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ますだ動物クリニック院長、国際中医師
街中で見かけることもある盲導犬ですが、接し方がわからないと感じている方も多いでしょう。盲導犬が盲導犬ユーザーと一緒にいるときは、基本的には見守ってあげるのが正解です。ただし、盲導犬ユーザーが困っている場面に居合わせたら、そっとサポートすることもできます。
今回は、盲導犬にやってはいけないことや、盲導犬ユーザーが助けを求めているタイミングについて解説します。
目次
- 盲導犬とは?
- 盲導犬にやってはいけないことはある?
- 盲導犬ユーザーが手助けを必要としているサイン
- 盲導犬ユーザーをお手伝いする方法
- 盲導犬についてさらに理解を深めるには?
- まとめ
盲導犬とは?
盲導犬は、視覚障がい者の生活や外出のサポートをする犬です。実際に盲導犬がどんなお仕事をしているのか、どのようなトレーニングを経て盲導犬になるのかを解説します。
盲導犬は法律で定められている大切なパートナー
盲導犬は、目の見えない人や目の見えにくい人の目となり、目的地まで安全かつスムーズに辿りつけるようサポートするのが仕事です。盲導犬は「身体障害者補助犬法」(平成14年10月施行)に基づいて認定されているほか、道路交通法においても保護を受けており、車両の一時停止や徐行の義務が発生します。盲導犬は障害物を避けたり、段差などを知らせてくれたりなど、盲導犬ユーザーの安全な歩行をサポートしています。
盲導犬は厳しい基準をもとに訓練される
盲導犬として盲導犬ユーザーをサポートしているのは、特別な訓練を受けて基準を満たした犬です。訓練センターでは約6ヶ月~1年の間、盲導犬ユーザーをサポートするトレーニングやマナー訓練が実施されます。盲導犬になるためには厳しい訓練を受けるというイメージがあるかもしれません。たしかに盲導犬になるためには厳しい基準が設けられているのは事実です。
しかし、訓練の内容自体は犬が楽しく仕事に取り組めるようなものとなっています。そのため、盲導犬は公共施設や交通機関など、さまざまな場面でも落ちついて盲導犬ユーザーをサポートできるのです。
盲導犬にやってはいけないことはある?
街中で見かける盲導犬は、盲導犬ユーザーをサポートする大切な仕事をしている最中です。そのため、盲導犬が仕事に集中できなくなるような行為をしてはいけません。とくに次の4つの行為は盲導犬の仕事を邪魔してしまう可能性があるため、気をつけましょう。
声をかけたり気になる音を発したりする
盲導犬はとても音に敏感なうえ、盲導犬ユーザーの身に危険が及ばないよう、常に注意を払っています。そのため、盲導犬に話しかけたり、口笛など突然音を発したりすると盲導犬が音に気を取られてしまう可能性があるため注意しましょう。
万が一、盲導犬ユーザーが歩いているときに盲導犬の注意が逸れてしまうと、段差を見逃したり横断歩道で止まってしまったりなどの危険につながる可能性があります。盲導犬ユーザーと盲導犬の安全を守るためにも、見かけても声をかけないようにしましょう。
食べ物をあげる
盲導犬は外出先で盲導犬ユーザーの安全を守れるように、盲導犬ユーザーが排泄のリズムを考えて食事や水をあげています。そのため、街で見かけた盲導犬に食べ物をあげると、排泄のリズムが乱れてしまい、盲導犬ユーザーのサポート中に排泄したくなってしまう可能性もゼロではありません。
また、食べ物をあげることによって盲導犬ユーザーの注意も散漫になってしまいます。頑張っている盲導犬に何かしてあげたいという気持ちもわかりますが、盲導犬ユーザーの安全のためにもそっと見守ってあげましょう。
じっと見つめる
盲導犬が店先で盲導犬ユーザーを待っている姿を見かけると、つい話しかけたくなってしまうかもしれません。しかし、盲導犬がじっとしている間も「待つ」という仕事をしていることを忘れてはいけません。たとえば、盲導犬ユーザーを待っている盲導犬をじっと見つめたり話しかけたりすると、「待つ」という仕事ができなくなってしまう可能性もあります。
また、触るのも盲導犬の注意が逸れてしまうので、避けた方がいい行為の一つです。たとえ何もしていないように見えても、盲導犬がハーネスをつけているときは仕事中の印です。何もせずに遠くからそっと見守るのが1番の応援になることを忘れないようにしましょう。
写真を撮影する(SNSに掲載する)
写真を撮影する音や光は仕事中の盲導犬の注意を逸らしてしまう可能性があるため、気をつけましょう。日本の法律では、動物に肖像権は発生しません。しかし、無断で盲導犬を撮影して無断でSNSに掲載すると、盲導犬や盲導犬ユーザーの生活範囲が不特定多数に知られてしまいます。盲導犬ユーザーと盲導犬を危険にさらしてしまうリスクがありますので、絶対にやめてください。
最低限のマナーと善意を持って、盲導犬と盲導犬ユーザーを見守るように心がけましょう。
盲導犬ユーザーが手助けを必要としているサイン
盲導犬を見かけたら基本的に話しかけたり触ったりせずに見守るのが正解ですが、盲導犬ユーザーが困っていたら声をかけても構いません。手助けを必要としているサインをキャッチして、できるだけサポートをしてみてください。
信号待ちをしている
信号待ちをしている盲導犬ユーザーは、盲導犬にストップやスタートを知らせてもらっているわけではありません。というのも、盲導犬は信号の赤や青をしっかりと見分けられないからです。そのため、盲導犬ユーザーは音響信号や周囲の音を確認して赤信号や青信号を判断し、盲導犬に指示を出します。
しかし、歩行者が少ない信号や騒音が大きい信号では、盲導犬ユーザーが信号の色を適切に判断できないケースもあります。もし、信号待ち中の盲導犬ユーザーを見かけたら、「あ、青に変わった」といったように独り言をつぶやいてみてください。直接話しかけなくても信号が変わったことが伝わるため、盲導犬ユーザーのサポートにつながります。
道がわからなくなる
盲導犬の仕事はあくまでも盲導犬ユーザーの歩行をサポートすることで、盲導犬ユーザーを目的地まで案内しているわけではありません。目的地までの道のりは盲導犬ユーザーが覚えた地図をもとに判断しています。そのため、道路工事や事故の発生などによって迂回が必要になると、道がわからなくなってしまう可能性もあります。
もし、道で困っている盲導犬ユーザーを見かけたら、道に迷っているかもしれないため、声をかけてみてください。
危険な状態にある
盲導犬や盲導犬ユーザーは基本的に見守る姿勢が大切ですが、危険を察知した場合は大きな声で制止するのも一つの方法です。たとえば道路に飛び出そうとしていたり、電車のホームなどから足を踏み外しそうになっていたりなど、危険な状態に遭遇したときは「盲導犬の人、危ない!」「杖の人、止まってください!」などと、わかりやすいように声をかけてください。また、すぐ近くにいる場合は腕を掴むと確実に制止できます。
盲導犬ユーザーをお手伝いする方法
もし外出先で盲導犬ユーザーが困っているときは、次のような方法でお手伝いできます。
道に迷っているときは手引きの歩行でアシストする
盲導犬ユーザーが困っていたり、焦っていたりする場面を見かけたら、盲導犬ユーザーに声をかけてみてください。もし、道に迷っている場合は、盲導犬ユーザーを目的地または盲導犬ユーザーが知っている場所まで案内してあげると親切です。道案内をする場合は「手引きの歩行」といって、自分の腕に掴まってもらいながら一緒に歩く方法でアシストしてみてください。
不当な扱いを受けているときは助言する
盲導犬は法律上、盲導犬ユーザーの身体の一部として認められています。そのため、電車やタクシー、飲食店など、盲導犬ユーザーが利用できる場所は基本的に盲導犬と一緒に利用可能です。
しかし、盲導犬や盲導犬ユーザーへの理解不足から入店拒否されるケースも少なくありません。そういった場面を見かけたときは、法律で盲導犬の同行が認められていることや盲導犬は訓練によって基準を満たしていることを助言すると、盲導犬ユーザーの手助けになるでしょう。
盲導犬についてさらに理解を深めるには?
「盲導犬についてもっと知りたい」「適切なサポートができるようになりたい」という方は、盲導犬や盲導犬ユーザーへの知識を深めるために行動してみるのもおすすめです。
盲導犬のハーネスや証明書について知る
盲導犬が仕事をしているときに必ず装着しているハーネスは、もともとU字型が一般的でしたが、近年バーハンドル型に改良されたことにより、盲導犬ユーザーが指示を出しやすい形状になりました。そのため、一見すると盲導犬であることがわかりにくいかもしれませんが、一般的に盲導犬のハーネスには目立つカラーが使われています。
さらに、盲導犬ユーザーは必ず杖を持っているため、そういった特徴で判断してみましょう。また、盲導犬ユーザーは盲導犬の運転免許証といわれる「盲導犬使用者証」や「身体障害者補助犬健康管理手帳」を携帯して外出するのが一般的です。
盲導犬の見学会や講習会に参加する
全国の盲導犬協会では、盲導犬への理解を深めるため、見学会や講習会を実施しています。見学会や講習会の内容は団体によって違いますが、デモンストレーションを見学したり、盲導犬と触れ合ったりできるケースもあります。専門家から話を聞き、実際に盲導犬の活動を目にすることで、盲導犬や盲導犬ユーザーへの理解度が大きく向上するでしょう。
ぜひ、お住まいの地域にある盲導犬協会のホームページなどを確認してみてください。
まとめ
盲導犬が盲導犬ユーザーと一緒にいるときは、集中してお仕事をしています。訓練を受けて厳しい基準をクリアした盲導犬は優秀なパートナーですが、盲導犬がお仕事に集中できるよう、見かけてもむやみに近づかないようにしましょう。盲導犬ユーザーが困っているタイミングで、やさしくアシストしてみてください。