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神経病・てんかんの診療に力を入れる。重要な診断ツールで行動学的との鑑別にも役立つ脳波検査も実施。一般診療に従事しつつ、神経病に悩む動物の診療・手術を実施。
犬が耳をかく仕草は日常的に見られるものですが、異常に痒がる場合は何かしらの病気が潜んでいるかもしれません。この記事では、病気やストレスなどの痒みの原因や、それぞれの症状についてくわしく解説していきます。愛犬が耳を痒がっていたら、何が原因なのか、病院に連れて行った方がいいのか早期に見極めて、適切に対処できるようにしておきましょう。
目次
- 犬が耳を痒がる原因と症状
- 犬が耳を痒がる時の対処法
- 犬が耳を痒がる時のケアについて
- まとめ
犬が耳を痒がる原因と症状
犬が耳をひっきりなしに掻く、頭をぶんぶん振る、耳が赤い、など愛犬の耳に異常が見られたら、何が起きているのかよく観察してください。犬が耳を痒がる理由にはどのようなものがあるのか、症状と合わせて見ていきましょう。
ダニやノミなどの寄生虫が原因の場合
犬の耳の中に寄生するダニに「耳ダニ」があります。ヒゼンダニの一種で、犬の外耳道に寄生して激しいかゆみを引き起こします。血が固まったような黒っぽい耳垢が特徴的な症状で、炎症がひどくなると耳から異臭がするようになります。
進行し中耳から内耳にまで炎症がおよぶと平衡感覚障害(前庭障害)などが起きることもあるので、早期に治療を開始してください。非常に強いかゆみのため、犬が自身の爪で引っかいて傷をつくったり、ひどいと耳血腫になってしまうこともあります。
耳ダニは他の犬や別の動物から感染します。感染力がとても強いので同居犬や猫がいる場合は注意が必要です。また、ダニやノミが原因のこともあります。特にマダニは皮膚の薄い顔周りを好みます。マダニやノミは、目視で確認できます。
耳ダニについてはこちらの記事でもっと詳しくチェック!
>犬が耳をかゆがるのは耳ダニが原因?注意すべき症状と対処法を解説【獣医師監修】
外耳炎が原因の場合
外耳炎は、マラセチアなどの酵母様真菌感染や、細菌感染および前述した耳ダニなどが原因で起こります。また、過剰/不適切な耳掃除が原因で起きてしまうこともあります。クッシング症候群や甲状腺機能低下症などのホルモン分泌関連疾患が原因になることもあります。
症状は、耳垢の量が増え、耳が臭う、耳の中が赤く腫れたり湿疹ができたりします。かゆみを引き起こすため、犬が耳を床にこすりつけようとしたり、激しく頭を振ったりする仕草が見られます。
トイプードル、キャバリアやコッカー、レトリーバーなどの垂れ耳の犬種や、フレンチブルドッグなどの皮膚が弱い犬種がかかりやすく、湿気の多い梅雨時期に多く見られます。
犬の外耳炎についてはこちらの記事でもっと詳しく!
>犬の耳が赤いのは外耳炎かも?原因や対処法、病院に行くタイミングについて解説【獣医師監修】
精神的ストレスが原因の場合
犬が耳を頻繁に引っかく仕草をしているけど、耳の中はキレイで臭いもしない場合、もしかしたらストレスが原因かもしれません。犬のストレスがかゆみを引き起こすメカニズムは解明されていませんが、人間ではストレスがかゆみを引き起こすことがわかっています。
耳を引っかく以外に、あくびをよくする、目が合うとそらす、身体をぶるぶると振るなど、他のストレス症状はありませんか?飼い主とのコミュニケーションが不足していないか、長時間の留守番が負担になっていないか、引っ越しなどの環境変化や、近所で工事をしているなど最近何か変わったことはないか、原因を探してみましょう。
犬のストレス症状はこちらの記事でくわしくチェック!
>愛犬のストレスを見抜こう!その行動、じつは「ストレスサイン」かも!
アレルギーやアトピーが原因の場合
何らかのアレルギーやアトピー性皮膚炎の症状でも外耳炎が起こることがあります。アレルギーやアトピー性皮膚炎は植物や薬品、食品、カビやダニ、花粉やハウスダストなどが原因となります。
皮膚のバリア機能が低下して細菌や真菌感染をしやすいため、外耳炎を繰り返してしまうこともあります。特に、何度も外耳炎を両耳で繰り返す場合は、アレルギーやアトピーが背景にある可能性を考えます。
アレルギーに関してはこちらの記事をチェック!
犬が耳を痒がる時の対処法
犬が耳を痒がっている原因がわかったら、それぞれの対処法を見ていきましょう。
寄生虫が原因の場合の対処法
耳垢の量が多い、耳垢が黒い、耳が臭い、耳の内側が腫れていたり湿疹があるなどの症状があったら動物病院へ連れて行ってください。動物病院では耳垢検査を行います。耳ダニが寄生しているとわかったら、耳の洗浄と耳ダニに効果のある抗寄生虫剤のスポット剤などで治療を行います。
また目視でダニを確認した場合は、無理やり取ろうとすると噛みついているダニの口だけ皮膚に残ってしまうため、不安な方は動物病院で除去してもらうと良いでしょう。ノミ・ダニ予防のため、定期的に駆除薬(服用か滴下)を使用しましょう。フィラリア予防も同時に行える製剤があります。
ダニの取り方はこちらの記事を参考に!
>犬のダニ(マダニ)の取り方は?見つけた時の正しい対処法と注意点について解説【獣医師監修】
外耳炎が原因の場合の対処法
犬が耳や頭、首を掻いたり、耳を床にこすりつけたり、頭を振ったりするなど外耳炎の症状が見られたらすぐに動物病院へ連れて行きましょう。病院では、耳鏡検査、耳垢検査、耐性菌の感染が疑われる場合は細菌培養・薬剤感受性検査などをして、炎症の原因となっている感染因子を突き止めます。
治療は主に、耳の洗浄と点耳薬、炎症の原因に合わせた抗生剤や抗真菌薬、消炎剤、かゆみ止めなどを使った服薬で行われます。耳ダニ感染の場合は比較的早期に治癒しますが、細菌・真菌類の感染が原因だった場合は、完治まで時間がかかったり再発してしまったりすることがあります。
成犬になってからの外耳炎は多くは慢性化してしまいます。耳道が腫れてふさがってしまう場合や、中耳炎・内耳炎まで至ってしまった場合などでは、手術が必要になるようなケースもあるので、気が付いたら放置せずに速やかに獣医師の診察を受けるようにしてください。
精神的ストレスが原因の場合の対処法
耳を痒がっている原因がストレスの場合、原因になっているものが明確であれば、そのストレス源を取り除くことで解消します。また日頃から飼い主とのコミュニケーションの時間を増やしたり、散歩の時間を長く取って運動量を増やしたりするなど、愛犬のストレスを解消するように心がけましょう
アレルギーやアトピーが原因の場合の対処法
アレルギーやアトピーが原因で耳を痒がっている場合は、動物病院で診察を受け、アレルギー・アトピーの治療と同時に外耳炎の治療をします。アレルゲン(アレルギーの原因物質)が分かっていない場合は、検査によって症状を引き起こすアレルゲンを特定し、外耳炎の治療と並行しながらドッグフードを見直すなどアレルギーの対処も行っていきます。
犬が耳を痒がる時のケアについて
犬が耳を痒がっていたらどうしたらよいか、耳のケア方法について紹介していきます。
耳垢を拭き取る
外耳炎を発症している最中は、普段より耳の内部が傷付きやすくなっているため、自宅での耳洗浄は注意が必要です。獣医師と相談して、やり方や頻度を決めてください。場合によっては、外耳炎が治るまでは動物病院で耳洗浄を受け、外耳炎が良くなってから自宅でのケアに切り替えてもよいでしょう。
愛犬の耳を清潔に保つためには、自宅でのケアを1カ月に1回程度の頻度で定期的に行うことが重要です。とはいっても、コットンやガーゼに市販のイヤークリーナーを含ませて、指が届く範囲の外耳を優しく拭き取るだけで充分です。綿棒で耳の奥まで掃除しようとすると、耳垢を奥に押し込んでしまったり、傷付けてしまうなど「ケアのし過ぎ」が却って耳を悪くしてしまう原因になるので注意しましょう。
耳毛が多い子の場合は、トリミングなどで適切な耳毛抜きをすることで蒸れを改善し、通気性が良くなることで外耳炎の予防になることがあります。ただし、強引に抜いたり抜きすぎると逆に悪化する可能性があるので注意が必要です。
定期的に耳のケアをしていると、耳垢の量が多い、腫れている、臭うなどの異変に気付きやすくなります。そのような症状が見られた場合はすぐに動物病院で診察を受けましょう。
犬の耳掃除のやり方は次の記事でくわしくチェック!
>犬の耳掃除のやり方は?正しい手順と頻度、必要な道具や防げる病気について解説【獣医師監修】
引っ掻き傷の防止
犬が耳の痒みをがまんできずに、爪で引っかいて傷をつけてしまうことがあります。引っかき傷ができるとさらにそこが炎症をおこしてしまうため、犬が引っかかないようにエリザベスカラーなどで対策をしましょう。
しかしエリザベスカラーは、つけっぱなしでいると耳が蒸れてしまうこともあるので、散歩中は外すなど配慮しましょう。痒みは犬にとって大きなストレスになりますので、かゆみ止めの薬を使用するなどしてしっかり治療しましょう。
まとめ
犬が耳を痒がる原因と対処法などについて解説してきました。外耳炎は珍しい病気ではありません。特に垂れ耳の犬種では起こりやすい病気です。
外耳炎には、アトピーやアレルギー、耳ダニ、マラセチアなどの細菌・真菌感染などさまざまな原因がありますが、犬にとって外耳炎の痒さは非常につらいものです。また外耳炎は進行して慢性化すると治癒までに長期間かかってしまったり、手術が必要になってしまうこともあります。
犬が耳を痒がっていたら、それが治療が必要なものなのか早期に判断して、早めに獣医師へ相談できるようにしておきましょう。また、定期的な耳のケアが予防や早期発見につながります。自宅でのケアを忘れずに行ってあげましょう。