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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
キャンプや登山などアウトドアなどに行く際、愛犬にはきちんとアウトドアウェアを着させてあげたいですよね。愛犬にフィットした服を着せてあげると、身体の保護、防汚性、犬の体温調節など役立つポイントがたくさんあります。今回の記事では、愛犬とのアウトドアレジャーの際に服を着せるメリットや着せる際の注意点などを、動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に解説していただきます。
目次
- 犬にアウトドアレジャーで服を着せるメリットは?
- 犬用のアウトドアレジャー服を選ぶコツは?
- 犬の服のサイズの測り方
- アウトドアレジャーで犬に服を着せる際の注意点は?
犬にアウトドアレジャーで服を着せるメリットは?
犬には体毛がありますが、その上で服を着せるメリットにはどんなものがあるのでしょうか。特にアウトドアレジャーのシーンにおいて、犬に服を着せるメリットについて見ていきましょう。
メリット1.犬の体に汚れが付くのを防ぐ
野外には、犬にとって多くの危険が潜んでいて、特に表皮に寄生虫が取り付く被害が懸念されます。山野でトレッキング、キャンプをする場合は、虫よけスプレーの代わりに虫除けシャツ等を着用させることでそのような事態を防ぐことができます。
服を着れば寄生虫だけでなく、泥や砂、アレルゲンなどが犬の毛皮に取り付いたり、接触したりするのも防げます。帰宅後のシャンプーやグルーミングがとても簡単になり、結果的に自宅を清潔に保つことができます。
メリット2.体温調節を助ける
小型犬は寒さに弱いため、冬の間は体温維持に効果的です。夏の日中は暑いですが夜になると肌寒いこともあるため、外気温が下がった時に服を着せておくことで、体温を調節するのに役立ちます。空気を含む断熱素材の服や足を保護する靴下などを用いると、外でも快適に活動することができるでしょう。
また、気温や湿度が高い夏は体温の過度な上昇や熱中症の懸念が発生します。特に高齢になった犬や肥満、心疾患など健康上のリスクを抱える犬の場合は冷却ベストを着せると体温が上がりすぎるのを防ぐのに役立ちます。
メリット3.けがを予防する
野外には植物のとげや鋭利なガラス片などが落ちていることもあり、飼い主が気を付けていても、気づかないうちに犬の体が傷ついてしまうことがあります。けがをさせてしまうとせっかくの楽しいアクティビティも中断せざるを得ません。体表と足先を保護するウエアを選ぶことでそういった思わぬけがを予防することが可能となります。
メリット4.紫外線対策
太陽が出ている日に野外に長時間滞在すると、犬の体表に紫外線が悪影響を及ぼします。太陽からの紫外線を遮断する服は、皮膚にダメージを与える紫外線が犬の皮膚に浸透するのを防ぐことができます。紫外線に敏感な目にも実用的で軽い遮光ゴーグルがあればより安心です。
メリット5.花粉を家の中に持ち込むのを防ぐ
かゆみや花粉アレルギーのある犬の場合、犬用シャツを使用すると花粉アレルゲンが皮膚につきにくくなり、アレルギー反応に起因するかゆみや炎症が軽減したり、犬が体を噛んだり、舐めたり、引っかいたりすることが少なくなります。
また、飼い主のアレルギーを引き起こす花粉を被毛にくっつけて自宅に持ち込む可能性がありますが、犬に服を着せることで自宅にそういったものを持ち込むことを防ぎ、飼い主自身のくしゃみや不快感を軽減することができます。
メリット6.犬を見つけやすくする
夜間の散歩は視認性が低くなり危険なので、犬にも反射板等のついた衣服を使うのが良いでしょう。水の中、広い公園、または山野の木々の間のような視認性が低い場所あっても犬を見つけるのが簡単になり、思わぬけがも予防できます。
メリット7.急な天候の変化にも対応可能
多くの犬種は、毛皮があるとはいえ、雨天に弱く、野外に出るには防水性を高める雨具が必要です。雨具は雨の中で犬を乾いた状態に保ちますが、雨具の中に防寒具も使うことで高齢の犬や疾患を持つ犬が適度な暖かさを感じられるようになるでしょう。
メリット8.命を守る場合もある
人が特定の活動のために適切な衣服を着用する必要があるのと同じように、犬も着せることを強く推奨したい場面があります。例えば、水泳やサーフィンに行く場合は、犬に専用の水着や救命胴衣を着けさせるようにしましょう。普段は水遊びが得意な犬であっても、事故の場合などに備えて特別な対策が必要になります。
犬用のアウトドアレジャー服を選ぶコツは?
アウトドアレジャーに行く際に服を着せることのメリットがわかったところで、次に犬用の服を選ぶ際のコツをご紹介します。
犬のサイズに合ったものを選ぶ
人間でもそうですが、犬の服もサイズにあったものを選ぶのが大切です。小さすぎてはきつく感じたり、喉元が締まったりしてしまいます。逆に大きすぎると、引きずって汚れをつけてしまったり、爪などが絡まってけがをしてしまったりする場合もあります。愛犬のサイズをしっかりと計って、サイズのあったものを選ぶようにしましょう。
季節に合ったものを選ぶ
昼と夜の気温差が激しい時期など、どうしても自身の体温調節だけでは過ごすのが難しい時があります。そういった時は体温調節を目的とした服を着せてあげると良いでしょう。服を選ぶ際には、保温や放熱の機能がしっかりと保たれている服なのかをチェックしてあげてください。
シーンに合ったものを選ぶ
野外のアクティビティによっては体表の防水や保護が目的で着用させることがあります。ただし、防水を目的にいたずらに普段の服を着用させたとしても、犬本来の動きが制限されてしまい犬が欲求不満になることが想定されます。犬の動きがスムーズになるよう形状や機能に配慮があると、活動をより一層楽しめるでしょう。
素材
犬には被毛がありますので、素材との相性が悪いと擦れることで帯電して静電気が起こりやすくなります。素材が近いもの同士は帯電しづらいので、天然の素材が使われた生地が被毛と接する面に使われているものを選ぶとよいでしょう。
また、素材が伸縮性のある生地かどうかで仕上がり寸法が同じであっても、着せた時のフィット感に違いが生じます。犬の自由な活動を妨げないよう伸縮性のある生地がおすすめです。
犬の服のサイズの測り方
犬の服のサイズの一般的な計り方をご紹介します。以下の基準で服を選ぶとスムーズに買い物を進めることができるでしょう。
着丈
首の付け根から、しっぽの付け根までの長さを指します。
胸囲
前脚の付け根の後ろから体を一周させて測る、胴の一番太い部分です。
首周り
首の付け根付近、首輪をつける位置よりほんの少し下の部分を、グルリと一周させて計測する長さのことを指します。
アウトドアレジャーで犬に服を着せる際の注意点は?
犬にアウトドアレジャーにおいて、服を着せる際の注意点をご紹介します。
嫌がる場合は無理に着せない
犬には本来服を着る習慣がありません。愛犬が嫌がっているのに無理やり服を着せると、飼い主との信頼関係にヒビが入ってしまう場合もあります。嫌がっている場合は無理に服を着せないようにしましょう。
長時間着せっぱなしにしない
犬に長時間同じ服を着せていると、毛の間の空気の流れが止まって皮膚炎になってしまう可能性があります。長時間の着用は避け、こまめに脱がしてあげましょう。脱がした後は、ブラッシングをして毛の間や皮膚に新鮮な空気を送り込んであげると良いでしょう。
犬が服を着たら、褒めてあげる
犬が服を着たら、たくさん褒めて喜んでいる姿を見せるようにしましょう。そうすることで、犬も「服を着ることはいいことなんだ」と認識し、服を着ることへの抵抗感が少なくなります。