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IT企業のエンジニア。自宅が仕事場。湘南の古民家で、ワイマラナー・ロングヘアードのエデルちゃんとジャーマン・ショートヘアード・ポインターのアデルちゃんと暮らす。
最近、「新時代」という言葉をよく耳にします。それほどではないかもしれないですが、数年前と比較すると、たしかに暮らし方、働き方においてはより多くの選択肢をとれるようになってきました。ライフスタイルがますます多様化する現代において、愛犬とより豊かに、幸せに暮らすとはどういうことなのか。
今回は、神奈川県鎌倉市にお住まいの本多周平さん、ワイマラナー・ロングヘアードのエデルちゃん、ジャーマン・ショートヘアード・ポインターのアデルちゃんとひとときを過ごし、幸せのヒントを探ってみました。
目次
- 湘南で犬と暮らす。終業のベルは“そろそろ散歩の時間でしょ?”
- 大型犬もウェルカム!それは鎌倉に育まれた文化
- 湘南エリアには「長寿の犬」表彰制度も。ペットロスを乗り越えて、多頭飼いをもう一度
- 同じ背景でも画角でも、愛犬とのひとときを写真に
湘南で犬と暮らす。終業のベルは“そろそろ散歩の時間でしょ?”
本多さんと、エデルちゃんとアデルちゃん。彼らが暮らすのは、神奈川県鎌倉市。住まいは、里山の小高い丘に建つ古民家です。海にも山にも恵まれ、本多さんの自宅からビーチまでは徒歩10分ほどの距離。もちろん、愛犬とのお散歩ルートもビーチ沿い。頻度にして週3・4回、愛犬と共に海辺に降り立ち、約2時間のボール遊びを楽しみます。
「散歩から帰ってくると、もうくたくたです(笑)。エデルもアデルも大型犬なので、男の僕でもリードごと引っ張られることがしばしばです。実際、転んだことも一度や二度じゃありません。でも、僕にとってもいい運動ですね。僕の仕事はリモートが基本とあって、生活のリズムが乱れがち。愛犬との散歩は、そのリズムを整えられる時間でもあります」
本多さんはITエンジニア。農業AIの開発に従事し、本社は海外。「日本に支社らしい支社はなく、コロナ禍とは無関係に、いわゆる“出社”をした経験がないんです」と笑ってみせます。しかし、自由度の高さのぶん、際限なく仕事に没頭できてしまうのがリモートワークの落とし穴。リモートの普及が進み、オン・オフの切り替えに悩む人も少なくありません。
「その切り替えを促してくれるのが、エデルとアデルです。彼女たちも、ちょっとは空気が読めるのかな(笑)? エデルは極度の甘えん坊、アデルはとにかく自由気ままな割に、仕事の邪魔をされることはなくて。それが夕方が近づくにつれ、2頭ともそわそわ。“散歩の時間でしょ?”のアピールが、僕にとっての終業ベルです」
大型犬もウェルカム!それは鎌倉に育まれた文化
一方で気になるのが、愛犬と海の親和性。水辺の環境を怖がる犬は少なくなく、実はエデルちゃんもアデルちゃんも海は苦手。水遊びはせず、ビーチでもひたすらボール遊びを続けています。決まって夕方の時間帯に散歩に連れ出すのも、海辺の強い日射しを避けるためだそうです。
「水遊びをしてくれたら少しは涼しくなるものの、それは難しいんですよね。彼女たちの健康を気遣うのはもちろん、僕自身が汗だくです。すると、体が欲するのがビール(笑)。ありがたいことに、鎌倉には大型犬を受け入れてくれるカフェが珍しくありません。散歩の帰り道に、なじみのカフェに立ち寄るのがルーティンです」
全国的にワンちゃん連れ歓迎の飲食店が増えつつあっても、“大型犬お断り”のエクスキューズが付いたスポットがあることも事実。でも、鎌倉には本多さんの行きつけである『Pacific DRIVE-IN 七里ヶ浜』や『Double Doors 七里ガ浜店』のような、大型犬もウェルカムなお店があります。もちろん、そこにはたくさんのワンちゃんと愛犬家が訪れており、しばしば出会いの場となるそうです。
こうした愛犬家に優しい環境は、鎌倉市に育まれたひとつの文化のように思えます。本多さんいわく、「愛犬家のコミュニティーが自然と生まれるくらい、この辺りは犬を飼っている家庭が多いんです」。愛犬をきっかけに街の人々に交流が生まれ、気づけば、顔なじみに。鎌倉市では愛犬の存在が人の環をつなぎ、広げています。
湘南エリアには「長寿の犬」表彰制度も。ペットロスを乗り越えて、多頭飼いをもう一度
鎌倉という街が、いかに犬のことを大切にしているか。それを象徴するのが、長寿犬の表彰制度です。湘南エリアである鎌倉市・逗子市・葉山町の獣医師会が舵取り役を担い、15歳以上を迎えた愛犬を表彰。聞けば、本多さんも表彰式に参加したことがあるそうです。
「エデルとアデルの前に、2匹のラブラドール・レトリバーを飼っていたんです。黄色い毛並みのエリと、黒い毛並みのカイ。ふたりとも長生きしてくれて、どちらも長寿犬として表彰されて。でも、いつかは別れが来ますよね。僕もペットロスを経験しています」
ペットロスを癒したのが、5年前に本多家に迎えられたエデルちゃん。本多さんは「名前は、とても大事です」と話します。エデルちゃんの名付けにかけた期間は1か月で、「頭に濁音を入れない」「潮音と拗音を使用しない」「人名を想起させるものは起用しない」と、独自に設けた3つのルールを前提に熟考を重ね、エデルという名前に愛情をぎゅっと凝縮したとおっしゃいます。エデルとは、“高貴な”を意味するドイツ語の“edel”に由来するそうです。
「そして、エデルを迎えた2年後にやって来たのがアデル。エデルを飼い始めた当初から、多頭飼いを想定していました。というのも、前に飼っていたラブラドールの関係性がすごく良くて、お互いがいかにも“良きパートナー”という感じで。エデルとアデルにも同様の関係性を期待しましたが、ふたりはお互いに我関せず(笑)。でも、それもまた個性です」
ちなみに、エデルが“高貴な”を意味するドイツ語なら、“アデル”は“高貴”を意味するドイツ語の“adel”。ふたつの違いは形容詞か、名詞か、それだけ。まるで姉妹のような名付けにも、本多さんが2頭の愛犬に寄せる想いがにじんでいます。
同じ背景でも画角でも、愛犬とのひとときを写真に
2頭への愛情がにじむのは、名前だけにあらず。たくさんの愛犬の写真を見せてくださいました。ビーチへお散歩に出掛けてはシャッターを切り、愛犬の気取りない表情を収めていらっしゃいます。
「写真を撮り始めたのも、前に飼っていたラブラドールの影響です。ラブラドールを飼っていたときは、ほとんど写真を撮っていなくて。ふたりとの別れを経験して、撮っておけば良かったな、って。以来、スマホで撮りまくっています。ただ、僕自身が出不精なこともあって、いつも同じ背景、いつも同じ画角です(笑)」
本多さんが出不精を自称するのも納得。徒歩10分ほどの場所に海が広がるばかりか、本多さんの住まいは庭付きの古民家。住まいのすぐ裏手には緑の山がそびえ、庭には畑まで。ゆえに、エデルちゃんとアデルちゃんが駆け回るにも十二分なスペースもあります。海まで出掛ける時間が取れない日には、自宅の庭が彼女たちのドッグラン。つまりは、遠出は不要なのです。
「とは言え、今後は遠出もしてみたくて。実はエデルもアデルも、“犬づきあい”がちょっと苦手です。鎌倉にあるせっかくの愛犬家コミュニティーも、楽しんでいるのは僕のほうじゃないかと思ってしまいます。まずは遠出がてら、同じ犬種のオフ会に参加してみようかな、なんて考えていますね。同じ犬種のほうが、エデルもアデルも緊張しづらいだろうから」
愛犬と一緒に遠くへ出かけたなら、またひとつ、大切な思いが刻まれる。緑の山を背景にした自宅の庭も、鎌倉の海も、街の愛犬家とのひとときも、さらには遠出をした先のどこかも。本多さんはその時々の愛犬を写真に収めながら、共に暮らしを送られています。