねています。積極的にお散歩に出ることで、ストレスを発散させてあげましょう。さまざまな人や犬に出会うなかで社会性が育まれ、甘噛みの回数も減っていきます。
かまってほしい子の場合には
飼い主さんの足や手を甘噛みして「かまって欲しい」「遊んで欲しい」というアピールをする犬もいます。その場合の対処法をいくつかご紹介します。
・甘噛みされても無視をする…手を甘噛みされても、無視をして手を背後に隠しましょう。そのまま甘噛みを許していると、「飼い主さんの手は噛んでいいのだ」と思われてしまいます。犬が興奮している間は手を隠し、落ち着いたら褒めましょう。
・おすわりをしたら遊ぶ…犬が飼い主さんのそばに来て、自分からおすわりをしたら褒めておもちゃを渡し遊んであげましょう。そうすることで、犬は「おすわりしたら遊んでもらえる」と覚えます。おすわりに限らず、おもちゃを持ってきたら遊ぶなど「犬が遊んで欲しい時のサイン」を決めておくと、犬も飼い主さんもストレスなく過ごせます。
・飼い主さんからも遊びの誘いをする…お留守番が終わった後などに、飼い主さんから積極的に遊んであげましょう。「自分は愛されている」と自覚するのは、犬にとって大切です。飼い主さんから遊びに誘うことで、「寂しい」というストレスが軽減します。
犬の甘噛みを直すときにやってはいけないNG行動は?
噛まれたときに「キャー」と声を上げて騒いだり、名前を呼んで叱ったりするのはよくありません。犬は飼い主さんのリアクションを見て「喜んでもらえた」と錯覚してしまいます。甘噛みをされたら、噛み続けられないように手を隠すようにして、噛んだら構ってもらえなくなると認識させるといいでしょう。
犬の甘噛みがひどいときは病院に連れて行くべき?
犬の甘噛みがひどいときには、病院ではなくしつけ教室や訓練所へ行きましょう。個々のケースや犬の性格に合わせた効果的なしつけの方法を教えてくれるので、飼い主さんも犬もストレスなく甘噛みを直していけます。
犬の甘噛みを直すときに役立つグッズやおもちゃは?
甘噛みを直すときに役立つグッズやおもちゃも、市販されています。苦味のついたスプレーは、甘噛みしそうな家具などにかけておくと、犬の甘噛みを防げます。また、壊れにくいゴム製のものや犬が噛みやすい物など「噛んでもいいおもちゃ」をあげるのもいいでしょう。ただし、硬すぎるものは歯が折れてしまう危険があるので、犬の月齢や体格にあったおもちゃを選びましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。