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ますだ動物クリニック院長、国際中医師

犬にはちみつを与えても大丈夫ですが、糖質が多く高カロリーのため与えすぎには注意が必要です。今回は、犬にはちみつを与える際の適量や注意点、腎不全や糖尿病の犬などはちみつを与えないほうがいいケースを、獣医師の増田国充先生監修のもと詳しく解説していきます。
ミネラルが豊富で健康や美容への効果が期待されているはちみつ。人間にとっては積極的に摂取したい食品のひとつですが、はちみつにはボツリヌス菌による食中毒の危険もあります。
子犬や老犬、持病のある犬は摂取を控えたほうがいい食品であることを知って愛犬の健康維持に役立てていきましょう。
目次
- 健康な成犬ははちみつを食べても大丈夫!でも子犬や老犬は注意が必要
- 犬がはちみつを舐めて体調を崩したらすぐ病院へ
- 犬がはちみつを食べたらアレルギー症状が出る?
- 腎臓病の犬にはちみつを与えるのはNG!
- 犬にはちみつを与える際のその他の注意点
- はちみつに含まれている栄養素と犬へのメリット
- 犬にはちみつを与える際の適量、ヨーグルトと一緒に与えてもいい?
- 犬にはちみつの加工食品を与えても大丈夫?
- コーヒーなどNGドリンクも知っておこう
- まとめ
健康な成犬ははちみつを食べても大丈夫!でも子犬や老犬は注意が必要
はちみつを犬に与えても問題はありませんが、与えすぎると愛犬が肥満気味になってしまう可能性があります。
人間にとっては健康や美容に良いと言われ、はちみつが砂糖の代わりに使われる機会も多いのではないでしょうか。しかし、犬にとっては普段の食事で砂糖の代わりが必要なケースはほぼないと言えるでしょう。また、犬の健康にとってメリットのある栄養素が多く含まれているわけではないため、健康促進のため摂取が絶対に必要という食材ではありません。
犬にはちみつを与える際はボツリヌス菌による食中毒に注意!
はちみつで注意したいのは、ボツリヌス菌による食中毒です。乳幼児はボツリヌス症の発症リスクが高いため与えてはいけないと言われています。犬でも同様の危険性はあるため、注意は必要でしょう。
ボツリヌス菌は酸素のない環境で増殖する細菌の一種で、強力な毒素を産生します。たとえ加熱したとしても生き残ってしまうことが知られており、食品に含まれる場合は注意が必要です。犬が健康で腸の状態も良ければ中毒を起こす心配は少ないと言われていますが、体調がすぐれず、免疫力が落ちている犬には与えないようにしましょう。
また、チワワやトイ・プードルなどの超小型犬は、成犬でも体が小さいため少量でも大きな影響が出る可能性があります。与える際は、量に十分注意してください。
子犬や老犬、持病のある犬ははちみつの摂取を控えたほうがいい
前述の通り、腸内の状態が整っていないとボツリヌス菌による食中毒を発生する危険性があります。腸内環境が成熟していない、免疫機能も低下しがちな子犬や、胃腸の働きが弱まっているシニア犬は特に注意が必要です。わずかな量のボツリヌス菌でも深刻な影響を受ける可能性があります。持病がある場合や、健康に不安がある場合も摂取は控えましょう。
犬がボツリヌス菌に感染すると、筋肉の収縮障害または自律神経障害などが起こります。また脱力や歩行困難、食欲不振などが現れ、最悪の場合には命の危険もありますので、症状が見られたらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
犬がはちみつを舐めて体調を崩したらすぐ病院へ
健康な成犬が少量のはちみつを舐めても、通常は大きな問題になることはありません。しかし、はちみつを舐めた後に犬が体調を崩した場合、速やかに動物病院を受診することをおすすめします。飼い主としては「犬がはちみつを舐めたらどうしたらいいの?」という不安を抱くかもしれませんが、まずは落ち着いて犬の様子を観察しましょう。下痢や嘔吐、元気がない、呼吸が苦しそうといった症状が見られる場合、すぐに専門家の助けを求めることが重要です。
はちみつは栄養価が高い反面、体質や健康状態によっては体調不良を引き起こすことがあります。また、稀にアレルギー反応を起こす犬もいるため、注意が必要です。特に免疫力が低い子犬や、糖尿病などの持病を持つ犬はリスクが高まるため、はちみつを与える際には十分な配慮が求められます。このような注意が必要なケースについては、次で詳しく解説していきます。
犬がはちみつを食べたらアレルギー症状が出る?
犬によっては花粉によるアレルギー症状が出る場合があります。はちみつには原料となった花の種類に由来する花粉が含まれるため、特定の花粉にアレルギーを持つ犬では症状が悪化するリスクがあります。そもそもはちみつとは、ミツバチが花の蜜を集めたものを抽出し加工した製品です。作られる過程で花粉が入り込むことはあり得るでしょう。
そのため、アレルギー体質の犬がアレルゲンとなる花粉が入り込んだはちみつを摂取すれば、アレルギーの症状を引き起こす可能性があるということです。アレルギーを発症すると主に皮膚症状が見られます。身体を痒がる、発疹や涙が出るなどの症状が出た場合は病院を受診しましょう。外耳炎や目の周囲の毛が抜けるなどの症状が出る場合もあります。
腎臓病の犬にはちみつを与えるのはNG!
腎臓疾患のある犬をはじめ、膵炎や糖尿病など持病のある犬にはちみつを与えないほうがいい理由を紹介します。
犬のボツリヌス症発症リスクを高めてしまう持病
慢性腎臓病など腎臓に疾患を持っている犬、腸の機能や免疫力が低下している犬がはちみつを摂取すると、ボツリヌス症を発症するリスクが高まると言われています。腎臓病や糖尿病の犬は、糖分の代謝が正常に行えないため、血糖値の急激な変動を引き起こし、状態が悪化する恐れがあります。また、腎不全の場合、余分な老廃物を排出する腎臓機能が低下しているため、はちみつに含まれる成分が体内に蓄積しやすい点にも注意が必要です。
症状により治療法が異なるものの、万が一ボツリヌス症を発症してしまった場合は病院で胃洗浄や催吐などを行います。早期発見が鍵となるため、愛犬が少しの量でも食べてしまった場合はすぐに病院へ連れていきましょう。
膵炎や糖尿病の犬も注意が必要
はちみつは糖分の多い食品なので、膵炎・糖尿病・下痢などを起こす危険性があります。すでに膵炎や糖尿病を患っている犬は病状が悪化する場合があるため、摂取を控えてください。繰り返しになりますが、はちみつはカロリーが高い食品なので太り気味の犬にも摂取させないようにしましょう。
犬にはちみつを与える際のその他の注意点
はちみつは大量に与えると、肥満だけでなく下痢などを招く場合があります。消化機能が衰えている犬の場合は、過剰な糖分の摂取が胃腸の負担になってしまうからです。歯周病のリスクも高まるため、与えたあとに歯磨きをすることも忘れないでくださいね。
愛犬にはちみつを与えるのであれば、まずは少量から挑戦して愛犬の様子を観察しましょう。よくない体調変化が見られたら、すぐに与えるのをやめてください。
はちみつに含まれている栄養素と犬へのメリット
犬に対するはちみつの健康作用については明確な研究結果がほとんどありません。栄養素における一般的な効果については次を参考にしてみてください。犬の場合、質の良いフードをしっかり与えていれば、基本的な栄養素は補給できるので、あくまでおやつ程度として考えるのが良いでしょう。
糖類、ビタミン、ミネラル
はちみつにはブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)が多く含まれており、これらの糖類は脳や身体が働く際のエネルギー源となります。はちみつを構成する成分のほとんどが糖類ですが、ほかにはビタミンやミネラルなどの栄養素が含まれています。
抗菌作用
はちみつには種類によって抗菌作用を持つ成分が多く含まれているものがあります。特に注目されるのが、ニュージーランドに自生するマヌカの花から採取される「マヌカハニー」や、西オーストラリアのジャラという木の花から取れる「ジャラハニー」です。これらのはちみつは、他の一般的なはちみつと比べて特に強い抗菌作用を持つことで知られています。マヌカハニーに含まれるメチルグリオキサール(MGO)や、ジャラハニーの活性成分は、細菌の繁殖を抑える効果が期待されています。
少食の犬、食欲が低下した犬の栄養補給に!
人にとっては疲れているときに舐めれば疲労回復に役立つと言われているはちみつ。犬の場合もエネルギー補給として少食気味な成犬や食欲が低下した犬などに食事の補助として与えてあげると良いかもしれません。エネルギー補給が必要な場合、はちみつは消化吸収が早い糖類を多く含むため、一時的な栄養補給として活用できます。ただし、通常の食事で十分な栄養が補給できる場合は特別に与える必要はありません。獣医師と相談のうえ適切な量を与えましょう。
犬にはちみつを与える際の適量、ヨーグルトと一緒に与えてもいい?
愛犬にはちみつを食べさせるとしたらどれくらいの量までならいいのでしょうか。ヨーグルトのトッピングとして与えるケースも含めて紹介します。
適量はティースプーン1杯程度
犬にはちみつを与えたい場合、1日あたりの適量は体重1kgに対し1g程度です。だいたいティースプーン1杯程度を目安にしましょう。とはいえ、愛犬の体格や体調によって適正量は異なるので、初めて与える場合はこの基準より少ない量で与えてみてください。水に薄めて与えるなどの方法もあります。いずれも、体調に異常が生じていないかチェックしながら与えるのが必須です。
はちみつは液状でフードにも混ぜやすいうえに、甘みが強いので愛犬も喜びます。ついつい量を与えてしまいがちですが、愛犬の健康を維持するのは飼い主さんの役目。欲しがるからと言って過剰に与えないよう気を付けてくださいね。
また、ヨーグルトと一緒に与えてもいいのですが、その際は無糖ヨーグルトにしましょう。また、ヨーグルトは脂肪分が含まれているため、肥満、下痢などの症状につながらないよう与え過ぎに注意してください。
愛犬とのコミュニケーションの一助に
はちみつは中毒症状やアレルギー症状、肥満を引き起こす可能性があるため、与える際には十分な注意が必要な食品です。犬にとっては健康的なメリットが少ないため積極的に与える必要はないと言えます。
ただ、食事の補助の一環で愛犬とのコミュニケーションとして活用する方法はあるでしょう。例えば、普段のご褒美のひとつとして取り入れてみてもいいかもしれません。犬にとっても甘いものはおいしく、幸せを感じられるものです。飼い主さんが日常的にはちみつを食べるご家庭であれば、考えてみても良いかもしれません。
犬にはちみつの加工食品を与えても大丈夫?
はちみつを利用した加工品はクッキーやヨーグルトなどさまざまありますが、人間が食べる製品は砂糖などが大量に含まれているので愛犬には与えないようにしましょう。犬用に市販されているものであれば成分が調整されており比較的安全ですが、原材料を確認し、保存料や着色料が含まれていない製品を選ぶようにしましょう。
メープルシロップは与えても大丈夫?
はちみつと混同される食品としてメープルシロップがあります。メープルシロップははちみつと同様に天然の食品ですが、サトウカエデなどの樹液を煮詰めて作られたもので採取方法が異なります。
メープルシロップにはボツリヌス菌が含まれていないため、犬への中毒症状は報告されていません。ただし、はちみつと同じく含まれる成分の大半が糖質です。カロリーも高いため過剰摂取は控えさせるべきですし、必要がなければ与えなくても良い食品でしょう。
もし、どうしても与える場合は、メープルシロップの模造品に注意しましょう。一部のメープルシロップ風味の甘味料があります。砂糖やコーンシロップにメープルの風味をつけたもののため栄養成分が異なり、愛犬の内臓に負担をかけてしまう可能性も否定できません。ボトルの原材料はよく確認するようにし、人工甘味料や添加物が記載されていないことを確かめてください。天然のメープルシロップでもカロリーが高いため、特に肥満傾向の犬には与えない方が良いでしょう。
はちみつを使った犬用おやつ
犬のおやつで砂糖の代わりにはちみつを使っている製品もあります。多少の甘みがあると犬の嗜好性があがるようです。
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※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
コーヒーなどNGドリンクも知っておこう
人が好んでよく飲み、はちみつを加える飲み物のなかには犬には絶対与えてはいけない飲み物もあります。以下に紹介するので、誤飲することのないようよく覚えておきましょう。
まとめ
はちみつは、適量であれば健康な成犬にとって与えても大丈夫な食品です。ただし、与える際には注意が必要です。
特に、免疫力が低い子犬や腎臓病、糖尿病などの持病を持つ犬には与えない方が安全です。万が一、はちみつを舐めた後に体調不良の兆候が見られる場合は、速やかに動物病院を受診してください。
愛犬の健康を守るためには、適量を守り、事前にリスクやメリットを理解しておくことが大切です。