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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
一緒に生活をしているなかで犬が吐血してしまった場合、飼い主としては非常に心配になりますよね。犬が吐血をするときは重大な病気を抱えているケースも多いため、早めの対応がカギとなります。今回は、犬が吐血した場合に考えられる原因と対処法などについて、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬が吐血する原因とは?
- 犬が吐血してしまったときの対処法や応急処置は?
- 犬の吐血を予防するには?
- 犬の吐血の治療法とは?
犬が吐血する原因とは?
犬が吐血する原因はさまざまで、一概に言い切れるものではありませんが、ここでは代表的な例について紹介します。
口腔内の異常
口の中に異常がある場合、吐血することがあります。その場合、口内の粘膜、歯茎、舌から出た血がよだれに混ざって口から吐き出されます。
呼吸器系の異常
喉や鼻といった呼吸器に異常がある場合、吐血につながるケースがあります。鼻炎持ちや鼻腔内に腫瘍がある場合、そこからの出血が喉から逆流し、血を吐くことがあります。似た症状として肺や気管支から吐血する場合もありますが、そういった場合は吐血ではなく喀血(かっけつ)になるので、区別が必要です。
消化器系の異常
食道や十二指腸に代表される消化器や、胃腸(胃・小腸・大腸)の炎症によって粘膜からの出血し、それが吐血に繋がります。それだけでなく、胃潰瘍や消化器系に腫瘍がある場合でも吐血が見られます。
止血機能の異常
血小板に異常がある場合、吐血することがあります。止血・凝固の機能がうまく働かず、体のさまざまな部位から出血します。
ストレスによるもの
ストレスが原因となり内分泌系に異常を起こした場合や、神経系に異常が起こったことによって内臓から出血することがあります。
老衰によるもの
シニア犬(小型犬の場合はおよそ10歳以降、大型犬の場合は6〜7歳以降)になると体の免疫バランスが崩れやすくなり、それが原因となって吐血する場合があります。また、臓器系にも異常が生じやすく、出血しやすくなるでしょう。
フィラリア(寄生虫)によるもの
フィラリアという寄生虫が肺動脈に寄生したことで吐血する場合があります。
異物の誤飲や中毒
食べ物以外のもの(おもちゃや衣類など)や、中毒を引き起こす食べ物(玉ねぎ、チョコレートなど)を口にした場合、吐血することがあります。
その他の原因
腎臓機能が低下することによって、吐血が起こることがあります。また、熱中症による急激な体温の上昇により、体調に異常があらわれ、ひどい場合は吐血することがあります。
犬が吐血してしまったときの対処法や応急処置は?
もし犬が吐血してしまった場合、飼い主としてどう対処するべきなのでしょうか。適切な対処法を紹介します。
動物病院へ連れていく
吐血しているということは、すでに体に何らかの異常が生じているサインです。しかも、比較的重症なケースが多いため、一刻も早い受診が必要でしょう。
口のなかの異物を取り除く
異物が入って出血しているという原因が明確なケースに限りますが、出血している原因物質を取り除くことで吐血が落ち着いたり、なくなったりするケースがあります。ただし、原因がわかっているからといって、無理やり物を取り出そうとすると口腔内が余計に傷つき、さらなる出血につながる場合もありますので無理は禁物です。
絶食する
出血がそれほどひどくないのであれば、粘膜が傷ついているだけの場合もあります。そういったケースであれば数時間から一日くらいを目安に絶食することで吐血の量が減少する可能性があります。
体に異常がないかを確認する
吐血しているときは、それ以外に異常がないかどうかを確認することも大事です。確認すべきポイントは口腔内の状態や皮膚の色、排便排尿に異常がないかどうかといったことが挙げられます。
犬の吐血を予防するには?
病気が原因となる犬の吐血を予防するのは少し難しいです。しかし、熱中症やストレスが原因となっている場合には、まず室温管理や食事内容など環境の見直しをするのがよいでしょう。また、基本中の基本にはなりますが、異物の誤飲などは飼い主がしっかりと我が子を見ていると防げるケースが多いです。日頃のスキンシップの取り方や、早期発見をするという意識を持つことが重要です。誤飲しそうなものを与えないのは当然ですが、愛犬から目を離さず、いつも目の届く範囲で遊ばせるようにするとよいでしょう。
犬の吐血の治療法とは?
犬が吐血している場合、原因によって行う治療は異なります。出血がひどいときは止血剤などを使うケースもあります。また、治療にかかる費用も吐血の原因によってさまざまです。目安として、軽度の胃腸炎であれば5,000~20,000円程度かと思います。いずれも、かかりつけの動物病院に問い合わせるとよいでしょう。