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自然が好きな会社員。三浦半島に惚れ込み、魅力を発信中。毎朝、愛犬こむぎを喜ばせるために「主人のステップ」を踏んでいる。趣味は、アウトドア全般、柴犬の追っかけ。
渋い声でしゃべる柴犬・こむぎくんと飼い主の「あるじ」のくらしとは?
目次
- 渋い声のナレーションが特徴的! 柴犬・こむぎくんと飼い主・あるじ
- 「犬ってこんなに可愛いんだ」犬と無縁の人生に衝撃を与えた柴犬
- とにかく元気が1番! おしっこを決め手に愛犬を迎える
- 深夜ノリでのアテレコが「しゃべる柴犬 」動画のはじまり
- 台本は一切なし。仕事前に、愛犬との大切な遊び時間を撮影
- 飼育放棄の多い犬種、柴犬がいるリアルなくらしを届けたい
- 「愛犬といると、思いっきりはしゃげる」三浦半島での生活
- 犬を迎えて知った、何物にも代えがたい尊い存在
渋い声のナレーションが特徴的! 柴犬・こむぎくんと飼い主・あるじ
柴犬・こむぎくんはInstagramのショート動画を通じて一躍有名になり、フォロワー数は21万人を超えています。こむぎくんの優しく笑った顔、キリッと凛々しい顔など、表情豊かなでチャーミングな姿を見ることができます。
そんなこむぎくんの動画を投稿しているのが、飼い主の「あるじ」さんです。SNSでも「あるじ」という愛称で動画内に登場しており、こむぎくんとのやりとりから“相棒”のような仲の良さが伝わってきます。
実はこれらの動画は、台本なしで生まれたもの。カメラに収められたこむぎくんの表情や仕草を見たうえで、毎回ゼロからアテレコの内容やストーリーを考えています。
あるじさんが足踏みしながらこむぎくんに近づく『あるじのステップ』も、たまたまカメラに収められていた姿に名前をつけたのだとか。
「動画を撮影する時間は、こむぎと思いっきり遊ぶ大切な時間なんです」とあるじさん。
あのユニークな動画はどのように誕生したのでしょうか? また、ワンちゃんと暮らすことの魅力や柴犬という犬種に対する熱い想いを伺いました。
「犬ってこんなに可愛いんだ」犬と無縁の人生に衝撃を与えた柴犬
柴犬のこむぎくんは、約3年前にあるじさん家族に迎えられました。こむぎくんは、あるじさんにとって初めての愛犬です。
あるじさんが「いつか柴犬とくらしたい」と思うようになったのは、小学校低学年の頃です。夏休みに祖父母のお家に遊びに行っていたころ、隣の家の犬小屋に2匹の柴犬がいるのを見つけました。
「とにかくその2匹に夢中になってしまって。まだ子どもだったし当時はセキュリティも緩い時代だったので、ちゃんと飼い主に挨拶もせず勝手に会いに行っていました(笑)」
あるじさんのお父さんは犬が苦手だったそうで、あるじさん自身もそれまではまったくワンちゃんと触れ合うことがありませんでした。特に2匹のうちの1匹は、あぐらをかくとすぐに膝に乗ってくるほど人懐っこかったそうです。
2匹の柴犬と出会い「犬ってこんなに可愛いんだ」と、あるじさんは心を掴まれてしまいました。
それから約30年。「いつか柴犬とくらしたい」という想いを抱きながらも、適切なタイミングを測るうちに時は流れますが、気持ちは冷めていませんでした。
サラリーマン生活を送るあるじさんは、勤務形態が変わり、散歩の時間も確保できるようになったことをきっかけに、家族からの同意も得て「いまだ!」と柴犬を迎える心を決めました。
とにかく元気が1番! おしっこを決め手に愛犬を迎える
それからあるじさんは、本を読んで犬の情報を調べたり、何軒もペットショップをめぐる日々を送ります。家族からは柴犬以外の犬種も提案されましたが、あるじさんの心は柴犬に決まっていたため、柴犬だけに限定してペットショップを見て回りました。
「どの子も可愛くて、見れば見るほど決められなくなりました。仕事中も頭の中で出会った柴犬たちを並べながら『あの子もいい、この子もいい』と、そんなことばかり考えていましたね(笑)」
悩み抜いた先であるじさんが迎えたのは、最初にペットショップで抱っこした子犬、のちの「こむぎくん」です。
こむぎくんは他の子たちと比べて元気いっぱいでした。さらに興奮のあまり、あるじさんにおしっこをかけてしまったのだそう。
「初対面でおしっこをかけられたから、『この子はないなあ』なんて冗談で言っていました(笑)でも、いろんな子を見ていくうちに、ユニークな出会いだったこむぎがどんどん気になったんです」
おっとりした大人しい子との出会いもあったけれど、「初めてのワンちゃんだし、とにかく元気が一番」と思ったあるじさんは、大興奮で膝の上に乗ってきたこむぎくんを迎えることに決めました。
深夜ノリでのアテレコが「しゃべる柴犬 」動画のはじまり
あるじさんは、こむぎくんを迎えた頃、成長記録をつけるような気持ちでSNSのアカウントを開設しました。そして、犬とくらして自分が学んだことや役に立ったことを発信しようと考えます。
「だけど僕は、犬の専門家やしつけのプロでもなければ、まだ犬歴も浅い。犬の先輩飼い主さんたちにも及ばないなと思ったんです。そこで、僕とこむぎだからできることを発信することにしました」
そんな時に、偶然生まれたのが、あるじさんがこむぎくんにアテレコをする動画です。
「ある日、朝起きて歯磨きから戻ってくると、こむぎが伏せをして僕のことを見ながら待っていたんです(笑)面白いなあと思ってカメラを回して、深夜のおかしなテンションでアテレコして投稿したのが今の動画のはじまりです」
こむぎくんが話しているように見せるためには、テロップを細かく切ることがポイントなのだそう。動画配信を一度もしたことがなかったあるじさんは、ゼロからテロップの付け方を学び、精度をますます高めていきました。
「どんな飼い主でも、『この子がしゃべってくれたらいいのになあ』と一度は思ったことがあると思うんです。こむぎがこんなこと思ってたらいいなあとか、こんなことしゃべってたら面白いだろうなあという僕の気持ちを、あのテロップで表現しています」
台本は一切なし。仕事前に、愛犬との大切な遊び時間を撮影
あるじさんの動画作成のルーティンは、朝の撮影からはじまります。
起床しセッティングされたカメラのスイッチをオン。歯磨きと顔を洗うために洗面台に行きます。その間に、こむぎくんは家の中を一周して匂いを嗅ぎ、いつもの場所に伏せをしてあるじさんが帰ってくるのを待ちます。
そこから、あるじさんとこむぎくんの遊びの時間です。おもちゃで遊んだり、ハイタッチをしたり、過ごし方は毎日異なります。
ひと通り遊んだらカメラのスイッチを切り、撮れた動画をまずはぼーっと眺めます。何回か見ているうちに、「こんなテロップをつけたら面白そう」「こんなストーリーにしてみようかな」とアイデアが生まれてくるそうです。
「台本をつくってから動画を撮っているわけではありません。毎日こむぎと思いっきり遊ぶ朝の時間を撮影して、あとからストーリーを考えます。たまにこむぎがカメラから見切れていたりすることもあるので、実は『今日のは使えないなあ』という日もいっぱいあるんです」
ちなみにあるじさんが陽気なステップを踏みながらこむぎくんに近づく「あるじのステップ」も、先にアイデアがあったわけではなく、カメラに収められている自身の動きを見て名前をつけたものなのだそう。
「僕ってあんなに気持ち悪い動きしてるんだと、正直自分で見てびっくりしました(笑)たとえ投稿に至らなかったとしても、動画を回している時間はこむぎと思いっきり遊んだり、触れ合ったりする大切な時間なんです」
飼育放棄の多い犬種、柴犬がいるリアルなくらしを届けたい
こむぎくんへの愛情とあるじさんの遊び心から生まれた人気の動画。
「この動画を見るのが一週間のご褒美です」「明日も仕事がんばろうと思えました」など、こむぎくんのファンからたくさんのコメントが届いています。
そういった喜びや応援のメッセージは、あるじさんが発信をつづけるモチベーションにもなっています。そして、SNS投稿は、愛犬のことをより深く知れるというメリットもあります。
「最初の頃の投稿に『この柴犬、眉毛がある!』とコメントしてくれた方がいました。影の加減もあってのことかと思いますが、コメントをもらうまでは全然意識したことがなかったので『こむぎって眉毛あったんだ!』とびっくりしました(笑)」
このようにSNS上では、こむぎくんのいろいろな表情に出会うことができます。そこにもあるじさんのあるこだわりがあります。意識的に、室内で遊ぶ動画だけでなく、外の大自然の中で遊ぶこむぎくんの姿も載せるようにしているそうです。
「僕は、柴犬のほんわかとした姿と、自然の中を躍動するかっこよさの両方を伝えたいんです」
あるじさんは、柴犬にハマり調べていくうちに、柴犬は他の犬種よりも飼育放棄が多い犬種であると知りました。
「昔から柴犬に憧れていましたが、飼育放棄が多い犬種だなんて全然知らなかったんです。大好きな柴犬がそんな扱いを受けていると聞いて、とてもショックを受けました。たしかにほんわかとした可愛い柴犬の姿ももちろん真実ですが、それなりに力があり運動量が必要な犬種でもあるので、飼うことに難しさを感じる飼い主も少なくないのかもしれません……」
せっかく動画を投稿するなら、家の中でのんびりくつろいでいる姿だけではなくて、力強い柴犬の姿もちゃんと届けたいと思うようになりました。
柴犬とのリアルなくらしとはどのようなものなのか。可愛いところだけでなく、頑固だったり少し大変なところさえも知ったうえで、柴犬を選んでもらいたい。このアカウントにはそんなあるじさんの想いも込められています。
「愛犬といると、思いっきりはしゃげる」三浦半島での生活
あるじさんの1日はこむぎくんとのお散歩からスタートします。
あるじさん家族が住むのは、自然があふれる三浦半島。朝と仕事終わりの夕方の2回、草木や海の豊かさを五感で味わいながら散歩に出かけます。木に止まるカブトムシを捕まえに行ったり、海の中に入ったり。あるじさんにとってはこの散歩の時間が至福のひと時なのだそう。
「僕はもう立派なおじさんですが、心はまだ子どもなんですよ。大自然の中で走ったり、虫を捕まえたりもしたい。でも一人でそれをしていたら、危ないおじさんだと思われちゃいますから(笑)こむぎは、家族で唯一の僕の少年心に共感してくれる仲間です。こむぎのおかげで、堂々といろんな冒険を楽しむことができています」
あるじさんの夢は、こむぎくんが自由に走り回れるような秘密基地をつくること。こむぎくんがそばにいてくれることで、あるじさんの好奇心や遊び心はますます膨らんでいきます。
一方、こむぎくんにとってお散歩時間は、大切なトイレの時間でもあります。
子犬の頃は、家の中でもうんちができるようにトレーニングをしていましたが、今では外でしかしなくなってしまったそうです。そのため、どれだけ天気が悪くても、毎日の散歩は欠かせません。
「強い雨が降る日に、同じく柴犬の散歩をする飼い主さんに出会うと、お互い『お疲れ様です』とアイコンタクトをします(笑)柴犬や中型犬以上の犬ならではの大変さかもしれませんね」
散歩を欠かさない毎日を送ると、あるじさんも夜更かしをすることはすっかりなくなったそうです。「どんなふうに過ごせたらより健康にいられるかな」と、こむぎくんと暮らすおかげで健康への意識も高まっているのだとか。
それだけ、こむぎくんとの散歩の時間は日常に欠かせないものになっているようです。
犬を迎えて知った、何物にも代えがたい尊い存在
「犬とのくらしは、うまく言葉にできないけど、何物にも代えがたいものですね」
いつかはお別れの時が来るのをわかっていながら、ワンちゃんを迎えるのってどうしてだろうと、飼う前は少し疑問に感じていたあるじさん。しかし、実際に飼ってみると「なるほどね」と、他では埋められない尊さを感じるようになったといいます。
「こむぎと散歩していると小さい子が『可愛い!』と近寄ってくることが多いんです。その子を見ると小さい頃の自分を思い出します。こむぎのことをみて『いつか柴犬を飼いたい』と思ってくれる子がいたら嬉しいですね」
あるじさんにとってこむぎくんは、少年心を持ったまま思いっきり遊んでくれる“相棒”のような存在です。この先も、Instagramの投稿を通じていろんな姿を見せてくれることでしょう。