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海動物病院所属。潜水士免許保有。動物検疫所、製薬会社での勤務を経て、海動物病院に所属。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。
いつものドッグフードにプラスして、栄養満点なお肉も愛犬に食べさせたいと思う飼い主も少なくないはず。この記事では、しっかり加熱した上で犬に食べさせてもいい肉の種類について、獣医師の鈴木佐弥香先生に伺ったポイントを解説します。肉の種類ごとの栄養素やおすすめの与え方も参考にしてみてくださいね。
目次
- 犬が食べてもいい肉は?
- 犬が食べてもいい「鶏肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
- 犬が食べてもいい「豚肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
- 犬が食べてもいい「牛肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
- 犬が食べてもいい「羊肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
- 犬が食べてもいい「馬肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
- 子犬やシニア犬に加熱した肉を与えても大丈夫?
- 持病のある犬に加熱した肉を与えても大丈夫?
- 犬に加熱した肉を与えることで、発症する恐れのあるアレルギーは?
- 犬が食べてもいい肉を与える際のおすすめの調理方法は?
- 犬に加熱した肉を与えるときの注意点は?
- 犬にレバーを与えても大丈夫?
- 犬に肉の加工品や味付けのされている肉料理を与えても大丈夫?
犬が食べてもいい肉は?
犬が食べてもいい肉は、鶏や豚、牛をはじめ、馬、羊、イノシシ、鹿など多岐にわたります。人が食べている肉であれば、犬はほとんどの種類を食べることができます。ただし、いずれの肉もしっかりと加熱をしてから与えるようにしましょう。
犬が食べてもいい「鶏肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
犬に「鶏肉」を与える際は、下記を参考にしてください。
食べていい主な部位
・胸肉
・もも肉
・ささみ
・せせり
・手羽先
・レバー
・砂肝
主な栄養素と犬の健康への影響
・たんぱく質・・・鶏肉に含まれるたんぱく質はバランスが優れています。鶏肉に含まれるアミノ酸の一種であるメチオニンには健康的な被毛を保ったり、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの血中濃度を下げたりコレステロールの分解を促進する働きがあります。
・ビタミンA・・・健康的な被毛、皮膚や粘膜を保つ働きがあります。
・ビタミンK・・・血液凝固に関与するビタミンで欠乏すると血が止まりにくくなります。また、健康的な骨や動脈効果の予防にもつながります。
・イミダゾールペプチド・・・抗酸化物質で疲労回復や活性酸素除去につながります。
・不飽和脂肪酸・・・血中のコレステロールを下げて高血圧や動脈硬化の予防になります。
与える際の注意点
生肉のままだとサルモネラ菌や大腸菌、カンピロバクターなどの細菌や寄生虫の一種のトキソプラズマに汚染されている可能性が高いので、きちんと深部まで加熱するよう気をつけましょう。
また、皮にはコラーゲンやビタミンK、コンドロイチンなど多くの栄養成分が含まれていますが、脂肪分が多くカロリーも高いので与えすぎには注意が必要です。
鶏の骨は熱を加えると縦に裂けやすく喉などの消化管に刺さりやすいなどと言われていますが、実際のところそこまで危険ではないのでは?と専門家の間でも賛否が分かれます。ただ、丸呑みしてしまうと、消化管に刺さらなかっとしても腸閉塞などのリスクがあるので、犬には与えないほうがいいでしょう。
犬が食べてもいい「豚肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
犬に「豚肉」を与える際は、下記を参考にしてください。
食べていい主な部位
・ひれ
・ロース
・レバー
・ばら
主な栄養素と犬の健康への影響
・たんぱく質・・・豚肉は、アミノ酸スコア100、プロテインスコア90と非常にバランスのいいたんぱく質です。
・ビタミンB1・・・糖代謝をスムーズにしエネルギー源となります。不足すると疲れやすい、太りやすいなどといったエネルギー代謝の低下症状が現れます。
・不飽和脂肪酸・・・血中のコレステロールを下げて高血圧や動脈硬化の予防になります。
・カルノシン・・・抗酸化作用や乳酸生成を抑制し、疲労回復につながります。
与える際の注意点
生肉のままだとE型肝炎ウイルスや、サルモネラ菌や大腸菌、カンピロバクターなどの細菌、寄生虫の一種のトキソプラズマに汚染されている可能性が高いので、きちんと加熱するよう気をつけましょう。
また、豚肉には脂身が多く含まれている部位もありますが、犬が大量に動物性脂肪を摂取すると急性膵炎を引き起こす恐れがあるため、脂身の少ない部位にするか、脂身を取り除いてから与えるようにしましょう。
犬が食べてもいい「牛肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
犬に「牛肉」を与える際は、下記を参考にしてください。
食べていい主な部位
・ロース
・もも
・すじ
・すね
・レバー
主な栄養素と犬の健康への影響
・たんぱく質・・・牛肉の赤身に多く含まれるトリプトファンは、脳内で「幸せホルモン」であるセロトニンとなります。夜は「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンとなり、うつ病の予防や脳の健康、質の良い睡眠につながります。
・鉄分・・・血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分となるミネラル。全身の組織に酸素を運ぶ役割があり、貧血の予防やコラーゲン、骨、粘膜、皮膚の生成代謝に関わります。
・亜鉛・・・細胞分裂や新陳代謝を促進し、健康や発育に欠かせないミネラルです。
・不飽和脂肪酸・・・血中のコレステロールを下げて高血圧や動脈硬化の予防になります。
・ビタミンB6・・・アミノ酸の代謝に関わっているビタミンです。セロトニン、メラトニン、ノルアドレナリンなどのホルモン産生や皮膚病の予防につながります。
与える際の注意点
ユッケやレアステーキでも食べられている牛肉は、生で食べても比較的安全であると言われています。しかし、加工や運搬の過程で空気と触れ合うことによって、細菌が付着している可能性があるので、愛犬に与える際は芯まで火を通しましょう。
特にレバーは、O157やカンピロバクターといった細菌に汚染されている可能性が高いです。O157の死滅条件である、「中心温度75℃以上で1分間以上の加熱」を目安に、徹底して加熱するようにしましょう。
犬が食べてもいい「羊肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
犬に「羊肉」を与える際は、下記を参考にしてください。
食べていい主な部位
・もも
・ひれ
・ロース(ラムチョップ)
・ばら
主な栄養素と犬の健康への影響
犬に与える羊肉として主に使われているのは、生後1年未満の子羊の肉であるラム肉です。1歳以上の肉であるマトン肉より、独特な臭みがなく栄養も豊富です。
・たんぱく質・・・アミノ酸スコア100、プロテインスコア90と非常にバランスのいいたんぱく質です。メチオニン、リシン、フェニルアラニンといった必須アミノ酸を多く含んでいます。
・鉄分・・・血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分となるミネラル。全身の組織に酸素を運ぶ役割があり、貧血の予防やコラーゲン、骨、皮膚の生成代謝に関わります。
・カルニチン・・・脂肪を燃焼しエネルギーを産生したり、生成された有害な物質をミトコンドリアの外へ排出し細胞内への蓄積を防いだりする働きがあります。脂肪燃焼効果や老化予防などに役立ちます。
・ビタミンB12・・・葉酸とともに赤血球やヘモグロビンを産生したり、DNAの合成をしたり神経機能にも必要です。不足すると貧血やしびれ、疲れやすいなどといった症状がでます。
与える際の注意点
羊肉は細菌で汚染されている可能性は比較的低いですが、念のためよく加熱してから与えましょう。
犬が食べてもいい「馬肉」の部位と、主な栄養素、与える際の注意点は?
犬に「馬肉」を与える際は、下記を参考にしてください。
食べていい主な部位
・ひれ
・ロース
・もも
主な栄養素と犬の健康への影響
・たんぱく質・・・アミノ酸スコア100の良質なたんぱく質が含まれている上、低脂肪低カロリーでダイエット中の犬にもおすすめです。
・鉄分・・・血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの構成成分となるミネラル。全身の組織に酸素を運ぶ役割があり、貧血の予防やコラーゲン、骨、皮膚、粘膜の生成代謝に関わります。
・グリコーゲン・・・血糖値を一定に保ったり運動時のエネルギー源としての働きをしたりするため、疲労回復につながります。筋肉中のグリコーゲンが枯渇すると低血糖を起こすこともあります。
・カルシウム・・・骨や筋肉の構成成分であり、筋肉の収縮や血液凝固、神経を安定させるなどといった働きがあります。
・ビタミンB12・・・葉酸とともに赤血球やヘモグロビンを産生し、DNAの合成や神経機能にも必要です。不足すると貧血やしびれ、疲れやすいなどといった症状がでます。
与える際の注意点
馬肉は細菌で汚染されている可能性が比較的低いです。
ただし、生肉においてはサルコシスティスという寄生虫に要注意。馬や牛を中間宿主、犬や猫を終宿主としており、感染すると一過性の嘔吐や下痢といった症状が見られます。比較的軽症で済む場合が多いですが、愛犬に苦しい思いをさせないためにも必ず加熱してから与えましょう。
子犬やシニア犬に加熱した肉を与えても大丈夫?
子犬にも加熱した肉を与えても基本的には大丈夫です。しかし、犬は生後半年までは特に大きく成長する時期で1日に摂取する栄養バランスが非常に重要となります。成長期の子犬に肉を与える際は、食事の全てを肉や手作り料理に置き換えるのではなく、ドッグフードのトッピング程度にしましょう。またドライのドッグフードを食べなくなってしまうことも考えられるので、与える頻度などにも工夫が必要です。
シニア犬にとっても加熱した肉は栄養バランスよく嗜好性も高いので、食欲が落ちている場合でも好んで食べてくれるメリットがあります。しかし、持病がある場合にはかかりつけの獣医師とよく相談してから与えるといいでしょう。
また、子犬、シニア犬ともに咀嚼力や嚥下力が弱い場合があるため、細かく切ってあげてくださいね。
持病のある犬に加熱した肉を与えても大丈夫?
腎臓に疾患がある犬は、たんぱく質を摂りすぎると代謝物質である窒素などを腎臓から排泄できなくなります。腎機能悪化や尿毒症など引き起こしてしまう可能性があるので気をつけましょう。
犬に加熱した肉を与えることで、発症する恐れのあるアレルギーは?
牛肉にアレルギー反応を引き起こす犬は、豚肉に対してもアレルギー反応を引き起こしやすいと言われています。過去にどちらかの肉でアレルギー症状を引き起こしたことのある犬は気をつけましょう。
また、いずれの肉にもアレルギーを起こす可能性はあるため、初めての肉を与える際には極少量からスタートするようにしましょう。
犬が食べてもいい肉を与える際のおすすめの調理方法は?
肉に含まれるビタミンやミネラルは熱に強いため、加熱方法による栄養の差異はそこまでありません。オリーブオイルで炒めたり、蒸したり茹でて与えるといいでしょう。
ただ、煮ると鉄分が煮汁に出やすいので、ぜひ煮汁も一緒に与えましょう。カロリーは焼く、茹でる、蒸すの順で高くなりますので、ダイエット中の犬に与える際には焼くか、焼いてから茹でたり蒸したりするといいかもしれません。
犬に加熱した肉を与えるときの注意点は?
初めて与える場合には、少量からスタートしてください。特に子犬やシニア犬は、消化機能や免疫機能が健康な成犬と比べて上手く機能しないことがあるので気をつけましょう。
また肉を加熱する際は、ネギ類と一緒に焼いたり煮込んだりしないように注意してください。ネギ類に含まれる硫化アリルは、犬に溶血性貧血などの中毒症状を引き起こします。
犬にレバーを与えても大丈夫?
レバーには油溶性ビタミンaが多く含まれているので、多く与えすぎると下痢、嘔吐などの中毒症状を引き起こす可能性があります。また、しっかり加熱しないとO157やカンピロバクターといった細菌やサナダムシなどの寄生虫が残っているかもしれないので、十分な温度と時間で火を通してください。
レバーは傷みやすい食材なので、犬に与えるのは鮮やかな赤色で光沢があるものを選ぶようにしましょう。
犬に肉の加工品や味付けのされている肉料理を与えても大丈夫?
缶詰や瓶詰めといった肉加工品には多くの塩分や油分、添加物などが含まれているので絶対に与えないようにしましょう。肉を使った料理も、塩分が過剰に含まれていたり、犬にとっては刺激が強すぎる香辛料が使われていたりするので決して与えないでください。